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殿様の試写室

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妻の貌(かお)

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妻の貌(かお)

早速ですが、文末のスタッフの部分をご覧いただけますか?

そうなんです。
監督、撮影、編集、ナレーターのすべてに
川本昭人(あきと)という名前が入っています。
こんなふうに言いきってしまっても差支えなければ
この人は素人のおじさんです。

    広島に住む82歳の川本昭人さんは50年以上もカメラを回し続けています。

    「蝶々先生」(‘69)          東京国際アマチュア映画コンクール受賞
    「私のなかのヒロシマ」(‘73)   東京国際アマチュア映画コンクール受賞
    「おばあちゃん頑張る」(‘74)   東京国際アマチュア映画コンクール受賞
    「妻の貌」(‘01)           神奈川映像コンクールグランプリ(短編)
                        山形国際ドキュメンタリー映画祭2001招待
    (「妻の貌」(‘08)          劇場公開ニューバージョンを完成)

    という受賞歴が撮影の長さとその実力を物語っています。

広島に生まれ、2005年に引退するまで
酒造会社の社長・会長として働いていた川本さん。
彼は1958年の長男誕生をきっかけに8ミリカメラを回し始めました。
良いおとうさんってことですね。

以来、川本さんが撮り続けているのは「家族」。
ただ、妻のキヨ子さんが被爆による甲状腺ガンを患っていることから
川本さんが撮影する家族の背後にはいつも原爆がついてまわっているのですが。

「妻の貌」は川本さんの初長編映画です。
新藤兼人監督の勧めもあって挑戦しました。
過去の作品(「一粒の籾」‘64、「私のなかのヒロシマ」’73、「おばあちゃん頑張る」’74、
「きのう今日あす」‘79、「お嫁さん頑張る」’84、「絆」‘85、「ヒロシマに生きる」’02)

からの映像を挿入した1時間54分の作品です。

     妻のキヨ子さんは1945年8月6日女子挺身隊として軍需工場に働いていたとき
     被爆しました。
     原爆で家族を失い、自身も絶えず倦怠感に悩まされていましたが
     1968年甲状腺ガンと診断され、手術を受けました。
     時に酸素吸入も必要とする身体で、川本さんの母を13年間在宅介護。
     その最期を看取ります。

     その合間に初孫が生まれ、長男が歯科医として開業し
     体の弱かった次男も結婚。
     次々に孫が誕生します。
     その度にキヨ子さんはかいがいしく働きます。
     家族のために身を粉にして働く昔ながらのおかあさんです。

     そんなキヨ子さんがある晩アイロンをかけながら
     部屋のテレビから流れる原爆詩集「慟哭」の朗読を
     アイロンの手を休めることもなく、じっと聴き入っています。
     原爆で亡くなった家族のことが胸中をよぎるのでしょう。
     虚空をじっとみつめるキヨ子さんの強い眼力がとても印象的です。

川本さんはいつも、いつもカメラを構えているので、家族にとっては
カメラを構えるおとうさんは当たり前になってしまっているのでしょうか。
とりたててカメラ目線になることもない家族の普通の姿が撮影されています。

     ただ、姑を見送った後、キヨ子さんは川本さんに怒りをぶつけます。
     「おばあちゃんは心の支えだった。私を頼りにしてくれた。
     あなたなんて、私を素材にして、仕事の肥やしにしているだけ…」

素人と書きましたが、半世紀もカメラを回し続け
一貫したテーマを追求し続ける姿勢はプロを超えているかもしれません。
逆に、頑固といってもいいこの姿勢はプロには真似できないでしょう。
しかし、それ以上に50年にわたって被写体であり続けること…
川本さんにも、キヨ子さんにも、ともに執念にも似た思いがあったと思います。

原爆を描き続けていると、広島の人にさえ
「まだ原爆と家族を撮り続けるのか」と言われるそうです。

「警告ができるほど強い作品でもないですが、また原爆が落ちるようなことがあったら大変ですよ。―――中略―――原爆に対する怒りがあるんですね。もちろん妻も。やはり今回の作品は若い世代の方々に見てほしい」
と川本さんは語ります。

