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殿様の試写室

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キリマンジャロの雪 -1- Les Neiges du Kilimandjaro

キリマンジャロの雪 -1-
Les Neiges du Kilimandjaro

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(C) AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

「キリマンジャロの雪」と言ったら、パパ・ヘミングウェーのあの名作です。

キリマンジャロの山頂近くに凍りついた豹の死体があった――

とても印象的な脳内シーンを与えてくれた小説でした。
だって、なにゆえ草原を駆けているべき豹が山頂の雪の中で凍りついていなくてはならなかったのでしょう。

がっ、しかし――

本作「キリマンジャロの雪」はあの短編小説とはまったく関係ありません。
この映画タイトルはヘミングウェイのあの作品ではなく、
フランスで1966年に大ヒットしたパスカル・ダネルの歌から来ています。
こちらの「キリマンジャロの雪」は1953年生まれの本作監督ロベール・ゲディギャンの青春時代の思い出の歌。
映画の中では、主人公の結婚記念日のパーティで孫たちがこの歌を歌う微笑ましい場面もあります。

キリマンジャロ。
アフリカ大陸の最高峰、独立峰としては世界最高峰を誇る5895メートルの孤高の山――
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ではなく、
本作では陽光きらめくマルセイユが舞台です。
家々の窓からは海と共にクレーンも見えていますよ。
そういえば、とのが昔住んでいた横浜の家からも港のクレーンが見えたものです。

そう、この映画の舞台は、リゾートとしてのマルセイユではなく、
港町であり、庶民の町であるマルセイユです。

主人公はミシェルとマリ=クレール。2人は結婚30年目を迎えた夫婦。
ミシェルは実直な労働組合の委員長で、
マリ=クレールはそんな夫を誇りに思い、支え続けてきた妻。
子どもたちは独立し、孫にも囲まれ、絵に描いたように幸せな熟年夫婦です。

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監督ロベール・ゲディギャンは、1953年マルセイユ近郊の小さな港町に生まれました。
父は本作の主人公と同じく港湾労働者。
学生時代は「労働運動の歴史における国家の概念」と題した博士論文を書き、
労働運動にも積極的に関わってきました。ま、そんな時代でもありましたし。

このちょっとおかたい(多分)ゲディギャンを映画へと誘ったのがルネ・フェレ監督。
昨年3月、当試写室で上映した「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」の監督です。
http://mtonosama.exblog.jp/15689906/  http://mtonosama.exblog.jp/15704699/
地方を舞台にして、自分の製作会社で映画をつくるというフェレの流儀がゲディギャン監督に影響を与えました。

フランスで半年以上のロングラン上映を記録し、
300万人を動員した大ヒット作「マルセイユの恋」(‘97)もそうでしたが、
17作目となる本作も地元マルセイユ発信の映画になっています。
労働組合の委員長が主人公と聞くと「社会派の映画か?」と思ってしまいますが、
人情味と、魚を焼く匂いが流れてくるような生活感にあふれた人情映画です。
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監督は、ヴィクトル・ユーゴー(1802~85)とジャン・ジョレス(1859~1914)
――社会主義者であり、政治家であり、雄弁家として民衆から愛された人物――
を敬愛しており、本作「キリマンジャロの雪」はこの2人の偉大な人物に負うところが大きいようです。

まず、ヴィクトル・ユーゴーの「哀れな人々」という詩
―― 19世紀のブルターニュの貧しい漁師が隣家の2人の遺児をひきとる決心をする ――
が本作の下敷になっていますし、
ジョレスの演説
「勇気とは組織の中にだけ存在するものではなく、習慣、モラルとして日々の生活の中に息づくものである」
という言葉が主人公夫婦の行動を支えています。

ジョレスの言葉は今となっては古臭く思えるかもしれません。
っていうか、こんな考えは今の時代からはとっくに失われていると思っていました。
だけど、改めて目で追ってみると実に深い言葉ですね。

人情といい、勇気といい、忘れていた大切なものを思い出すかもしれません。
さあ、いったいどんなお話でしょうか。乞うご期待でございます。



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☆6月9日(土)に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

