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殿様の試写室

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少年と自転車 -2- Le gamin au vélo

少年と自転車 -2-
Le gamin au vélo

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(c)christine plenus

主人公の名はシリル。もうすぐ12歳になります。
このシリル少年、まるでハリネズミが全身の針を逆立てたように、
ネコが足を踏ん張って威嚇するように、養護施設の職員たちと睨み合っています。
「ね、電話は通じないんだよ。もう止めよう」と職員が説いて聞かせても、
「もう一回だけ」と受話器を離しません。もう、その頑ななことといったら。
な、なんなの!?いい加減にしなさいっ。
と、つい保護者の目になって怒りたくなってきました。

でも、少年の強い闘志に圧倒されてスクリーンをみつめている内、
彼の肩や背中が緊張でガチガチなのがわかってきます。
そして、その緊張と闘志がパパに会いたい、会わなくちゃならないという必死さから生まれたものだとわかると、
その強張った肩や背中を抱きしめて撫でてあげたくなってきました。
はい、柄でもないことはわかっています。でも、そういう気持にさせられてしまうんです。

親に捨てられた子どもといえば、
韓国映画「冬の小鳥」(‘09)http://mtonosama.exblog.jp/14398672/ もそうでした。

主人公の少女ジニはその受け入れがたい痛みを小さな体で必死に耐えていましたっけ。
「少年と自転車」のシリル少年も全身でその痛み、苦しみ、悲しみをぶつけてきます。
さあ、シリルはどうやって自分の受けた理不尽な状況を生きていくのでしょうか。


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ストーリー
シリル少年の願いは自分を児童養護施設へ預けた父親を見つけ出し、もう一度一緒に暮らすこと。
彼は施設から父親に電話をします。でも、通じません。
翌日、学校へ行くふりをして、以前父と暮らしていた団地にやってきます。
しかし、呼び鈴を押しても応答はありません。そこへ、先生たちがシリルを探しに。
追及を逃れようと、シリルは団地の診療所に逃げ込み、待合室の女性にしがみつきます。
「パパが買ってくれた自転車があるはずだ」と言い張るシリルを納得させるため、
大家が部屋の鍵を開けてからっぽの室内を見せます。

数日後、診療所でシリルがしがみついた女性が施設を訪ねてきました。
彼女は自転車をみつけ、持ち主から買い取ってくれたのです。
サマンサというその親切な女性を追いかけ、「週末だけ里親になってほしい」と頼み込むシリル。

美容院を経営するサマンサと週末を過ごしながら、
シリルは自転車に乗って父親の行方を捜しまわります。
努力の甲斐があり、父の働く店がみつかります。
サマンサの車に乗せてもらって、いそいそと父のもとへ向かうシリル。
嬉しさに上気したシリル。そして、当惑した様子の冷めた父親。
帰りの時間が近づいた時、父親はサマンサをひきとめ、「もう会いたくないと伝えてくれ」と。

サマンサがそんなことをシリルに言えるでしょうか。
彼女は店に戻り、自分で伝えなさいと父親に告げます。
そして、父親は「もう来るな」と。

帰りの車内で、溢れる感情をぶつけるように顔をかきむしり、車のドアに頭をぶつけるシリル……

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ベルギーの下層に生きる人々を描くことの多いダルデンヌ監督。

シリル少年の父親もやむを得ない状況で息子を養護施設に預けた貧困者でしょう。
でも、それはあくまで大人の都合です。
百歩譲って、預けることは仕方なかったとしても
休日に息子を訪ねるとか、最低限の努力はすべきですよね。
11歳の子どもには大人の事情を斟酌する余裕も能力もありません。
シリルはまだハリネズミになって大暴れをし、自分を主張したから、
あきれながらも手を貸してくれる大人がいました。そして、救われました。

本来無条件に愛してくれて、面倒を見てくれるはずの親に捨てられ、
やっと出会えた親から拒絶されてしまったら、
ハリネズミにも、威嚇するネコにもなれない子どもは抱えきれない悲しみを
無理やりその小さな心と体に押し込むしかありません。

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かつてのダルデンヌ監督作品に登場したシリルより少し大きな少年、少女。
彼らはシリルのようなハリネズミにはなれなかった子どもたちが成長した姿でしょう。

それでも、ダルデンヌ監督作品の中ではそんな少年少女たちも1人っきりの存在じゃないんですね。
彼らをみつめる人たちがいます。パートナー、雇用主etc.
その人たちはベルギーのチョコレートやワッフルみたいに甘くはありません。
でも、ひそやかにではあるけれど、確かに存在しています。

「少年と自転車」は現代のおとぎ話かもしれません。
でも、おとぎ話って子どもにも大人にも必要です。
ダルデンヌ監督の映画には、少年少女をみつめる人たちが息づいていて、
彼らがどうにか生きていけるように守ってくれているものが存在するような気がしてなりません。





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☆3月25日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

少年と自転車
脚本・監督/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、製作/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、ドニ・フロイド、撮影監督/アラン・マルコアン
出演
セシル・ドゥ・フランス/サマンサ、トマ・ドレ/シリル、ジェレミー・レニエ/シリルの父、ファブリッツォ・ロンジョーネ/書店の店主、エゴン・デイ・マテオ/ウェス、オリヴィエ・グルメ/居酒屋の主人
3月31日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
2011年、ベルギー=フランス=イタリア、87分、字幕/松岡葉子、配給/ビターズ・エンドhttp://www.bitters.co.jp/jitensha/

by Mtonosama | 2012-03-25 07:21 | 映画 | Comments(11)
Commented by すっとこ at 2012-03-25 07:42 x
キューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

ああ、殿様名調子!
かつての針ねずみ少女は
すっかり隠してるつもりの
皮膚の下の針がざわめくのを
感じてしまったではありませぬか!

