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殿様の試写室

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カテゴリ:映画( 950 )


日本と再生
光と風のギガワット作戦

-2-

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(C)Kプロジェクト


さて、監督と飯田さんが降り立ったのは風力発電機の羽根がぶんぶん回るドイツ。
ドイツはいまや近隣諸国への電力輸出国です。
すごいですね。
青い空に無数の白い羽根が映えてヴィム・ヴェンダースの映画みたいです。

アイスランドでは雪に覆われた荒涼とした大地の中に
温泉が湧き出し、地熱を使って発電していました。

アラブの砂漠にも見渡す限りの太陽光パネルが敷き詰められています。
原発推進国だと思われていた中国だって
「これからは自然エネルギーだよ」と語っています。

アメリカ国防総省ですら、軍移動にとってソーラー発電は必須なんですって。
発電機材が大きくなれば移動の車列が長くなり、
攻撃対象として狙われるからなんだそうです。

そうなんですよね。省エネ革命は世界中で進行しています。
でも、日本政府は福島以後も何もなかったような顔をして
原発復活を目論んでいます。
そこを狙って原発製造で生き残りをはかった某大手家電会社は
粉飾決算までしでかしてしまいました。
どうしてそこまで意固地になるんでしょうかねえ。

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河合さんと飯田さんは世界中の再生エネルギー革命の最前線を回り、
力強い現場を報告してくれます。
日本も頑張らないと取り残されてしまいます。

でもね、日本の地方ってすごいんです。
地方から自然エネルギー発電の胎動が始まっているんですよ。

熊本・阿蘇では自然エネルギー利用システムが根付き始めています。
本作撮影の数日後に起こった熊本地震でも電気が停まることはありませんでした。

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原発によって故郷を奪われた飯館村・飯館電力の小林稔社長は
「太陽光発電を作って仕事を残しておけば、
次の世代が何かやってくれるんじゃないかと思った」と言います。
荒れた畑に並ぶ太陽光発電パネルは
村民を追い立てた原子力発電へのものすごく強いアンチテーゼでもあり、
地方の底力の象徴に見えました。
政府も東京電力もしっかり耳を傾けてくださいよ。

あ、そうそう、地熱発電も始まっていました。
温泉が枯れるとか景観が悪くなるとか反対意見もたくさん聞きましたが、
こうやって実際に見ると希望が湧いてきます。

日本には太陽も水も風も地熱もバイオマスもいっぱいあるではありませんか。
資源大国・日本なんです。

つぶれていた心が膨らみ始めたところに
映画はさらに空気を吹き込んでくれます。
え、IoT?
インターネット・オブ・シングスも
自然エネルギー革命推進に役立つんですか!
SFではなくて、どうも本当に動き始めていることみたいです。

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そうそう、原発推進派が
「ドイツは原発を止めたけど、原発の国フランスから電気を輸入してるよ」とか
「風力発電はあの回転音が体に悪いし、鳥がぶつかって死んじゃうよ」とか
いろいろ言いましたけど、河合監督が自らホワイトボードを使って
そうした批判を論駁していくのも小気味が良いです。

いや、本当に勇気が出ました。

映画のキャッチコピー
「世界を駆動させるのは、あふれる自然の力!」
素敵です!

日本の未来に心が折れかけている皆さん
ご覧になると少し希望が湧いてきます。








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日本と再生
監督/河合弘之(弁護士)、企画・監修/飯田哲也(環境学者)、脚本・編集・監督補/拝身風太郎、制作協力/木村結、撮影/中島喜一、音楽/新垣隆、エンディングテーマ/坂本龍一、
制作・配給/Kプロジェクト、宣伝協力/太秦
2017年2月25日(土)ユーロスペース、横浜シネマリンにてロードショー
2017年、日本、ドキュメンタリー、カラー、www.nihontogenpatsu.com

by Mtonosama | 2017-02-28 05:29 | 映画 | Comments(8)

日本と再生

光と風のギガワット作戦

-1-

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(C)Kプロジェクト

原発事故以降、
原発やエネルギー問題をテーマとした作品はいろいろありました。
知らなくてはいけないと思いつつ、
現状を見聞きし、政府見解を知るほどに、
気が重くなってきていたのでした。

ところが、
本作『日本と再生』は違いました。

世界には風力発電の巨大な羽根が林立しています。
砂漠の太陽熱発電なんてすごいんですから。
そうそうアイスランドも地熱発電をガンガンやってます。
そして
あの飯館村に太陽光パネルがいっぱい並んでいます。
日本のあちらこちらで風力や地熱やバイオマスで
電気を起こしていました。

