ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

ニーチェの馬 -1- The Turin Horse

                ニーチェの馬 -1-
                      The Turin Horse

f0165567_7512062.jpg

映画の紹介などということをしていますと、館内が暗くなり、映画が始まると同時に、
書き出しはこんな風にして、こういう展開でいこう、などと考えるイヤな習性が身についてしまうものです。

タル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。
前作「倫敦から来た男」(‘09)http://mtonosama.exblog.jp/12336364/
で異様なまでに長いテークとスローな展開を見せられたため、
しばらくの間、映画のシーンが頭にこびりついて離れませんでした。
ま、これはある意味、至福ともいえる体験かもしれません。
本作も期待と不安が半々という感じで鑑賞しました。

冒頭、モノクロの画面に登場するのはスマートとは言い難い大きな馬。
冬枯れの景色の中をこの馬が荷馬車をひいてドカドカと走っています。
馬を鞭打ち、走らせるのは無骨な農夫。
雪なのか、砂埃なのか、猛烈な風に吹きまくられて何やら白いものが荒ぶる馬を覆っています。
風に散らされた落葉も飛び交っています。
蹄が未舗装の道を蹴る音と共に、狂ったように吹きすさぶ風の音。
不安感を募らせるような音楽もすごい。何かが起きそうです。
前作とは違ってこれはまた躍動感に満ち溢れていますよ。
しかし、タル・ベーラ監督、やはり、その映画技法に揺るぎはありませんでした。
それも前作よりはるかに揺らぎません。

f0165567_7525240.jpg

 ©Marton Perlaki

実は「ニーチェの馬」は監督として最後の作品となります。
1955年生まれでまだ60歳にもならない監督。
本作でベルリン国際映画祭・銀熊賞(審査員グランプリ)、国際批評家連盟賞をW受賞したにもかかわらず、
「もうカメラに触ることはない」という彼の決意は固いようです。
「これからは若い人に場所を譲る」とも語ったとか。何かに絶望したのでしょうか?

1889年トリノ。ニーチェは、鞭打たれ疲れ果てた馬車馬をみつけ、
泣きながら馬の首を抱きそのまま発狂したといいます。
この逸話を聞いて「果たしてその後、馬はどうなったのか」という疑問から、
生まれたのが本作「ニーチェの馬」です。
タル・ベーラ監督はこの話の映画化に長く執着しており、今回の映画化で念願を果たした、
というのが真相らしいのですが。
う~ん、果たしてそれだけなのか?

f0165567_16394722.jpg

約40年間にわたり映画を撮り続け、カンヌ、ベルリンなど大きな映画祭で受賞してきた監督。
タル・ベーラ監督の7時間半に及ぶ大作「サタンタンゴ」はルーヴル美術館で上映され、
ニューヨーク近代美術館(MOMA)で特集上映を組まれたことは、
3年前当試写室で上映した「倫敦から来た男」でもお伝えしました。

モノクロームではありながら濃厚な黒は、あらゆる色を含んでいるという底深さを感じさせますし、
白はまた光そのものような明るさであります。

やはり、これは芸術です。それもアートというカタカナではなく旧漢字の藝術。
東京藝術大学の藝術です。

タル・ベーラ監督の最後の作品、さてどんなお話なのでしょうか。


                                

今日もポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆2012年1月28日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ニーチェの馬
監督/タル・ベーラ、脚本/タル・ベーラ、クラスナホルカイ・ラースロー、撮影/フレッド・ケルメン、音楽/ヴィーグ・ミハイ
出演
ボーク・エリカ、デルジ・ヤーノシュ
2012年2月11日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー
ハンガリー=フランス=スイス=ドイツ、2011年、154分、モノクロ、配給/ビターズ・エンドhttp://bitters.co.jp/uma/

by Mtonosama | 2012-01-28 08:06 | 映画 | Comments(10)
Commented by ライスケーキ at 2012-01-28 21:12 x
ニーチェさんの哲学、良く理解できませんが、
この映画も難しそうですね。
ニーチェさん、馬の首を抱いたまま発狂しちゃったんですか。

凡人は哲学も理解できないけど、発狂することもないだろうな。
まぁ、平凡なのが一番幸せかもしれません。
Commented by すっとこ at 2012-01-28 22:59 x
ぇぇぇえええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。

ニーチェって独逸の人ですよね。
トリノで発狂して
しかも馬の首を抱いて、
って ちっとも知りませんでした。

勉強になるなぁ殿様の試写室。

若いときむさぼり読んだ”ツァラトゥストラはかく語りき”。
今となっては覚えているのは
「老人の忠告は冬の太陽だ。照らしはするが温めはしない」
というのだけかな・・・・トホホ。

今回も殿様名調子、冴え渡っていますね!
邦題の「ニーチェの馬」も「トリノの馬」より
日本人にぴったり来ますね!

