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殿様の試写室

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宮廷画家ゴヤは見た Goya's Ghosts

宮廷画家ゴヤは見た
Goya’s Ghosts

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またまたハビエル・バルデムの登場です。
7月にお知らせした「コレラの時代の愛」まで戻っていただいてその顔をご確認ください。
ね、強烈でしょ?まさに、怪優です。

「宮廷画家ゴヤは見た」。
「家政婦は見た」の別シリーズかい?と聞きなおしたくなるようなタイトルですが、
さすがミロス・フォアマン監督、がつんと映画子の心をつかんでくれました。
「アマデウス」といい、本作といい、歴史ものをこれだけ面白く見せてくれる監督は偉人です。

ゴヤといえば「着衣のマハ」「裸のマハ」を思い浮かべる人が多いと思います。
教科書に載っている割には刺激的な絵でしたし。
「砂に埋もれる犬」や「我が子を食らうサトゥルネス」「異端審問」などの
“黒い絵”といわれる作品群も印象的です。

宮廷画家の娘と結婚し、本人もその職についたゴヤ。
画家として、絶対に食いっぱぐれのない最高職を得、
王や王妃のポートレートを描く一方で、
フランス革命からナポレオン戦争に向かう激動の時代を生きた人です。
また、彼は同時代人として歴史を描きとめる証言者でもありました。
その後、聴力を失い、目も見えなくなり、
最後は住み慣れたマドリードを離れてボルドーに隠遁し、亡くなりました。

彼の人生だけでも相当おもしろい映画ができそうです。

しかし、この映画の主人公はゴヤではありません。
彼は歴史の転換期に立ち会い、スペインにも波及した戦乱の渦中にあって
画家の目で時代を目撃し、証言する人物として登場してはいますが。

そう、主人公は、最初は異端審問にかかわる神父として、
後にはナポレオン政府の重鎮として、
荒れ狂う時代をそのまま体現するかのように生きたロレンソ神父です。
そして、この強烈な個性を演じたのがハビエル・バルデムでした。

      国王カルロス4世の宮廷画家に任命されたフランシスコ・デ・ゴヤ。
        1792年彼は2点の肖像画を描いていました。
       1枚はゴヤの友人である裕福な商人トマス・ビルバトゥアの娘イネス。
      穏やかな微笑みを浮かべたその肖像はため息が出るほど美しいもの。
       そして、もう一枚が異端審問の推進者ロレンソ神父の肖像画でした。

    
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嗚呼、なんという人生のめぐりあわせでしょう。
      ロレンソはアトリエで見たイネスの肖像画に心を奪われてしまったのです。

   さて、先ほどから何度も出てまいります異端審問という言葉。
そもそもは13世紀前半、ヨーロッパの異端審問のために設立された機関です。
ガリレオ・ガリレイが「それでも地球は動いている」
と言ったといわれるあれです。
そうそう、ジャンヌ・ダルクが魔女として火刑に処せられたのも、
この異端審問の結果でした。
とにかく異端と疑われたら問答無用にひったてられ、
残酷な拷問を受け、異端宣告を受けたものは焼き殺されるという
カトリック教会の機関です。

      ある日突然、美少女イネスは審問所から出頭命令を受けます。
      兄たちと出かけた居酒屋で豚肉を食べなかったために
      「イネスはユダヤ教徒に違いない」と告発する者がいたのです。
      イネスの父トマスに頼まれたゴヤは肖像画の代金と修道院の修復費用とを
      引き換えに彼女を助けてくれるようロレンソ神父にうったえます。

      ゴヤの願いを受け、ロレンソが審問所を訪ねると、時すでに遅し。
      イネスは拷問で痛めつけられ、留置所の冷たく不潔な石床の上で
      震えていたのでした。なんと哀れなイネスでありましょう。
      ロレンソは聖職者の身であることも忘れ、
      思わず知らず彼女を抱きすくめていたのでありました。

      時は流れ、イネスはいまだ獄の中。しかし、世の中は大きく動いておりました。
      フランスには革命がおこり、
      その後、フランス皇帝となったナポレオンはヨーロッパを席巻。
      スペインにも介入してまいりました。
      自らの兄ジョゼフをスペイン国王に任命し、スペインに覇権を確立したのです。

      けれど、その結果、異端審問で捕えられていた多くの市民が
      解放されることになりました。
      その中に15年ぶりに自由な空気を吸うことができるイネスもいました。
      両親も兄弟も、そして、美しかった容姿も失ったイネスが。

