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殿様の試写室

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ヒロシマナガサキ White Light/Black Rain

ヒロシマナガサキ
White Light/Black Rain:The Destraction of Hiroshima and Nagasaki
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©2007 Home Box Office,Inc.All rights reserved

前回、当試写室で上映した「ひろしま」。
そして、今回上映する「ヒロシマナガサキ」。
いずれもアメリカ人監督によるドキュメンタリー映画です。

毎年、8月が近づくと、わたしたちを覆う重苦しい気分。
と同時に、ああ、またこの季節か、と若干引き気味になっている自分もいます。

そんな自分を鞭打つように岩波ホールで試写を観てきました。
結果、「ひろしま」はこれまでの原爆へのイメージを覆す新しい視点の作品でしたし、
本作も、原爆投下を過去にとどめず、現在、そして、未来につないでいく作品でした。
観に行ってよかった。


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監督はスティーヴン・オカザキ。1952年ロスアンゼルス生まれの日系3世です。
1991年「Days of Waiting(待ちわびる日々)」ではアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門でオスカーを受賞。
戦時下のアメリカで日系アメリカ人の夫と離れることを拒み、夫と共に強制収容所での生活を選んだエステル・イシゴという女性を描いた映画でした。
日系人に課せられた強制収容や、日本本土に投下された原爆。
それはアメリカに住む日系人として等閑視できない現実だったのでしょう。

本作「ヒロシマナガサキ」は監督の内部で25年もの間大切に暖められてきた作品です。
意欲的で、わかりやすく、力強い映画――
被爆者に関して、そんな長編映画を作りたいと思い続けていたそうです。

今まで、それがかなわなかったのは、最初の頃は技術的な問題もありましたが、
日米の検閲の問題もありました。

被爆50年目にあたる1995年に米スミソニアン協会で原爆展が開催される、
と報道されたことがありました。
とのなども「おお、いよいよアメリカで!」と思ったことを記憶しています。
ところが、米国内で猛反発が起き、原爆展は中止。
展示とともに計画されていた映画製作もストップしてしまいました。

さまざまな紆余曲折を経て本作が完成したのは2007年のことです。

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14人の被爆者の証言と、原爆に関与した4人のアメリカ人の証言を軸に構成された本作。
監督は500人以上の被爆者と会い、その内の100人以上に取材、
そして、この映画のために14人の被爆者の証言を選びました。

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原爆が投下されてから、まもなく70年を迎えます。
しかし、彼らの悲しみ苦しみはいまだ色褪せることはありません。

10歳の時、長崎で被爆した下平作絵さんは、最後に生き残った家族が亡くなったとき、
自殺を考えたといいます。
そのとき思ったこと。
「人間はギリギリのときに、死ぬ勇気と生きる勇気と二つ並べられるんじゃないかな。
妹は残念ながら死ぬ勇気を選びましたが、わたしは生きる勇気を選びました」……

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被爆者として初めて国連で演説し、被爆者援護や核兵器廃絶運動に尽くし、
先日(7月6日)82歳で亡くなった山口仙二さん。長崎で14歳の時に被爆し、
40日後ようやく意識を取り戻しました。そのときの記憶を語ります。
「看護婦さんが治療のために、病室に近づいてくると、
大人も子供も『殺してくれーっ』と嘆願するんです。治療が痛いから」……

原爆投下は戦争を終結させるための使命だと信じていたセオドア・“ダッチ”・バン・カーク。
彼は原子爆弾リトル・ボーイを搭載したエノラ・ゲイの航空士でした。彼は言います。
「何人かが集まると必ずバカなヤツがこう言う。イラクに原爆を落とせばいいんだ。
彼らは核兵器が何なのかわかっちゃいない。わかっていたらいえないことだ」……

冒頭、カメラは渋谷・センター街の中高生を映し出します。
そして「1945年8月6日に何が起きたか知っていますか」と訊ねますが、
誰一人答えることのできる子はいませんでした。

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さて、証言者です。野球観戦で興奮もする普通に生活を楽しむ人々です。
彼らは誰も「原爆は許さない!」と声を荒げはしません。
ただ静かに記憶と体験を語り、手術の後をカメラの前にさらします。

活動家が大きな声で叫ばなくても、原爆が圧倒的な破壊力を持つ暴力装置であることは
わかっています。
充分にわかっています。
今、私たちにはこれを68年前の悲劇としてドキュメンタリー映画を観て
オシマイにしてしまわないための想像力と行動力とが必要です。

