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殿様の試写室

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ソフィアの夜明け -2-  EASTERN PLAYS

        ソフィアの夜明け -2-
                EASTERN PLAYS

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撮影終了間際に亡くなった主役のフリスト・フリストフ。
ドラッグ中毒を治すため、きちんと通院もしていたのに。
長年にわたって体内に蓄積した毒が時を待たずに牙を剥いてしまったのでしょうか。

フリストはどういう気持ちで自分を演じていたのでしょう。
自分が死ぬとは思っていなかったはずです。
そして、自分を演じているその当の本人は死んでしまったのに、映画の撮影は続きました。
フリストの死によって、映画は彼の人生そのものになったわけです。
もう彼は映画の中にしかいません。

フリストは死にましたが、「ソフィアの夜明け」が上映され続ける限り、
彼の人生は反復され続けます。
同時にこの映画は、青年時代が抱える葛藤を、
現在の青年たちに、そして、これからやってくる青年たちに示し、
ともに悩み、希望を与えてくれるのだと思います。
そう、永遠の青春映画の主役として、フリストは死んでも強いオーラを発し続けるのです。

奇妙な現実感を与える映画です。
主人公イツォはフリストそのもの。
イツォの恋人ニキを演じるのは、フリストの本当の恋人ニコリナ。
イツォのアパートは、フリストのアパート。
イツォの行きつけの店は、フリストの行きつけの店。
イツォの職場は、フリストの職場。
イツォがドラッグ中毒治療に通うクリニックは、フリストが通うクリニック。
映画の中ではフリストの実人生の多くの場面が撮影されています。

ここに架空の人物が加わることによって、
映画は、ただの事実ではなく、より普遍的な真実へとワープしました。
生きるということ、悩むということ、希望ということへと―――

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新しく加わった架空の人物は、弟ゲオルギとトルコ人女性ウシュル。
この2人の存在が鍵となって、映画はフリスト・フリストフだけのものではなく、
青年たちの抱える普遍的な問題を描くものになっていきます。
さて、どんな映画なのでしょうか。

ストーリー
建築途中なのか、あるいは破壊の途中なのか、荒涼としたソフィアの町外れ。
その地に建つ集合住宅に高校生のゲオルギは両親と住んでいました。
彼は17歳。この年頃の少年にはありがちですが、いつも両親ともめています。
威圧的な父、彼を子ども扱いする母。
彼は歳の離れた兄のイツォともしばらく会っていません。
ゲオルギはスキンヘッドになって町のワルたちとつるみ始めます。

ゲオルギの兄イツォは38歳。職業は木工技師。
ドラッグ中毒のため、治療を受けていましたが、
浴びるようにアルコールをあおる日々を送っていました。
その合間にもアート作品を創り続けるイツォ。
そんなイツォに恋するニキは演劇を専攻する学生。
アーティストであるイツォのいない日々は考えられないほど、
彼女はイツォを愛していました。

ウシュルは20代のトルコ人女性。彼女は両親と共に兄を訪ね、ベルリンに向かう途中です。
イスタンブールからベルリンまで、ブルガリアを横断するロングドライブ。
一行は途中ソフィアで一泊するつもりでした。
しかし、その夜、トルコ人を排斥するネオナチのグループが一家を襲撃。
その中には、ゲオルギもいました。
偶然、現場に来合わせたイツォは一家を守ろうとしましたが、逆に殴られてしまいます。

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ウシュルの父は大けがをして入院。
見舞いに行ったイツォはウシュルと言葉を交わします。
ウシュルは精神的な言葉を口にする女性でした。
「今、世界は揺れ動き、暴走しているわ」
2人をつなぐ言葉はたどたどしい英語でしたが、互いに惹かれるものを感じました。

一方、ゲオルギとイツォも心を通わせます。
「ワルはその髪型だけにしておけ」
そんな言葉に現れる兄の想い。ゲオルギは少しずつ変わり始めました。
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ウシュルの両親は娘とイツォが惹かれあっていることに気付きます。
トルコ人の父は娘が異民族の男とつきあうことを断固として許すことはできません。
傷が癒えた父はベルリン行きをやめて、
ウシュルを連れてイスタンブールに帰っていきました。
イツォはひとり残されます。
が、しかし、そこには今までとは違う力強さと希望を感じさせる彼がいました…

ラストがとても印象的です。
明け始めたソフィアの市街地をひとり歩くイツォの姿に
「明けない夜なんてないんだ」
というシンプルだけれど力強いメッセージを感じ取ることができます。

最近、東欧の映画監督の作品が光っています。
イエジー・スコリモフスキ(ポーランド)、エミール・クストリッツァ(セルビア)、
クリスティアン・ムンジウ(ルーマニア)、そしてカメン・カレフ(ブルガリア)です。
彼らはすべてソ連の衛星圏だった国々に生まれ育っています。
共産主義の下で暮らしていた時代には、
抑え込んでいたり、表に出すことのできなかったテーマや方法論が、
監督たちの深い部分で醗酵し、
今、先鋭的で深みのある作品として発表されているのかもしれませんね。

                           

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♪9月17日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♪

ソフィアの夜明け
監督・脚本・プロデューサー・編集/カメン・カレフ、撮影監督/ユリアン・アタナソフ
出演
フリスト・フリストフ/イツォ、オヴァネス・ドゥロシャン/ゲオルギ、サーデット・ウシュル・アクソイ/ウシュル、ニコリナ・ヤンチェヴァ/ニキ、ハティジェ・アスラン/ウシュルの母
10月23日(土)より渋谷シアターイメージフォーラムにて公開後、全国順次公開
2009年、ブルガリア、1時間29分、配給協力/(社)コミュニティシネマセンター
www.eiganokuni.com/sofia

by mtonosama | 2010-09-17 06:07 | 映画 | Comments(4)
Commented by アイスケーキ at 2010-09-17 23:54 x
素人が自分を演じて男優賞。作品の完成を待たずに亡くなったなんて何てドラマチック。恋人はこれから女優になるのかな? ライスケーキが食べたくなるまでアイスケーキでコメントさせて頂きます。
Commented by mtonosama at 2010-09-18 05:19
♪アイスケーキさん

ドラッグって怖いですね。
先日、逮捕された田代某の激やせには驚きました。

フリスト・フリストフ、この映画を観るまで知らなかったブルガリア人
ですけど、妙に感情移入してしまいます。
「ソフィアの夜明け」が転機になって人生変わるはずだったのに。
合掌
Commented by Tsugumi at 2010-09-18 07:02 x
「明けない夜なんてないんだ」
この言葉いいですね。。
落ち込んでいる時は勇気がわきそうです。

毎日芸能人のドラッグの裁判や逮捕ニュース見てますが

ドラッグて本当に怖いですね。。

私もアル中にならないよう気をつけなくっちゃ。。
ってもうアル中?(爆)

Commented by mtonosama at 2010-09-18 07:08
♪Tsugumiさん

おはようございます♪
朝からなんですが、私もアル中にならないようにしなければ…
って、もう依存症(汗)?いや~~~(;O;)