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殿様の試写室

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罪の手ざわり -2- 天注定

罪の手ざわり -2-
天注定
A Touch Of Sin

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(C)2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO


中国西域を訪れたことがあります。数年前のことです。
飛行機はまず上海に到着するのですが、この街の華やかさにはいつも驚かされます。
そして、内陸部へと移動するにしたがって
天然色の景色が茶色の世界に変わっていきます。

華やかな大都会を楽しむ富裕層がいますが、
その天然色の世界では茶色の風景からやってきた人々が働いています。
もちろんそういう人たちの方が圧倒的な多数です。

総天然色と単色の世界。
それが冒頭のシーンで炸裂します。
う~ん、さすが絵画を学んだ人の感覚です。

「罪の手ざわり」という地味でおとなしげなタイトルにとらわれていたら、
最初からガツーンとやられてしまいました。

さあ、どんなお話でしょうか。


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ストーリー
山西省の山道。オートバイを走らせているチョウ
3人の若い男が斧をかざして彼の前に立ちふさがる。
チョウは無言で懐から取り出したピストルで男たちを撃ち殺した。

事故を起こし横転するトラックを見物するーハイの傍らを通過するチョウのバイク。

ダーハイは山西省で働く炭鉱夫だ。
村の共同所有だった炭鉱の利益は、実業家になった同級生のジャオに独占され、
村長と村の会計係はその口止料として賄賂を受け取っているらしい。
北京の中央規律委員会宛に告訴状を送ろうとするダーハイ。だが、住所がわからない。
住所を書いていない郵便物は送れないという郵便局員を怒鳴りつけた。
彼の前にバスが停まる。自家用機で村に帰って来たジャオを空港へ迎えにいくバスだ。
空港でジャオ夫妻を迎え、ダーハイは「北京へお前を訴えにいく」と告げる。
その後、彼はジャオの手下に襲われ、入院。
襲撃者は見舞金を持って病室にやってくるが…

ダーハイと炭鉱で働いていたサンミンは家に帰るため、三峡ダムを渡る船に乗っていた。
重慶へ向かうその船で隣り合わせた男は、山西省の山道で3人の男を殺したチョウ
チョウの生家では出稼ぎで村を出ている長男と彼の帰省に合わせ、
母親の誕生日を祝う宴会の最中だ。
チョウを出迎える妻と幼い息子。
「送金を受け取ったわ。13万元。最後の送金は山西からだったわね」と妻。
各地から大金を振り込んでくる夫を不審に思った妻は夫の鞄を探る。
すると、そこには銃の弾倉が。
翌日、帰り支度をしたチョウは街に向う。
銀行から出てきた裕福そうな夫婦を襲って現金を奪い、宜昌行きの夜行バスに乗り込む…

夜行バスが湖北省・宜昌駅に到着。降りてくる乗客の中にチョウはいない。
一人の男ヨウリャンがバスを降り、喫茶店へ向かう。
そこで待っていたのは恋人・シャオユー
つきあい始めてもう長い二人だが、ヨウリャンには妻がいた。
「奥さんを選ぶなら、私とは別れて」と静かに話すシャオユー。
その後、勤め先の風俗サウナに。シャオユーはその店の受付係をしているのだ。
そこへ現れたのは恋人ヨウリャンの妻。
いきなり頬を打たれ、妻が連れてきた男たちに殴り倒され、蹴飛ばされるシャオユー――
数日後、勤務を終えて店で洗濯をしている彼女に二人の男が売春しろと迫ってきた。
自分は受付係で客の相手はしないのだ、と断るシャオユーの頬を札びらでしつこくぶち続ける男たち…

シャオユーの恋人ヨウリャンが工場長を務める広東省の縫製工場。
シャオホイはそこの工員だ。勤務中、彼は同僚に怪我をさせてしまう。
工場長に「彼が働けなくなった2週間分の給料は代わりにお前が支払え」と言われ、
シャオホイはそのまま仕事を辞める。
そして、向った先は東莞(トングァン)市。
その街にあるナイトクラブで働くためだ。
シャオホイはこの店でホステスのリェンロンと出会い、
同郷・湖南省出身の彼女に次第に夢中になっていく。
だが、リェンロンは3歳の娘を持つシングルマザーだった。
娘を親元に預けながら、ホステスをしているのだ。
ある日、客をとる彼女を見てしまったシャオホイはナイトクラブを辞め、工場に就職。
安い賃金。親からは仕送りの催促。さらに縫製工場で怪我をさせてしまった同僚が現れる――
絶望したシャオホイは…

