最初の人間 -1- Le Premier Homme
Le Premier Homme
© Claudio Iannone
アルベール・カミユ。
大学に入った年、少し大人になった気がして、この作家の小説「異邦人」を読みました。
“今日、ママンが死んだ”
「異邦人」の書き出しの言葉です。
ママンどころか父も祖父母も曽祖母すら存命していた18歳のこむすめでしたから、
肉親の死を告げるこの言葉から、初めて人の死を知らされたような衝撃を受けました。
ママンという言葉も新鮮でしたし、主人公ムルソーの頭上の白熱した太陽も印象的でした。
その後、映画「異邦人」(‘68 ルキノ・ヴィスコンティ監督)を観て、
ギラギラした太陽の印象はさらに鮮烈なものになりました。
「反抗的人間」「シジフォスの神話」「転落」「追放と王国」
第3、あるいは第4反抗期(?)の18歳はタイトルにもそそられました。
読んだのはもう100年以上昔のことなので内容は覚えていませんが、
ただ、18歳まで漠然と持っていたフランスのイメージが少し変わったような気がしました。
フランスのイメージといっても
“わたしの耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ”(ジャン・コクトー 堀口大學訳)
くらいしかありませんでしたけどね。ひぇっ、恥ずかしい。
「異邦人」の中の眩しすぎる太陽とか、
やっとの思いで運び上げた途端に転げ落ちてくる石とか、
どこか激しくて、人生は思い通りにいかないぞ、みたいな部分は、
カミユという作家がフランスだけで生まれ育った人ではないということによるのかもしれません。
そう、太陽がやたら熱くて、どこまでも砂漠が拡がるアルジェリアの大地が
大きな影響を与えているのだと思います。
アルベール・カミユ
1913年~1960年。アルジェリア生まれ。
フランス人入植者の父が第1次世界大戦で戦死。
以後、母とともにアルジェ市内にある母の実家で暮らす。
実家には祖母の他、叔父も暮らし、聴覚障害のあった母も含め、家族に読み書きのできる人はいなかった。
1918年に小学校入学。家は貧しく、上級学校に進学する気はもともとなかったが、この小学校の教諭ルイ=ジェルマンはカミユの才を見抜き、彼を進学させるように家族を説得。彼はこの先生から受けた恩を生涯忘れず、ノーベル賞記念講演の出版の際にも「ルイ=ジェルマン先生へ」と献辞を添えた。
1924年に奨学金を受け、アルジェの高等中学校に進学。
高等中学校時代のカミユはサッカー少年でもあり、アルバイトにも励みながら成績は優秀。
この時代、教員のジャン・グルニエの影響で文学に目覚める。
1932年アルジェ大学文学部に入学。在学中に結婚するが、離婚。
大学卒業後、処女エッセイ集「裏と表」(‘37)出版。
翌年「アルジェ・レピュブリカン」の新聞記者に。第2次世界大戦時には反戦記事を執筆。
また、アマチュア劇団活動でも活躍。
「異邦人」(‘42)、「カリギュラ」(‘44)、「ペスト」(‘47)等で文学的地歩を固める。
しかし、「反抗的人間」(‘51)をめぐり、サルトルと論争し、孤立を深める。
以後、持病の結核を抱えながら、「転落」(‘56)等を発表。
1957年、43歳でノーベル文学賞受賞。その後はプロヴァンス地方の田園地帯に住み、
パリとの間を行き来する日々を送る。
1960年交通事故で死亡。
その後30年以上の年月を経て、カミユの娘カトリーヌ・カミユはその原稿を未完のまま出版。
フランスで60万部を売り上げるベストセラーになりました。
これは彼の自伝ともいえる小説であり、不条理文学の旗手カミユの原点を知る上で画期的ともいえる作品です。
生誕100年を前にいよいよ映画化された本作。乞うご期待であります。
続
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☆11月24日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆
最初の人間
監督・脚本/ジャンニ・アメリオ、原作/アルベール・カミユ「最初の人間」(新潮文庫)、撮影/イヴ・カープ、製作/ブリュノ・ぺズリー、フィリップ・カルカッソンヌ
出演
ジャック・ガンブラン/ジャック・コルムリ(1957)、ニノ・ジグレット/ジャック・コルムリ(1924)、カトリーヌ・ソラ/キャサリーン・コルムリ(1957)、マヤ・サンサ/キャサリーン・コルムリ(1924)、ドゥニ・ポダリデス/ベルナール先生、ウラ・ボーゲ/祖母、ニコラ・ジロー/叔父(1924)、ジャンポール・ボネール/叔父(1957)、アブデルカリム・ベンハウンチャ/ハムッド・アブデラマン、ジャン=フランソワ・ステヴナン/農夫
12月15日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
2011年、仏・伊・アルジェリア、フランス語、カラー、105分、字幕翻訳/寺尾次郎
配給/ザジフィルムズ
http://www.zaziefilms.com/ningen/
というわけで、日本をうらやみつつ、今のうちに原作でも読んでおこうと思います^^
え~~~っ!
フランスではまだ公開されていないんですか?
公開日も決まっていない!?
なぜなんでしょうか。
原作を読んでおかれるとのこと。
そうですね。私も原作読みます。
アダムとイヴの話かと思っちゃった。
あぁ、恥ずかしい。
カミュの幼少期は周りに読み書きの出来る人はいなかった?
そんな彼が ノーベル文学賞。
ジェルマン先生 素晴らしいですね。
そんな先生への献辞を添えたカミュも素晴らしい。
映画以外の知識も増える「試写室」も素晴らしい。
アダムとイヴの話と思うかも。
でも、カミユってハンサムですよね。
この映画でジャック・コルムリことアルベール・カミユを
演じたジャック・ガンブランは結構カミユを彷彿させる俳優でした。
私もライスケーキさんと同じで ジェルマン先生の
素晴らしさに感動しました。
先生がいなければ作家カミュは誕生しなかった。
なんという出会いの不思議と人間性!
しかも小学生のカミュの天性を見抜いたんですよ!
ああ、もう素晴らし過ぎる・・・。
娘が父の遺作を未完のままで発表、というのも
ジーンときます。
観たい観たい!とポチッを押して帰ります。
おかえりなさ~い(^^)/~~~
カミユって良い先生と何度も出会っているんですね。
ジェルマン先生は小学校時代に頑固なおばあちゃんを説得
してくれたりしてるのだけれど、
上級学校の先生も良い先生だったみたい。
なんかアルジェリアの太陽の下で天真爛漫な少年時代を
送ったカミユの姿が見えてきました。
カミユ像が変わりましたわん。