次号UP楽しみにしています。
Commented by Mtonosama at 2012-01-29 07:24
♪ライスケーキさん

この監督さんの映画はカメラをじーーーーーーっと一人に向け続けているんですよね。
これでいいのか、なにが起こるのか、と心配になってしまうほど、同じシーンが延々と続くんですよね。

スクリーンで展開する様子に圧倒されてしまう映画でした。
Commented by Mtonosama at 2012-01-29 07:27
♪すっとこさん

ニーチェってごっつい顔をしながら、瀕死の馬の首を抱きながら
発狂するとは、良い人なんだぁ・・・・・・・

で、タル・ベーラ監督に馬のその後を撮らせようなんて、
大したお人であります。
Commented by 薄荷グリーン at 2012-01-29 18:43 x
こんばんは!

わたしも映画観るとなると、どう記事にしようかっていう考えがいつも頭の一部に湧き出てきます。
DVDだと何度かチェックしながら観られるからまだ多少は余裕があるけど、劇場でとなると一発勝負になったりして余計にそんなことを考えながら観てしまいます。たしかに余りいい傾向じゃないかも。

モノクロ映画って云うのはいいですね。カラーが主体となってからあえてモノクロで撮る人ってモノクロに本当に意味を込めて撮ろうとする人だけだと思うから。それに昔のモノクロのフィルムが劣化したような状態じゃなくて、本当に綺麗な状態のモノクロ映画を観られるのもいいかもしれないです。

7時間半もの長さの映画を撮った人なんですか。わたしはいつもなぜ映画だけどんな内容のものでも2時間に収めてしまうのか、中には納まりきれない内容のものもあるだろうに、そういう規定で不満が出ないのがちょっと不思議でした。本なんかは短編は短く大長編は何冊も巻を重ねるなんて当たり前なのに。

とはいうものの、7時間半は付き合うのは大変だろうとは思いますけど。
Commented by mtonosama at 2012-01-29 19:44
♪薄荷グリーンさん

この監督さんのモノクロ映像はとっても印象的です。
7時間半の「サタンタンゴ」観たいような、こわいような。

昨年末ご紹介した「無言歌」のワン・ビン監督もなんと545分のドキュメンタリーを撮っています。
545分って言ったら9時間ですよね。3部構成ですが、9時間はつらいです。

本は分けて読めるけれど、映画はどうしたって一気に観ないといけませんものね。
Commented by Tsugumi at 2012-01-29 23:51 x
ニーチェ名前だけ知っています(苦笑)

7時間半の映画?・・・・・今の私時間がない。。。無理です。

しかしリタイヤして時間が自由に使えたらとのさま紹介の映画みてみた。
Commented by mtonosama at 2012-01-30 07:07
♪Tsugumiさん

「ニーチェの馬」は154分ですので、安心してご覧ください。
しかし、154分は2時間34分ですね(いちいち換算しないとわからないので^_^;)。
2時間34分というのも、結構長い方ですよね。

Commented by poirier_AAA at 2012-01-30 19:23
こういう白黒映画っていいなぁ、見たいなぁと思ったら、
がああ〜〜〜〜〜ん、
もう公開が終わってしまっていました(去年の11月末公開でした)。ばたばたしていて気がつかなかったのが悔やまれます。

ところでニーチェといえば、先日食べたガレットの中からニーチェの胸像が出て来たんですよ。びっくりしました。
Commented by mtonosama at 2012-01-31 06:49
♪poirier AAAさん

パリではもう既に公開されてしまったのですか!?
それは、残念です。DVDで観るよりスクリーンで観たい映画ですものね。

し、しかし、お菓子の中からなにゆえニーチェが^_^;