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殿様の試写室

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コッポラの胡蝶の夢 FRANCIS FORD COPPOLA YOUTH WITHOUT YOUTH

コッポラの胡蝶の夢
FRANCIS FORD COPPOLA
YOUTH WITHOUT YOUTH


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(C)2007 American Zoetrope, Inc. All Rights Reserved.


    「コッポラの胡蝶の夢」はフランシス・コッポラが10年の沈黙の後に満を持して発表した
    映画です。その原作は、ルーマニアの宗教学者であり、幻想小説家であるミルチャ・エリ
   アーデの小説「若さなき若さ」(‘76)ですが―――

              ミルチャ・エリアーデ(1907~1986)

          1907年ルーマニアの首都ブカレストに生まれる。
          ブカレスト大学で哲学を学び、22歳の時、カルカッタに留学。
          サンスクリット語と東洋哲学を修める。
          帰国後、博士号を取得し、宗教学者に。
          さまざまな大学で講義をしつつ、小説の執筆を開始。
          母国語であるルーマニア語の他にフランス語、ドイツ語、イタリア語、
          英語、ヘブライ語、ペルシア語、サンスクリット語を自由に操るが、
          小説だけはルーマニア語で書き続ける。
          第二次世界大戦中はパリに亡命。
          亡命中も小説を書き、1956年渡米。
          シカゴ大学神学部で教壇に立ち、宗教学者、小説家として活躍し、
          故国には戻らなかった。
          1986年79歳でシカゴにて永眠。

     と、まあ、そんな人物です。
     エリアーデという人そのものが小説のようではありませんか。

     しかし、あのコッポラがなぜこの少し特殊な宗教学者の小説を映画化したのでしょう?

     娘ソフィア・コッポラ(「バージン・スーサイズ」‘99、「ロスト・イン・トランスレーショ 
     ン」’03、「マリー・アントワネット」‘06)の活躍をにこやかに見守る好々爺になって、
     隠居を決め込んでいたとばかりに思っていたところへの登場ですし、
     始原の言語を研究する言語学者を主人公とする時空を超えた幻想小説です。
     コッポラとエリアーデという組合せの意外性にまずびっくりしてしまいます。


     かなり独りよがりな解釈ではありますが、
     言語の始まりは感動表現の始まりであり
     それゆえに感動を求め続ける映像作家F・コッポラが
     映画化に向けて動いたということでしょうか。

    
           1938年ルーマニアにも戦争の足音が近づいてきていました。
           ブカレスト北駅に降り立ったひとりの老人がとぼとぼと歩いています。
           老人の名はドミニク・マティ。
           その昔、婚約者ラウラと別れ、
           愛も人生も、ひとつの研究のために捧げて生きてきました。
           しかし、すでに年老い、研究すらも成果はないまま。
           絶望した老学者はひそかに生を終えるつもりで
           この地にやってきたのです。
           悄然と歩くドミニクに追い打ちをかけるかのごとく
           雨が降り始め、大音響とともに雷が彼を直撃しました。

           目を覚ましたのは病院のベッドの上。
           全身にやけどを負いながら、奇跡的に一命をとりとめたのでした。

           主治医が驚くほどの回復力を見せ、すっかり健康を取り戻したドミニク。
           その肉体も30代にしか見えないほど、若返っていました。
           落雷による急激な電気エネルギーの吸収は肉体のみならず、
           その頭脳にも驚異的な進化を与えます。
           そんなドミニクに接近する恐ろしい魔の手。
           ナチが狙いをつけてきたのでした…

   なんと荒唐無稽な、と眉をひそめるのはしばしお待ちを。

   実際にも、ルーマニアは枢軸国について第二次世界大戦に参戦し、
   ナチスの政策に従っていたという事実があり、戦後はソ連の支配下にありました。
   89年の民主化運動のたかまりの中でチャウシェスク大統領が処刑されたのも
   まだ記憶に新しいできごとです。
   ルーマニアの複雑な状況下で翻弄されたドミニクの人生は
   作者エリアーデの人生でもあったわけです。

   さらに加えて、ドミニク・マティを演じたティム・ロスと
   ドミニクの主治医役のブルーノ・ガンツの演技が
   本作に現実味と深さを与えています。

   ティム・ロスといえば少し首をかしげながら話す姿が印象的な俳優。
   「海の上のピアニスト」(‘99)でも首をかしげてピアノを弾く姿が
   頭にこびりついて離れません。
   そうそう。気の弱そうな上目づかいもこの人の持ち味。
   この映画でも30代の肉体を得て、とまどう姿がとても上品で素敵です。

