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殿様の試写室

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ボヴァリー夫人

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ボヴァリー夫人
Spasi I Sokhrani
Madame Bovaryもしくは Save and Protect

思春期。
中学3年から高校1年くらい?
人によってはもう少し早かったり、あるいはもう少し遅かったり
数年の開きはあるのでしょう。
ちょっと大人の世界をのぞきたくなる年頃
その頃、みなさんはどんな本をお読みになりましたか?

殿は、枕の下に隠して「チャタレイ夫人の恋人」を読みました。
裁判になるほど、大したことは書いてないな、などと思ったりしながら(笑い)。

「ボヴァリー夫人」も1850年代の発表当初はフランスで風俗紊乱の罪に問われたり
日本でも、1916年の刊行時には発禁処分となっています(1920年に解除)。
とはいえ、「ボヴァリー夫人」、近代史に初めてリアリズムをもたらした金字塔的な作品。
なかなか、であります。

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映画「ボヴァリー夫人」は1989年、今から20年前の作品です。
監督はアレクサンドル・ソクーロフ。

     4年前、終戦直後の昭和天皇を描いた「太陽」で話題になった監督です。
     当試写室でも‘08年12月に彼の作品「チェチェンへ アレクサンドラの旅」を
     上映しています。

ちょっと硬派な印象のあるソクーロフがなにゆえ「ボヴァリー夫人」を?

監督いわく
「中学生の頃、読んだ文学の中で『ボヴァリー夫人』が最も明快な印象を与えた一冊だったのです」
中学2年だったそうですよ。

さて、おませなソクーロフ少年を感動させた小説「ボヴァリー夫人」のあらすじです。

田舎医者シャルル・ボヴァリーは最初の妻を病で亡くし、美しいエマと再婚。
エマは農家の娘だが、修道院で寄宿生活を送った夢見がちな女性。
夫シャルルは凡庸な男ながら、エマを心から愛している。
田舎での単調な結婚生活。
エマは小説を読み、ピアノを弾き、絵を描き、鬱々とした気分を晴らしている。
そんなある日、夫シャルルが侯爵の病を治し
夫婦そろって城に招待される。
今まで小説でしか知らなかった上流社会の生活を目の当たりにして
あらためて夫との夢のない生活に幻滅するエマ。
そんな中で出会ったのが公証人の書記を勤めるレオン青年だった。
両者ともに恋心を抱くが、想いを告白できないまま、レオンは去る。
エマは彼が去った心のすきまを埋めるように
プレイボーイの貴族ロドルフと恋のアバンチュール。
だが、気まぐれなロドルフとの仲は続かず、彼女は体調を崩す。
妻とロドルフとの関係にまったく気付かないシャルルは
妻のため、いろいろな薬を取り寄せるが…
観劇をして気分転換するよう勧められたエマ。
街に出かけると、思いがけずレオンと再会。
二人は再び燃え上がる恋の炎に、今度こそ身を任せるのだった。
その後もエマはレオンに会うため、夫を偽って、毎週のように街へ。
レオンとの逢瀬のため、大金をつぎこむエマ。
高利貸しから借金を重ね、ついに裁判所から差し押さえ命令が。
エマは、レオンに助けを求めるが、彼は去っていく。
そして、絶望したエマは…

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1989年には167分だった作品をソクーロフ監督が128分に編集した本作。
フローベール没後130周年を記念して上映されます。
文芸映画というジャンルに入るわけですが
これを観たとき、ちょっと、いえ、かなり驚きました。

     文芸映画に期待する映像ってありますよね。
     まして19世紀フランスの小説なのですから
     美しい田園風景や
     素晴らしいインテリア、それやこれやに
     「なんて素敵なの」
     とうっとりしながら鑑賞するのが、これまでの文芸映画ではないですか。

     ところが、ボヴァリー家の窓の外に広がるのは埃っぽい山や汚い納屋。
     家畜や肥やしの匂いが漂ってきそうな風景です。
     実際、ハエが唸りを上げ、エマが大切にしている品々にたかっていたりします。
     このハエの羽音が映画を通してずうっと聞こえてきました。

当時30代のソクーロフ監督はどうしてここまで原作の色を変えたのでしょう。
エマが抱える絶望感をきわだたせたかったのでしょうか。
19世紀のフランスの田舎に生きる知的な女性の抱える朦朧とした不満を強調したのでしょうか。

     この映画が完成した1989年はソ連崩壊の年です。
     ソクーロフ監督もまたソビエト政府当局から受け入れられず、
     その作品は公開禁止処分を受けていました。
     不倫という背徳も含め、あらゆる表現が禁止されていた監督にとっては
     エマの暮らす田舎町は監督の置かれた状況に他ならなかったのかもしれません。

