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殿様の試写室

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アンナと過ごした4日間 Four Nights with Anna

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                  (C)Alfama Films, Skopia Films

アンナと過ごした4日間
Four Nights with Anna


低い陽光に照らされた建物の影が前方の家の屋根を半分覆い
空には不穏な気色をはらんだ雲
夏の日、涼しい木陰をもたらしてくれた木々もすべて葉を落とし
末梢神経のような枝先をかすかに震わせている
安い石炭の燃える匂いが空気を充たしている東欧の田舎町
寂しく、不思議な風景です。

アンジェイ・ワイダの系譜をひくポーランドの巨匠。
イエジー・スコリモフスキ(なんて覚えにくい名前でしょう!)の17年ぶりの最新作です。

日々の暮らしのように静かなストーリー展開、洒落たセリフなど皆無。
ポーランドの陰鬱な重い空気。
強姦事件を目撃し、警察に通報しながら、
自分が犯人にされてしまう運の悪い主人公レオン。
強姦された被害者アンナに恋をするレオン。
不器用な男の純愛は、盗み見という陰湿な行為として現れながら
なぜか清らかで優しい。

     あ、今、相当ひいてますね。
     お気持ちはわかります。
     でも、ちょっと待ってください。

スクリーンに映し出された映像は強烈な吸引力を持って
観客の目をひきつけて離しません。
どうしてでしょうかねぇ。

同じポーランド人でも、アンジェイ・ワイダ監督には社会性があります。
ロマン・ポランスキー監督は華やかさを持っています。
イエジー・スコリモフスキ監督のこの新作には
そのどちらもないのですけどねぇ。

しかし、冒頭の風景写真が見る者をとらえて離さないように
この映画も人間のかかえる奥深い心象風景とシンクロしながら
観る者にじっとりとまつわりついてきます。

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 イエジー・スコリモフスキ
イエジー・スコリモフスキは1938年5月5日ポーランド、ウッチの生まれ。
父は建築家だったが、第2次世界大戦中ユダヤ人の妻の一家を守るため
レジスタンスに身を投じ、ナチスに処刑される。
大学では民族学、歴史、文学を専攻し、ボクシングやジャズにも関心を持つ。
詩集、短編小説、戯曲などを意欲的に発表。
アンジェイ・ワイダに注目され、「夜の終りに」(‘60)を共同執筆
ボクサー役として出演もする。
その後、故郷のウッチ国立映画大学に入学。
62年にはポランスキーの長編デビュー作「水の中のナイフ」で台詞を執筆。
66年ベルガモ映画祭でグランプリを受賞し注目を浴びるが
スターリン批判をしたため上映禁止処分を受けた。
詩人、ボクサー。画家、ジャズドラマーと多彩な顔を持つ監督。

71歳になったイエジー・スコリモフスキが現在のポーランドに見たものは
共通の怒りによって結びつけられた連帯でも
よりよい社会をつくるんだ!という高邁な精神でもなく
分断された孤独な人間でした。

監督はいいます。
「これは人とのつながりを求める基本的な欲求の物語です」

ストーリー
病院内の焼却処分場で働き、祖母と2人でひっそりと暮らすレオン。
街の通りを病院の看護士アンナが行く。
急いで物陰に身をひそめるレオン。
レオンの家の向かいには看護士宿舎があり、アンナの部屋が見える。
毎夜レオンは双眼鏡で彼女の部屋を覗く。

なぜ?