      あ、ごめんなさい。ちょっと入れ込み過ぎました。

   一方、ブルーノ・ガンツもナーバスな患者・ドミニクを守る医師を好演しています。
   本作は英語での出演ですが、
   今回ばかりは彼らが原作のルーマニア語ではなく
   英語を話していても気になりません。

   といいますのも、この作品の後半になると
   サンスクリット語、バビロニア語、古代エジプト語やら古代語、
   さらにドミニクが自分で考えた人工語までもが出てきて、
   言語のオンパレードだからです。
   こうした言語をきわだたせるためにも耳慣れた英語を使うのは、
   ま、許容範囲の内です。

   そうそう、ドミニクの恋人を演じたアレクサンドラ・マリア・ララ
   (「ヒトラー ~最期の12日間」の秘書役でヒトラーを演じたブルーノ・ガンツと共演)
   は実際にサンスクリット語などを話すのですが、とてもそれらしく聞こえました。

   サンスクリット語を聞いたことがなくても、「らしい」か、「らしくない」かくらいはわかります。
   少なくともティム・ロスは「らしくない」サンスクリット語でしたから。
   なんでも、マリア・ララの母親は言語学者ということですから、
   蛙の子は蛙というところでしょうか。

          言語学者の数奇な運命に、戦争や、時空を超えた愛が絡む、
          というお話ですが、要は古今東西永遠のテーマである不老不死。
          日本にも八百比丘尼などという不老不死をテーマにした話がありますが、
          いくら若く、美しく、頭脳が明晰なままでも、
          親しかった人々が歳をとり、死んでいくのを見送りながら、
          生き続けなくてはならないのはつらいことです。

          Youth without Youth 若さなき若さ…
          悲しい言葉です。

          そして、幻想小説の醍醐味を十分に満喫できるラスト。
          コッポラ監督、まだまだ隠居ではありませんでした。

監督・脚本・製作/フランシス・フォード・コッポラ
原作/ミルチャ・エリアーデ
作家・翻訳・言語指導/ウェンディ・ドニガー

キャスト
ドミニク・マティ/ティム・ロス
ヴェロニカ/ラウラ/ルピニ/アレクサンドラ・マリア・ララ
スタンチェレスク教授/ブルーノ・ガンツ
8月30日(渋谷Q-AXシネマ改め)渋谷シアターTSUTAYA他全国順次公開
配給・宣伝:CKエンタテインメント
www://kochou-movie.jp

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by Mtonosama | 2008-08-10 15:37 | 映画 | Comments(5)
Commented by すっとこ猫 at 2008-08-11 06:33 x
ティム・ロス・・・・レザボア・ドッグスに出てた英国人俳優ではありませんか!好き好き。かなり好き。

そしてエリアーデといえばある知りあいの宗教学者さんが”シカゴ大学院でエリアーデに教わった”というのをよく経歴に書いてるのです。エリアーデって小説も書いたの?

コッポラ老いてますますさかん、か。
Commented by ライスケーキ      at 2008-08-11 22:35 x
戦争・宗教・哲学そして又サンスクリット語、バビロニア語に古代エジプト語・・・。  ルーマニア語も聴いたことのない私には何かようわかりませんが 「落雷によって若返る」などと言うと 「バック・トゥ・ザ・フューチュアー」を何故か思い出してしまう私です。  そこにナチが登場する不老不死をテーマにした幻想小説と言うと どんな映画になるのか
ますますわからなくなる私です。   この疑問を解くためには この映画を観るしか ありませんね。
Commented by との at 2008-08-12 20:55 x
ライスケーキさん。
そうなんです。
長い映画ですが、100年近い年月を展開するにはどんなに長くても足りません。
まして、殿の拙い説明じゃ、ますますわからないかも…
言葉が結構肝要なキーワードです。
ルーマニアの暗~い冬もなかなか楽しめますよ。
Commented by との at 2008-08-12 20:58 x
すっとこ猫さん、
エリアーデを知ってるある宗教学者さんってもしかして●●さん?
かっこいいねぇ。
そうだって。小説も書いているんですってよ。
Commented by すっとこ猫 at 2008-08-16 08:56 x
うん。あの●●さん。

ティム・ロスって“パルプフィクション”にも出てなかった?
ちょっとイってる感じがようございますわね。うふ。