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殿様の試写室

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精神 Mental

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        © 2008 Laboratory X, Inc.

精神
Mental

以前、この映画の監督である想田和弘さんの「選挙」というドキュメンタリー映画を観ました。
監督の呼び方によれば、観察映画というそうですが。
小泉自民党のもと、川崎市々議会議員補欠選挙に出馬した監督の友人が
選挙を戦う一部始終を撮った作品です。
選挙の裏側を野次馬気分で観られてなかなか興味深いものでした。
(7月4日からライズXにて復活ロードショー)
選挙というものを、知ってるつもりではいたものの、映画で観るとびっくり!の連続。
選挙の裏側ってこうなってるのか、と目の中のうろこがはらりと落ちました。

しかし、二作目は「精神」。これはまたいったい…
「精神」は〈精神現象学〉とか、〈絶対精神〉の精神ではなく、〈精神病院〉の精神です。
この精神病院という言葉すら禁忌の領域に属するのではないでしょうか?
「選挙」の手法から推測すると本作「精神」もまた病院に潜入してカメラを回した?
まさか…

観る前に何度もそんな問いを繰り返しました。
観た後ですか?

はい、驚きました。
カメラの前の患者たちがきわめて冷静に自己分析しつつ
論理的に語っていることに、です。
さらにモザイクもなしに、です。
そういうことに驚くこと自体、既に、精神科の病を患う人への偏見なのでしょう。

        世間では、健常者と患者との間に、透き通ったカーテンが引かれていて
        健常者と言われる私たちは患者のことを見ないふりをして過ごしてきたようです。
        なのに、この映画を観たら
        見ないふりをしてきた彼らのことを
        正面から見ることになってしまいました。

外来精神科〈こらーる岡山〉に通院する
統合失調症、躁うつ病、パニック障害などの神経症を抱えた患者たちは
カメラの前で語ります。
モザイクも、黒い眼隠しもない、ありのままの顔です。

        もちろん、患者たちは素顔で出演することに快く賛同してくれるわけではなく
        ひとりひとりから撮影許可を得ることはとても大変だったでしょう。

監督はいいます。
「被写体の顔にモザイクをかける手法は、患者に対する偏見やタブー視をかえって助長する」
う~ん、そうかもしれませんが…

                        (thinking time)

確かに、モザイクは、保護されるべきもの、人目に触れさせたくない対象に付けるもの。
でも、〈こらーる岡山〉に通院する患者は、児童でもなければ、ワイセツでもありません。
本人が納得したなら素顔で出演することになんの問題もないのでしょう…

        〈こらーる岡山〉は、代表を務める山本昌知医師が開設した外来精神科診療所です。
        山本医師は以前、精神科病院に勤務していたとき
        病室のドアに外からかけられた鍵に疑問を抱き
        〈鍵のない精神科病棟〉をめざした人物。
        「病気ではなく、人間を診る」 「本人の話に耳を傾ける」 「人薬(ひとぐすり)」
        をモットーとし
        患者が病院ではなく、地域で暮らしていくための方法を模索し続けています。
        ですから、〈こらーる岡山〉には
        牛乳配達を行う作業所と食事サービスを行う作業所が付属し
        通院者たちの働く場所にもなっています。

〈こらーる岡山〉に通院する患者の顔ぶれは老若男女とりどりですし
発病の理由もいろいろです。 
 
  精神的に追い詰められ、生まれたばかりの赤ちゃんの口を塞いで死なせてしまった母親。
  少年時代から神経症とつきあいながら、哲学や芸術を深めてきた男性。
  自殺未遂を繰り返す人。

さまざまな患者がいますが、モザイクを取り外したことによって見えてくるのは
「いったい私たち健常者とどこが違うの?」ということです。
環境が少し変わっていれば
私たちだって透き通ったカーテンの向こう側にいたかもしれません。

監督は、この映画で
「患者や障害者を『弱者』とも『危険な存在』とも決めつけず、かといって讃美もせず、
虚心坦懐に彼らの世界を見つめることを第一義とした」

といいます。
う~ん。そのためのモザイク取り外しだったんですか。

いろいろな感じ方で観ることのできる映画だと思います。
笑って楽しめる映画でもありませんしね。
実際、いろいろ語っていた出演者が自殺したと、映画の最後で知らされるのはつらいものです。
でも、いつまでもカーテンをひいて見ないふりをするわけにはいきません。

いつも思いもよらない世界を見せてくれる想田監督はすごい!