数年前、川へ釣りにでかけたレオン。
釣果もなく、ひきあげようとしていると、叩きつけるような雨が降ってきた。
レオンは近くの廃工場へ駆けこむ。
すると建物の奥から女性の叫び声が。
おそるおそる近づいて行ったレオンの目に映ったのは
見知らぬ男に乱暴されているアンナの姿だった。
その場を逃げ出し、警察に通報するレオン。
だが、現場に釣りの道具を置き忘れたため、容疑者として逮捕されてしまう。

釈放後、勤めていた病院を解雇され、祖母も亡くなる。
一人になってしまったレオンは、その後、大胆な行動に…


アンナと過ごした4日間  Four Nights with Anna_f0165567_5511985.jpg


「人とのつながりを求める欲求」
孤独で隠微で薄気味悪い…
こんな言葉で切り捨てられてきた人もまた人とのつながりを求めています。

明るく人好きのする人にひかれるように
多くの人は明快な映画にひきつけられます。

でも、このはがゆい冴えない男が観客をそらさないように
薄暗い東欧の田舎町が舞台のこの映画も観客の視線を飲みこんでいきます。
この映画には魔力があります。

アンナと過ごした4日間
監督、脚本、製作/イエジー・スコリモフスキ、製作/パウロ・ブランコ、
脚本/エヴァ・ピャスコフスカ、撮影/アダム・シコラ
キャスト
アルトゥル・ステランコ/レオン、キンガ・プレイス/アンナ、イエジー・フェドロヴィチ/院長、
バルバラ・コウォジェイスカ/祖母
10月17日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開  
www.anna4.com


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by mtonosama | 2009-09-19 06:24 | 映画 | Comments(8)
Commented by すっとこ at 2009-09-19 12:10 x
うわぁ。
殿様、今回の文章は
紹介の文ではないですね!

紹介の詩、
紹介の小説、です。
素晴らしい!ブラボー!

冒頭のブリューゲルの絵のような風景が
心に沁みてきます。
この映画は誰と観よう。オトコの心になって
レオンの心になって独りで見るんだろうか。


Commented by mtonosama at 2009-09-19 15:35
そ、そんな…すっとこさん。それは褒め過ぎというものです。
すっとこさんの名調子にかなうものではございません。
とはいえ、褒められればうれしい軽い私。

いや、しかし、この映画、沁みます。
また、監督のお父さんがすごい。妻の家族のために闘って
命を落としているのです。
東欧の深く暗い歴史をしみじみと感じさせます。

Commented by ひざ小僧 at 2009-09-19 23:19 x
なんの4日間なのですか? 過ごした? のぞかれていたことがわかれば、女性の身としてはおぞましさしか感じないと思うんだけど(よほどの美形であれば別)、彼の愛は通じるのだろうか。通じないのでしょうね・・・
Commented by mtonosama at 2009-09-20 06:21
ひざ小僧さん
一緒に(?)過ごした4日間です。アンナはぐっすり眠っているので
本当の意味では一緒にとはいえないのだけど。

でも、レオンは献身的なんだよ。ペディキュアしてあげたりね。
なんか哀しい純愛だよ。そのもの哀しさが晩秋から初冬にかけての
ポーランドの田舎町にぴったり合ってるんだよね。良い映画…
Commented by Tsugumi at 2009-09-20 07:49 x
ほう~~~。。。
またしても薄暗いヨーロッパの映画ですか。。。

とのさんの映画を見つける感性ってすばらしい。。。


Commented by mtonosama at 2009-09-20 10:48
Tsugumiさん
試写状にあったトップの風景画像にすっかり魅せられて
観た映画です。まるで「絵画のようで素敵♡」とポーッと
なってしまいました。
ポーランド、ハンガリー、チェコなど東欧諸国はぜひ訪れたいです。
Commented by ライスケーキ at 2009-09-20 23:09 x
大胆な行動・・・。 どんな行動に出たのでしょう。 う、知りたい。 それには映画を見なくちゃぁね。  Four Nights with Anna とあるから、夜だけ共に過ごしたのかな?   いろいろ想像がふくらみます。  こんな映画の見方(?)も面白いね。

Commented by mtonosama at 2009-09-21 04:43
ライスケーキさん
ヒントは画像の中に。
しかし、想像を超えた映画です。
F市近辺では上映しないかな?

by Mtonosama