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殿様の試写室

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最初の人間 -2- Le Premier Homme

最初の人間 -2-
Le Premier Homme

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© Claudio Iannone

アルベール・カミユの遺作でありながら、タイトルが「最初の人間」というのは
ちょっと不思議な感じがします。

最初の人間――
きっと初めてアルジェリアに根を下ろしたというカミユの父や
太陽と海と砂漠の大地に生まれ育ったカミユ自身のことを指しているのでしょうか。

アルジェリアでも、フランスでも、異邦人であるという困難な立場を生きたカミユが書いた最後の作品です。
主人公ジャック・コルムリが、アルジェリアの独立戦争のさなかに帰郷する設定の
この未完の小説はまさにカミユの自伝であり、これまでに書いてきた作品の原点といって差し支えないでしょう。
まさに「初めであり、終りである」です。

1954年11月1日、アルジェリア全土で民族解放戦線が蜂起。
アルジェリア独立戦争と呼ばれるこの独立運動は1962年まで続きますが、
1956年、市民への停戦の呼びかけに失敗したカミユはアルジェリア問題について公に語ることを止めます。

アルジェリアは、もともと自分たちの土地であったと主張するイスラム教徒、
アルジェリアに生まれ育ったのだから、自分たちの土地だと言い張るフランス人。

しかし、いつの時代も、いずれの土地でも同じことが行われるものです。

監督は「家の鍵」(‘04)のジャンニ・アメリオ。
本作では抒情詩を思わせるような主人公の子供時代が描かれていますが、
これはもう子供の演出にかけては天下一品のアメリオ監督ならではのものでしょう。

さあ、一体どんなお話なのでしょうか。


ストーリー
1957年夏、ジャック・コルムリはブルターニュの仏軍墓地にある父の墓の前に佇んでいた。
まだ20代で戦死した父。
数日後、ジャックは母を訪ねるため、独立戦争さなかのアルジェリアに向う。
空港にはジャックを大学での討論会に出席させるため、学生たちが出迎えにきていた。

作家として成功をおさめたジャックは政治的な発言を避けてきたが、彼をリベラルと捉える人は大勢いる。ジャックがアラブ人とフランス人との共存を語りかけると、会場は怒号と喝采で湧き返った。

翌日、母の家に向うジャック。
彼が子どもの頃、厳しい祖母や気の良い叔父と暮らしていたアパート。
そこに母は今もひとりで暮らしていた。数年ぶりに訪れた我が家で、ジャックは父の写真を見ながら、幼い頃の日々に想いを馳せるのだった――
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友だちと遊び興じた日々。
犬殺しの車から野良犬を逃がし、代わりに自分がそこに入れられたこと。
祖母の折檻に怯えたこと。
上級学校に進学できるように祖母を説得してくれたベルナール先生のこと。


翌日、ジャックはアラブ人居住区に出かけ、小学校時代の級友ハムッドに会う。
彼は当時ジャックがフランス人であるというだけでケンカをしかけてきたものだ。
そのハムッドが、独立運動のために不当逮捕された息子のアジズを助けてくれと頼んできた。
早速、奔走するジャックだったが、その努力も及ばずアジズは断首刑に。
そして、ジャックはラジオで皆に呼びかけるのだった……

「今日、ママンが死んだ」というクールな表現になじんだとのにとって、
主人公ジャックはとても人間的で情緒的でした。
同様に、不条理文学の旗手、あるいは、サルトルとの論争といった予備知識や先入見で
カミユを捉えていると、本作では意外感を抱くことになるかもしれません。

そんなクールさと情緒性を持つジャック・コルムリを
ジャック・ガンブランが好演していました。
彼、顔はとてもクールでカミユにも似ているのに、
「ママンが死んだ」どころか、
「ママン、大丈夫?」
「ねえ、寒くないかな?」
「痛かったらすぐに言って」
もう、ママ、ママ、ママの連呼って感じでした。
でも、「異邦人」でムルソーを演じたマルチェロ・マストロヤンニより適役かも。
(などと言いきってしまっていいのか?)

イメージはそのままアルベール・カミユでありながら、
その人物像はこれまで抱いていたカミユを嬉しい形で裏切ってくれます。
政治の時代に生きたイコンとしてのカミユではなく、
肉親や恩人、そして、アルジェリアの風土に密着した生きた人間的なカミユがスクリーンには息づいていました。

来年はカミユ生誕100年。この映画でカミユに初めて出会う人は幸せです。
小説「最初の人間」を読み、もう一度、他の作品を読みなおしてみたくなりました。





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☆11月27日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆

最初の人間
監督・脚本/ジャンニ・アメリオ、原作/アルベール・カミユ「最初の人間」(新潮文庫)、撮影/イヴ・カープ、製作/ブリュノ・ぺズリー、フィリップ・カルカッソンヌ
出演
ジャック・ガンブラン/ジャック・コルムリ(1957)、ニノ・ジグレット/ジャック・コルムリ(1924)、カトリーヌ・ソラ/キャサリーン・コルムリ(1957)、マヤ・サンサ/キャサリーン・コルムリ(1924)、ドゥニ・ポダリデス/ベルナール先生、ウラ・ボーゲ/祖母、ニコラ・ジロー/叔父(1924)、ジャンポール・ボネール/叔父(1957)、アブデルカリム・ベンハウンチャ/ハムッド・アブデラマン、ジャン=フランソワ・ステヴナン/農夫
12月15日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
2011年、仏・伊・アルジェリア、フランス語、カラー、105分、字幕翻訳/寺尾次郎
配給/ザジフィルムズ
http://www.zaziefilms.com/ningen/

by Mtonosama | 2012-11-27 07:08 | 映画 | Comments(10)
Commented by すっとこ at 2012-11-27 08:04 x
うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!

