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殿様の試写室

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掌の小説 -2-

掌の小説 -2-

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                    ©「掌の小説」製作委員会

さてさて、本作は4人の新進気鋭の監督たちによるオムニバス映画です。
ですが、4編すべてに共通するものが2つあります。

1つは満開の桜。
そして、もう1つは昨年12月24日に亡くなった名優・奥村公延さん。

奥村さんが4篇の作品を綴り合わせる1本の糸のように登場し、それがとても印象的です。
本作は奥村さんの最後の作品となりました。合掌。

第1話「笑わぬ男」 (原作:「笑わぬ男」「死面(デスマスク)」)

監督は岸本司さん。初の劇場長編作品「アコークロー」が全国公開され
沖縄では動員記録を塗り替えるなど、話題になりました。

ストーリー
磨りガラスごしの光がさしこむ小さなアパート。
それは路地の奥にひっそりとたたずんでいました。
住んでいるのは若い夫婦です。
妻は病で臥せっており、夫は売れない小説を書いていました。

アパートから一歩外に出れば、子どもがチャンバラごっこをし
ラッパを吹いて豆腐屋が通る――
昭和の初めでしょうか。当たり前で平和な日常の光景が拡がります。

死期が近づいているのか、妻は夜になると「足が寂しい」と訴え
夫はそんな妻の細く白い足をさすり続けます。
ある日、「桜が見たい」という妻のために、夫は桜の花が咲き誇る裏山へ向かいます…

「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
という一節を思い出させるしいんとした作品。
満開の桜と死とエロスは同じものなのかもしれないと、ふと思ってしまいました。

監督/岸本 司
出演
吹越 満/男、夏生ゆうな/女、コ―ジ―冨田/友人K


第2話「有難う」 (原作:「有難う」「朝の爪」)

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NY市立大学院映画学科で2年間映画制作を学んだ三宅伸行監督。
卒業後、カメラマンとして仕事をしながら監督した「116」がパームスクリング映画祭などで
受賞しています。

ストーリー
菊子は母と一緒に乗合バスに乗っています。
町に向かう山道は桜が満開。
菊子たちが乗ったバスの運転手は皆から(ありがとさん)と呼ばれて愛されている青年でした。
バスに道を譲ってくれた大八車や馬車や馬、誰にでも
「ありがとう」と声をかける感じのいい人物だったからです。

「〈ありがとさん〉のバスに乗れたからあんたは運が良い」と喜ぶ母。
桜が咲き誇る山道を、14歳の菊子は娼婦として町に売られてゆくのでした…

満開の桜の下を村から町へ向かうバスが
菊子14歳から22歳への時空の移動を表現しているような静かな不思議な作品。
桜の下で交わされる心優しい挨拶に、心の奥の細い糸が静かに共鳴します。
観ているこちらの口元もゆるみ、「ありがとう」とつぶやきたくなるような。
監督/三宅伸行
出演
寉岡萌希/菊子14歳、中村麻美/菊子22歳、星ようこ/保子


第3話「日本人アンナ」 (原作:「日本人アンナ」)

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監督の坪川拓史さんは舞台俳優やアコーディオン奏者として活動しながら映画制作をしています。
1996年から9年の歳月をかけて完成した長編第1作「美式天然」で第23回トリノ国際映画祭・長編コンペティション部門に招かれ、最優秀作品賞、最優秀観客賞をダブル受賞。
日本人としては初の快挙をなしとげました。
本作「掌の小説」では初めてプロデューサーも務めています。

ストーリー
ある日、「私」はロシア人の少女・アンナに財布を掏られてしまいます。
アンナは町の映画館でロシアの歌を歌う少女。
ロシア革命の混乱の中、亡命してきた貴族の娘というふれこみです。
アンナに魅せられた「私」は少女が小さな弟と泊まっている宿をみつけ
隣の部屋の襖のすきまからアンナの姿を覗き見ていました。
そんな日が数日続きましたが、突然アンナは町からいなくなってしまいます。
翌年の春、「私」は満開の桜の下でアンナに良く似た少女と出会います…

大正時代のほの明るい街の活気が懐かしさをそそり
知らない時代のはずなのに、なぜか心にしみる光景。
今は誰も使わない「おにいさま、そうじゃなくってよ」という優しい言葉が
心地よく耳に響きます。
監督/坪川拓史
出演
福士誠治/「私」、清宮リザ/アンナ、菜葉菜/「私」の妹


第4話「不死」 (原作:「不死」)

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監督は歌手・川嶋あいのオフィシャルカメラマンとして全国各地で行われた1000回ライブを撮影。
その映像を基に初の劇場公開作品となる長編ドキュメンタリー映画「最後の言葉dear beloved」
(‘05)を発表した高橋雄弥さん。
映画だけでなく、さまざまな分野の映像を精力的に制作しています。