精神
監督・撮影・録音・編集・製作/想田和弘、製作補佐/柏木規与子
出演/「こらーる岡山」のみなさん、他
6月13日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
配給・宣伝:アステア
www.laboratoryx.us/mentaljp

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by mtonosama | 2009-05-22 05:34 | 映画 | Comments(8)
Commented by Tsugumi at 2009-05-22 09:07 x
こういう映画ってなかなかメジャーな映画館では見ること出来ませんよね。
自分で是非見ようとしないと見れない映画ですね。
Commented by mtonosama at 2009-05-22 09:44
Tsugumiさん
そうなんです。メジャーな映画館じゃあ、絶対公開しないですよね。
最初はびっくり、こわごわ。観た後も「素顔でいいのかなぁ?」と考えながら帰途につきました。
監督の趣旨もわかる気がしますし、いずれにせよ、精一杯考えさせられる映画でした。
Commented by すっとこ at 2009-05-22 11:49 x
これはまた・・・
なんという映画でしょうか。
”精神”という題のつけ方も前回が”選挙”なら
漢字2文字に思い入れがあるのかな、かもですが
内容からしたらぎりぎり崖っぷちの題名のような気がします。
楽しむために行くんじゃない映画、時間あるから行くんじゃない映画、
こういう映画は誰と観よう?
Commented by mtonosama at 2009-05-22 17:31
Hahaha
〈楽しむために行くんじゃない映画、時間があるから行くんじゃない映画〉
ってとこで笑ってしまいました。
この映画関連での初めての笑いです。ありがとうございます。

その昔、ジャズ喫茶なるものがはやった時代
必ずしも楽しむためではなく(時間だけはたっぷりあったけれど)、
深刻ぶるためにジャズを聴きに通ったことがありました。

「精神」は深刻な顔してジャズを聴くみたいに
鑑賞するといいのかも。

ところで、すっとこさん、お出かけするんじゃなかったのですか?
お忙しい合間をぬってのコメントありがとう。

パソコンがようやく直って帰ってきました。サクサク動いて気持ち良い殿です。
Commented by ライスケーキ at 2009-05-23 21:58 x
これは観てみないと何とも言えませんね。 何とも言うために観なくてはならないようです。 健常者だってスクリーンでモザイクを外して自らの内面をさらけ出すことが出来るでしょうか。  彼らのモザイクを外す事によって彼らを特別な存在にしてしまっているのではないか・・・。  これは、やはり一人でじっくり見に行って考えるしかありませんね。
Commented by mtonosama at 2009-05-24 06:27
この映画は昨年12月にご紹介したドキュメンタリー
「大丈夫であるように-cocco終わらない旅」を思い起こさせます。
拒食症を抱えたcoccoの音楽の旅と心の旅を描いた映画でした。

「精神」に出演する患者さんもモザイクなしで淡々と語ります。
話を聞いている想田監督のスタンスが自然体だからでしょうか?
彼らも自然体で語ります。
それを観ていると「あー、わかるわかる。私にもそんなことがあった」
と思ってしまうのです。

観てる時も観た後もじっくり考えてしまう映画でした。
Commented by ひざ小僧 at 2009-05-25 10:07 x
精神病は脳にできた傷による、みたいなことを書いた本をちょうど読もうと思っていた矢先でした。何かのストレスで、外部からの強い衝撃で脳内にはたらく物質が増えたり減ったりなくなったりして、症状が出るのかな。モザイクをかけない取材を貫徹してしまう監督の信念はすごいですね。気弱な私なら、のちのちまでのマイナス要因(患者に向けられる風当たり)を気にして躊躇するでしょう。顔を出して声を出さないと真実は伝わらない、とわかっていても。
Commented by mtonosama at 2009-05-25 16:12
ひざ小僧さん
同じく気弱な殿もモザイクなしでの撮影には躊躇すると思います。

でも、〈こらーる岡山〉という診療所の先生の努力もあって
患者さんたちはかなりのびのびできるのかもしれないですね。
山本先生も患者さん本人も実名素顔撮影を了承したのだし。

うつ病やリストカットがこれほど蔓延してる生きにくい世の中だから
患者さんの話を聴くのは参考にもなるかなぁ。