      ところで、ロレンソはどうなったでしょう。

      いつまで経っても帰ってこないイネスを心配する父トマスは
      強硬手段を取っていたのです。
      ロレンソを自宅に招き、イネス返還と引き換えに
      神父としての尊厳に関わる恥ずかしい告白書を
      書かせたのでした。
      彼女を父のもとに戻すことを約束させられたロレンソでしたが、
      それはかなわぬまま、告白書は国王カルロス4世の手に
      渡ってしまいます。
      ロレンソは聖職を捨て、国外逃亡。

      イネスが獄から解放されたそのころ、
      ロレンソもまたスペインに戻っていました。
      フランス政府の大臣として得意絶頂の帰国です…

   花のかんばせも苦難の15年の後には変質し、
   人生の頂点も歴史のうねりの中ではなんとも儚いもの。
   とはいえ、そんな小さな人生の出会いやら重なり合いが
   歴史をつくっていくのだからおもしろいものです。

      ラストシーンが今も頭の中で回り続けています。

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宮廷画家ゴヤは見た

監督・脚本/ミロス・フォアマン(「カッコーの巣の上で」(‘75)、「ヘアー」(’79)、「アマデウス」(’84)など)
キャスト
ロレンソ神父/ハビエル・バルデム、イネス・ビルバトゥア、アリシア二役/ナタリー・ポートマン、フランシスコ・デ・ゴヤ/ステラン・スカルスガルド
10月全国ロードショー
goya-mita.com

by Mtonosama | 2008-09-01 11:25 | 映画 | Comments(4)
Commented by すっとこ at 2008-09-01 19:49 x
ハビエル・バルデムさん。
どっちが苗字でどっちが名前かわからん人だけど覚えておこう。

ところでこの神父さんはなぜイネスの父に天井から
つるされてしまうのでしょう?卑しい心を見破られてれてしまった?
イネスを救うのに失敗したから?
そして「わたしはサルだ」とダーウィンが泣いて喜びそうな告白書。

ううむ。いつか見たいなあ。
ゴヤといえば50歳過ぎて聴力失ってから肖像画依頼されたアルバ公爵夫人と恋に落ちてしまったんだよね。
彼女の肖像画、人差し指が地面指してるので後世の研究者が調べたら「ゴヤただひとり」と書いた跡が上から塗りつぶされていたとか。恋が終わったときゴヤ自身がそうしたらしい。
Commented by との at 2008-09-01 21:28 x
言葉足らずですみませぬ。

神父さんにイネスを帰らせるようにと
パパ・トマスはゴヤを通じて頼んだのでございますが、
いつまで経ってもイネスは審問所から帰されてきません。

業をにやしたパパは
ロレンソ神父を食事に招き、
イネス奪還のために強硬手段に出ました。
それが神父天井吊下げ事件なのであります。
そして、その苦しい状態で脅しをかけ、サル告白をさせたのですな。

神父がサルとは、まさに異端発言でございます。

そうまでしてイネス返還を誓った神父でしたが、
彼女は帰らず、
告白書も国王の手に渡ってしまいました。
そうなっては、さしものロレンソ神父も
スペインを出るしかないわけでございます。

と、あまり細かい説明はこれからご覧になるすっとこさんには
余計なお世話でありますね。

今後もよろしくご指導ご鞭撻のほど、
よろしくお願い申し上げます。
Commented by ライスケーキ at 2008-09-03 20:59 x
今度は「ゴヤ」の映画ですか いろいろ観られてよいですね。  ゴヤというと 「着衣のマハ」「裸のマハ」そして「カルロス4世家族図」など歴史上の人物を描いた宮廷画家という位の知識しか在りませんがーーー家に10年前に買った彼の評伝が在るけどまだ読んでいなかったーーー 彼の描いた肖像画を観ながら歴史をひもとくと面白いですね。
おっとこれは彼が見たロレンソ神父の話でしたね。 彼が心を奪われた
「ため息が出るほど美しいイネスの肖像画」というのを見てみたい
。  ロレンソ神父もどんな顔していたんだか、ゴヤの作品を見てみたい。  いろいろイマジネーションを働かせながら肖像画を見るのは
楽しいですね。   もちろん映画を見た後でね。

Commented by との at 2008-09-04 06:24 x
ライスケーキさん

ゴヤの生きた時代はヨーロッパの激動期で、
かなり面白いですよ。
学校で習うフランス革命は
「フランス革命の自由と博愛の精神は
ナポレオンによってヨーロッパ中に広がっていきました」
みたいな書き方をしてあったじゃないですか。

その広がり方について
高校生の頭では想像つかない部分もありましたが、
この映画で目からウロコです。面白かったぁ。

イネスと神父の肖像画は
脚本も書いたミロス・フォアマンの創作だと思いますが。