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殿様の試写室

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アクト・オブ・キリング -2- THE ACT OF KILLING

アクト・オブ・キリング -2-
THE ACT OF KILLING

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©Final Cut for Real Aps,Piraya Film AS and Novaya Zemlya LTD,2012


本作を監督したのはジョシュア・オッペンハイマー監督。
1974年テキサス生まれ。
ハーバード大学とロンドン芸術大学に学び、
10年以上にわたり政治的な暴力と想像力との関係を研究するため、
民兵や暗殺部隊、そして、その犠牲者たちを取材してきた監督です。

本作でも最初は虐殺の生存者たちを撮影していましたが、
警察や軍、プランテーションの会社などによる妨害が相次ぎ、
生存者たちを撮影することは
監督たちだけではなく、生存者たちの身にとっても危険になってきました。

という次第で、
虐殺者たちを撮影することに方針転換した途端、
警察は、大量虐殺の起きた場所へと自ら案内し、
軍関係者は、撮影に支障が出ないように野次馬たちを遠ざけてくれるという変わりよう。
警察は虐殺者たちと冗談をかわしながら挨拶するなどいかにも親しげだったそうです。

わかりませんねぇ。

大勢の人を殺しながら、なぜその殺人者たちは楽しげに、裕福に、落ち込むこともなく、生きているのか。
そして、警察や軍関係者はそんな彼らと何故親しいのか。

彼らに家族を殺され、自分も危うい目にあった人たちが
なにゆえ何も言わずにいるのか。

事件後数十年経ち、地元のテレビ局はなぜ彼らの特集を組み(彼らを追及するためにではなく)、
彼らはその番組に顔も隠さずに出演し、視聴者たちも抗議することもなくその番組を視聴するのか。

虐殺の犠牲者には沈黙を強要しながら、なぜ虐殺者は選挙に出たり、テレビ出演したり、
笑いながら自分たちのやったことを宣伝できるのか。

それを当然のこととする政権のもとでなぜ国民たちは何も言えず生きているのか。

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で、監督は考えました。
もし虐殺者たちに自分たちのやり方で虐殺をドラマ化させたら、と。

「あなたが行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」

オープニングは藤原新也の写真のような空から始まります。
といってもわかりづらいですね。
モノクロの古い絵葉書に彩色した子どもの頃見た絵葉書のような色合い・・・

もっとわかりにくいか。
ま、とにかく物狂おしいような夕焼け色の空、静かな海。
海辺に佇む黒カビに蔽われたような巨大な魚のオブジェ。
その魚の口から次々に躍り出てくるショッキングピンクの衣装をつけた女たち。
それをみつめる同じくショッキングピンクの衣装をまとった樽のような体型の人物
とガンメタカラーのスーツに身を包み、ショッキングピンクのカウボーイハットをかぶった老人。

こ、これは、なんなんだ!
と戸惑いながら観ていると

スクリーンにおしゃれなスーツを着込んだ老人がにこやかに笑いながら登場します。
このダンディで陽気な人物が北スマトラでの虐殺リーダー、アンワル・コンゴでした。
街の映画館でダフ屋をやっていた街のごろつき。

アメリカ映画が大好きでシドニー・ポワチエに似ているのが自慢のアンワル。
そのファッションも物腰もアメリカ映画を意識しています。
当時はその大好きなアメリカ映画の上映に、共産党が異議を唱えるのが不満だった彼。

いってみればそれが、軍の要請に従い、9・30事件で誘拐、拷問、殺害を行った理由でした。
カメラに向って、いかに合理的に殺すかをモデルと針金を使って実演つきで再現します。
「鶴瓶の家族に乾杯」に登場する気の良いおじさんみたいです。

ヘルマン・コト。アンワルと行動を共にしている地元のギャング。
本作撮影中に、スハルト時代の与党から州議会選挙に立候補しています。落選しましたが。
パンチャシラ青年団という右翼的なならず者集団(全国に数百万人の団員を擁する強力な組織)に
属していたとき、劇団に在籍。
本作で見せた女装や演技はその経験の賜物です。

