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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

パリ PARIS

パリ
PARIS

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© CE QUI ME MEUT - STUDIO CANAL- STUDIO CANAL IMAGE – FRANCE2 CINEMA

こんな映画もあるのだなぁ、と試写を観るたびに新しい発見に心ふるえる殿です。
「スパニッシュ・アパートメント」(‘02)で社会に飛び立つ前の青年たちの出会いや挫折、
青春のさまざまな体験を描き、
共感を呼んだセドリック・クラピッシュ監督。
彼の最新作「パリ」がその心ふるわせてくれた映画です。
「若いんだから、大丈夫。失敗するのも若さのせいさ」という若さ全開の青春映画
「スパニッシュ・アパートメント」やその続編「ロシアン・ドールズ」(‘05)とは
ガラリと趣を変えた作品がこの「パリ」。

はっきりしたストーリーはなく(といってアヴァンギャルドではありません)、
登場人物たちはそれぞれの人生を生き、悩み、生活し、夢を持っています。
彼らは兄弟であったり、教師と学生であったり、友人であったり、マルシェの商人であったりします。
挨拶をし、ちょっとした関わりを持ち、本来なら通りすぎていくだけの人々です。
そう、誰もが送っている日々の、その生活の中をよぎっていく人々であり、
誰かの人生のシーンにちらりと登場するだけの人物。
この映画の中で彼らは、ピエールという余命僅かな青年によって
アパルトマンの窓から眺められ、その生活を想像されている存在です。
ただ、同時に、彼らもまた、それぞれの人生を生きている彼ら自身の人生の主役だったのです。

ピエールはムーランルージュのダンサー。心臓病で余命僅か、治療には心臓移植しかなく、その成功率は40%と宣告された。
アパルトマンの窓から通りを眺めながら、心臓提供者が現れるのを待って、静かに過ごしている…

エリーズはソーシャルワーカーとして日々時間に追われながら、生活困窮者や移民たちの相談を受けている。
シングルマザーの彼女は弟のピエールを心配して3人の子どもを連れて、同居を始める…

レティシアはピエールの向かいのアパルトマンに住むソルボンヌの学生。
歴史学の講義を受け、カフェで友人たちとおしゃべりをし、学生生活を送っている…

ロランはソルボンヌで教える歴史学者。歴史学は彼にとって情熱をそそぐ対象ではなく生活の手段に堕してしまっている。
だが、ある日、彼の講義を受けるレティシアに恋をしてしまう…

建築家のフィリップはロランの弟。セーヌ左岸の開発に取り組んでおり、近々子どもも生まれる。
自分は幸せな人生を送っていると思っていたのに、兄ロランから普通すぎる生き方だ、と言われ、悩み始める…

マルシェのジャンとカロリーヌは離婚後も同じ店で働いている。
ジャンはいつも買い物に来るエリーズに思いを寄せ、カロリーヌはジャンの仲間と良い仲になるが…

ピエールがいつもパンを買いに行くパン屋の女主人は客あしらいと従業員への態度が手の平を返したように違う。
従業員の働きを出身地で決め付け、すぐにクビにしてしまうちょっと嫌な人…
今日もパリの空の下にはそんな人々が笑い、泣き、怒りながら、生きています。
40%の生存率に自らをゆだねたピエールはアパルトマンの高みから彼らを眺め、想像します。
ですが、眺める側だった彼が通りに降りてきた日。
通り過ぎていくだけだった人々、彼らの人生。そして、ピエールの人生もまた彼の中にしみてきます。
病院まで送るという姉エリーズの申し出を断り、アパルトマンの玄関で別れを告げ、病院に向かうタクシーの中。
ピエールはその座席に身を横たえ、車窓に映る街並みとパリの空を眺めます。
彼がアパルトマンの部屋の窓から眺めていたまさにその場所に自分の身をおき、
病院へ向かい、彼自身の人生を生きる(その人生は死ぬことも含めています)。
とても感動的なラストです。

タイトルは「パリの人々」でも、「パリの空の下で」でもなく「パリ」。
このシンプルなタイトルにクラピッシュ監督の思いの丈がつまっているような気がします。
修飾語のつかない「パリ」は今日も多くの人々の人生をかかえ、時が流れていきます。



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監督・脚本/セドリック・クラピッシュ
キャスト
ロマン・デュリス/ピエール、ジュリエット・ビノシュ/エリーズ、メラニー・ロラン/レティシア、ファブリス・ルキーニ/ロラン、フランソワ・クリュゼ/フランソワ、アルベール・デュポンテル/ジャン、ジュリー・フェリエ/カロリーヌ、カリン・ヴィアール/パン屋の女主人
12月20日Bunkamuraル・シネマ他全国順次ロードショー
配給・宣伝:アルシネテラン
http://www.alcine-terran.com/paris/index.html

by mtonosama | 2008-12-15 06:38 | 映画 | Comments(6)
Commented by すっとこ at 2008-12-15 12:40 x
クラビッシュ監督というのは
”スパニッシュ~”とか
”ロシアン~”とか
英語圏でない人を撮ってる監督さんなのですね。

そして今度はパリ・・・。

Ordinary People と言う映画がありました。
一見普通に見える家庭の亀裂を描いた映画でした。

フツーって何?
日常・非日常って何?と思わせる映画みたいですね。
それも声高に語るのではなく
ただ川が静かに流れてるように語るでもなく語らぬでもなく。

しみじみと観てみたいなあ、こういうのは独りで、さ。
Commented by との at 2008-12-15 20:14 x
今回は独りで映画を観てみたいすっとこさん
Ordinary Peopleありましたねぇ。「普通の人々」という邦題で。
ホント,「ふつーって何?」ですわ。
いつも「普通にしろ」と言われている身としては。

パリでは、人生はセーヌの流れのようにゆるやかに
流れて行くのでしょうね。
Commented by ライスケーキ at 2008-12-15 22:50 x
しゃれた映画ですね。  ひとり1人の人生が絡み合って パリの街を織りなしていくような。 こういうのも オムニバスと言うのでしょうか。 前にもこういう形式の映画を見た記憶があるのだけれど タイトルが思い出せない。  最近思い出せないことが多くなった。 これも歳と共にフツーの ことかな?  この映画を見たらパリに行きたくなると思う。
Commented by との at 2008-12-16 04:55 x
そうなんです。
これぞフランス映画です。
おっしゃる通り、ひとりひとりの人生によって織りなされたパリなのです。
織物をなさっていらっしゃるから素敵な表現をなさいますね。

そうですね。オムニバスとは思いませんでした。
パリをみつめていったら、この映画ができたとでもいったらいいのでしょうか?
パリを擬人化するとこうなるのかな、といった印象を深くした映画でした。
Bunkamuraル・シネマ20周年を記念した上映ですから、
良い作品を持ってきました。
Commented by すっとこ at 2008-12-16 11:02 x
んまあ、木陰のエビータちゃんの可愛らしいことと言ったら・・・。
ドレスがよくお似合いよ!
Commented by との at 2008-12-16 16:30 x
んまぁ、すっとこさん
エビータじゃぁなくってよ。とのなのよ。