国がやらないなら地方がやる、
行政がやらないなら民間がやる、個人がやる、です。

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意気消沈している間に
みんな動き始めていました。

そんな勇気と希望を与えてくれるドキュメンタリー映画が『日本と再生』――
再生エネルギーと地方再生の二つの再生をかけたタイトルです。

監督は20年にわたって原発の危険を訴え、
全国で原発差し止め訴訟を行ってきた弁護士の河合弘之。
福島原発事故以降はより一層その活動に力を入れています。

そして、とうとう、
私たちが原発問題をより深く理解するために
自ら映画監督になってしまいました。

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河合弘之監督
1944年生まれ。1968年東京大学法学部卒業。さくら共同法律事務所弁護士。
〈過去にかかわった事件・裁判〉
ダグラス・グラマン事件
秀和VS忠実屋・いなげや事件
ロッテVSグリコ比較広告事件
ちょうど河合弘之弁護士の脱原発は1944年故高木任三郎博士との出会いに遡る。
核化学博士であり、反原発の父と呼ばれた高木との出会いは、
バブル景気の立役者達を辣腕弁護士として支え続けてきた河合に
その後の生き方を見つめ直すきっかけを与えたという。
ちょうどその頃、河合に福島第一原子力発電所3号機のMOX燃料装荷の
差止仮処分申立てへの協力要請が海渡雄一弁護士から受けた。
この時の裁判は惜しくも敗北したが、その後の海渡と河合を結びつけるものとなった。

現在、飯館村民救済弁護団共同代表、「東電株主代表訴訟」弁護団長、
「浜岡原発差止訴訟弁護団」団長、広島、松山、大分「伊方原発差止訴訟」弁護団
などを務める。
〈著作・関連書籍〉
「原発訴訟が社会を変える」(集英社)
「逆襲弁護士 河合弘之」(大下英治著)
「朝日新聞『吉田調書報道』は誤解ではない隠された原発情報との闘い」
(海渡雄一、原発事故情報公開弁護団・弁護団と共著)
「脱原発」(大下英治と共著)など他多数

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監督作品としては
『日本と原発』『日本と原発4年後』に続いて本作が3作目。
監督デビュー作『日本と原発』は東京高等裁判所でも上映されたんですよ。
前2作で原発の危険性をこれでもか、と描きぬいた監督だが、
「原発が危険なのはわかった。でも、どうすればいい?」の声に押され、
本作では、世界の自然エネルギーの実情を知る旅に出ました。
旅の道連れは環境学者の飯田哲也です。
さあ、一体どんなお話でしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。




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日本と再生
監督/河合弘之(弁護士)、企画・監修/飯田哲也(環境学者)、脚本・編集・監督補/拝身風太郎、制作協力/木村結、撮影/中島喜一、音楽/新垣隆、エンディングテーマ/坂本龍一、
制作・配給/Kプロジェクト、宣伝協力/太秦
2017年2月25日(土)ユーロスペース、横浜シネマリンにてロードショー
2017年、日本、ドキュメンタリー、カラー、www.nihontogenpatsu.com

by Mtonosama | 2017-02-25 08:40 | 映画 | Comments(7)

ラ・ラ・ランド
-2-

LA LA LAND

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Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.


アメリカもロサンゼルスもハリウッドも行ったことはありませんが、
本作を観て「あ、ここ知ってる!」って思えるのは
小さい時からおなじみの景色だから。

主人公が踊る向こうに見えるのは
ロサンゼルスの夜景。
懐かしいです。
『理由なき反抗』『マルホランド・ドライブ』――
その他タイトルも忘れてしまったけれど
何度も映画で見たような・・・

群舞シーンは『ウェスト・サイド・ストーリー』ですし。
150歳のとのにはたまりません。
タップダンスは両親の世代が泣いて喜ぶフレッド・アステアの世界でした。
(両親はもういないんですけど・・・)

「ロサンゼルスの現在の生活を
クラシックなミュージカルのスタイルで
描くという新しいアプローチに感心した」
と、多くの大ヒットミュージカルを手掛けてきたプロデューサーも絶賛。
まさに古くて新しく、新しいのに懐かしい映画です。

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ストーリー
映画スタジオのカフェで働く女優志望のミア。
何度オーディションを受けても、ろくに演技もしない内から落とされる。
落ち込んで街を歩くミアの耳に聞こえてくるピアノ。
その音色に導かれ一軒のジャズバーに。
そこでピアニストのセバスチャンに出会う。
それはあまり良い出会いとはいえなかったが。

数日後、パーティ会場のプールサイドで
不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンに再会。
初めて言葉を交わすものの、ぶつかり合う二人。
しかし、互いの才能と夢に惹かれ、恋に落ちていく……

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気温40℃の渋滞中のハイウエイで
イライラしながら車に乗っている人々が突然歌って踊り始める
“Another Day of Sun”

“Another Day of Sun”
作曲:ジャスティン・ハーウィッツ
作詞:ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール

And when they let you down You get up off the ground
Cause morning Rolls around And it’s another day of sun.
And they’ve let you down And morning rolls around
It’s another day of sun. It’s another day of sun.
It’s another day of sun. It’s another day of sun.
Just another day of sun. It’s another day of sun.
So the day has just begun.
It’s another day of sun. It’s another day of sun.

