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殿様の試写室

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ブッデンブローク家の人々 Buddenbrooks

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ブッデンブローク家の人々Buddenbrooks


ドイツ映画祭第3弾。今回がいよいよ最終回です。

「ブッデンブローク家の人々」。
1901年、ドイツの生んだ偉大なる作家トーマス・マンが著した長編小説で
映画化されるのはこれで3回目。
無声映画時代の1923年。1部と2部から成る59年。
そして、半世紀を経ての本作です。

1875年、リューベックの豪商一家の息子として生まれたトーマス・マン。
「ブッデンブローク家の人々」は彼の一族をモデルとした作品です。
副題に「ある一家の没落(Verfall einer Familie)」とある通り
リューベックという商都で、手広く商いをし、名士でもあったマン一族。
その没落までの一族4代の歴史を描いた自伝的な小説ですが
ヨーロッパでベストセラーとなり
1929年にトーマス・マンがノーベル文学賞を受賞したのは
この作品の存在ゆえ、といわれています。

映画は、マン家の子どもたちジャン、クリスティアン、トー二が
リューベックの雑踏で遊ぶ場面から始まります。
はしゃぎすぎる子どもたちがうっとおしいなぁ。
ま、あまり期待しないでおこうと、観ていました。

ところが、いや、とんでもない。

さすが文芸学者・批評家としても名高いハインリヒ・ブレレーア監督。
彼は遠くない過去のドイツ史に題材をとり、フィクションを交えて史実を再現する
ドク・ドラマと呼ばれるジャンルの第一人者だそうです。
やはり本人がトーマス・マンを敬愛するというだけありますし
丁寧に検証された時代背景や、ひとつひとつのシーンには説得力があります。
うんうんと納得しながら鑑賞しました。

今回の映画祭にはブレレーア監督は来日しませんでしたが
ステージには撮影監督が登壇。
撮影の裏話や、リューベックのこと、ブッデンブローク家が直面した市民革命の嵐
穀物相場の話など、観客からのいろいろな質問に答えてくれました。
俳優たちの老けていく様子もすごく自然。
観客の質問がそれに及んだとき
撮影監督さん「メイク担当者に伝えておきますね」と笑って答えてくれました。

そうそう、映画に出てきたブッデンブローク家のファサードは
リューベック旧市街にある「ブッデンブローク・ハウス」だそうです。
これはかつてマンの祖父が暮らした家で
現在はトーマス・マンと兄ハインリッヒ・マンの作品などのほか
ノーべル文学賞の賞状も展示された博物館になっています。

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ストーリー
19世紀、リューベックでは多くの商家が並び立ち
利益を求め、競い合っていました。ブッデンブローク家もそのひとつ。
2代目当主ヨハン・ブッデンブロークは穀物取引で成功し、富と名声を手にしました。
3人の子どもトーマス、クリスティアン、アントーニエも
ブッデンブローク家の一員としての自覚を持つよう育てられていました。

1848年に勃発した市民革命の影響で当主ヨハンは大きな損害を出してしまいます。
政略結婚のような形でハンブルグの商人と結婚させられた娘アントーニエは
夫の破産により離婚。
ヨハンは意気阻喪し、長男トーマスに家督を相続
失意のうちに死んでしまいます。
3代目を継いだトーマスは、海外で商いの修行をしていた弟のクリスティアンを
呼び戻しますが、彼は兄の支えにはならず、足をひっぱるばかり。
4代目を継ぐべきトーマスの息子ハノーも関心は音楽に。

孤軍奮闘するトーマスでしたが、時代も運も彼の味方にはなってくれませんでした…


リーマン・ショックもそうですが、どんなに隆盛を誇っている家も、会社も
なにがひきがねになってひっくりかえるか、わかったものではありません。
時代の転換期を生きたブッデンブローク家の隆盛と没落。身につまされながら観ました。

人間は歴史に学ぶことのできない愚かな生きものですが
せめてこの壮大なドラマをわが身にひきよせ、共感することで
歴史を学んだ気になりたいという殊勝な気になった殿です。

