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殿様の試写室

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フェアウェル さらば,哀しみのスパイ -2-

フェアウェル
さらば,哀しみのスパイ -2-
L’AFFAIRE FAREWELL
                 
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                 © 2009 NORD-OUEST FILMS

フェアウェル(farewell)と聞くとすぐ
♪So long,farewell.Aufwiedersehen,good-by♪と
「サウンド・オブ・ミュージック」の”So long,farewell”を
思い出してしまう殿です。

farewell [ fare(旅をせよ)+well(良き)]
間投詞:さらば、さようなら、ごきげんよう
★good-byより古風で、長旅など長い別れのあいさつに用いる
名詞:いとまごい、告別のあいさつ、送別会
(ジー二アス英和大辞典)


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20世紀最大のスパイ事件のひとつといわれたフェアウェル事件。
これは1980年代初頭ブレジネフ政権下のソ連で起こりました。
KGB(ソ連の政治警察。国家保安委員会Komitet gosudarstvennoi bezopasnostiの略)
のグレゴリエフ大佐(実名:ウラジミール・ヴェトロフ)が起こした事件です。

KGB
ソヴィエト連邦の諜報・治安機関。1954年設立。反ソヴィエト的活動を取り締まるとともに、
対外諜報活動も統括。
一応、冷戦時代を舞台とするスパイ物の小説・映画などではCIAのライバルとされるが、
規模・権限とも、それを遙かに凌ぐ巨大組織だった。
ある意味ではソヴィエト体制そのものだと言える。
アンドロポフやプーチンを筆頭に、国家の上層部にも人材を送り込んでいる。1991年解体。

大変な時代でした―――

なんて、わかったように言ってますが、
同時代に生きていながら、あの嵐の時代を他人ごとみたいに横目で眺めて
通り過ぎてきてしまいました。

嵐の中で生きるということ、というか、嵐をひきおこすということ。
主人公であるフェアウェルことグレゴリエフ大佐は何を考え、
どう行動したのか。
20年前の歴史の転換期を今、改めて思い起こさせる映画です。

ストーリー
1981年4月、ブレジネフ政権下のモスクワ。ソ連崩壊から8年前のことです。
KGBの幹部セルゲイ・グレゴリエフ大佐は情報処理の責任者として
国家の中枢部にいました。
その責任に見合った十分な収入と生活、美しい妻、
思春期を迎え何かにつけて父親に逆らうけれど優秀な息子。
グレゴリエフ大佐はエリートとして十分満ち足りた日々を送っていました。
しかし、初めて人類を宇宙に送った栄光のソ連も80年代に入ると、
科学技術の分野でも、経済面でも、かげりを見せ始めました。

グレゴリエフ大佐は諜報部員であればこそ、
そのことをより確実なものとして感じ取っていました。
「世界を変える」
それをやり遂げなければ、ソ連の未来も、愛する息子の未来もありません。
彼はソ連の内部機密をフランスに漏洩することを決意しました。

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そして、彼はフランスの家電メーカー技師ピエール・フロマンと接触します。
フランスの国家保安局からピエールの上司を経て、彼らは顔を合わせました。
相手が保安局の人間ではなく、
一般人であることに失望したグレゴリエフでしたが、
なぜかピエールには親近感と信頼を覚え、内部機密を手渡すのでした。

当時、フランスは政権交代したばかり。
アメリカは左翼のミッテラン政権に不満を感じていました。
81年オタワ・サミットで米・レーガン大統領は
仏・ミッテラン大統領が共産主義者を大臣に起用したことを不服とし、
組閣の見直しを要求。

「内政干渉だ」と対応しつつ、ミッテランがレーガンに差し出したもの―――
それがグレゴリエフの情報でした。
そこにはNASAやCIA、ホワイトハウスで働くスパイの情報が。
そして、その表紙には"フェアウェル“というコードネームが記されていたのでした…


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大きく揺れる現代史の波間に漂う家族愛、友情を描き、
骨太でありながら、情愛あふれる秀作です。
思わず前のめりになってしまうほど緊張感あふれるピエール一家の逃走シーン。
逮捕されたグレゴリーエフが面会に訪れた息子を抱きしめる場面には
思わず嗚咽を漏らしてしまいました。
そして、CIAの非情さに歯ぎしり。