     「人間は遺伝子のキャリアーだ」と村上春樹の「1Q84」にありました。
     あの日、無残にキャリアーであることを絶たれてしまった多くの命を
     忘れてはいけないのだと思います。

孫の誕生、孫の入学式、孫の成人式。
ほんとによくある家族のイベントがここには映し出されています。
しかし、この当たり前な風景が
あの日を生き抜いてきた人たちにとっては限りない僥倖なのでしょう。

妻の貌
監督・撮影/川本昭人、編集/川本昭人・小野瀬幸喜、ナレーター/川本昭人、岩崎徹、谷信子
7月25日(土)~平和のためのロードショー
ユーロスペース(www.eurospace.co.jp モーニングショーでの上映)
川崎アートセンターhttp://kawasaki-ac.jpにてロードショー
8月1日 (土 )ジャック&ベティ www.jackandbetty.netにてロードショー
あさぎ色・桃色の折り紙付き特別鑑賞券¥1300発売中
(折った折り鶴を各劇場に持っていくと、千羽鶴にして広島平和記念公園内の「原爆の子の像」
に寄贈されます)

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by mtonosama | 2009-07-06 06:22 | 映画 | Comments(10)
Commented by ひざ小僧 at 2009-07-06 17:22 x
夫婦喧嘩で夫をののしる時分の顔が銀幕に大写しにされたら・・・と、考えて身震い。ヤだ。でもモデルが嫌がるカットのほうが何かを突いていたりする。撮られることを拒否しないのは最大の理解者だからなんでしょうね。
Commented by mtonosama at 2009-07-06 19:32
そう、そう。
私も夫をののしる顔と大声が写し出されたら、もう冷や汗だよ。

奥さんは夫の理解者であると同時に
原爆への最大の告発者だとも思う。
Commented by ライスケーキ   at 2009-07-06 22:41 x
キヨ子さん。 「夫の理解者」「原爆への最大の告発者」。 そして愛ある人なんだな と思う。 「酸素吸入も必要とする体で義母を13年介護」そして「おばあちゃんは心の支えだった。 私を頼りにしてくれた。」なんて なかなか言えないよね。  わたしゃ、この言葉にガーンときました。   

 P.S. 夫をののしるシーンはカットされるんじゃないの?
Commented by すっとこ at 2009-07-06 22:46 x
うーーーーん。
殿様ますます冴えわたる名調子。
この映画をもう観てしまったような感じにさえ
捉われてしまいます。

孫が生まれてからのほうが却って忙しいような
自分の存在を考えさせられる、っていうか
そんなおばあちゃんである自分も
時には虚空見つめることもあるもんなー
と思ったことでした。

この映画は誰と観よう。
あるいは孫と行くのもいいか。
Commented by mtonosama at 2009-07-07 06:43
ライスケーキさん

原爆病をかかえた日々も生活として続くんだもんね。
恨みばかりじゃ、やっていけないと思うのに
このおかあさんはまるで神様のようだよ。

だからこそ
「あなたなんて私を素材にして、仕事の肥やしにしているだけ」
という言葉はズッシーンときました。
川本さんもこたえたでしょうね。
Commented by mtonosama at 2009-07-07 06:45
すっとこさん
ダメよ、ダメダメ。観た気にならないで。
観にいってね。A子ちゃんに折り鶴の折り方教えてあげておくれ。
Commented by Tsugumi at 2009-07-08 15:20 x
50年以上もカメラ回し続けるってすごいですよね。
うちのだんな様も私をよくカメラで撮りますが実は私写真撮られるの苦手。。。
だって写真やビデオの中の私変なんだもん(爆)
でも昔の写真見ると若かったなぁ。。
その当時を思い出し写真に撮られるのもいいかもと。。
でも今でも写真に撮られるのは嫌い。。
Commented by mtonosama at 2009-07-08 22:18
Tsugumiさん
私も写真撮られるの苦手です。
でも女友達が撮るとよく写ってます。
「愛があるからだよね」と二人で言い合ってますが、
夫が撮るといつもひどくしか撮れないのは
やはり…
Commented by Tsgumi at 2009-07-09 11:43 x
どうなんですか?
Commented by mtonosama at 2009-07-09 16:31
ふっ
腕が悪いから、です。

妻の貌は並(?)なのに。