戦場でワルツを
「おくりびと」が米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞したとき
もっくんが「ぼくはイスラエルのあの映画が受賞すると思っていた」と言っているのをききました。
今回、当試写室で上映するのは、彼が驚いていたあの映画「戦場でワルツを」です。
イスラエルの戦争映画―-
それもよくある第2次世界大戦の収容所のユダヤ人を描いたものではなく
1982年レバノン侵攻時の侵略者としてのイスラエルを描いた映画。
それをイスラエル人自身が描いた映画です。
監督アリ・フォルマンは19歳でレバノン侵攻に従軍しました。
その時のある時間が彼の記憶の中から完全に欠落しています。
これはその欠落した記憶を追うドキュメンタリー映画です。
アニメーション映画!
アニメーション・ドキュメンタリー映画!
!!!な映画です。
驚きました。圧倒されました。
アニメーションでここまで表現できること。
そして
アニメーションでなければここまでできなかったことの両方に。
ストーリー
2006年冬。
映画監督のアリ・フォルマンは、戦友のボアズから
26頭の犬に襲われる悪夢に悩まされていると告げられる。
1982年6月イスラエル軍は南レバノンに侵攻した。
1975年から続く内戦のため、レバノンは壊滅状態にあり
南レバノンにはPLO(パレスチナ解放機構)が勢力をのばしていた時代。
PLOの拠点を潰すこと――それがイスラエルの侵攻の目的であった。
ボアズの悪夢は19歳で従軍したこのレバノン戦争の後遺症なのか。
だが、アリには当時の記憶がまったくない。
アリは臨床精神科医である親友オーリの勧めによって
自らの失われた記憶と、世界中に散った戦友を求める旅に出ることを決意する。
カルミ
カルミはヘルシー・フードの屋台を企業展開して成功。
オランダの広大な土地に暮らしていた。
彼の記憶は、戦場へ向かう船から、海に浮かぶ巨大な裸女の幻影を見たこと。
そして、上陸するや、通りがかった一般市民の車に銃を乱射したこと。
アリはその記憶を共有していない。
ロニー
戦車隊員だったロニーは仲間を失い、ひとり敵地に取り残され、海を泳いで助かった。
その記憶は彼にとって封印すべきものであり、いまだ戦友たちの墓参もできずにいる。
ロニーにもアリと一緒にいた記憶はなかった。
フレンケル
マーシャル・アーツの専門家フレンケルが語ったのは
たったひとりロケット砲で戦車を爆撃した少年に向かって
兵士たちが一斉に銃を撃ったこと。
そして、その中にアリもいたということ…
戦友たちの言葉を通して、アリの記憶もうっすらと見えてきます。
都合の悪い過去を忘れることは人間に備わった防衛本能です。
忘れなければ壊れてしまうから、です。
アリ・フォルマン監督はヨルダンで一体何を見たのでしょう。
それほどまでに忘れてしまいたい過去とはなんだったのでしょうか?