歴史を動かした事件の裏にあるのは
人間としての、夫としての、父としての義務と責任と情愛。
そして国を超えた友情です。
決して、英雄でも偉人でもない2人の男の友情が胸を打ちます。

この映画をアメリカでもロシアでもなくフランスがつくったことは大正解。
だって、アメリカはバランス・オブ・パワーの当該国ですし、
もう一方のロシアにとって、グレゴリエフ大佐は裏切り者です。
アメリカやロシアが映画化するとしたら、
ものすごく偏った映画になっていたことでしょう。

映画の中でも、両大国の間でこずるく(いえ、賢く)立ち回る
ミッテラン大統領が描かれていますが、
当時、フランスは客観的であることが冷戦下を生き抜くための姿勢であったし、
現在では、客観性こそがこの映画をつくるために必要な姿勢となっています。

が、しかし、
エミール・クストリッツァの多才さにはただただ脱帽。
偉大な監督とは、偉大な俳優でもあります。
夏休みの一本はこれで決まりです。

                           fin

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♪6月27日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♪

フェアウェル さらば,哀しみのスパイ
クリスチャン・カリオン/監督・脚本、クリストフ・ロシニョン、ベルトラン・フェーブル、フィリップ・ボファール/プロデューサー、エリック・レイノー/原案脚本、「ボンジュール・フェアウェル」/原作、クリント・マンセル/音楽、ウォルター・ヴァン・デン・エンデ/撮影
出演
エミール・クストリッツァ/グリゴリエフ大佐、ギヨーム・カネ/ピエール・フロマン、アレクサンドラ・マリア・ララ/ジェシカ、インゲボルガ・ダプコウナイテ/ナターシャ、アレクセイ・ゴルブノフ/ショーホフ、ディナ・コルズン/アリーナ、フィリップ・マニャン/ミッテラン大統領、ニエル・アレストリュプ/ヴァリエ、フレッド・ウォード/レーガン大統領、デヴィッド・ソウル/ハットン、ウィレム・デフォー/フィニーCIA長官、エフゲニー・カルラノフ/イゴール、ヴァレンチン・ヴァレツキー/アナトリー
7月31日(土)、シネマライズほか全国順次ロードショー
2009年、フランス映画、113分、提供/ロングライド + マイシアター、配給/ロングライド
www.farewell-movie.jp

by mtonosama | 2010-06-27 21:21 | Comments(12)
Commented by すっとこ at 2010-06-28 02:40 x
うぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうぉうおおおおお!

熱く伝わってくる殿様の賛辞!
この映画は是非見に行きたい!
なれど
アメリカ西海岸で
上映されるのでしょうや?

きのう用事があって
ハリウッドを走り抜けたのですが
今見かける2大映画看板が
*トゥワイライト・エクリプス篇と
*ラスト・エアベンダー3D
でありました。

*フェアウエル事件 のような骨太映画、
あまり宣伝しないのね。
だからこそ、
殿様の試写室の存在意義が大きいのね!
Commented by mtonosama at 2010-06-28 06:35
♪すっとこさん

おお、いよいよハリウッド初進出ですか!?
きゃ~~っこ良い!
タルホランド通りも行った?写真アップしてね。

ハリウッドにも日本でいう単館系の映画館
みたいなのないのかしらん。今度見かけたら教えてください。
やっぱりハリウッドって一度は行ってみたいかも。
Commented by Tsugumi at 2010-06-28 08:00 x
ご無沙汰しています。。
何かと忙しくなかなかお伺い出来ませんでした。。

とのさんの記事を読んで数年前見た太陽という映画を思い出しました。
日本の天皇の話なのにロシア人の監督が撮った作品です。なかなかの秀作でした。
時代を左右したような事実や事件は当事者の国が作るよりリアルだったりして。。

そうそうPubですがもちろんお昼からビール飲めますよ(爆)

