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殿様の試写室

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わすれな草 -2- Vergiss mein nicht


わすれな草
-2-

Vergiss mein nicht

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(C)Lichtblick Media GmbH


人に歴史あり。
まさにそのことを実感させられる映画です。

常日頃、おばはん、ばばあ等と呼ばれ、
若くなければ、美しくなければ、人にあらず――
みたいな括り方をされている150歳。

でも、おばはんだってその年齢分の人生を生き、
歴史にかかわり、時代を創ってきたんですけどねえ。

本作には政治運動に生き、
奔放な恋もし、
今はアルツハイマーとなって
日々記憶を失っていく一人の老女が描かれています。

でも、決して
昔は良かったのに、認知症になってしまってはねえ、
人生って虚しいねえ、
という映画ではないんですよ。

ストーリー
ダーヴィッドは認知症になった母グレーテルの世話を手伝うために
フランクフルト近郊の実家へ戻ってきた。
父のマルテが長い間グレーテルを介護してきたが、ちょっと疲れてしまったからだ。
ダーヴィッドは母の世話をしながら、昔からの親友のカメラマンと共に
母と過ごす時間を映像に記録する。
理性的だった母も、病によって心の欲するままに暮らしているように見える。
息子のダーヴィッドを夫と思い込み、
父が思わず嫉妬したり。
かつてはそれぞれに恋人を持ち、個人主義的に思えた両親の夫婦関係も
今では手を取り合い、肩を抱き合い、
素直に愛情を表わしあえる関係に変わってきた……

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映画の撮り始めから終盤――
終盤とはつまり母グレーテルの最期につながるのですが、
最初は彼女の目にも力強さが宿り、かつての美貌の片鱗も顔を覗かせています。
でも、次第にその目から力は失せ、動きも緩慢なものになっていきます。

ダーヴィッドが少し目を離せばベッドにもぐりこみ、
運動を促せば、あれこれ屁理屈をこね、
薬を飲むように言えば「あなたが飲んでおいて」と返してきます。
言うことを聞かない子どもみたいなものです。

身体が大きいから抱き上げて無理矢理やらせることができない分、大変なんですが。
でも、グレーテルは伸び伸びと暮らし、
父も息子も抑えつけることはしません。
根底に深い愛があるからなんですね。

認知症になることを極端に恐れる余り、
そうした老人の存在を否定しようとしていたのではないかと
気づかされてしまいました。
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グレーテル・ジーヴェキング
母グレーテルは1965年に苦学して修士号を取得し、放送局で働いていました。
1966年マルテと結婚。1967年に長女が誕生。
その頃、政治に目覚め、マルテと共に社会主義ドイツ学生連盟に参加しました。
その後も高齢になるまで政治活動を続け、
緑の党、エネルギー転換委員会、女性運動などに関わってきました。
2005年、記憶力の減退が顕著になり、
2008年にはアルツハイマー型認知症と診断されました。

嗚呼、人に歴史あり。

映画の中に挟まれる母グレーテルの若き日々。
とても美しい人です。
図書館をめぐり、60年代の政治運動を調べ、
当時の母の恋人にも取材する息子。
過去と現代が描き込まれ、ある種、暴力的なまでの印象の差異に戸惑います。

そして、介護事情の彼我の違いにも驚かされつつ、
夫マルテの母、つまり、グレーテルの姑が90歳を超えながら矍鑠とし、
グレーテルを施設に入れるよう勧める場面にも複雑な気持ちにさせられました。

150歳のとのも
高齢者も
高齢者予備軍も
グレーテルの子ども世代も
感じるところの多い映画だと思います。







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☆4月16日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆

わすれな草
監督・脚本/ダーヴィッド・ジーヴェキング、撮影/アドリアン・シュテーリ、編集/カトリン・フォークト、
音楽/ジェシカ・デ・ルイジ、製作者/マルティン・ハイスラー、カール=ルートヴィヒ・レッティンガー
4月15日(土)渋谷ユーロスペース他、全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、88分、カラー、字幕/渋谷哲也、
配給/ノーム特別協力:ゲーテ・インスティトゥート/東京ドイツ文化センター、http://www.gnome15.com/wasurenagusa/

by Mtonosama | 2017-04-16 05:41 | 映画 | Comments(8)
Commented by ヨモギ at 2017-04-16 11:12 x
こんにちは。
誰でもかかる可能性のある認知症というやまい。
アルツハイマー病の母の生活を記録映画に撮った息子さん、
ほかのご家族の協力もありラッキーでしたね。
介護する人と介護される人が一対一だったら、とてもこんな余裕はなさそうです。
発病後10年ぐらいたつうちには介護者は寝る時間も無くなってしまいます。
アルツハイマー病は、一般的に発病後いずれは覚醒と睡眠のリズムが平坦と言っていい状態になり
昼間寝て夜に起きてしまう、ということが普通である場合が多いから。

