静かなる情熱 エミリ・ディキンスン -1- A QUIET PASSION
静かなる情熱
エミリ・ディキンスン
-1-
A QUIET PASSION
(C)A Quiet Passion Ltd/Hurricane Films 2016. All Rig hts Reserved.
時代は19世紀。
舞台は北米マサチューセッツ州。
美しい町アマスト。
ボストンから120㎞ほど離れた田舎町です。
エミリ・ディキンスンは
1830年この町に生まれ、
1886年55歳で亡くなるまで
この町を出ることはありませんでした。
あ、ただ1847年9月
17歳の時、
アメリカ最初の女子大
マウント・ホリヨーク女子専門学校に入学しています。
この写真は在学中、彼女の生涯で
唯一撮影された肖像写真です。
でも、翌1848年8月には
宗教上の理由で退学してしまいました。
その後はず~~~っと終生
アマストの父の家を出ることはありませんでした。
生前、発表された彼女の詩はわずか10篇。
エミリ・ディキンスンは
上流階級で生まれ育った子女ゆえ
生活に困ることもなく
病弱の母に代わって家事をとりしきり、
生涯結婚することなく
晩年はブライド病(腎臓炎)に苦しみました。
と、これだけ見れば
ふ~ん、恵まれた偏屈お嬢さんの自伝映画か、
と思いますよね。
とのはそう思ってしまいました。
でも、人生はそんな簡単なものではないんですねぇ。
彼女の詩を1篇だけ引用します。
I died for Beauty — but was scarce
I died for Beauty — but was scarce
Adjusted in the Tomb
When One who died for Truth was lain
In an adjoining Room —
He questioned softly "Why I failed" ?
"For beauty", I replied —
"And I — for Truth — Themself are one —
We Brethren, are", he said —
And so, as Kinsmen, met a Night —
We talked between the Rooms —
Until the Moss had reached our lips —
And covered up — our names —
「わたしは〈美しさ〉のために死んだ――けれど」 (1862年)
わたしは〈美しさ〉のために死んだ――けれど
墓に収まり 安らう間もなく
〈本当のこと〉のために死んだひとが
となりの部屋に横たえられた――
彼は静かに訊ねた「どうして失敗したのだろう?」
「美しさのためよ」とわたしは答えた――
「ぼくは――本当のことのために――このふたつはひとつで――
ぼくたちは兄弟だな」と彼は言った――
だから ある夜に同郷の親戚として出会った――
部屋を隔てて わたしたちは語りあった――
互いの唇に苔が這い寄り――
そして わたしたちの名前を――覆うまで――
http://nightinriver22.hatenablog.com/entry/Emily_Dickinson/I_died_for_Beauty_%E2%80%94_but_was_scarce
最後の2行なんてゾクッとしました。
余計なことを口走らないように自らの口を覆い、
その静寂に聴き入りたくなります。
エミリ・ディキンスン―――あまりなじみのない詩人でした。
彼女は生前評価されることもなく
裕福ではあっても
ガラスの天井どころか
コンクリートで固めた天井が女性の頭上を覆っていた時代に生き、
男女差別が当たり前で、
女性が表現者として認められることなどなかった時代に
詩を書き続けました。
その作品は1886年彼女の死後、
遺品整理をしていた妹によって発見されたのですが、
清書されたその詩は46束にまとめられ、
1800篇近くありました。
いまやその詩は多くの芸術家に影響を与えています。
サイモン&ガーファンクルは
「エミリー、エミリー」「夢の中の世界」を、
武満徹はその詩から着想を得て
「そして、それが風であることを知った」を作曲しました。
外出を嫌い、家族以外の交流を避けていたエミリ。
その人生や人柄は明らかではありません。
そんな彼女を描き出した監督はテレンス・ディヴィス。
アメリカが舞台でありながら、
その静謐な世界は
イギリスの名匠である彼が描くにふさわしいものでした。
そして、エミリ・ディキンスンを演じたのは
なんと『セックス・アンド・シティ』のミランダ役
シンシア・ニクソンです。
彼女はエミリの熱心な愛読者だったんですって。
さあ、いったいどんな作品でしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。
続
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静かなる情熱
監督・脚本/テレンス・デイヴィス、プロデューサー/ロイ・ボウルター、ソル・パパドパウロス、撮影/フロリアン・ホーフマイスター、美術/ムージェン・セップ、衣装/カトリーヌ・マルシャン
出演
シンシア・ニクソン/エミリ・ディキンスン、 ジェニファー・イーリー /ラヴィニア・ディキンスン、キース・キャラダイン/エドワード・ディキンスン、ジョディ・メイ/スーザン・ギルバート、キャサリン・ベイリー/ヴライリング・ バッファム
7月29日(土)岩波ホールほか全国順次ロードショー
2016年、イギリス、125分、配給/アルバトロス・フィルム、ミモザフィルムズ、字幕/佐藤恵子、字幕監修/武田雅子http://dickinson-film.jp/
エミリ・ディキンスンの詩は、おさえきれずに地面の割れ目から噴き出したマグマみたいなものだった?
うーむ、後半を楽しみに待ちます。
名前は聞いたこと あるのですが、
サイモンとガーファンクルの
「エミリエミリ」が
彼女由来とは知りませんでした。
またゆっくり聴いてみることにします。
こうして 昔聴いた音楽を
違った思いから 聴くのも
良いですね。
映画の中でなぜ結婚しないのかと問われて「他の家族の中に入っていくのが嫌なの」と答えていましたが、彼女にとって自分が生まれ育った家と土地と家族が全てだったみたいです。そりゃ、私も慣れ親しんだ家族と離れ見知らぬ舅や姑、小姑と暮らすのは嫌ですもん。人生にはどちらかを選ばなければいけない分かれ道が何度も現れるのだと思うけれど、断固として自分の道を貫いた意固地なエミリ。もっと深くつきあってみたくなる人です。(最初は「え~!なにこの人!」と思いましたけど・・・)
そうそう、思わぬところで昔の音楽を聴くのって新鮮です。
チェット・ベーカーとモニカ・ゼットルンドの曲をスクリーンで聴いてうれしくなりました。
帰宅してからもずっと口ずさんでしまいました。
あ、エミリさんから離れてしまった。
すみません、すっとこさん、またパクリをやってしまいました<(_ _)>
エミリ・ディキンソン!
私が文学少女だった頃(ウソつけ!)、彼女のある詩が大好きで、昔からなじんでいた詩人です。つ~ても、少年少女用の詩集に載っていた数篇を知ってただけどすけど。
人間の持つ創作意欲、創造性というのはすごいものですね。彼女は別に公表するつもりはなかったんですね。それでも書かずにはいられなかった、なんて。自分の内面世界を表現することが彼女にとっては生きることだった?まさに「静かなる情熱」の人だったのかも。まるで殿様や私のようではありますまいか!
うわあああああああああああああ!
びっくりした!!すっとこさんのインターネットがやっとつながったかと思った。
すごい!私はエミリ・ディキンスン知らなかった。
なえはん、少年少女用の詩集で、彼女のどんな詩を読みはったんやろか。
図書館行って探してこよっと♪
なんか読んでる内に冷たい空気を感じるような詩ですもんね。
お墓の中を描いた詩なら涼しいか・・・
ちょっとゴシックホラーな雰囲気があって夏には最適です。
え?なえはんや私は静かなる情熱の人ですか!?