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殿様の試写室

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ライク・サムワン・イン・ラブ -2- Like someone in love

ライク・サムワン・イン・ラブ -2-
Like someone in love

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©EUROSPACE All Rights Reserved.

暗い場所で光が点滅すれば、本能的にそれを追ってしまいます。
その光が時間の経過とともに変化すれば、さあどうなるのだろうと見つめてしまいます。
そして、音楽が伴えば、映像に意味を与えてしまいます。
無声映画の時代は欧米では音楽伴奏がつきものだったし、
日本では弁士がせりふをつけました。
(はい、祖父がその弁士をやっていました)

だからといって、今の時代、暗い中でスクリーンに映像が流れ、
音声が聞こえてきさえすればいいというものではありません。
ある情景を2時間近く映していれば映画一本できあがり、
というのであれば映画監督なんていりません。
じゃあ、素晴らしいストーリーがあればいいのでしょうか。
必ずしもそうとはいえません。

って――
いったい何を言いたいんだ。わたし。

ストーリー、テーマ、俳優、音楽、撮影・・・・・
この内のひとつが欠けても映画は成り立たないと思っていました。
それは確かにそうなんですけれど、どうも、そうとはいえないような――


ゴジャゴジャ言うより、まずは、どんなお話なのか覗いていただきましょうか。


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ストーリー
80歳を超え、現役を引退した元大学教授タカシ。
彼は亡くなった妻に似た若い女性・明子をデートクラブを通じて自宅に呼びます。
タカシは彼女のためにテーブルをしつらえ、シャンパンとサクラエビのスープを用意。
しかし、明子は「サクラエビは嫌いなの」と手をつけようともしません。
そして、自分からベッドに向い、タカシを誘います。
当惑するタカシ――

しかし、彼女の頭にあるのは、わざわざ田舎から上京していた祖母に会えなかったこと。
本当はタカシのところになど来たくはなかったのです。

翌朝、明子の通う大学まで車で送ったタカシの前に、彼女の婚約者だというノリアキが現れます。
彼はタカシを明子の祖父と勘違いし、タカシの車の不調を自分の整備工場で無料で修理したりするのですが……

もう17、18年前から日本で映画を撮りたいと考えていたアッバス・キアロスタミ監督ですが、
そのきっかけは六本木で見た光景だったそうです。
監督は六本木の路上でウェディングドレスを着てひとりで立っている若い女性を見ました。
ガイドに彼女のことを訊ねた監督。
彼女が娼婦だと教えられたときの驚きが本作につながりました。

意味ありげな人物が登場し、意味ありげなバーが映し出されるので、きっと何かが起こるにちがいない、と、
ことの展開を待ちうける観客の期待とはうらはらに、なじみ深い都会の夜景が車窓を流れていくだけ。
やがてタクシーは目的地に着き、趣味の良い元大学教授の書斎に導かれていきますが、
そこでも観客が予想するような事態は起こりません。

淡々と<時>は流れ、当然訪れるべき結末は訪れますが、それへの回答は示されないまま、映画は終わります。
いえ、きっと終わってはいないと思います。その後も粛々と<時>は流れていくのですから。
<時間>を切り取ってスクリーンに映し出した、という始まりもなければ終りもない映画です。

前作「トスカーナの贋作」でも感じた当惑に今回も襲われました。
http://mtonosama.exblog.jp/15412531/ http://mtonosama.exblog.jp/15429462/

自分が想像しうる形で展開しない映画です。
前作でも、本作でも、もっともらしいストーリーを紹介してはいますが、
ストーリーがわかってもとまどいは消えません。

人生の一場面を切り取って見せても、それは何の意味もない時の流れに過ぎないかもしれない――

それ以前の時の流れ、そして、それ以後の時の流れによって、
観客にとってはまったく違う展開が見えてくるのでしょう。
だからこそ、この映画は自分の目で確かめて観る必要があります。
そう、観客が自分でつくる映画ということがいえるかもしれません。

心の揺らぎにも似たこのとまどい。とのは「あぁ、こういうのもありなんだな」と思えるようになりました。
皆さんはどうお思いになるでしょうか。

光、音、時間。映画の要素は単純かもしれませんが、
その組み合わせはとんでもない作品をつくり出してくれます。





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☆9月10日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ライク・サムワン・イン・ラブ
監督/アッバス・キアロスタミ、プロデューサー/堀越謙三、マリン・カルミッツ、監督補・通訳/ショーレ・ゴルバリアン、助監督/田澤裕一、飛田一樹、廣原暁、撮影/柳島克己
出演
奥野匡/たかし、高梨臨/明子、のりあき/加瀬亮、でんでん/ひろし
9月15日(土)渋谷ユーロスペースにてロードショー、他全国順次ロードショー
2012年、日本・フランス共同製作、109分
http://www.likesomeoneinlove.jp/

by Mtonosama | 2012-09-10 06:32 | 映画 | Comments(10)
Commented by アイスケーキ at 2012-09-10 20:27 x
とても難しそうな映画ですね。

「この映画は自分の目で確かめて観る必要がある」んでしょう。

そうしないと、語れません。

DVDでなく、映画館で観ないとダメですね。

でも、この田舎の町では上映しそうにありません。
Commented by すっとこ at 2012-09-10 22:35 x
ううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

