走れ、絶望に追いつかれない速さで
走れ、
絶望に追いつかれない速さで
(C)「走れ、絶望に追いつかれない速さで」製作委員会
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』
このタイトルに惹かれました。
150歳はこういうタイトル、好きなんです。
「書を捨てよ、町に出よう」
この寺山修司の書いた本の題名にも踊らされた150歳です。
監督は1990年生まれの中川龍太郎。
まあ、26歳ですって。
中川龍太郎監督
詩人としても活動し、「詩集 雪に至る都」(‘07)も出版。
やなせたかし主宰「詩とファンタジー」年間優秀賞(‘10)を受賞している。
国内の数々のインディペンデント映画祭で受賞。
『Calling』(‘12)がボストン国際映画祭で最優秀撮影賞受賞。
『雨粒の小さな歴史』(‘12)がニューヨーク市国際映画祭に入選。
東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門では
『愛の小さな歴史』に続き、2年連続の出品を最年少で果たす。
タイトルに惹かれはしたものの
出演者はよく知らないし、監督もお若いので
とんがってズキンと痛いような映画なのかな、
と覚悟して試写に臨みました。
監督の自伝的な作品ということで
親友の死を受け入れられず、鬱々と日々を送る青年が主人公です。
でも、いまどきの若者らしくきちんとしていて大人しいところが
130年前の若者とは違うのかもしれません。
ストーリー
漣と薫は親友である。
6畳一間の古いアパートに二段ベッドを入れ、二人で暮らしている。
一晩中飲み明かし、
「こんな時タクシーに乗って帰れるようになりてえ~!」
とクダをまく漣に
「走るんだ。絶望に追いつかれない速さで」
とわめく薫。
しみったれた、でも、忘れられない日々。
薫の就職が決まり、明日から大阪勤務という夜、
仲間達は居酒屋で薫の送別会を開く。
そこには薫の恋人理沙子も。
会は盛り上がり、二次会へ行こうとなった時、
薫は「もう大阪へ行く」と言う。
だが、彼の向かった先は日本海だった。
海鳥が飛び、暗い海と空が拡がる崖の上。
ふっと薫は消える――
それから1年。
薫の一周忌が巡ってきた。
薫の兄から受け取った遺品に
彼の中学生時代の同級生・斉木環奈を描いた絵があった。
薫にとって大切な存在であり続けた彼女に
彼の死を知らせようと漣は彼の恋人だった理沙子と共に
斉木環奈のいる日本海に近い町へ向かうのだった……
ビルの屋上、二人で見る夜明けの東京。
明けゆく空で目にした飛翔体に興奮し、
屋上で鳥のように両腕を拡げて走り回る漣と薫。
先日、当試写室で上映した『ヴィクトリア』のワンシーンを彷彿させる場面でした。
http://mtonosama.exblog.jp/25172701/ http://mtonosama.exblog.jp/25190646/
若さというのは洋の東西を問わず、
いつ若い日々を送ったかも問わず、
つまり、今、若さのさ中にいる人も
130年前に若い日を送った人も
先の見えない不安を
感傷過多の悪ふざけでごまかしているのかもしれません。
そんな日々を共に過ごした薫が死んでしまったのです。
なにもわからないまま、置いてけぼりにされ、
泣くことも、気持の整理もつかず、
大学を中退し、鉄工所で働く漣。
カッコよさとは程遠いところにいる漣を太賀が好演していました。
将来が楽しみな良い俳優です。
ちょっと、いえ、かなり昔、少年マガジンに
松本零二の「男おいどん」という漫画が掲載されていました。
4畳半の下宿に暮らす大山昇太(のぼった)の日々を描いたもので
万年床や洗濯もしないで押入れに放り込んだままにしてある下着には
サルマタケなどというおぞましいキノコまで生えていました。
本作を観ていて、そんな「男おいどん」をなんとなく思い出してしまいました。
なんか懐かしい青春像なんです。
しかし、それは150歳の身勝手な思い込み。
実は本作、漣や理沙子の魂の復活を
若々しい感性で描き出してもいるロードムービーです。
走れ、絶望に追いつかれない速さで――
良いなあ。若さって。
人間って鳥にもなれるんだなあ。
終
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☆5月26日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆
走れ、絶望に追いつかれない速さで
監督・脚本/中川龍太郎、製作総指揮/木ノ内輝、プロデューサー/藤村駿、撮影監督・編集/今野康裕
出演
太賀/漣、小林竜樹/薫、黒川芽以/理沙子
6月4日(土)~24日(土)渋谷ユーロスペース、全国順次公開
2015年、日本、カラー、83分
私は寄る年波で、絶望が追いつくなら追いついて、そして
抜かして行って、ですわ。もう151歳になってしまったのかも。
先日ご連絡した、「犬の引きとり屋」、今日クローズアップ現代で放送されるそうです。タイトルは「ペットビジネスの闇」です。
149歳、ブルルルル、とんでもない!
目は見えない、歯は骨が痩せて噛み合わせが悪くなり、
もうボロボロの150歳ですわ(/_;)
今日は帰りが遅くなってしまって、その上、つれあいが野球見てるんですぅ。クローズアップ現代、見られないです(-_-;)
こんな
「走れ、絶望に追いつかれない速さで」
なんて!
まだあった心のどこかの柔らかい部分
が 少しの間揺れてまうでないの!
〈横ですが なえさん。
犬の引き取り屋、Yahooニュースで記事に
なってたので見てしまったんです。
胸が潰れました。
走れ、希望に追いつくまで!
まだ残る希望を指先に込めてポチッと!!
クローズアップ現代、録画しました!
いま、ちょっと最初を観て(仔猫が鳴いてるとこ)、もうつらくなった(-_-;) しっかり、心を強くしてから見ます。教えてくださってありがとうございます。
でしょ、でしょ?
150歳になっても心のどこかに触れたら血が出るやらかい部分は残ってるんです・・・
希望の後ろ髪、つかみやすい量と長さがありますように。
今日もポチッをありがとうございます。
親友がいて、恋人がいて、就職決まってて、
なんで死んじゃったんでしょうね。
訳も分からず、その存在が ふっと消えてしまったら、
辛いです。
殿様、今回はストーリー紹介も終わったし、
次回は無いんですか?
人間の欲と身勝手の犠牲になっている動物たち・・・正視に堪えないですね。一部法規制をしても、根本的に構造を変えないと、いつまで経ってもイタチごっこです。法改正が進まないのは、環境省や農水省の官僚の天下り先がペット業界だからと
聞いた事があります。
動物を食い物にするヤツら、皆まとめて殺処分だ!
すっとこさんが言ったように、絶望に追いつかれるより、「走れ、希望に追いつくまで!」ですね!
薫くん、この若さの時ってやたら死にたくなる時期だと思います。そして、残された方はどうやってその欠落感におとしまえをつけるか悩みぬかねばなりません。若いってこともつらいですね。150歳もつらいけど。
今回は1話完結にしました^_^;
今日はまた新しい映画を上映しますので、また御来館下さいませね。
見ましたよ。
二酸化炭素が噴き出す箱に収容された犬の目が忘れられません。自分がどうなるかわかっている目です。
あ、いけない。これを書いているだけで涙が出てくる。
陽光もさしこまない暗い小屋で繁殖のために使われ、年老いて暗闇の中でしか生きてこなかったので目が見えなくなった犬、
栄養失調のダックスフントに「生きて、生きて」と声をかけながら治療する獣医と看護士。
ブームを煽りたて、大量生産し、売れ残りは捨てる――
生きものに対して商業生産の論理をあてはめるのはやめなくてはいけません。