観終わった後、甘い文芸映画を期待したおのが不明に恥じ入った次第です。
思春期真っ最中の生徒さんや思秋期にあるご婦人殿方にとっては
ちょっと刺激が強すぎるかもしれません。
原作を読んでみたくなる映画です。

ボヴァリー夫人
監督/アレクサンドル・ソクーロフ、原作/「ボヴァリー夫人」(ギュスターヴ・フローベール著)
脚本ユーリィ・アラボフ
キャスト
セシル・ゼルヴダキ、R.ヴァーブ、アレクサンドル・チェレドニク、B.ロガヴォイ
1989年=2009年/ソ連=ロシア/カラー、配給/パンドラ
http://www.pan-dora.co.jp/bovary/
10月3日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー

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by mtonosama | 2009-08-30 06:23 | Comments(8)
Commented by すっとこ at 2009-08-30 10:03 x
フローベルが言った「ボヴァりー夫人はわたしだ」と。

これだけしか知らないし 実際読んでないんです。
そおかー。そんな内容、ストーリーだったのですか。
ボヴァリー夫人、しっかりしろ。おのれを見失っとるぞ。
全編蠅の羽音が聞こえるなんてなんというクソリアリズム。
写真見てもそんなにキレイキレイで作ったのではないのが
伝わってきますが今から20年前の作品、日本での上映が
なぜ20年後の今月なのでせう?

森番に恋をするチャタレイ夫人の本を枕の下に隠してた
可愛い殿様の青春にしばし思いを馳せたすっとこでした。
Commented by mtonosama at 2009-08-30 10:26
今必死こいて「ボヴァリー夫人」読んでる殿です。
ボヴァリー夫人って今もいるね。
てか、自分もそうなんじゃないか、
と、みんな彼女の気持ちに納得できるんじゃないかな。
ま、大人になってから読んだ人間としての感想ですが。

一応、今年がフローベール没後130年ということで、
公開されるんだって。
89年当時はあのバタバタできちんと上映できなかったらしいよ。

中学時代、親が無理やり買い与えた世界文学全集で
読んだ人も多いと思うけど、
酸いも甘いも噛み分けたお年頃になって読んだ方が
余計にうんうんと頷けるね、
と踏んだ殿である。
〈凡庸〉と妻にきめつけられてしまったシャルル・ボヴァールにも
同情しつつ。
Commented by ライスケーキ at 2009-08-30 22:32 x
中学生向け世界文学全集に「ボヴァリー夫人」入っていたんですか。 私は読んだことないけど、ストーリーがわかって興味津々です。 
                                       私にとっての「チャタレー夫人」はモーパッサンの「女の一生」でした。  高一の時友人が「子どもの知らない大人の世界」が書いてある文章に赤線引いて持ってきて見せてくれた。  今ほど情報があふれていない当時、文芸作品から「大人の世界」を知ったのは、ある意味幸せかもしれない。 私も「女の一生」又読んでみようかな。  あ、「ボヴァリー夫人」もね。
Commented by mtonosama at 2009-08-31 06:20
いやぁ、うちの親は少年少女文学全集買ってくれなかったから、
「ボヴァリー夫人」が入ってたかどうか知りませんが…

今の時代、日本にもかなりの数のマダム・ボヴァリーがいると
思います。百数十年前の小説とは思えないほど面白い!

「赤線ひいた」本を持ってきてくれた友人って…
良いお友達ですね。

私も「女の一生」読んでみようかな?あれ、読んだことあったかな?
Commented by Tsugumi at 2009-08-31 08:55 x
私中学の頃本は読まずいつも外で走り回っていました。
陸上部だったの。。
この監督さん太陽を撮った方ですか。。。
太陽面白かったからチャンスがあれば見てみたいものです。。
Commented by mtonosama at 2009-08-31 13:31
Tsugumiさん
「太陽」ご覧になりましたか?東銀座の地下の映画館で?
そうです。あの監督さんの20年前の作品です。

陸上部だったんですか!じゃあ、運動会では花形ですね。
わたしはいつも哀れなびりっけつでした(泣く)。
Commented by Tsugumi at 2009-09-03 09:00 x
太陽は新宿歌舞伎町で見ました。。
なんかよく考えると歌舞伎町ですよ。。凄いですね。。。

あの頃駆け回らず本読んでいればまた違った人生が・・・あったのかもね
Commented by mtonosama at 2009-09-03 09:51
ははあ、歌舞伎町ですか。

あの頃、今みたいに定期的に運動してれば
同じく、違った人生があったかも。

でも、Tsugumiさんにはやさしいだんな様がついていらっしゃるから
強いですね。