サブラ・シャティーラ大虐殺
http://www5e.biglobe.ne.jp/~JCCP/history_19820916.htm
1982年9月14日、親イスラエル派ファランヘ党の若手指導者バシ―ル・ジュマイエル
(原題Waltz with Bashirのバシ―ルは彼のこと)の暗殺に端を発して起きた事件。
この事件の真相は不明である。
9月16~18日、レバノンの首都ベイルートにあるパレスチナ人キャンプ・サブラとシャティーナで、イスラエル軍にキャンプが包囲される中、レバノンの右派民兵により
キャンプに暮らす1800人以上の一般市民が虐殺された。
イスラエルとパレスチナの関係は複雑です。
戦後、大国の国家エゴに蹂躙され、争いのない日などなかった両国。
イスラエルの巨大な軍事力によって蹂躙されるパレスチナ。
一方、イスラエルはホロコーストを経て、念願の国家を持ち
その後はアメリカの後ろ盾を得てやりたい放題。
言葉は悪いけれど、イスラエルに対してはそう思っていました。
しかし、国家と個人はイコールではありません。
19歳で従軍し、訳もわからぬまま、銃を乱射し、敵を殺す少年兵たち。
その行為のもたらす罪悪感は、兵士としての正義に包みこまれはしますが
いつまでも心の棘となって残ります。
戦争は個人を殺し、負傷させ、癒しようのない心の傷を負わせるものです。
それを告発するでもなく、事実として描く手法。
アニメーションはそれに合っているのでしょう。
19歳の兵士が見る幻影、瓦礫に圧し潰された遺体、子どもや老人の無残な姿。
これらを実写ではなく、アニメーションで描いたことは
その方が表現しやすい、ということもありましょうが
監督のトラウマがいまだ完全に癒えていない証拠ではないでしょうか。
アニメーションなら自分の実人生の間にひとつ距離をおくことができますものね。
監督は言っています。
「数年にわたって基本アイディアを温めていた頃から、
実写ビデオでは作りたくないと感じていた。
実写だったらどうだったろう?
ある中年男が、自らの25年も前の暗い過去について取材する様子を、
当時の実録映像もないままに語っていたとしたら?(中略)
戦争とは非常に超現実的なものであり、記憶とはとてもトリッキーなものです。
私はむしろ腕のいいイラストレーターたちの力を借りて、記憶の旅を描いてみたい、
そう思ったのです」
戦場でワルツを
脚本・監督・製作/アリ・フォルマン、美術監督・イラストレーター/デイヴィッド・ポロンスキー、アニメーション監督/ヨニ・グッドマン
キャスト
ボアズ・レイン¬=バスキーラ、オーリ・シヴァン、ロニーダヤグ、カルミ・クナアン、シュムエル・フレンケル、ロン・ベン=イシャイ、ドロル・ハラジ、ソロモン博士
2008年、イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ合作、イスラエル映画、90分
11月28日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
www.waltz-wo.jp
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これが“送りびと”のもっくんをして
「あの映画が受賞すると思ってた」と言わしめたアニメなのですか。
戦争は狂気だ。
あり得ないことがあってしまう日々。
普通ならできないむごいことができてしまう現実。
自己防衛のために記憶から拭い去られる事実。
うう・・・これは重たい。
事実とも現実ともかけ離れた自分の
失われた記憶を拾い上げる作業。
これは正直言って観に行くのがためらわれる映画だなあ。
うんと元気のある晴れた日に
ヨシッと出かけてみようか。
実写でなくとも重たい。
今の私についてゆけるのか。。。
平和ボケしているような私ですが実はいろいろ苦労してまして(苦笑)
もう少しエコノミーが上昇してからDVDで鑑賞したいと思います。。
いえいえTsugumiさんのブログを拝見する限り、
平和ボケとは思えません(笑い)。
毎日の歩数とウォーキングの距離はハンパじゃありませんもん。
今日はどこまでいらっしゃるのでしょう?
戦争をアニメで描いたものとしては「火垂るの墓」もありますね。
でも、あれは子どもも大人も見られるけど、
これは大人しか見られない。大人のアニメです。
東映「白蛇伝」を初めて見たときのような驚きを感じました。
「白蛇伝」なんて知ってる人いないかなぁ。
団体観賞で観にいった記憶があるけど。
あるいは東京駅地下街ウォーキングも。
しかし、ここはラーメン横丁が充実してきたみたいだから、
ちょっと危険地帯ではありますね。
ああ、名古屋へ行かせてあげたい。名古屋の地下街の充実度は
日本一です(遠い目)。
新幹線乗り場のみ。。
東京駅地下は私結構詳しいです。。。
昔10年位前ウェディングの仕事で4年くらい通ってました。。。
でもきっと変わってるんだろうなぁ。。。
多分私のせいですね(苦笑)