Commented by mtonosama at 2010-06-28 09:03
♪Tsugumiさん

おめでとうございます。
お忙しい中、ご訪問くださってありがとうございます。

「太陽」良かったですよね。
”動く芸術だぁ~~っ!”って感じの映画でした。

お昼からビール飲めますか?
やったぁぁぁあああ!
ギネスパイもOKでしょうか?
Commented by ライスケーキ at 2010-06-28 20:54 x
殿様のストーリーを読んで これは見たい。  
私達何も知らなかったけど歴史の裏にはこんな事実があったのね。                                    原作はクリント・マンセルさんとあるけど、この事実はどうやって日も目を見たのでしょう。  大佐の告白本でもあるのかな。    告白するの結構勇気がいただろうね。  彼今はどうしているんでしょう・・・。  いろいろ考えちゃいます。


Commented by mtonosama at 2010-06-29 06:06
♪ライスケーキさん

大佐のその後についてはいろいろ言われているようですが。

これは是非渋谷まで足を伸ばしてください。
Commented by hanahanaup at 2010-07-08 17:03
おおぉぉ、なるほど・・・・。
と、かなり遅いコメントですみません。汗

けんかの仲裁が持つ、客観的でクールな視線のように、
こういう問題は、ほかの人に語ってもらうのが一番みたいですね。
歴史を動かすのは、国の権力ではなく、ひとりの父、夫、普通の人間の心、
どんなに悲惨なことがあっても、これさえあればすごく救われる気持ちになります。

そして・・・・偉大な監督とは、偉大な俳優である。
これが聞けただけでも大満足です、いよいよ今月末公開ですね!

私ごとですが、近々エキサイトからFC2にお引越しします。。。
エキサイト、最近記事内に広告はじめましたよね~。
シンプルさがお気に入りでしたが、浮気します。笑
お引越し先は、また後日お知らせさせてください!
Commented by mtonosama at 2010-07-09 17:04
♪hanaさん

フェアウェルにもコメントいただき、ありがとうございます。
いやぁ、俳優クストリッツア、すばらしかったです。

FC2にお引越しですか。
FC2に移ってる方、周囲に増えています。

お引越し難しいですか^_^;
って……
Commented by hanahanaup at 2010-07-12 09:59
わたしの周りでも、FC2ユーザーが多いんです。
なぜか?まだ自信を持って説明できないんですが(笑)
なんとなく、決め細やかな設定ができるようななイメージ。

お引越しじたいは簡単でしたよ!
過去の記事をまるごと移すこともできるみたいですが、
わたしはヤドカリスタイルでいいのかなーと。
引越ししたのに、なぜかFC2でも広告が入るという、
なぞの出来事があり、まだテスト中ですが、
今週なかばオープン予定です・・・・・(ペコリ)
Commented by mtonosama at 2010-07-12 11:03
♪hanaさん

カンタンでしたか…
過去の記事をまるごと移すというとタイトルとかもそのまま
FC2で使えるのですか?

またいろいろ教えてくださいね。
Commented by Mishka at 2010-09-30 18:58 x
遅まきながら、本日見てまいりました。
ソビエト崩壊から最近までモスクワに住んでいたので、
是非見て見たい映画でしたんで。

2ヶ月前には、カティンの森を観て来ましたがどちらも
元在住者には暫く席が立てないほどの映画でした。
どちらのテーマも、ロシアで作られないのが現実です。
崩壊はしましたが、ソ連時代と体制は実はほとんど
変わりが無いのです。
盗聴や監視はまだ続いていますが、最近の在住邦人は
まさか。。。と信じてはいません。
それでもあの国が懐かしいです。
Commented by mtonosama at 2010-09-30 19:38
♪Mishkaさん

コメントありがとうございます。

この映画も「カティンの森」もすごい作品でしたね。
以前、住んでいらしたなら、尚更だと思います。

盗聴や監視体制は今もあるのですか。
きっと、そうなのでしょうね。
少し前、放射性物質を使って殺されたロシア人の
ドキュメンタリー映画を観ましたが、
プーチンの陰謀に違いないという考えが根底にある作品でした。

懐かしいとおっしゃる気持はなんとなくわかるような気がします。

貴重なコメントをありがとうございました。
どうぞ、またお立ち寄りくださいませ。