山西省の会社。壁にはダーハイに殺されたジャオ社長の写真が。
殺された社長を引き継ぎ、会社を経営するのはジャオ夫人。
その会社の面接にやってきたのはシャオユーだった。
履歴書を見て、
「湖北省出身のあなたがどうして山西省のこの会社を?故郷で何かあったの?」と訊ねる夫人に
「何もありません」と答える…

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巧妙につながりつつ円環をなす物語。
怒り狂う男の気持をある時は代弁し、ある時は鎮めるかのように京劇の一幕が挟まれ、
冷静に事態に対応する女がその屈辱と怒りを表す時、古典演劇の剣戟のように型を決める――

これぞ中国四千年の歴史。
型の中に感情の嵐を抑え、押し込め、圧しつけるとこういう形になる・・・
古いけれど新しい、新しいけれど古い、人間が抱え続けてきた業のような表現です。

ジャ・ジャンクー監督の作品には必ず登場するチャオタオが素晴らしい演技でした。
彼女は毎回凄みを増していく女優さんです。
彼女がナイフを振り上げ、型を決めたときには
京劇のあの甲高い掛け声と伴奏が聞こえてくるような気がする程、カッコ良かったぁ。

ダーハイを演じたチァン・ウー。
虎が描かれた布で銃を包み、敵を捜して動く姿は水滸伝の英雄を彷彿とさせました。

本作に描かれているのは実在した犯罪者であり、既に処刑された人もいます。

一言で犯罪と言っても、犯罪には理由があります。
不正が横行する不平等な状況では、人々は犯罪者に快哉を叫びたくなるものです。
例えば、水滸伝にはとんでもない悪党も登場しますが、
人々からは受け入れられていましたものね。

ジャ・ジャンクー監督、またつきぬけました。これは傑作です。

好(ハオ)!





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☆5月14日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

罪の手ざわり
監督・脚本/ジャ・ジャンクー、撮影/ユー・リクウァイ、音楽/リン・チャン、プロデューサー/市山尚三、製作総指揮/ジャ・ジャンクー、森昌行、レン・チョンルン、製作/Xstream Pictures、上海電影集団、山西影視集団、バンダイビジュアル、ビターズ・エンド/オフィス北野
出演
チャオ・タオ/シャオユー、チァン・ウー/ダーハイ、ワン・パオチャン/チョウ、ルオ・ランシャン/シャオホイ、チャン・ジャイー/ヨウリャン、リー・モン/リェンロン、ハン・サンミン/サンミン、ワン・ホンウェイ/サウナ客
5月31日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
2013年、中国=日本、129分、配給/ビターズ・エンド、オフィス北野
http://www.bitters.co.jp/tumi/

by Mtonosama | 2014-05-14 05:51 | 映画 | Comments(12)
Commented by すっとこ at 2014-05-14 21:45 x
うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

すびばぜん!

ご無沙汰ておりました。
何年振りかで熱出して訪問はしてたんですが
コメント書くパワーが足りずに

読み逃げでした。

”罪の手ざわり”・・・・よい邦題と思います。

見たい映画です。まだ力出ないけど振り絞ってポチッ!
Commented by びなちゃん at 2014-05-14 22:44 x
観ましょうぞ、観ましょうぞ!好!なんですね。途中まで辛そうなシーンが、続きそうですが…
あの大陸の、独特な臭いが(匂い・じゃなーい)たちこめてますね。

上海の猫、くまさんがおっしゃる通り。
矢張り台湾と違って、一匹だけしか飼い猫は見なかったんです。が、旦那の部屋から近くの路地は、ペット屋街で、感染症とかを気にしつつ歩きました。(帰ってから靴底を消毒薬まみれにしました)で、食べさせる動物ではない、ウサギ、犬、猫(ケージに数匹づつ、きっと兄弟…みゃ~みゃ~啼いているのがとても切なかった)、亀専門、げっ歯類専門、コオロギ専門、金魚屋、鳥屋などなど。仰山いましたで~みんな、容器にみっちみち。何と言うか、なんでもToo muchな、お国です…
Commented by Mtonosama at 2014-05-15 06:24
♪すっとこさん