その想像力を今、私たちが向き合っている現実に対して拡げていく必要があることをあらためて感じました。

山口仙二さんのご冥福をお祈り申し上げます。合掌。





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☆7月17日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ヒロシマナガサキ
監督・製作・編集/スティーヴン・オカザキ、共同プロデューサー/後藤太郎、繁沢敦子、撮影監督/川崎尚文、撮影/スティーヴ・コンディオッティ、一之瀬正史、田宮健彦、スティーヴン・オカザキ
証言者
居森清子、笹森恵子、中沢啓治、田中ヤスヨと岡チエミ、下平作江、吉田勝二、坪井直、肥田舜太郎、深堀悟、キム・パニョン、永野悦子、山口仙二、谷口稜曄
モリス・ジェプソン、ローレンス・ジョンストン、ハロルド・アグニュー、セオドア・“ダッチ”・バン・カーク
7月20日(土)~8月16日(金)岩波ホールにて緊急上映
2007年、アメリカ、1時間26分、カラー、配給/シグロ・ザジフィルムズ、協力/岩波ホール・ANT-Hiroshima、特別推薦/日本原水爆被害者団体協議会、http://www.zaziefilms.com/hiroshimanagasaki/

by Mtonosama | 2013-07-17 07:37 | 映画 | Comments(8)
Commented by すっとこ at 2013-07-17 22:16 x
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

言葉を発することができません。

いくらいつも叫んでいるすっとこでも。

若い人たちは・・・日本とアメリカが戦争をしたことすら
知らないでしょうね。

原題の”白い光と黒い雨”にズキン!ときました。

黙ったままでポチッです・・・・。

Commented by Mtonosama at 2013-07-18 05:51
♪すっとこさん

日本の中高生の中には日本とアメリカが戦争したことも、
原爆が落とされたことを知らない子もいるんですね。もちろん、知っている子も大勢いるとは思いますが……

塾で教えていた時、「疎開」を知らない中2の子がいてビックリしましたが、教室長にそんなこと当たり前だ、と怒られました。

150歳の私ですら疎開経験はないのですから、13歳の女子が疎開を知らないのは当たり前かもしれませんね。

でも、家庭も学校も社会も、子どもたちにも大人たちにも、昔起きたことをキチンと伝えていかないと、と思います。

こういう映画を学校鑑賞や上映会で観る機会があるといいのに。

今日もポチッをありがとうございました。
お互い静かな100歳越えの女子2人でした。
Commented by なえ at 2013-07-18 21:02 x
私も「静かな100歳越えの女子」に入れて下さい。3人になって
ちょうど三婆ですね。え?100歳越えてもババアでないって?
失礼しました<(_ _)>

「家庭も学校も社会も、昔起きたことをキチンと伝えて」行きたいのにその声が、「経済優先」にかき消されていってるような・・・

静かにポチッ



Commented by アイスケーキ at 2013-07-18 21:23 x
日本がアメリカと戦争したことを知らない。
被爆国であることも知らない。

これは子供たちが悪いんじゃなくて、
大人の責任、教育の責任、政府の責任ですよね。

「外国人に人気の日本の観光スポット2013」
なんと一位は 広島平和記念資料館  だそうです。

日本人も中学か高校生になったら、絶対に広島(長崎)へ行き
自分の国の歴史、原爆の悲劇を知ってほしいです。
Commented by Mtonosama at 2013-07-19 06:34
♪なえさん

100歳越え女子仲間になりましょうぞ^m^
でも、三婆じゃなく、中国の四姑娘山にちなみ三姑娘ということで。
女に古いという字がちょっと気にいらないですけど。

経済優先の声がでかすぎます。
100歳越え女子もでかい声出さねばならぬ時が来たかのぉ。

ポチッをありがとうございました。
Commented by Mtonosama at 2013-07-19 06:42
♪アイスケーキさん

「外国人に人気の日本の観光スポット」
広島が京都を抑えて1位に躍り出ましたね。

広島へ行きたしと思えども、財布はいまだ軽し。
Commented by poirier_AAA at 2013-07-19 18:39
ヒロシマもナガサキもフクシマも、あるいはアウシュビッツでもそうだと思うのですが、時代も国境も越えてすうっと人の心に伝わっていくのは、怒りや非難の大声ではなくて、こういった静かな、人の経験を経た言葉なのだろうなと思いました。

こちらで見られるかどうかはわかりませんが、いつか観てみたい。日本でも世界でも多くの人に観てもらいたい、と思います。
Commented by Mtonosama at 2013-07-20 06:48
♪poirier AAAさん

体験者が怨讐を越えて、自分の体験を自分の言葉で語ってくれることに耳を傾けることこそ、今、必要なのだと思いました。

戦争も原爆も悲惨であり、最大の罪悪であることは知っていますが、この人たちにとって戦争や被爆が日常と化していたということ……
その残虐な事実が知識を越えるものを伝えてくれました。

明日は選挙です。