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殿様の試写室

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無言歌 -2- 夾辺溝

                      無言歌 -2-
                          夾辺溝
                        The Ditch

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       ⓒ2010 WIL PRODUCTIONS LES FILMS DE L’ÉTRANGER and ENTRE CHIEN ET LOUP



             万里の長城の西の果ては砂に埋もれてしまっているとか・・・・・

              1957年、より良い社会を目指し、溌剌と意見を述べた人々が、
       その数カ月後には辺境の地で厳しい労働に従事させられ、餓えて死んでいきました。

                 文化大革命といえば、誰でも知っていますが、
         反右派闘争というと「なに?それ」とおっしゃる方が多いのではないでしょうか?
            とのも、なんとなく聞いたことがあるけどよくは知りませんでした。

   中国でこれについて語ることは未だタブーであり、実際、本作は中国では公開されていません。

               原作はヤン・シェンホイ(楊顕恵)の小説「告別夾辺溝」。
 監督は2004年に脚本を書き始め、さらに3年間にわたって収容所からの生存者たちをリサーチしました。
       苦労して生存者を見つけ出しても、当時のことを話したがらない人もいたそうです。
                       それはそうだと思います。
    右派のレッテルを貼られた人が中国で、堂々とインタビューに答えることは難しいでしょうし、
                このまま忘れてしまいたい辛い記憶であったに違いありません。
      でも、本作を構成するのはそうした思いを抑えつけて証言した生存者たちの言葉です。
       画像にある、草の種を拾う老人はそうした貴重な生存者のひとりなのだそうです。

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       じいちゃん、ばあちゃんに弱いとのはもう写真を見るだけで涙腺がシュワシュワしてきます。

ストーリー
1960年10月。風が鳴り、痛いほどに砂が身体に打ちつける荒野。
一本の木もなく、空も大地も果てもなく広い。
中国西部甘粛省、夾辺溝労働教育農場。

テントの前に集められた男たちが、それぞれの壕に振り分けられていく。
男たちは反革命思想の持ち主だとして、農業に従事することによって思想を改造するために、
この地に送られた。農場と名がついてはいるが、むしろ収容所と呼ぶ方がふさわしい場所だが。

彼らの労働は7万畝(約4700ha)もある荒野を開墾すること。
班長の陳が所長に呼ばれ、男たちの稼働状況を訊かれる。
陳は「3分の1は歩けず、働けません」と答える。

夜。陳と同壕の董は食糧と交換できるものがシャツとズボンしかないことを心配している。
董はロンジンの腕時計を持っているが、時計などあっても食べ物とは交換できないとつぶやく。

朝。また誰かが死んだ。零下20度にもなるこの荒野では夜の間に死ぬものが多い。
死体は毛布にくるまれ、沙漠へ運ばれる。

食糧配給は1日250グラムに減らされ、みな餓死を待つばかりだ。
荒れ果てた土地に生える雑草から1粒でも多く種を採ろうとする老人がいる。
ネズミを捕まえ、煮て食べる者もいる。
ある日、所長の命令で男たちが集められた。「人食いは前へ出ろ!」
飢えは既に極限状態だった。

董が隣のベッドの李に頼んだ。
「もし僕が死んだら、壕の一番奥に置いてくれ。そして、妻が訪ねてきたら、
僕の遺体を上海に運ぶように、伝えてくれ」。
董もその妻も上海の病院に勤める医師だった。
妻や家族の反対を押し切って、この地にやってきた董は今、心から悔いている。
そして、「ここにだけは埋められたくない」と願っていた。
翌朝、董は死んだ。
約束通り、李は彼の遺体を壕の一番奥に隠したが、所長に見つけられてしまう。
沙漠に埋められる董。

数日後、董の妻がやってきた。
李は「董は外出している」と嘘をつく。
だが、素直に夫を待ち続ける女に嘘をつき続けることができなくなった李。
夫の死を知り、女は泣く。
悲鳴のような彼女の泣き声は沙漠に吹き荒れる砂嵐よりも激しく、哀しげだった。

そして、李は脱走を決意する……


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ああ、切ない。
一体、何なんでしょう。国の方針がこれほどコロコロ変わることが許されるのでしょうか。
都合の悪い過去はなかったことにしていいのでしょうか。
反右派闘争を万里の長城のように砂に埋もれさせてしまってはいけません。

この映画で描かれたことは、夾辺溝での収容所生活を生き抜いた人々の証言から成り立っています。
ドキュメンタリー映画の鬼才、ワン・ビン(王兵)監督ならではの説得力と映像美。
広大無辺な荒野と空がこれほど絶望的な光景とは知りませんでした。
同時に、むき出しの土壕に射し込む朝の光がこれほど美しいものとも知りませんでした。
どんなに絶望的な夜も必ず明ける、ということは大きな救いです。

この非人間的な過去を中国4000年の歴史にきちんと書き加えなければいけません。



                                  

