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殿様の試写室

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リダクテッド 真実の価値 Redacted

リダクテッド 真実の価値
Redacted
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© 2007 HDNet Films LLC

リダクト=redact。英和辞典には〈…を編集する〉とあります。
リダクテッド=redactedですから、〈編集された〉ですか。

情報、ここではイラク戦争における情報ということですが、
それはニュースとして私たちに知らされる時点で編集されているのは当然です。

この映画を観て感じるのは、どちらかといえば、〈検閲〉のニュアンス。
軍による検閲、メディアによる自己規制…
ブライアン・デ・パルマ監督が発信してくるのは
〈都合の悪いことは知らせないんだよ、やつらは〉
でしょうか。

   とはいえ、パソコンの中にはリダクトされていない生の情報が満載されています。

監督はある事件を知りました。
イラクに駐留している米国陸軍部隊の兵士が14歳の少女を輪姦し、
彼女を含む家族4人を殺害、その家に放火したという事件です。

      1989年の監督作品「カジュアリティーズ」でもベトナム戦争で起きた
      同じような問題を扱っています。
      ここで監督は戦争の愚かさを告発したはずだったのですが…

      人間は本当に学習するということができないわけで、告発されようが、
      たたかれようが、何度でも同じことを繰り返すのですね。

      ブライアン・デ・パルマ監督も「またかよ」と無力感に襲われたのではないでしょうか?

   彼は真相を知るため、兵士たちのブログやウェブサイト、ホームビデオ映像、
   ”You Tube”の投稿映像などを見ました。
   すると、その恐ろしい事件のすべてが画像としてディスプレイ上にあったというのです。

           突然ですが、ベトナム戦争は開かれた戦争でした。
           米軍はメディアに対し、自由に報道させていました。
           多くのジャーナリストがベトナムで取材。
           殉職した記者やカメラマンも大勢います。
           だから、世界中の人間がベトナムで行われていることを知り、
           反戦運動が拡がっていきました。

   それにこりたからでしょうか。
   アフガニスタンでもイラクでも米軍の報道規制は厳しくなっています。
   でも、戦争ですから、イラクでもベトナムと同じように市民や子どもたちが死んでいます。
   送り手がそれを報道せず、受け手がそれを見ないということは
   何も起きていない、ということになってしまいます。
   イラクで起きていること―――
   ブライアン・デ・パルマ監督は再びそれを伝えようとしています。

      この映画は19歳のエンジェル上等兵(俳優)が撮影する
      プライベート・ビデオを中心にストーリーが展開します。
      映画を構成するのは、除隊後は大学の映画学部への入学を希望する
      エンジェルが撮影するビデオ映像とフランスのテレビ局のニュース、
      (本物の)米兵たちが戦場で撮ったビデオ、You Tube、兵士の妻たちのブログなど。
      ドキュメンタリーかと思わせるのですが、実はフィクションです。

   2006年4月。イラク・サマラの米軍駐留地。兵舎の中で兵士がカメラを回している。 
   戦場の様子を撮影したビデオ・ダイアリーを制作し、映画学部に入学するために、
   兵役に志願したエンジェル・サラサールだ。彼が覗きこむファインダーの先には
   4人の兵士。妻を故郷に残して入隊した27歳のマッコイ伍長。弁護士の彼は
   隊で一番の良識派である。いつも本を手放さない文学青年のゲイブ。
   南部出身のフレーク。ハリケーン・カトリーナの被害者。故郷では仕事もなく、
   刑務所に行くくらいしか選択がないため、入隊した。
   フレークの腰巾着ラッシュは右翼的な戦争プロパガンダをまくしたてるしか能のない大男。
    彼等が任務するのは検問所だ。自爆テロや狙撃の的になりやすい危険だが、
   退屈な場所。そこに制止をふりきって一台の車が猛スピードの車が飛び込んできた。
   フレークがひきがねをひく。急停止する車。
   だが、乗っていたのは産院へと向かう妊婦とその兄だった。
   銃弾を受けた妊婦は搬送先の病院で死亡。
   兵舎でエンジェルの取材に答えて「任務を遂行しただけ」とフレークはうそぶく…

       赤外線カメラを通した暗い屋内の映像やホームビデオを見るような
       どこか視点の定まらない画像。
       その生々しい画面が映画であることを忘れさせます。

ひとりの監督がたまたま知った事件を映画化したのが「リダクテッド 真実の価値」 ですが、
パソコンの中にはいったいどれほどのリダクトされていない真実が埋もれているかと考えると、
真っ暗な情報の海を頼りない筏に乗って漂流しているような
絶望的な気分になってしまいます。

       でも、解決の第一歩は知ること、見ること。
       不都合な真実だって、ちゃんと目を見開いて直視しないといけないんですよね。
       映画を観るのもなかなかつらいものです。

   脚本・監督/ブライアン・デ・パルマ、撮影監督/ジョナサン・クリフ

   キャスト
   パトリック・キャロル/フレーク、ロブ・デヴァニー/マッコイ、イジー・ディアス/エンジェル、
   ケル・オニール/ゲイブ、ダニエル・スチュアート・シャーマン/ラッシュ
   10月25日、シアターN渋谷他全国ロードショー
   www.redacted-movie.com
by mtonosama | 2008-10-06 07:08 | 映画 | Comments(4)
Commented by ライスケーキ at 2008-10-06 20:33 x
ブログ・ウェブサイト・YouTubeに「恐ろしい事件」を公開するなんて罪の意識もないのでしょうか。 パソコンの中には「リダクトされていない真実」もあるけれど「リダクトされている虚偽」も沢山あるよね。 この事件の兵士達は きちんと法で裁かれたのでしょうか。  戦争を起こした国の法律では 正しく裁かれないと思うけどね。
Commented by との at 2008-10-07 05:38 x
最近の米軍がらみで思い出すのは
グアンタナモ基地での捕虜虐待事件ですよね。

兵士たちのウェブサイトを覗くのは怖くてできないけれど、
かつてはそれをジャーナリズトムがやって、怖い事実も
残虐な出来事も私たちは知ることができたんですよね。

毎日グラフで見たソンミ村の虐殺事件の写真など
今も鮮明に記憶に残っています。

一旦兵士たちがネガティヴな方向で舞い上がってしまったら、
一人や二人の良識派が正論で抑えても、
撥ね返されてしまうんでしょうね。
Commented by まゆみん at 2008-10-08 09:15 x
殿sama
 「カジュアリティーズ」より、戦争の狂気のリアルさがホームムービーに近い感触で伝わってくる作品ですか。
 でも、ドキュメンタリーと間違えてしまうくらいの生々しさで迫るこの映像も、フィクションなんですよね。デ・パルマ監督がメディアに送った挑戦状ともいえるような・・・ 真実の価値を見つけられる真実の目を持つことが、現代の情報社会には必要であるってことですね。 
 
 
 
 
Commented by との at 2008-10-08 19:53 x
まゆみんさん

このなまくらで視力の低い目では真実を見ることは
なかなかできません。

デ・パルマ監督もいつまでもお若いですよね。