”最初の人間”という邦題で実は
つまづいています。
概念がうまくつかめないんです。

カミュという原初の人間がどうやって
作られたか?
人間が人間らしくあるために初めに
どうやって生きるのか?
まだ形作られない人間、それが自分です、とか?

考え朝得るだけでも、この映画の意味があるのかも
知れませんね。
いかにも“岩波ホール的”な映画だろうと思います。

こういうのはひとりで見に行きたいなあ。
誰とも話しないで帰り路ずーーーっと
考えていたいなあ、今観てきたことを。

今日もポチッと押して帰りますね。
Commented by Mtonosama at 2012-11-27 10:06
♪すっとこさん

いつもオリジナルタイトルと邦題が全然違うことで
文句をいうことが多いのですが、これは素直にオリジナル通り。

でも、他に邦題が思いつきません。やっぱり「最初の人間」
でいいのかもなぁ。

だって、「異邦人」や「反抗的人間」なんかとは全然違う
カミユがいましたもん。

今日もポチッとありがとうございました。
また来てねぇ(^^)/
Commented by ライスケーキ at 2012-11-28 21:44 x
「アルジェリア」
私には あまり馴染みがありませんが。

最後の作品が「自伝」。 と言うのも面白いですね。
「未完」でも 「自伝」を残せて、
それが映画化されて、カミュも喜んでいるでしょう。
Commented by Tsugumi at 2012-11-29 06:39 x
はずかしながらカミユ名前しか知りませんでした。

こんな素晴らしい作家さんだったんですね。

最近本を読む時間も映画を見る時間も取れない私ですが
この映画DVDになったら見てみたいと思います。
Commented by Mtonosama at 2012-11-29 06:57
♪ライスケーキさん

アルジェリアって遠い国ですが、日本では唄にもなっています。
♪ここは地の果てアルジェリア、どうせカスバの夜に咲く
酒場の女の生きる道♪

合ってるかな^_^;

酒場の女とアルジェリアがどう絡むのかはよくわかりませんが・・・・・

あ、あと「シェルブールの雨傘」もドヌーブの恋人はアルジェリア戦線に出ていったんでしたっけ。

なんか遠くて近い国アルジェリアという感じです。

Commented by Mtonosama at 2012-11-29 06:59
♪Tsugumiさん

Tsugumiさん、じゃあ、間違いなくカミユとの幸福な出会いとなりますね♪

お忙しいとは思いますが、是非、カミユと会ってくださいませ。
Commented by よっしー at 2012-11-29 09:20 x
いつもありがとうございます遅ればせながらのコメでおじゃまします(汗)こないだね、やっとこさ、サラの鍵を見ましたの、とのの解説を拝見して是非と思っておりました。DVDですけどね、見る前と見た後に、こちらの試写室で予習復習!! まことに得るもの多く、ありがたい体験をさせていただきました!次ぎは最終目的地を狙っております、こちらの、最初の人間に辿りつくまではだいぶ時間がかかりそうです〜^^
Commented by Mtonosama at 2012-11-29 09:37
♪よっしーさん

こちらこそトメさんのお姿に心癒される日々です。
ありがとうございます。

「サラの鍵」ご覧になりましたか。胸に迫る映画でしたよね。
予習復習をしていただくとは、畏れ多いことでございます。

しかし、あの深刻なジャーナリストが「砂漠でサーモンフィ
ッシング」では大ハジケだったんですよ!
俳優さんというのはキャパが広いもんだなぁとつくづく感じ
入りました。
Commented by poirier_AAA at 2012-11-29 17:15
カミュって、間違いなく王道を突っ走っていたサルトルと比べると、すごく不安定なポジションに(今も)置かれているような印象があります。その不安定さ、評価の定まらなさが、逆にカミュのカミュたる由縁(魅力)なのかなぁなんて思ったりして。この映画も、そんなカミュの一面を知るキッカケになるかもしれませんね。

映画はいつ見られるかわかりませんけど、文庫を買って来たのでちびちび読んでみようと思います。
Commented by Mtonosama at 2012-11-29 19:25
♪poirier AAAさん

カミユのフランスにおける評価って、不安定なポジションに
あるのですか?だから、まだそちらでは公開されていないの
でしょうか。

日本ではどうかって言われるとよくわかりませんが、若い人
は知らないのかな、あるいは、150歳のとのがカミユに対し
て学生時代に抱いた印象は持っていないのかなぁ、と思いま
す。

だからこそ、予見なく彼を捉えることのできる本作はいいん
だと思います。