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無言歌
監督・脚本/ワン・ビン(王兵) ヤン・シェンホイ著(楊顕恵)「告別夾辺溝」と多くの実際の生存者たちの証言に基づく 美術監督/バオ・リーゴォ(宝力格)、シャン・ホンホイ(相紅輝)、撮影/ルー・ション(蘆晟)
出演
ルウ・イエ(蘆野)/リー・ミンハン(李民漢)、リェン・レンジュン(廉任軍)/チェン(陳)班長、シュー・ツェンツー(徐岑子)/ドン(董)の妻、グー(顧)、ヤン・ハオユー(楊皓宇)/ドン・ジェンイー(董建義)、チョン・ジョンウー(程正武)/ウェイ・チャンハイ(魏長海)、ジン・ニェンソン(景年松)/ジー・チェングァン(季辰光)、リー・シャンニェン(李祥年)/草の種を拾う老人
12月17日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
2010年、香港・フランス・ベルギー合作、109分、http://mugonka.com/

by mtonosama | 2011-12-05 08:50 | 映画 | Comments(10)
Commented by poirier_AAA at 2011-12-05 19:50
この話もそうですけれど、これまでの人間の歴史の中で、どれだけの人がこういった壮絶な、不本意な体験をしなきゃならなかったんだろうと考えてしまいます。

今年、日本人は大変な経験をしました(しています)よね。自分たちはどうなっちゃうんだろうと、国中が真剣に心配して。でも、そういう気持ちで生きている人って、多分世界中に山のようにいるんだと思うんです。戦後の日本人は、調子に乗り過ぎていたかもしれない、他人の痛みに無関心過ぎただろうと、311の後で思いました。

映画でも本でも、自分の知らなかったことを教えてくれるものがあるのは嬉しい。こういう作品を紹介してくれる殿様の試写室は、だからとても楽しみです。
Commented by mtonosama at 2011-12-05 20:45
♪poirier AAAさん

本当に、今日を生きることに精一杯な人は世界中にいます。
でも、よく考えたら誰だって明日のことはわかりませんものね。

自分が痛い思いをしないと、他人の痛みに気付きにくいというのもひととして寂しいですね。

今、とてもとても暗い映画を観て帰ってきたところです。
だからpoirier AAAさんの優しいコメント読んでうれしくなりました。
ありがとうございました。
Commented by ライスケーキ at 2011-12-05 21:02 x
「反右派闘争」。 私も「なに?それ」でしたが 少しは歴史がわかったかも。
日本にも そう言う不条理が沢山ありますね。
日本が間違った道を選択しないよう 私たち一人一人がいつも考えなくては いけませんね。

すっとこさん
お返事ありがとう。 アメリカ iTunes ジャズ・チャートで一位だそうですが 一般の人々が聞いている訳でもないんですね。
日本では「第二のSUKIYAKIか?」なんて報道されてますが
日本の歌が又 ワールド・ワイドに歌われたら面白いですね。
 「無言歌」から 話がそれて 失礼しました。
Commented by mtonosama at 2011-12-06 06:12
♪ライスケーキさん

もうほんとに世界にはいろいろなことがあります。
ひとつひとつに首をつっこみ、快刀乱麻を断つごとく、
すっぱすっぱと解決できたら、どんなに素敵でしょう。
でも、神ならぬ身の悲しさ。そんなことはできるはずもありません。

神様だって、できないのかも。

でも、まあ、一歩ずつ……

あ、まだ昨日見た映画をひきずってるみたいです。
Commented by Tsugumi at 2011-12-06 08:54 x
このような映画のレビューを読むと私の悩みなんてなんてちっぽけなんでしょう。と思います。

でも器の小さい私は日々の暮らしに押しつぶされそうになります。

もっと大きな懐を持ちたい~~。
Commented by mtonosama at 2011-12-06 10:15
♪Tsugumiさん

こんな目にあったら、私はどうなるかなぁ、と、
こういう映画を観る度に考えます。

食べるものがない状況に置かれたら、生き抜く知恵も力も、
ネズミを煮て食べる度胸もない私はまず真っ先に死んでしまうでしょう。

でも、みんなそれぞれに悩みを抱えるこの社会。
大きな悩みを抱えた人を想いながら、頑張っていきます。

私も大きな懐持ちたいですぅ~~~。
Commented at 2011-12-06 16:30 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by すっとこ at 2011-12-07 00:16 x
ぁぁぁああぁああああああああああああああああああああああああああああ!!

ひと足遅かったのね、訪ねて来た妻は。
こんな過酷な刑場のような場所に
訪ねて来られたこと、それが許されたのでしょうか?
面会のような形でしょうか。
それがちょっと驚きでした。

世界中の国が暗黒部分を持ってると
思います。
それを啓蒙する映画を
教えてくださる殿様試写室!

次の記時が待たれるわけです!!!!!!!
Commented by mtonosama at 2011-12-07 05:42
♪カギ印さん

初めまして。
当試写室にお立ち寄りくださり、誠にありがとうございました。

どうぞ、また、おついでの折に気軽にお声をかけていただければ幸いです。

本当にありがとうございました。
Commented by mtonosama at 2011-12-07 05:57
♪すっとこさん

訪ねてきたんですねぇ。遠く上海から何日もかけて。

多くの収容者の妻たちが離婚を申し立てて、別れていく中、
董さんの妻だけは会いたくて会いたくて面会にきたのでございます。

きっと、この奥さんは勤務先の病院に事情を話すのも
大変だったことでしょう。
上海から夾辺溝までの道中も苦労だったことでしょう。
そんなにまでして訪ねてきて、出会った夫はゴビ砂漠の砂の
上で野ざらしに…

嗚呼、なんと残酷なことでしょう。

董さんの奥さんの悲鳴のような慟哭が今も思い出されます。