ベルギーって
レースとチョコのお国
というイメージしかありませんでしたから

でも
そうですよね

どんな国にも 貧困層はあり
不幸もしあわせも 裏切りも 愛も
そこらに溢れ

針を立てた少年少女は
いつだって
自転車に紙をなびかせるんですよね。

年だけ喰って 大人になったつもりの
鈍磨した心に
渇!! を入れてくださってありがとう。

自作も楽しみにしています。
Commented by すっとこ at 2012-03-25 07:45 x
済みません、興奮して誤字が。

・)紙をなびかせて→髪をなびかせて
・)自作も楽しみ→次作も楽しみ

     以上です。
Commented by Mtonosama at 2012-03-25 09:02
♪すっとこさん

すっとこさんはハリネズミ少女だったので?
ハリネズミって可愛いんだよね。
150歳になった最近ではネズミと名のつく生きものはちょっと苦手になってるんだけど、
ハリネズミだけは例外。針出してても出してなくても可愛いんだもの。

おっと、この映画はハリネズミの話ではなかった。

誤字訂正コメントもありがとうございます。

チャリに乗ってもvery short hairゆえ風になびかせる紙、
おっと・・・髪もないとのですが、自作、おっと、次作の他に
もう1個みつけてしまった(^_-)-☆
へへ、意地悪な現国教師になった気分です。
それは、渇、おっと、喝でした。
PCって勝手に判断してくれるのはいいんだけど、時々
間違えるのは困りますぅ。

この映画、NYに戻る飛行機の中でやるといいけど、どうでしょう。
Commented by 京一郎 at 2012-03-26 12:31 x
初めまして。
いつも拝見しております。
この映画紹介の姿勢には好感が持てます。

他の映画紹介だと「結末は……」とか、「これ以上はネタバレになるので……」とゴマ化してしまいますが、当ブログでは、それがないように思えるからです。

私もブログで映画の感想は述べてますが、結末まで述べています。でないといいたいことは伝わらないからです。
もっとも私は紹介も、推薦もしてませんが。

今後もこのスタイルで紹介してくださることを望みます。
Commented by Mtonosama at 2012-03-26 15:16
♪京一郎さん

はじめまして。コメントありがとうございます。
いつも当試写室にお立ち寄りくださっているとのこと、
とても嬉しいです。

暗い試写室ではなかなかお客様のお顔を見ることも、
お声を聞くこともできないので、
こんな風にお声をかけていただくと試写室を開く甲斐があります。

細々と営業していきますので、今後もお立ち寄りくださり、
お声をかけていただければ幸甚の至りです。
ありがとうございました。
Commented by poirier_AAA at 2012-03-26 19:26
また、あの感動がよみがえって来ました。いや〜よかったよかったという派手な感動じゃなくて、スルメみたいに後からじわじわ来る感動でした。

シリルは、とんがっているけれど素直でしたよね。日本の同じくらいの少年だったらどうだろうかと思ってしまいました。

個人的にはサマンサの態度に感心しました。大人が子どもに関わるときって、ついつい介入し過ぎてしまうことがありますよね。でも彼女は余計なことは言わず、せず、必要なところで必要なだけの助けを差し出すんです。そういう度量の大きさが凄いなぁと思いました 。セシル・ド・フランスがもの凄く格好よかったです。
Commented by Mtonosama at 2012-03-26 20:21
♪poirier AAAさん

そうですね。後からじっくり噛みしめる感動です。

実は「少年と自転車」を観た後、もう1本映画を観たんですけど、
それを観ている間も「少年と自転車」の感動が
じわじわ浸み出してきて困りました。
やはり映画は1日1本にすべきですね。

シリルって大人になりかかっているんだけど、
まだ身体はプクプクしてて幼さを残している感じ。
だからこそ、彼のとんがりが際立つのかもしれません。
この年頃の男の子ってホントに可愛いですね。

サマンサも素敵でした。
わたしはあんなふうに子どもに対応できるだろうか、
と自分を振り返ってしまいました。

良い映画でしたね。
Commented by ライスケーキ at 2012-03-27 21:46 x
父親の愛を知らずに育つ少年。
ハリネズミのまま大人になるのでしょうか。

母親はどこにいるのでしょうか。

まわりの人の愛も大切だけど 
やはり子どもは両親に愛されて育って欲しい。
Commented by Mtonosama at 2012-03-28 06:59
♪ライスケーキさん

この映画を観た後、子ども2人をマンションの室内に
閉じ込めて死なせてしまった若い母親への判決が出ました。

ドアを目張りしてまだおむつもとれない小さな子どもに
御飯も与えず、放置して餓死させてしまったひどい事件でした。

友人と車に乗っていてラジオでニュースを聞いていたのですが、
この若い母親も子どもの頃、親からネグレクトされていたんですってね。

シリル少年はサマンサに出会えて本当に良かった。
子どもが両親に愛されて育つのはベストだけれど、必ずしも
そうはいかない例もあるんですよね。

救いのある映画ですから、観てね。
Commented by Tsugumi at 2012-03-29 00:04 x
救いのある映画なんですね。。。

好きなベルギー。。後で見てみます。

しかし最近の若い親・・大人になってから子供生んで欲しいです。。って大人になりすぎると子供出来ずらいし・・・
難しい問題ですね。
Commented by Mtonosama at 2012-03-29 09:30
♪Tsugumiさん

はい、救いがあります♡

このサマンサって女性がほんとに良い人なんです。
でも、少しもおしつけがましくなくて。

大人になり過ぎると子どもができづらい・・・・・
確かに。

人生って本当に一筋縄ではいきませんね。