彷徨える河 -1- El Abrazo de la Serpiente
彷徨える河
-1-
El Abrazo de la Serpiente
(C)Ciudad Lunar Producciones
『彷徨える河(さまよえるかわ)』
ひと昔もふた昔も前の、
いや二世代前位の学生さんが好みそうなタイトルです。
スペイン語のオリジナルタイトル“El Abrazo de la Serpiente”は
「大蛇の抱擁」という意味だとか。
でも、それだとかなりおぞましい姿を想像してしまうので
『彷徨える河』の方がいいです。
本作はコロンビア史上初めてのアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、
カンヌ国際映画祭では監督週間アートシネマアワードを受賞し、
コスタリカ国際映画祭では最優秀インターナショナル作品賞、
リマ・ラテンアメリカ映画祭最優秀作品賞など
欧米アジアで高い評価を受けています。
先ほどオリジナルタイトルが「大蛇の抱擁」であるとご紹介しましたが、
大蛇とはすなわちアマゾン川の隠喩でありまして、
アマゾン川密林の深奥地まで入り込んで撮影した映画です。
大蛇が絡み合い、その尾があちこちへ延びるように
緑濃いジャングルを這い回る光景を想像してください。
え、気持ち悪いですか?
でも、地球の肺ともいわれるアマゾンの密林には
毛細血管のようにアマゾンの支流が網を張っているんですよね。
監督はコロンビア出身のシーロ・ゲーラ。
米エンターテインメント業界誌Varietyで
「2016年に注目すべき監督10人」に選ばれた人物です。
シーロ・ゲーラ監督
1981年、コロンビアのリオ・デ・ネロに生まれる。
コロンビア国立大学で映画・TV制作を学び、短編映画を数本制作した後、
初の長編映画『Wandering Shadow』('04)を制作。
トライベッカ映画祭や
ロカルノ国際映画祭など
60以上の映画祭に出品され、9つの賞を受賞。
2作目の長編『The Wind Journeys』(’09)は
カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選出され、6つの賞を受賞。
また、コロンビアの批評家らによるコロンビア映画史における
10本の最も重要な作品として選出される。
『彷徨える河』は長編第3本目である。
アマゾンと聞くと、
すぐにショッピングを連想する人の方が多くなってしまいました。
しかし、コロンビア出身の監督にとっては
アマゾンとはその国土の半分を覆いつくすアマゾン川であり、
その途方も知れない大河がもたらした巨大な密林以外の何物でもありません。
時間を自由に行き来するモノクロの画面からして
ただものならざる気配を漂わせ、
観客を未知の時空へと誘う映画ですよ。
恐るべし!アマゾン
恐るべし!シーロ・ゲーラ監督
であります。
弱冠36歳の監督、
アマゾンを撮影するにあたって
そのアプローチには悩んだことでありましょう。
で、目をつけたのが
20世紀の初頭にこの密林にやってきたドイツ人探検家。
民族学者テオドール・コッホ=グリュンベルクです。
それから数十年を経てやってきたもう一人の探検家、
アメリカ人植物学者リチャード・エヴァンス・シュルテスにも着目しました。
この二人の遺した手記があったのです。
それに触発されて生まれたのが本作『彷徨える河』です。
時を隔てて訪れた二人の白人探検家が
奇しくも同一人物の先住民族カラマカテを訪れることから展開する物語。
このカラマカテこそ先住民のただ一人の生き残りなのです。
静かなモノクロ画面はレヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」を連想させます。
白人たちに虐殺された先住民の生き残りで呪術を操るカラマカテが
船頭となって二つの時間とアマゾン川を行き来します。
南米には魔術的な幻惑に満ちた作品が多いですよね。
ガルシア・マルケス「百年の孤独」も
過去と現在が錯綜するような不思議な世界観の物語でした。
そういえば彼もコロンビア出身です。
コロンビア。
極彩色の鳥が飛び、美しい蝶が舞う密林世界。
先住民族と密林との間に厳として存在する契約、そして、幻覚、呪術。
この幻想的な世界観に心ゆくまで浸っていただきたいものです。
続きは次回に。
乞うご期待でございます。
続
今日もポチッとお願いできればうれしゅうございます♪
↓↓↓↓↓
にほんブログ村
☆10月23日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆
彷徨える河
監督・脚本/シーロ・ゲーラ
出演
アントニオ・ボリバル・サルバドール/年老いたカラマカテ、ニルビオ・トーレス/若き日のカラマカテ、ヤン・ベイヴート/テオ、ブリオン・デイビス/エヴァン
10月29日(土)【シアター】イメージフォーラム
2015年、コロンビア・ベネズエラ・アルゼンチン、124分、配給/トレノバ、ディレクターズ・ユニブ、後援/コロンビア共和国大使館
アマゾンですか。
かつて開高健氏が アマゾンへ魚釣りへ行き
「アマゾンや どこが尻やら乳房やら」
と詠んだのでしたっけ。
そして コロンビアは
(当時恋人だった)夫の両親の駐在国
だったんですがね!
エメラルドの名産地らしいですのう。
それが どーした
って話ですけどね。
呪術師に憧れて ポチッと❣️
現地に行けないけど鳥や樹木、川の生き物の息吹き、堪能しました。
この映画は人間の方のアマゾンを堪能出来そうですね。 続きを期待してます。
へえ~、コロンビアに!?
未知の国ですが、憧れますわ。
この青年カラマカテさん、とても印象的なお顔立ちで惹かれます。
あ、すっとこさんはもちろん老カラマカテさんがお好みですよね。
今日もポチッをありがとうございました。
大アマゾン展、行けばよかったなあ・・・っていつも後で後悔するんです。
ま、後でするから後悔なんですけどね。
博物館なら、蒸し暑くもないし、蛇も虫も出てこないから良いですよね。
でも、やっぱり船でアマゾン川を下りたいなあとも思います。
ただ、個人的には蛇も虫も苦手です。蚊にも刺されまくるでしょう。だからアマゾンのことは、わたしは本や映画で見せてもらえるだけでありがたいです。
そうなんですよね。
本作では、蛇に畏怖の念を抱いているようです。
(蛇だけでなくアマゾンの自然全体に対して)
私たちがこれほど蛇を恐れる背景には
もしかしたら怖れだけではなく畏む気持ちがあるのかもしれません。
でも、絶対に遭遇したくない。
昔、河原で蛇を見た時、動けなくなってしまったことがあります。
インディ・ジョーンズがすくんでしまう気持ち、よくわかります。
アマゾン川、死ぬ前に一度訪れたいところではありますが。
コロンビア豆、コロンビアの山用品、
位しか思い浮かびませんが、
未知の国をスクリーンで体験するのも
たのしいでね。
彼が「先住民のただ一人の生き残り」って
ことは、彼が死んだら先住民は
いなくなるって事でしょうかね。
そうなんですよね。
映画は旅です♪
アマゾンにはその広大なジャングルに
太古の頃から暮らす多くの民族がいたのではないでしょうか。
カラマカテはその多くの先住民族のひとつの生き残りということだと思います。
老カラマカテを演じた俳優さんも生き残りなんですって!