いまは、医学的の分野で認知症の発病や進行を予防したり抑えたりするための研究が盛んだそうですね。
「ペニシリン」発見前と後の劇的な違いのように、
認知症の大変さが、いずれ軽減・消滅できるときが
くるといいなぁと思います。
私の目の黒いうちに、お願い!と思います(^0^)。
Commented by ライスケーキ at 2017-04-16 21:04 x
昔 認知症の知識が全然ない時
「認知症になると周囲は大変だろうけど
自分は何も分からなくなるんだから、良いわぁ」
とノーテンキな事考えていましたが、
周囲はもちろん、本人も辛いです。

なにしろ自分の家ではのトイレが何処にあるかも
分からなくなるんですから。

不安になって暴力的になったり。
家族の支えが大事だけれど、
共倒れにならないよう
社会全体で支える仕組み
を作るのも大事だと思います。

脳トレしたり、おしゃべりしたり、
映画を観て刺激をもらったり…。
2025年問題に備えましょう。

Commented by Mtonosama at 2017-04-17 06:02
♪ヨモギさん

いや、切実な問題ですよね。
昨日、この映画に登場した夫さんが登場するパネルディスカッションがあり、覗いてきました。実は息子さんである監督が来日することになっていたのですが、ご家族が病気ということで急遽お父さんのマルテさんの登場になりました。他には学者、デイサービス経営者、そして、そのデイサービスに通うアルツハイマー型認知症患者さんも2人登壇しました。初めて間近でお会いしましたが、イメージの中の患者さんとは全然違うことに驚きました。そして日々の生活が「楽しい」とおっしゃって、いきいきとしていました。ちょっと印象に残ったのは認知症を恐れるより、認知症になっても平気で受け入れられる社会をつくることというお話でした。
やはり、まず知ることが必要ですね。明るい患者さんには驚きました。
Commented by Mtonosama at 2017-04-17 06:07
♪ライスケーキさん

最近、人の名前がわからなくなる150歳です(^-^;

介護する側もされる側も大変ですが、昨日お会いした患者さんたちは楽しそうでした。良い施設に巡り合えたことも大きいでしょうが、もっともっと社会が寛容になって、受け入れ態勢が整っていけばいいのにな、と切実に思いました。
Commented by すっとこ at 2017-04-19 07:51 x
ううううううううううううううううう!

ちょうどNYの日系人会で【認知症とアロマ】
というセミナーを開催したところでした。

鳥取大学医学部の浦上教授(日本の認知症
研究の第一人者とか)がアルツハイマー型
認知症へ実際に使われたアロマが調合薬と
同程度の改善を見せた、という発表をなさ
っています。

リ・ブレイン という名で販売もなさってます。
因みに昼用: レモン&ローズマリー
夜用: オレンジ& ラベンダー

いやあ 認知症は 人ごとではないですのう。

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Commented by Mtonosama at 2017-04-21 10:12
♪すっとこさん

音楽やアロマ、そして、この映画のような優しい夫や息子によってその時を送れたらいいのにね。
ふむふむ、レモンとローズマリーね。覚えておかねば。

人の名前を覚えることができなくなり、芸能人の名前もどんどん忘れていくわたし。
やばいぞ!

共感のポチッをありがとうございます。
Commented by Ich at 2017-04-21 19:36 x
ご紹介有り難うございました。観て参りました。美しい映画でした(*^^)v
Commented by Mtonosama at 2017-04-22 04:02
♪Ichさん

こちらこそありがとうございます。おかあさんの変化が胸にしみますね。でも、良い家族です。先日ドイツ文化会館であったティーチインに夫のマルテさんが出席なさり、認知症になった家族との付き合い方は以前の姿をひきずるのではなく、新しい人とつきあうつもりになることとおっしゃっていたのが印象的でした。