希望のかなた -1- TOIVON TUOLLA PUOLEN
希望のかなた
-1-
TOIVON TUOLLA PUOLEN
(C)SPUTNIC OY, 2017
アキ・カウリスマキ監督の最新作です。
フィンランドの監督さんですが、
ちょっと変わった作風。
なんていうか
う~ん、動く紙芝居?
スティール写真のようなムービー?
ひとつの表情が
しばし貼りついたままの俳優?
シンプルで
妙になつかしい画面構成?
当試写室管理人にとっては
アキ・カウリスマキ監督は
これぞフィンランド映画
として定着してしまいましたが、
皆さまもこの作風に
きっと興味をお持ちになることでしょう。
本作『希望のかなた』は
しかし、
ちょっと雰囲気が変わっていました。
『希望のかなた』が
フィンランドの首都ヘルシンキを
舞台にしているのはこれまで通り。
ですが、
今回はシリア難民の青年が主人公です。
今年ベルリン国際映画祭で上映され、
批評家、観客から圧倒的な支持を受けて
監督賞を受賞しました。
『浮き雲』(’96)
『過去のない男』('02)
『街のあかり』(’06)
以上の〈敗者三部作〉を完成させた
カウリスマキ監督にとって、
本作は
『ル・アーブルの靴みがき』(’11) に続く
http://mtonosama.exblog.jp/17426967/
http://mtonosama.exblog.jp/17438978/
〈港町三部作〉の
二作目として位置づけられていました。
でも、
『ル・アーブルの靴みがき』を
ご覧になったなら、成程とお思いでしょうが、
監督は〈港町三部作〉の
呼び方を〈難民三部作〉と変えました。
『ル・アーブルの靴みがき』は
難民問題を扱っていますが、
驚くほどのハッピーエンド。
が、しかし、
現実の難民問題はハッピーどころか
エンド・マークも見えません。
という訳で
監督は本作でも再び
難民問題を取り上げました。
三部作ですから、
次作もきっと難民の映画でしょう。
アキ・カウリスマキ監督の映画は
彼が敬愛する小津安二郎に似た
簡潔なセリフとアングル、
寡黙で無表情な登場人物で構成されます。
なんとなく可笑しみのある世界。
北欧らしい静かな自己完結した世界観を
漂わせているとでもいいましょうか。
前作『ル・アーブルの靴みがき』でも
難民が登場したとはいえ、
社会問題として描かれてはいませんでした。
だからといって、
監督が社会問題に無関心ということでは
ありません。
2002年にこんなことがありました。
この年、NY映画祭に招待された
カウリスマキ監督。
一緒に招待されていた
アッバス・キアロスタミ監督が
(1940年6月22日~2016年7月4日)
前年2001年に起きた同時多発テロの影響で
イラン人故にビザが発給されず、
入国ができなかったことに激怒。
参加をボイコットしたのです。
その時の声明をご紹介します。
「世界中で最も平和を希求するキアロスタミ監督に
イラン人だからビザが出ないと聞き
深い悲しみを覚える。
(キアロスタミ監督にビザが出ないなら)
石油すらないフィンランドの監督は
もっと不要だろう。
米国防長官はわが国で
キノコ狩りでもして気を鎮めたらどうか。
世界の文化の交換が妨害されたら何が残る?
武器の交換か?」
いかにもカウリスマキ監督らしい
飄々としたユーモアの中に
言うべきことは言うよ、という
強い意志が見えますよね。
さあ、一体どんなお話でしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございます。
続
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☆11月19日に更新しました。いつも応援して下さってありがとうございます☆
希望のかなた
アキ・カウリスマキ/監督・脚本、ティモ・サルミネン/撮影
出演
シェルワン・ハジ/カーリド、サカリ・クオスマネン/ヴィクストロム、イルッカ・コイヴラ/カラムニウス、ヤンネ・ヒューティアイネン/ニュルヒネン、ヌップ・コイブ/ミルヤ、カイヤ・パカリネン/ヴィクストロムの妻、ニロズ・ハジ/ミリアム、サイモン・フセイン・アルバズーン/マズダック、ヴァルプ/犬のコイスティネン、カティ・オウティネン/用品店の女店主、マリヤ・ヤルヴェンヘルミ/収容施設の女性
12月2日(土)よりロードショー
2017年、フィンランド、98分、フィンランド語・英語・アラビア語、カラー、字幕翻訳/石田泰子、提供/ユーロスペース、松竹、配給/ユーロスペース、後援/フィンランド大使館、協力/国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会、http://kibou-film.com/