イーダ -2- IDA
IDA
(C)Phoenix Film Investments and Opus Film
さて、本作の舞台はポーランド。
そして、時代は1962年であります。
1962年?
この年になにか特別な意味があるのでしょうか。
この年に生まれた、とか、結婚した、とかの個人的な意味を除けば、
なにか中途半端な時代設定です。
1968年ならば“68年世代”などという言葉もある程、
世界中で学生たちのデモやらバリケード封鎖やら、いろいろなことが起こった年。
プラハの春などもこの年です。
ポーランドでも学生による抗議行動があり、
共産党(ポーランド統一労働者党)が
反ユダヤ的排斥運動の後押しをした(三月事件)年として記憶されています。
ところが、1962年です。
ポーランドにおいてもこの年は明確な特徴のない年。
ただ、当時幼児だった監督にとっては一番いきいきと記憶にのこっている時代なのだそうです。
戦争の影をひきずりつつも、政変も動乱もない真空状態のような時代だったのでしょうね。
柔らかいモノクロ画面がどこか懐かしいような時代へと導いてくれるようにも思えるのですが。
さあ、どんなお話なのでしょうか。
ストーリー
1962年。ポーランド冬の修道院。
戦争孤児として田舎の修道院で育てられた見習い修道尼アンナ。
修道尼になるための準備をしていた彼女はある日修道院長に呼ばれる。
そして、思いもかけない事実を知らされた。
彼女は孤児ではなく、叔母のヴァンダが生きているというのだ。
たったひとりの親類なのに一度も修道院に会いにこない叔母に興味を持ったアンナは、
院長のすすめに従い、ヴァンダの家に向った。
訪ねてきたアンナにヴァンダが投げかけた言葉は衝撃的だった。
「あなたはユダヤ人。本当の名前はイーダ・レーベンシュタインよ」
初めて知った事実だ。
ヴァンダは検察官だが、過去のつらい体験を封じ込めようとするかのように
アルコールと男たちとの乱脈な関係に溺れる日々を送っている。
アンナことイーダは叔母ヴァンダと会うと、そのまま修道院へ戻るため駅に向った。
だが、ヴァンダは駅までやってきてイーダを自宅へ連れ帰る。
両親の墓を訪れたいと願うイーダ。
それに対してヴァンダは「第二次世界大戦中に亡くなったユダヤ人の墓は存在しないし、
遺体のあった場所もわからないのだ」と告げる。
代わりにヴァンダが提案したのはイーダの両親が戦争中に住んでいた家に行くことだった。
その家にはフェリクス・スキパという男が住んでいた。
彼はユダヤ人夫妻のことは何も知らないと言葉を濁す。
ヴァンダはフェリクスの父シモンを捜し出そうとする。彼なら夫妻の最期を知っているに違いない。
だが、捜し出したシモンは重い病気を患い、町の病院に入院していた。
シモンから聞いた驚くべき事実とは……
ただ神にのみ仕える敬虔な修道尼としてのみ生きようとします。
そして、彼女と真反対の生き方をするヴァンダと出会い、
二人で過去を求める旅にでます。
まったく異なった存在に見える叔母と姪の対比が印象的です。
そして、アンナは驚くべき事実を知り、アンナからイーダになりました。
心の旅であり、時間の旅でもあるロードムービー。
兵士も空爆も出てきませんが、これはまさしく戦争映画であります。
ポーランドの人々が戦争中におこなったこと――
歴史には必ず表と裏があることが
穏やかなモノクロ画面と静謐で敬虔な修道院のシーンから伝わってきました。
冷たく柔らかい手で観る者の心をじわりと包み込むとでもいうか、
しーんとした気がみなぎる映画でしたねぇ。
ポーランド映画の真髄を強烈に発しながら、
これまで描かれてこなかったポーランドのもうひとつの側面を突きつけてきた作品でした。
終
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☆8月3日に更新しました。もう8月!毎日暑いですが、皆さまどうぞ御身大切になさってください☆
イーダ
監督/パヴェウ・パヴリコフスキ、脚本/パヴェウ・パヴリコフスキ、レベッカ・レンキャヴィチ、撮影監督/ウカシュ・ジャル、リシャルト・レンチェフスキ、美術監督/カタジナ・ソバンスカ、マルツェル・スワヴィンスキ、製作・プロデューサー/イーリク・エーブラハム、ピョトル・ジェンチョウ、エヴァ・プシュチンスカ
出演
アガタ・クレシャ/ヴァンダ、アガタ・チュシェブホフニカ/アンナ、イーダ、ダヴィド・オグロドニク/リス、イェジ・トレラ/シモン・スキバ、アダム・シシュコフスキ/フェリクス・スキバ、ハリナ・スコチンスカ/修道院長、ヨアンナ・クリク/歌手、ドロタ・クドゥク/カシカ、ナタリア・ウォンギェフチク/ブロニャ、アフロディタ・ヴェセラク/マリシャ、マリウシュ・ヤクス/バーテン、イザベラ・ドンブロフスカ/ウェイトレス、アルトゥル・ヤヌシャク、アンナ・グジェシュチャク/隣人、ヤン・ヴォイチェフ・パラドフスキ
8月2日(土)[シアター]イメージフォーラムにてロードショー
2013年、80分、モノクロ、日本語字幕/岩辺いずみ、字幕監修/渡辺克義、配給/マーメイドフィルム、後援/駐日ポーランド大使館、ポーランド広報文化センター
http://mermaidfilms.co.jp/ida/
歴史ある美しい町並みが印象的でしたが、
「アウシュヴィッツ」の存在を出すまでもなく、
どこかに、戦争の悲しみをたたえているような気がしました。
「驚きべき事実」。
私たちが知らないポーランド・・・。
映画でそれが分かるなら、
是非映画館に足を運びたいです。
いつもながらの殿様の名調子
<冷たく柔らかい手で
観る者の心をじわりと包み込むとでもいうか、
ひゃああああああああああああああああああああ
じわりと包み込まれてみたいです・・・。
ポーランドのもうひとつの側面、って何
でしょうか?気になる。
来月の機上映画のプログラムにあるなら
絶対観たい映画です。
力強くポチッ!
こんなすごい映画をつくる監督を輩出したポーランドって
一度行ってみたいです。
すっとこさんはいらしたことあります?
ポーランド映画ってなんかすごいですよね。
機内でやるといいなぁ。
いよいよ来月一時帰国ですね。
力強いポチッをありがとうございます。
イーダ、日本でも公開されたのですね。
静かで地味ですけど、ものすごくインパクトのある映画でした。ちょっと忘れ難いです。
パリはすっかり秋の気配で肌寒いくらい。映画や本が恋しい季節になりました。
お帰りなさい。バカンスは堪能されましたか?
『イーダ』良い映画ですね。インパクトはあるのに静寂さがシーンと
いう音になって迫ってくるような映画でした。
パリは肌寒いのですか?
日本は倒れそうになるくらいの猛暑です。
暑さに疲れました。
またパリの様子を知らせてくださいね。