キリマンジャロの雪
監督/ロベール・ゲディギャン、脚本/ジャン=ルイ・ミレジ、ロベール・ゲディギャン、撮影/ピエール・ミロン(AFC)
出演
アリアンヌ・アスカリッド/マリ=クレール、ジャン=ピエール・ダルッサン/ミシェル、ジェラール・メイラン/ラウル、マリリン・カント/ドゥニーズ、グレゴワール・ルプランス=ランゲ/クリストフ、アナイス・ドゥームスティエ/フロ、アドリアン・ジョリヴェ/ジル、ロビンソン・ステヴナン/刑事、キャロル・ロシェ/クリストフの母
6月9日(土)より岩波ホールにてロードショー、全国順次公開
2011年、107分、フランス、フランス語、提供/クレストインターナショナル、NHKエンタープライズ、協力/東京日仏学院、ユニフランス・フィルムズ、配給/クレストインターナショナル、http://www.kilimanjaronoyuki.jp/

by Mtonosama | 2012-06-09 05:46 | 映画 | Comments(6)
Commented by すっとこ at 2012-06-09 07:17 x
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

コメント欄が最初から開いてた!
   そんなことが嬉しい私。

キリマンジャロの雪・・・・・・
これ、原題もそういう名前なのでしょうか?

そしてなぜにマルセーユ港町を舞台にした映画の
題名がキリマンジャロに?

マルセーユは
ブイヤーベース発祥の地、といわれてるので
いっぺん食べとこう、と
本場もん食べに行ったんですが ああ悲しや、
日本で食べたものの方が美味しかったのでした。
    店選びがまずかったのか。

ともかく。
この映画にブイヤーベースは出てくるのでしょうか。
あと雪も。

次号のストーリー紹介が待たれます、ワクワク!
Commented by Mtonosama at 2012-06-09 12:41
♪すっとこさん

ああ、まだコメントでご苦労をおかけしていたのでしょうか。
あいすみませぬ~~~<(_ _)>

はい。原題も”キリマンジャロの雪”です。
え、なんでキリマンジャロなの?え、なんで雪?っていう
この食い違った感じがまたおもしろい映画です。

ま、同タイトルの歌とお祝いのプレゼントがキリマンジャロに関係あるのかな?
と、この位はばらしてもいいかもしれませんね。

本場のブイヤベースってやっぱり魚が丸ごと入っているのですか?
骨を出すのがめんどうくさいよね。

魚を食べるのが下手くそなとのです。
Commented by 薄荷グリーン at 2012-06-09 20:42 x
こんばんは!

地方を舞台にして自分の製作会社で映画を撮るって、小回りがきいて、映画みたいにやたらお金がかかるようなメディアで実現できるなら理想的な状態になるんじゃないかなと思います。エリック・ロメールも確か個人の小さな製作会社で映画撮ってたんじゃなかったですか?フランスってそういう風にして映画を撮るのがある種風潮として根ざしてるところでもあるのかなぁ。

日々の行動をよりよい世界に導くために裏打ちしてるようなちょっとした勇気だとか人情だとか、日々の生活の中で見失われがちになるようなことこそ普遍的なものとして映画で描く必要があるのかも。
映画でさえ描く気にならなくなるほどに、この言葉が本当に古臭く感じられる世の中だったら、わたしはそんな世の中は嫌だなぁ。
Commented by Mtonosama at 2012-06-10 06:13
おはようございます。
エリック・ロメールって2010年に亡くなっているんですね。
その2年前に日本での彼の作品の上映権利が終了するということで、東京・渋谷のユーロスペースでエリック・ロメール監督作品が日本最終上映されたらしいです。22作品が回顧上映されたというのに、この私は観ておりません。残念。

勇気とか、社会のために動くことが気恥かしい風潮とか、皆が内側へ内側へと逃げ込んでいく傾向の中で、この映画のように堂々と勇気や正義を主張する作品って、逆に新鮮です。
古いというより、19世紀、20世紀を経て今に伝わってきてるユーゴーやジョレスってすごいのかもしれませんね。

Commented by ライスケーキ at 2012-06-10 21:18 x
「キリマンジャロの雪」と言うと 私には どうしてもヘミングウェイ。

原題もこのままだそうですが 映画を観ると
この題名で納得できますか。
 
有名な小説のタイトルを そのまま映画のタイトルにするって
何か意図があるんでしょうか。
それとも あまり気にせず 題名を決めたんでしょうか。

興味津々ですが やはり映画観なくちゃ分かりませんね
Commented by Mtonosama at 2012-06-11 06:27
♪ライスケーキさん

「キリマンジャロの雪」はやはりヘミングウェイ。
私も最初それを期待していましたが、よくよく試写状を読んだら違っていました。
でも、観て納得。キリマンジャロは小説にも、映画にも、歌にもなるすばらしい山なんですよね。

私も行ってみたいです。もう頂上への挑戦はできないから、麓からこの山の雄々しい姿を眺めていたいと思います。