ストーリー
毎日毎日、同じ木の下で凧を揚げ続ける老人・新太郎。
彼はある日雑踏の中で、遠い昔に死んだ恋人みさ子をみつけ
手に手をとって、桜の木に向かって歩き始めます。
そこはかつてみさ子が亡くなった場所でした。

数十年の時を経て、恋人に再会した新太郎は満開の桜の木の下で
高々と凧を揚げ始めました…

4編を通じて顔を出していた凧を持った老人の姿が本編でようやく明らかになります。
満開の桜と死。美しく、淋しく、幻想的な作品です。

ひとびとが桜に狂うのは今が限りと咲く花に自分を重ねるからなのかもしれません。

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さあ、もうすぐ桜が咲きます。花見ですよぉ―――
監督/高橋雄弥
出演
奥村公延/新太郎、香椎由宇/みさ子

「掌の小説」
監督/坪川拓史、三宅伸行、岸本司、高橋雄弥、原作/川端康成(新潮文庫)、プロデューサー/浅野博貴、坪川拓史、小林洋一、撮影/板垣幸秀、八重樫肇春、主題歌/「四季」Kagrra(KINGRECORDS)
出演
吹越満、夏生ゆうな/寉岡萌希、中村麻美、長谷川朝晴/福士誠治、清宮リザ、菜葉菜/香椎由宇、奥村公延
3月27日(土)より、ユーロスペースにてモーニング&レイトショー 他全国順次公開予定
2010年、日本、80分、カラー&モノクロ、配給/エースデュース、配給協力/グアパ・グアポ、www.tenohira-kawabata.com/

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♡3月10日に更新しました。いつも応援してくださり、ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-10 06:46 | 映画 | Comments(10)
Commented by ライスケーキ at 2010-03-10 10:44 x
川端さん こんなに素晴らしい短編も残していたのですか。 さすがノーベル賞作家ですね。 余命を告げられた人が 桜の季節まで生きたい と言う話しを良く聞きますが わかりますね。 私は桜吹雪の中に身をおくのが好きです。
Commented by mtonosama at 2010-03-10 11:19
♡ライスケーキさん

桜吹雪はいいですねぇ。
以前、京都の鴨川べりをタクシーで走っていたら、
開いている窓から花びらが舞いこんできました。
きれいでした。

Commented by すっとこ at 2010-03-11 11:20 x
うぅぅぅぅぅぅむむむむむむむむむ。

殿様

あまりにしんとした美しい文章です。
桜のはなびらのように静かに静かに
心に積もってゆきました。

もう・・・映画観なくていいや・・・

って呟いたら
怒られちゃいますね。
映画観なくちゃいけないのにね。

最後の桜のこの樹の写真見るだけでも
なにかゾッとするような映画のようですが。
Commented by mtonosama at 2010-03-11 13:21
♡すっとこさん

なにもかもよくおわかりのすっとこさん。
そうですよ。映画観てくだされ。

最後の桜の写真、きれいですよね。
あんまりきれいだから前編で使ったのに、また使っちゃった。

桜って、もしかして一人で見たら怖いかもしれないね。
Commented by Tsugumi at 2010-03-11 23:53 x
この枝垂れ桜はどっかで見たことがあるような気が・・・・

桜って散り際が潔くって好き!

この映画はDVDで見たいと思います。

って殿様解説でもう見た気?(苦笑)
Commented by mtonosama at 2010-03-12 06:23
♡Tsugumiさん

この桜、どこでご覧になったのでしょうね。
田んぼの土手はまだ少し冬の色なのに、桜は満開で見事ですね。

この季節になると「花見、花見」と焦り出してしまいます(笑)

「御室の桜を見たら、花への義理を果たした思います」
ってJR東海のCMでさらに焦り始める最近の殿です。
Commented by Tsugumi at 2010-03-12 23:58 x
そうかJR東海のCMで見ていたんですね。
Commented by mtonosama at 2010-03-13 06:02
♡Tsugumiさん

「そうだ、京都行こう!」です♪
Commented by 寅二郎 at 2010-03-17 10:56 x
川端の「掌の小説」。
ほんと見開きもないような超超短編なのに
小説たりえている!
なんつって、大学時代にブンガク青年ぶって
読みかじった記憶がありますよ。
Commented by mtonosama at 2010-03-17 14:06
♡寅二郎さん

川端康成って、変に有名過ぎて毛嫌いしていましたが、
「掌の小説」は面白そうですね。

ちょっとブンガクしてみますわ(笑)