登場人物は皆かつての殺人者で、キャスティングからロケハンまで彼らが担当し、
オッペンハイマー監督に制作途中の映像を見せてもらいながら、積極的に映画制作に関わりました。

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エキストラとして出演した虐殺シーンで恐怖から泣きだしてしまった自分の娘をあやしたり、
あるいは出来あがった映画を「これがじいちゃんだよ」と膝の上の孫に誇らしげに見せたりします。

彼らは何も感じないのでしょうか。

でも、アンワル↑の上には思わぬ変化が訪れました。
被害者を演じる内に息苦しくなってしまったのです。
最初は、敵である共産党など、うんと苦しめて殺してやればいい、としか思っていなかったアンワル。
なのに、自分が殺される側を演じる時、
彼らもまた同じ心を持った人間だということに遅まきながら気づいてしまいました。

ですが、虐殺者たちの大半は罪の意識を感じることなく生活し、
それどころか、
正義の英雄としてふるまうことを認められています。
それを認める社会や政治体制ってなんなんでしょう。

彼らが出演するテレビを観て何も思わない人々は
自分たちが奇妙な体制下で生きているということなど考えつきもしないのでしょうか。
被害者の遺された家族たちはその目で恐怖を観てしまったために
それが自分たちの身にはふりかからないようにと思っているのでしょうか。

ショックを受けて観終わったとき、
クレディットにanonymous(匿名)という言葉が多いのに気づきました。
共同監督、撮影、録音、制作進行、メイク、音楽、振り付け、技術サポートなど
映画に関わった多くのインドネシア人や協力者たちは本名を明かすことが危険だからです。

本作はインドネシアでは2013年9月30日からインターネット上で無料公開されています。
もしかしたら、それを観て声をあげる人も出てくるかもしれません。

ぜひ、この奇妙な感覚と怖ろしさをご自分の目で確かめてごらんになってください。
とのの力では表現しきれません。





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☆4月2日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆
アクト・オブ・キリング
監督/ジョシュア・オッペンハイマー、共同監督/クリスティーヌ・シン、匿名希望、撮影/カルロス・マリアノ・アランゴ=デ・モンティス、ラース・スクリ―、製作/シーネ・ビュレ・ソーレンセン、製作総指揮/エロール・モリス、ヴェルナー・ヘルツォーク、アンドレ・シンガー、ヨラム・テン・ブリンク、トシュタイン・グル―デ、ビャッテ・モルネル・トゥヴァイト、制作プロダクション/ファイナル・カット・フォー・リアル(デンマーク)
4月12日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次公開
2012年、デンマーク・ノルウェー・イギリス合作、インドネシア語、121分、日本語字幕/金子嘉矢、字幕監修/倉沢愛子、配給/トランスフォーマー
http://www.aok-movie.com/

by Mtonosama | 2014-04-02 06:31 | 映画 | Comments(8)
Commented by なえ at 2014-04-02 12:59 x
な、な、なんかよーわからん映画ですう。特に1枚目の写真て、
アジア版「サウンドオブミュージック」かいなと。でも血塗ぬられた
虐殺ミュージカルなのか?「あなたが行った虐殺をもう一度
演じて見ませんか?」という提案をする監督の言葉や、それに
乗って演じてしまう元殺人者。風刺のブラックホールか?
と言う私にも言ってる意味が分からない(←ほな、言うな!)

でも本当の黒幕はのこのこ出てきたりしませんよね。出演者も
利用された人たちでは?

一般の人たちが抗議の声をあげないのは、あげられないから
ですね。戦時下の日本を考えれば分かります。

世界を動かしているのは政治家ではなく、ネオコンの資本家で
あるとネットを見てると見えてきます。



Commented by すっとこ at 2014-04-02 15:49 x
うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!