なんだかよくわからないです。
でもわからないからこそ 心に沁みる映画って
ありますよね。
きっとそんな映画なんだろうなぁ~。

映画にはストーリーがあるけど
人生のあるひとときって
ストーリーって特別にはありませんものね。
だから
人生のひとときを切り取って
たまたまスクリーンに写したら
こういう映画・・・になるのでしょうか。

来週の機内映画でもしや上映か?を
期待したいんですけれど 今回日系エアラインが
チケット高騰で米系エアラインなのでこれは上映されない
んだろうなぁ~。

さて次回はどんな映画?
期待のポチッを押して帰ります。
Commented by Mtonosama at 2012-09-11 08:51
♪ライスケーキさん

この映画をDVDで観るのはダメかも。
おっしゃる通り映画館向きの映画のような気がします。

アッバス・キアロスタミ監督の映画、
ものすごく意気込んで観にいくのですが、
今回もはぐらかされてしまいました。
いっつも不思議なとまどいの中で「なんでかなぁ」と
首をかしげています^_^;
Commented by Mtonosama at 2012-09-11 08:57
♪すっとこさん

そうなんです。
わからない映画って印象に残ります。
「去年マリエンバートで」('61 アラン・レネ監督)。
ホント、わかんないんだけど、あのモノクロ画面が鮮明
に印象に残ってます。

でも、本作は訳のわからない展開というわけでは
決してないんですよ。なんなんだろうな?

確かに機内では観られないでしょうね。
今日もポチッをありがとう(^^)/
Commented by poirier_AAA at 2012-09-11 17:57
この作品、いつもと違って殿様の文章を読んでもイメージが全然わきませんでした。困ったなぁ〜と思っているところで、監督の名前を見て納得。キアロスタミだったらそうかも。

昔「オリーヴの林をぬけて」を絶賛していた人がいたので観に行きました。でも、実際に映画館で観ても感想が出て来なかった!何と言ったらいいのか言葉が出ませんでした。そのくせ、いまでもあのオリーヴ林のイメージは鮮明に記憶に残っていて忘れられないんです。

ストーリーではなくて、映画ならではの素材(光、音など)で訴えてくる監督ですよね。人にはどうやって紹介したらいいだろうかと毎度悩みますけれど、でも、わたし結構好きなんですよ。こちらでも見られるといいなぁ。。
Commented by 薄荷グリーン at 2012-09-11 21:13 x
こんばんは!

わたしは映画にストーリーは必ずしも必要じゃないと思ってます。明確な起承転結のある物語が存在しなくても、きちんと意図を乗せてカットを繋いでいくなら、少なくとも定点観測の映像じゃないという点ではすでに映画的なのかもしれないなんて思ってます。
こういうのって考え出すと難しいですよね。ストーリーこそ重要となるなら小説でも構わないわけで、映画であることの本質はそんなところにはないと思ってるんですけど、波乱万丈のストーリーがあると楽しいなんていう部分もあったりしますから。
時間はわたしも映画にとって一番重要な要素じゃないかと思ってます。時間を切り取ってスクリーンに映し出した、そういうことが自覚的な映画って、物凄く映画的だと思います。

で、この映画、発想の切っ掛けが面白いですね。ウェディングドレスで街中に立ってるって、そんなものを目撃したら凄く想像を刺激されそうだもの。でも監督さんはそれを直接には使っていないようで、その奇妙なシチュエーションがどんな形で監督さんの想像力を刺激したのかちょっと確かめたくなってきます。
Commented by Mtonosama at 2012-09-12 06:35
♪poirier AAAさん

キアロスタミって不思議な監督ですよね。
「オリーブの林をぬけて」は私もあの白い陽光と
オリーブの木々が鮮烈に頭にこびりついています。

やっぱり中東の光と空気を切り取る監督だと思います。

「トスカーナの贋作」とか本作。
わかりやすいのにとまどうっていう感覚は
背景がわからないまま、美術館で具象画を鑑賞する、
とでもいえばいいのでしょうか。

日仏合作だから、フランスでもやるのでは、あるいは、
もう公開されたかもしれませんね。
Commented by Mtonosama at 2012-09-12 06:44
♪薄荷グリーンさん

おはようございます。
そうなんです。六本木の夜の街かどにウエディングドレスを着た女性が立っているって、
とっても怪奇な景色ですよね。
キアロスタミさんもさぞビックリしたことでしょう。
これが日本かっ!?と思ったのでしょうか。

それにしてもこの映画は不思議です。
シュールレアリズムで自動筆記ってありますよね。
あの自動筆記で撮った映画ともいえるかもしれません。
いろんな解釈ができる映画でした。

Commented by Tsugumi at 2012-09-13 15:20 x
この映画は多分芸術的なのではないのでしょうか。。。

芸術って見る人の感性で受け止め方感じ方変わりますよね。
そんな映画の様な気がします。
まぁ見ていないので何とも言えませんが・・

私いまだにピカソは理解できていません(苦笑)
Commented by Mtonosama at 2012-09-13 23:02
♪Tsugumiさん

昨日「徹子の部屋」に元大学教授を演じた奥野匡さんが
出演していました。この映画の話をしてました。
「古武士のような人だ」とキアロスタミ監督に
大変気に入られ、次の作品へのオファーを受けたそうです。
でも、あまり出たくないそうです^_^;

ピカソっていえば、この画家も時代によって全然画風が
違いますよね。