ハンナ・アーレント -1- Hanna Arendt
Hanna Arendt
(C)2012 Heimatfilm GmbH+Co KG, Amour Fou Luxembourg sarl, MACT Productions SA, Metro Communicationsltd.
ハンナ・アーレント。
ユダヤ人女性哲学者です。
哲学者を描いた映画としては「サルトルとボーヴォワール」(‘06)がありまして、
当試写室でも以前上映いたしております。
http://mtonosama.exblog.jp/16795799/ http://mtonosama.exblog.jp/16808562/
こちらは世界に名立たるカップルのプライベートな側面を描いたものでありました。
ですが、本作「ハンナ・アーレント」はハンナさんの女性的側面や愛やら恋やら
プライバシーやらを暴く作品ではありません。
とは申しましても、彼女、かのハイデガー先生と恋仲になったり、
その恋に破れた翌年、ユダヤ人哲学者ギュンター・シュテルンとやけっぱちで結婚したかと思えば、
スパルタクス団(のちのドイツ共産党)のハインリヒ・ブリュッヒャーと出会い、再婚するなど
となかなか恋多き女性ではあります。
まずは、彼女の生い立ちをご覧いただきましょう。
ハンナ・アーレント
1906年10月14日 ハノーファーのユダヤ人家庭に生まれる。
14歳でカントとヤスパースに影響を受け、哲学を学ぶことを決意。
1924年 マールブルグ大学に入学。
マルティン・ハイデガーに師事。不倫関係に。
その後、フライブルグ大学でフッサールに、ハイデルベルグ大学ではヤスパースに師事。
1928年 ヤスパースの指導による博士論文「アウグスティヌスの愛の概念」を執筆。
1929年 ギュンター・シュテルンと初婚。
1933年 ナチスの政権掌握。短期間拘束されるが、パリに亡命。
ハイデガー、ナチスに入党。
パリでユダヤ人青少年のパレスティナ移住を支援する組織の資金調達活動に携わる。
1937年 ハインリヒ・ブリュッヒャーと出会う。
1940年 ギュンター・シュテルンと離婚した後にハインリヒ・ブリュッヒャーと再婚。
同年、フランスのグール強制収容所に連行されるが、脱出。
1941年 母と夫とともにアメリカへ亡命。
1942年 アイヒマン、ユダヤ人絶滅計画を承認したヴァンゼー会議に出席。
1949年~50年 ドイツに帰国し、ハイデガーと再会。
1951年 アメリカ国籍を取得。
同年、「全体主義の起原」出版。
1959年 プリンストン大学初の女性専任教授に就任。
1960年 アイヒマン、アルゼンチンでイスラエル諜報部により拉致。
1961年 アイヒマン裁判傍聴のため、イスラエルへ。
1962年 アイヒマン絞首刑
1963年 アイヒマン裁判のレポートをザ・ニューヨーカー誌に連載。全米で激しい論争。
同年、同レポートを「イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告」として単行本化。
同年、シカゴ大学教授に就任。
1968年 ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ教授に就任。
1975年 死去。
恋愛、強制収容所への連行そして脱出、二度の亡命――
個人的には哲学教授ハイデガーと哲学科の優秀な女子学生アーレントとの不倫に
目が行ってしまうのですが・・・
(すいません。下世話なことで)
このアーレントの69年の人生の中で、
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督が絞り込んでいったのは、
アイヒマン裁判のレポートの執筆の時期の4年間でした。
この4年間に彼女の哲学者としての側面、
そして、思考こそを民族や怨念や復讐の上位に置く彼女の哲学的な姿勢が読みとれたからでしょう。
これぞドイツ映画という骨太な作品です。
続きは次回まで乞うご期待でございます。
続
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☆10月20日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆
ハンナ・アーレント
監督/マルガレーテ・フォン・トロッタ、脚本/パメラ・カッツ、マルガレーテ・フォン・トロッタ、製作/ベッティナ・ブロケンパー、ヨハネス・レキシン、撮影/キャロリーヌ・シャンプティエ、美術/フォルカー・シェイファー
出演
バルバラ・スコヴァ/ハンナ・アーレント、アクセル・ミルベルク/ハインリヒ・ブリュッヒャー、ジャネット・マクティア/メアリー・マッカーシー、ユリア・イェンチ/ロッテ・ケイラー、ウルリッヒ・ノエテン/ハンス・ヨナス、ミヒャエル・デーゲン/クルト・ブルーメンフェルト、ニコラス・ウッドソン/ウィリアム・ショーン、サーシャ・レイ/ローレ・ヨナス、ヴィクトリア・トラウトマンスドルフ/シャルロッテ・ベラート、クラウス・ポール/マルティン・ハイデガー、フレデリック・ベヒト/学生時代のアーレント、ミーガン・ケイ/フランシス・ウェルズ、トム・レイク/ジョナサン、ハーヴェイ・フリードマン/トーマス・ミラー
10月26日(土)より岩波ホールにてロードショー
114分、ドイツ語・英語、カラー・モノクロ、日本語字幕/吉川美奈子、協力/German films、配給/セテラ・インターナショナル、http://www.cetera.co.jp/h_arendt/
素敵だわ!”恋する哲学者達”!
”恋する”も素敵で“哲学者”も素敵。
それが”恋する哲学者”だなんて!しかもあのハイデッガーがお相手!
とミーハー気分で殿様名調子を読みすすめて行きましたら
そんななまやさしいお話ではなかったのですね。
彼女はユダヤ人女子学生。
ハイデッガーは・・・え?ナチスに入党ですって!?
次のストーリー紹介が待ちきれません、ポチッ。
ごめんなさいね。すっとこさんの期待を裏切って。
そうなのです。
アイヒマン裁判をめぐり、哲学者ハンナ・アーレントが示し
た姿勢を見せてくれる映画であって、”恋する哲学者”の映
画ではありませんでした。いやぁ、すごかったです。
試写が終わると、映画宣伝会社の人に「どうでした?」と
訊かれるのですが、すぐに声が出ないほど、映画に呑み込ま
れてしまいました。
今日もポチッをありがとうございます。
ユダヤ人哲学者の生き様を、
ドイツ映画が描くというのが 興味深い。
「哲学者」。
私には遠い存在ですが、
映画の中で 彼女の生き方を体験したい。
う~ん。 又、見たい映画が増えてしまった。
はい、久々に考え込む映画でした。
フランスに亡命し、更にアメリカへ。
そして、アメリカの大学で講義をし、出版もする。
自分の置かれた境遇に不平を言わず、新しい境地を切り開いていった素晴らしい人だと思いました。
と、妙にまじめになってしまう映画です。
是非、ご覧くださいませ。