この映画は
うううううううううううううううう 観る気になれないかも。

これってアレですか
”ひとりを殺せば殺人犯だが 百万人殺せば英雄だ”
ってアレでせうか。 (百万人だったか数字はよく覚えてないけど)

デヴィ夫人・・・某所でお目にかかったことがありました。
お美しかったです。でもいつまでも出ヴィ夫人なのですね。
日本名はなおこさんとか、ななこさんでしたっけ?
どーでもいいですけど。

こういう映画は 存在すべきと思いますが
観に行くにはよほどのエネルギーが必要ですね!

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Commented by Mtonosama at 2014-04-02 19:58
♪なえさん

最初、踊り子さんたちが出てきた時には、思わずひきました。
な、なんなんだ!?・・・・・

なんか9・30事件は未だによくわからないらしいのですが、
これもまた冷戦の流れなんでしょうかねぇ。

声を上げたくても上げられない一般人や
喜々として殺し方を再現してみせるおじいさん。

共産主義者だから、異教徒だから、部族が違うから、
殺したっていいんだと思いこめば、
相手を人間と思わない心理状態になってしまうんでしょうかね。

ネオコンですか・・・
怖いですねぇ。

この事件の時代はインドネシアのかつての宗主国や
冷戦の当事国のアメリカやらいろいろあったみたいです。

ひかちゃんと遊べる日々が幸せでありますわ。


Commented by Mtonosama at 2014-04-02 20:04
♪すっとこさん

「私たちが見ているもの、これが悪の正体なのか」
というキャッチフレーズにひかれて観にいったはいいけれど
ショッキングでありました。

いや、しかし、映画というのはいろんな手法があるものです。
こんなの今まで見たことありません。

機内では絶対やらないと思うけど、この映画手法だけは
観た方がいいかもしれないです。

この元殺人者のじいさんたちもすごいけど、監督もすごいわ。

今日もポチッをありがとうございました。
Commented by poirier_AAA at 2014-04-03 17:30
映画で演じているうちに変化がおとずれた

というところが良くわからないんです。それまでは全然何も感じていなかったんでしょうか?少しでも考えてみようとしなかったんでしょうか?そんなふうになれるんですね、人間って。

ちょっと底なし沼みたいな怖さを感じました。見た方が良さそうだと思いながらも、見る前からかなり腰が引けています。
Commented by Mtonosama at 2014-04-03 18:03
♪poirier AAAさん

アンワルはそれまでは何も感じていなかったんですねぇ。

「Es」というドイツ映画をご覧になりましたか?

学生たちが実験をするんですけど、
あるグループは刑務所の看守になり、もうひとつのグループ
は囚人になります。
すると看守役になったグループは抑圧的になり、囚人役の方
は卑屈になっていくというんです。
いわゆるロールプレーイングゲームみたいなものでしょうか。
ドイツ映画らしくないスリリングな仕上がりになっていて、怖かったです。
人間って相手を一旦カテゴライズしてしまうと、なんでもできるんですね。

アンワルも作品中の映画で殺される役を演じることによっ
て、初めて彼らも人間であるということに気付いたんですって。

ドキュメンタリー映画としては随分毛色の変わった手法だと
思います。怖い映画でした。
クレジット中のanonymousの文字は衝撃的でした。



Commented by ライスケーキ at 2014-04-03 22:14 x
私は、何とコメントして良いか分からない。

人を殺しても罪悪感がない。
否、自分を英雄だと思っている。

まっ、人類の歴史を見ると殺戮・虐殺の歴史ですけど。
「人間」って 何なんでしょう。

「おじいちゃん」の孫達は これを観て何を思うのでしょう。


否、自分を
Commented by Mtonosama at 2014-04-04 06:18
♪ライスケーキさん

そうですよねぇ。
膝の上に乗せた孫たちに
「これがじいちゃんだよ」と楽しげに教える部分。
どうみたって好々爺にしか見えないところが怖いです。