おお、よくなられましたか!
お互い150歳過ぎての高熱はこたえます。
どうぞ、どうぞ、ご自愛くださいませ。

力を振り絞っての大切なポチッ、つつしんでお受けいたします<(_ _)>
Commented by Mtonosama at 2014-05-15 06:36
♪びなちゃんさん

ああ、あの臭い、あの厠・・・
懐かしいけど、怖い。怖いけど、懐かしい(-_-;)

上海のペット屋さん、ですか。上海のホテル近くに仔犬を大事そうにダッコしたおにいさんを見て、この国にもペットを可愛がる人がいるのだなぁ、と思いました(この国で犬っていったら、ゴボウみたいなシッポをだらりと下げてお店の人に邪険にされながら、お余りを狙ってる哀れな姿しか見たことがなかったので)。
猫は天津の動物園と蘇州の人家でしか見たことがないです。
ペット屋さんの猫か・・・
びなちゃんさんが感じた切なさ、よくわかるわぁ~。

しかし、この映画はすごいです!ジャ・ジャンクー監督、また一皮むけた感じです。
Commented by poirier_AAA at 2014-05-15 21:27
予告編を観ただけでも、すごいパワーを感じますね。

監督もすごいのだろうけれど、なんだろう、あの大陸にはこういうものを作ってしまうだけの人を生む力がある、という感じもするのです。

でも、犯罪者にならざるを得ない人がいるって切ないですね。
Commented by Mtonosama at 2014-05-16 05:47
♪poirier AAAさん

今回のジャ・ジャンクー監督はホントにすごかったです。
中国の大衆演劇や京劇の情念やエネルギーがほとばしっている
という感じでした。
中国4000年の歴史が連綿として息づいているのですね。

フランスではもう公開されたのでしょうか?
Commented by poirier_AAA at 2014-05-16 17:25
昨日こちらで予告編を観てすぐに調べてみたんですけど、なんと去年の12月半ばに公開されていたんです。

12月の半ばなんてクリスマス前で滅茶苦茶気が立っているときですから、映画のことを考えるゆとりなんかないんですよね。そんなときにこういう作品を出して来るなんて酷すぎる。。。くやしい〜。
Commented by Mtonosama at 2014-05-16 18:28
♪poirier AAAさん

あら~、残念でしたね。
是非DVDでご覧になってくださいね。ジャ・ジャンクー監督はカンヌでも受賞しているし、今、中国とフランスは関係がいいんですよね。そういえば、フランスはゴダールの頃から中国好きでした。「中国女」とか「東風」とか監督していますもんね。
Commented by ライスケーキ at 2014-05-16 22:44 x
これ、ホントの話なんですか。
処刑された人もいる?
リアルな映画ですね。

話が次々リンクして 普通の人が犯した犯罪を描く。
犯罪を犯した時点で、
フツーの人じゃなくなっちゃうんですけどね。

最近は「理由のない犯罪」を犯す人がいるから恐ろしい。



Commented by Mtonosama at 2014-05-17 17:41
♪ライスケーキさん

実話が基になってるそうですよ。
この圧倒的な映像と構成はすごいです。

ブログにも書きましたが、水滸伝だって三国志だって悪者はいっぱい出てきますものね。

京劇や中国のチャンバラの好きな自分としては本当に最高の映画でした。
Commented by kogarinta at 2014-06-21 20:43
こんにちは、ここなつです。
この監督の作品で、「また」突き抜けていたのですね〜
これまでのも観なくちゃ、ですね。私はこれが初見だったもので。
どの作品がいいですかね?
Commented by Mtonosama at 2014-06-22 05:33
♪kogarintaさん

おはようございます。
ありがとうございます。

わたしの初見は『世界』でした。本作で札束で顔をピンピンする
役人にキレた彼女が主人公でした。
「オー、中国にこんな映画が!」と感動しました。
次に観たのが『長江哀歌』でした。国家プロジェクト三峡ダムの底
に沈んでいく街の姿が中国現代史を観る思いでしたね。

そして、今回は結構エンタテインメント性も出てきて変わったな、
と思いました。
中国おそるべし!素晴らしい監督がいっぱいいますよね。

ワン・ビン監督の4時間もの(!)もお時間があったらぜひ^_^;