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殿様の試写室

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花の生涯―梅蘭芳


          花の生涯  梅蘭芳

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梅蘭芳(メイランファン)。なんと美しい名前でしょう。
京劇の伝説的な女形は名前からして華があります。

先日、BS放送で、坂東玉三郎が梅蘭芳の演目「牡丹亭」を京都と蘇州で公演した様子を撮影した
ドキュメンタリー番組を見ました。
番組には往年の梅蘭芳も出ていました。
その人は穏やかな紳士でしたが、ほんとに普通のおじさん。
映像はきっと三度目の来日となる62歳のときのものだったのでしょう。
ですが、彼が一旦衣装をつけ、化粧をし、舞台に立つと、
嫋々とした、あるいは楚々とした
思わず放心して見入ってしまう美女に変身するのです。

伝説の京劇役者・梅蘭芳。存命時、日本の歌舞伎界や文学者に大きな感銘を与えた名役者です。

「花の生涯-梅蘭芳」は15年前「さらば、わが愛 覇王別姫」で京劇の世界を描いた陳凱歌(チェン・カイコー)監督の最新作品。
そもそも「覇王別姫」という京劇は梅蘭芳のために書かれた演目ということですから
チェン・カイコー監督にもようやく本命・梅蘭芳を撮る時期がやってきたということでしょうか。

梅蘭芳の末息子で、その後継者、現代京劇界を代表する女形の名優・梅葆玖(メイパオチウ)が
劇中の梅蘭芳の歌を素晴らしい声で吹き替えているのも注目したいところ。
彼はまた資料を提供し、京劇のコーチを選び、役者の指導に当たらせてもくれました。
梅蘭芳を演じた黎明(レオン・ライ)、余少群(ユイシャオチュン)が身につける豪華な京劇衣装も
当時、実際に梅蘭芳が身につけたものを貸してくれるなど、
映画のために全面的に協力してくれたということです。

清末から辛亥革命を経て中華民国、そして日本の占領までの激動の時代を
一流の俳優として、人間として、また男としても、美しく、凛々しく生きた名優の生涯が
その時代背景とともに素晴らしい映像で描き出されています。チェン・カイコー監督、久々の力作です。

《ストーリー》
1894年、梅蘭芳は北京に祖父の代から続く京劇の家に生まれました。
両親を早くに亡くし、父のように慕った伯父の梅雨田(メイユイティエン)とも、
少年時代に死に別れます。
その伯父が遺してくれた京劇の厳しさと励ましの言葉が綴られた手紙が
薄幸な少年の宝物でした。

10年後成長した梅蘭芳は女形のスターになっていました。
ある日、彼は邱如白(チウルーパイ)の講演を聴き、感銘を受けます。
それは〈古いきまりごとに縛られず、生身の人間を演じるべきだ〉という内容でした。
邱もまた梅蘭芳の舞台を観て、感動。司法長官としての地位も家名も捨て、以後、
梅蘭芳の芸の道の伴走者となっていくのでした。
邸の語る現代演劇理論もとりいれた梅蘭芳の舞台はますます輝きを増していきます。
伝統を重んじる師・十三燕(シーサンイェン)はおもしろくありません。
伝統京劇の面子をかけて、梅蘭芳に対決を挑みますが、
観衆も時代も既に十三燕から去っていました。

数年後、梅蘭芳は邸と共にアメリカ公演を計画していました。
しかし、家を抵当に入れての資金調達に梅蘭芳の妻・福芝芳(フーチーファン)は大反対。
そんな時、梅蘭芳は孟小冬(モンシャオトン)に出会います。
彼女は京劇界きっての男形女優。 
二人は舞台の共演を重ねる内に愛を深めていきます。
梅蘭芳にとっては生まれて初めての恋。
彼の心はただただ孟に向かっていくのでした…

実在の俳優の生涯を、舞台のみならず、私生活も含めて描いたのが「花の生涯―梅蘭芳」。
実子の梅葆玖(メイパオチウ)氏の全面的な協力を得て完成しましたが、
孟小冬との恋愛問題など、遺児としては公表されたくない問題もあったことでしょう。
しかし、あえてタブーとなる部分を曝し、梅蘭芳という役者の全てが描かれました。
梅蘭芳は京劇の、そして、中国の至宝。
タブーすら、彼の演技に深みを与え、その舞を美しく輝かせます。

  それにしても青年時代の梅蘭芳を演じた余少群(ユイ・シャオチュン)の美しいことといったら。
  現在、浙江越劇団に所属し、立ち回りを得意とする役者だそうですが、この映画によって確実に
  新境地を開いたと思います。

