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蘇る玉虫厨子
時空を越えた技の継承
あのー、文部科学省・特選の
長編ドキュメンタリー映画です。
なんでまた?
とお思いになる方には
虫好きだからとお答えしますね。
「虫愛づる姫君」(高校時代、古典で習いました)
ならぬ〈虫愛づる殿〉にてござります。
虫といってもお堅い乾きものが好きで、
甲虫系は好みです。
ゴマダラカミキリの黒地に白の小さなドットなど、
なんておしゃれなんでしょう。
触角まで白と黒
に色分けされているのですから。
そして、この玉虫です。
コウチュウ目タマムシ科。
「恋愛成就」「蓄財」の言い伝えがあり、
古来より縁起の良い虫として
大切にされてきた虫です。
信じられないほど美しい。
その昔、生きている本物を
見たような記憶がありますが、
最近はとんとお見受けしません。
飛鳥時代のいにしえ人も
玉虫の妖しく輝く翅の色に
魅せられたのでしょう。
法隆寺の金堂に安置された
国宝・玉虫厨子には
約4800匹の玉虫の翅が
装飾につかわれています。
殺生を戒めるお寺で
そんな多くの玉虫を殺して、
と思いますよね。
でも、映画の中でも言っていますが、
蓮が泥の中から
あの清らかな花を咲かせるように、
玉虫もまた朽ち木から生まれる
とてもありがたい生き物なのだそうです。
あまりに美しく生まれたゆえに
仏様にお仕えするよう
運命づけられているのでしょう。
もっとも
玉虫厨子は1400年も昔に造られたものですから、
その美しい翅はごく一部に跡をとどめるのみ。
往時の輝きは
すっかり失われてしまっています。
平成16年春、
いにしえの職人たちが造りだした美しい輝きを
現代に復元しようという
プロジェクトが始まりました。
資料の調査、木材や玉虫の翅の収集から
超一流の腕を持った職人の手配まで。
私財を投じて、
この大変な作業にとりかかったのは、
岐阜・高山で造園会社を経営していた
中田金太さんでした。
中田さんは昨年6月、
完成した厨子を見ることなく
亡くなってしまいました。
その昔、大店(おおだな)の旦那衆が
芸術や文化の援護に協力したものですが、
中田さんはこの仕事で
平成の大旦那になったわけです。
この映画は平成16年から20年まで、
設計、宮大工、彫師、蒔絵師、
塗師、錺(かざり)金具師という匠たちが
とりくんだ大変な作業を記録した
ドキュメンタリー作品です。
カメラはガラス越しに玉虫厨子に対面する
匠たちを映しだします。
推古天皇が礼拝していたという
仏堂形の玉虫厨子は
法隆寺の金堂に安置される国宝ですが、
製作年代や製作者は不明です。
もちろん図面など残っていませんし、
厨子の扉や壁面に描かれた装飾画も
千数百年の時の流れで薄れ果て、
何が描かれているのかも判然としません。
蒔絵師の立野敏昭さんは言います。
「見えないところは見えてくるまで待つんですよ」。
待っていると心眼も開くのでしょう。
いにしえの職人も応えてくれるのでしょう。
次第に下絵もできあがっていきます。
その職人魂には頭が下がります。
玉虫の翅を2ミリ幅にカットし、
それをさらに小さな小さな細片に切りだし、
色別に整理していく作業
(玉虫の翅は青、緑、ピンク、黄色と
光輝く何色もの色から成り立っています)
に専念する職人もいます。
もうほんとに息のつまるような作業です。
彫師によって、
ただの木から蓮のはなびらの連なりが
彫り出され、
屋根のいらかが刻まれていきます。
生地のままの木が
塗師によって漆を塗られ、
輝き始めます。
蒔絵師によって絵が描かれ、
錺(かざり)金具師が精巧な細工の飾りを
取り付けていきます。
別々の地で仕事に励む
職人たちの見事な連携プレイ。
何かができあがっていくところを
見ているのは楽しいものです。
工場見学の楽しさに通じるものがあります。
それにしても、
玉虫ってもう近所で見ることは
できないのでしょうか。
玉虫厨子再現に使われた玉虫は
平成の旦那・中田さんが
中国、台湾、東南アジアから集めたのですが、
その中に日本の玉虫もあったそうです。
子どもの頃に見た生きた玉虫の輝きが
忘れられません。
「平成版・玉虫厨子」公開
場所:上野・国立科学博物館 日本館1階
期間:12月13日~12月21日
9:00~17:00(金曜20:00まで、入館は各閉館時間の30分前まで)
休館日:毎週月曜
入館料:一般・大学生600円(映画半券があれば300円)
高校生以下無料
監督/乾弘明
出演
三国連太郎/出演・語り、大野玄妙(法隆寺管長)、故中田金太(製作総指揮)、立野敏昭(蒔絵師)、中田秋夫(設計施工)、八野明・改田剛(宮大工)、山田耕健(彫師)、坂本茂雄(塗師)、森本安之助(錺(かざり)金具師)他
http://heiseimaster.com/tamamushi/