「ブッデンブローク家の人々」、一般公開されるでしょう。きっと(と、言い切らせてください)。
映画祭だけで終わらせるにはもったいない作品です。

ブッデンブローク家の人々
監督/ハインリッヒ・ブレレーア、脚本/ハインリッヒ・ブレレーア、ホルスト・ケー二ヒシュタイン、原作/トーマス・マン、撮影/ゲルノート・ノラ
出演
アルミン・ミュラー=シュタール/ヨハン〈ジャン〉・ブッデンブローク、ジェシカ・シュヴァルツ/アントーニエ〈トーニ〉・ブッデンブローク、アウグスト・ディール/クリスティアン・ブッデンブローク、マルク・ヴァシュケ/トーマス・ブッデンブローク、イーリス・ベルベン/エリーザベ〈ベッツィ〉・ブッデンブローク、レア・ボスコ/ゲルダ・ブッデンブローク、ラバン・ビーリング/ハンノ・ブッデンブローク
2008年/152分


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by mtonosama | 2009-11-03 06:15 | Comments(10)
Commented by Tsugumi at 2009-11-03 14:20 x
とのさん相変わらずいろんな作品見ていますね。。。

うちの場合は夫婦一緒が基本なかなか英語日本語以外のランゲェージの映画は難しい。。。

DVDになったら見てみます。。
Commented by mtonosama at 2009-11-03 15:44
実は、インフルエンザの予防接種をした翌日、ドイツ映画祭に
でかけ、前々回、前回、今回の3本を「せいのっ」で観たのです。

「体調を崩した」とぶーたれてたのは、そのせいだったのです。
この映画、公開され、無事DVDになったら、ぜひだんな様と
ご覧になってくださいね♪
Commented by すっとこ at 2009-11-03 20:10 x
うわー。
日本なら松竹当たりの“文芸大作”ってジャンルになるのかなー。

こういう衣装の豪華なのってヨワイんざんす。
髪型とか、当時の時代考証がちゃんとしてるのって
厚みがあって素敵ざんすね。

是非是非観てみたい。
トーマス・マンって裕福な家系のおぼっちゃんだったのか。
没落っぷりも文学になるのですね。
佐藤愛子の”血脈”も凄かったな。
彼女もあれで文学賞とりました。

「文学は才能ではない、呪いだ」というサルトルの言葉を
思いだしたことでした。
Commented by ライスケーキ at 2009-11-03 20:49 x
「文芸大作」ですね。  これは是非映画館で見たい。 それもだれにも邪魔されずに一人でゆっくり見たい。 
しかし、予防接種の翌日じゃなくても映画3本続けてみたら かなり疲れますね。  昔は「2本立て」と言うのが多かったけど さすがに
3本立てというのは あまり無かったと思う。   頭の中ドイツ語で一杯になったでしょうね。
Commented by mtonosama at 2009-11-04 06:25
おお~、なんと哲学的なすっとこさん!

サルトルって、なんてキャッチ―なお言葉を発されるのでしょう!

拷問を恐れるサルトルしか覚えていなかった。
もう一度サルトルを読んでみようっと。
って、その前にトーマス・マンでした。
Commented by mtonosama at 2009-11-04 06:31
ライスケーキさん

昔も東映ヤクザ映画などは、3本立てでやっていたような記憶…
あ、いや、人から聞いたような記憶が、あります。

そうなんです。一日ドイツ語漬けでした。
ですから、「赤い点」の日本語会話の部分でも、
ついつい字幕を見てしまってました(笑い)。

一般公開されるといいですね。私ももう一回観たい♡
Commented by suzukimr at 2009-11-04 08:55 x
なんとまぁ、格調の高いコメント欄なんざんしょ!
ブッデンブローク家の人々といえば、北杜夫氏の楡家の人々しか思い起こせません。どちらも読んでませんが。

昔、大阪に大毎地下と言う映画館があって、今は地上に立派な本屋さんがジュンク堂が建っていますが、そこで、007の3本立てを見ました。
よい時代でしたなぁ~!

Commented by mtonosama at 2009-11-04 09:51
suzukimrさん

そっか!「楡家の人々」もブッデンブローク家つながりか。

007の3本立て!これもすごい!!
良い時代ですなぁ。1本分の値段で3本ですもんなぁ~。

ジュンク堂もいいけれど、館内にトイレの匂いが漂ってくるような
昔風の映画館懐かしいです。
大毎地下って梅田にあったんですか?それとも十三?
Commented by suzukimr at 2009-11-04 10:23 x
西梅田です。
北新地の西はずれとでもいいましょうか。
ショーン・コネリーの007が好きでねー。
そのときあろう事か、痴漢の被害にあいましたが、うるさいわー!とにらみ返し、撃退し、そのまま夕方まで、2回繰り返し見ました。
元気やったんやー。あの頃は!
Commented by mtonosama at 2009-11-04 11:33
すごい!

by Mtonosama