今回、この映画を観て初めて映画における照明の重要性を実感しました。
列強の進出により、無理やり、外に開かれた眠れる獅子の国
崩壊寸前の清朝末期
内憂外患の中華民国
日本軍の侵略
暗い時代を背景にひときわ輝く舞台。
影と光のコントラストがこれほど美しい映画を観たのは初めてのような気がします。
京劇の女形の化粧―紅を刷いたまぶたや目元―は照明を計算に入れたものだったのだな、と実感させられました。

美女を演ずる男と、男を演ずる美女の恋
かつて見たことのない世界です。やはり中国という国はディープでございます。

「花の生涯―梅蘭芳」
監督/陳凱歌(チェン・カイコー)、脚本/厳歌苓(ゲリン・ヤン)、陳国富(チェン・クオフー)、張家魯(チャン・チアルー)
キャスト
黎明(レオン・ライ)/梅蘭芳、章子怡(チャン・ツイイー)/孟小冬、孫紅雷(スン・ホンレイ)/邱如白、陳紅(チェン・ホン)/福芝芳、
余少群(ユイ・シャオチュン)/青年時代の梅蘭芳、安藤政信/田中少佐、六平直久/吉野中将
3月7日より新宿ピカデリーほか 全国ロードショー
配給:アスミック・エース、角川エンタテインメント


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by mtonosama | 2009-02-27 06:09 | 映画 | Comments(6)
Commented by ライスケーキ at 2009-02-27 20:31 x
歌舞伎の知識もあまりないけど、京劇の知識もほとんどない。 女形と言うと梅沢冨美男を思い浮かべる。 彼も普段は普通のおじさんですね。 その変身ぶりには感激する。 最近では早乙女太一が活躍しているけど彼は素顔も美少年ですね。 彼とユイ・シャオチュンが握手している姿がテレビに出ていたけど日中美少年の対面ですね。 オバサンになると、やっぱりオジサンより美少年の方が良いね。  美少年見に映画館まで足を運ぼうかな。
Commented by すっとこ猫 at 2009-02-27 22:28 x
おお、じじ専好みの映画ですのう。

たとえばのどの肉の垂れた横顔には
深く傾倒してしまう、
たとえばシワでたるんだ瞼からのぞく濁った眼の魅力
には抗しきれない
たとえば絡んだタンを切りながら喋るかすれ声には
いつまで聞いていたい魅力がある・・・・

     そんなヘンタイすっとこ猫は
     ”老いたるかつての美青年”
     が何より心に響きますのじゃ。

じゃあ老いたる美青年のアイツと観に行こうかな、
あ、彼も鬼籍に入ってしもうてたんだった。
   
Commented by との at 2009-02-28 06:19 x
あの~、じじ専のすっとこさん

じいさんも、美少年も、そりゃみなさまのお好みですけん、
殿はごちゃごちゃ言えません。

一度、横浜で京劇を観たことがあるのですが、
めりはりのきいた舞や頭の先からつきぬけるような甲高い歌声
はごくすんなりと自分の中におさまりました。
エキゾチシズムというだけでないなにかがありますえ。

鬼籍に入ったアイツとではなく
紅毛碧眼のアイツと観にいっておくれやす。
Commented by mtonosama at 2009-02-28 06:36
美少年の好きなライスケーキさん
そりゃ、おじさんより美少年ですよ。もちろん。

実は取材で梅沢富美夫さんに会ったことあるけど、
彼は美女がお好みのようだった(「ごめんなさいね。私で」と言いたくなるくらい、でした)。

ま、誰でも歳をとりますから。
でも、芸の道は歳をとればとるほど深まるもの。
芸を極めたおじさんを観に映画館へ足を運ぶのもいいかも。
Commented by ひざ小僧 at 2009-03-01 10:38 x
美少年にも爺さまにも淡白だけれど、芸を通じた不倫の愛には興味をそそられる。梅さんにとっては最初の恋だって!? じゃあ米国公演に反対した妻は親が決めた許嫁ってか。撮影に全面協力した息子は、母役のキャスティングに意見を出したのかな。妻がどう描かれているのか見たい。大概地味かヒステリックか見栄っ張りというのが相場だけど、どうなんでしょ。
Commented by mtonosama at 2009-03-01 15:00
美少年に淡白なひざ小僧さん(それって今までのカキコからなんとなくわかります)。

妻は、おっしゃる通り、周囲が決めた許嫁だよ。でも、これが段々良い味出していくんだよね。

中国の俳優さんって、今は北京電影学院出身者が大勢を占めてるみたいだけど、ジャッキー・チェンとかちょいと年齢層の高い役者は京劇出身者が多いと聞くよ。妻役のチェン・ホンさんも味のある女優さん。

もう一回京劇を観たくなった殿です。

by Mtonosama