打ちひしがれても 立ち上がり 前を向く また朝が来れば 新しい日だから
打ちひしがれても 立ち上がり 前を向く
また朝が来れば 新しい日 また朝が来れば 新しい日 
また朝が来れば 新しい日 始まったばかり 新しい日 新しい日

ああ、このシンプリシティ。
これこそ思わず口をついて出てくるミュージカルの良さであります。
そして、この圧倒的な迫力!

なんてったって
カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールが道路を封鎖した
限られた時間内で撮影した
圧巻の群舞が展開されるんですから!

そうなんです。
ミュージカルばっかりは観ないことには始まりません。

久しぶりに素敵なミュージカル映画を楽しめました。





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ラ・ラ・ランド
監督・脚本/デイミアン・チャゼル、製作/フレッド・バーガー、ジョーダン・ホロウィッツ、ゲイリー・ギルバート、マーク・プラット、撮影/リヌス・サンドグレン、作曲/ジャスティン・ハーウィッツ、作詞/ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール、エグゼクティブ音楽プロデューサー/マリウス・デ・ヴリーズ、音楽監督/スティーヴン・ギシュツキ、振り付け/マンディ・ムーア
出演
ライアン・ゴズリング/セバスチャン、エマ・ストーン/ミア、カリー・ヘルナンデス/トレイシー、ジェシカ・ローゼンバーグ/アレクシス、ソノヤ・ミズノ/ケイトリン、ローズマリー・デウィット/ローラ、J・K・シモンズ/ビル、フィン・ウィットロック/グレッグ、ジョン・レジェンド/キース
2017年2月24日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
2016年、アメリカ、英語、128分、字幕翻訳/石田泰子、http://gaga.ne.jp/lalaland/

by Mtonosama | 2017-02-22 04:48 | 映画 | Comments(9)

ラ・ラ・ランド
-1-
LA LA LAND

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EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.


ミュージカルというと
『マイ・フェア・レディ』
『メアリー・ポピンズ』
『サウンド・オブ・ミュージック』
『ウェスト・サイド・ストーリー』でストップし、
後に続く作品のなかった150歳のとのです。

これらに共通するのはどれもみんな曲が良いことなんですよねぇ。
中でも『サウンド・オブ・ミュージック』の「マイ・フェイバリット・シングズ」。
ジョン・コルトレーンも演奏していて最高です。




やはりミュージカルは曲が良くなくっちゃ。
でも、新しいミュージカルを毛嫌いするのも頑固な老人みたいだなあ、と反省して
行ってきました。『ラ・ラ・ランド』

夢を追う人の街・ロサンゼルス。
売れないジャズピアニストのセブと女優志望のミアの恋を描いた映画です。
案外オーソドックスでしょ?
だけど、ちょっとビターで大人の恋なんですよ。

LA LA LANDって?
ロサンゼルス、主にハリウッド地域の愛称、
あるいは陶酔し、ハイになる状態、
夢の国―――

素敵なタイトルです。

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監督はデイミアン・チャゼル。
1985年生まれ。
2015年アカデミー賞を含む50を超える映画賞を受賞した『セッション』('15)から2年。
待望の新作が『ラ・ラ・ランド』であります。


『セッション』

世界的ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したニーマンは、伝説の教師と言われるフレッチャーの指導を受けることに。しかし、常に完璧を求めるフレッチャーは容赦ない罵声を浴びせ、レッスンは次第に狂気に満ちていく… (映画.comより)

さて、『セッション』も音楽の映画でしたが、
本作『ラ・ラ・ランド』はすべてがオリジナルのミュージカル映画。
その曲も一度聴いたらつい口ずさみたくなるものばかり。

こんなこと『サウンド・オブ・ミュージック』以来の体験です。
久々にサウンドトラック盤を買いたくなってしまいました。
(あ、これって古いのかな?)

デイミアン・チャゼル監督が本作のアイデアを思いついたのは
ハーバード大学在学中のこと。
彼はこのアイデアを
まずは低予算のミュージカルとして大学の卒業制作にしました。

曲を担当したのは昔からの友人で
『セッション』の楽曲も手掛け、
本作でも作曲を担当したジャスティン・ハーウィッツです。
出来上がったのは本作のパイロット版ともいえる作品でした。

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でも、これは自分がやりたかったことのほんの一部に過ぎなかったんですって。

チャゼル監督が憧れていたのは
『雨に唄えば』だったり
『シェルブールの雨傘』だったり
『ロシュフォールの恋人』
といった往年のミュージカル。

それを聞いて納得しました。

この映画、
新しいのに懐かしい、
古き良き時代のハリウッドを彷彿させるんです。

おっと、いけない、いけない。
またまた先走ってしまいました。

さあ、どんなお話なのでしょうかね。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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ラ・ラ・ランド
監督・脚本/デイミアン・チャゼル、製作/フレッド・バーガー、ジョーダン・ホロウィッツ、ゲイリー・ギルバート、マーク・プラット、撮影/リヌス・サンドグレン、作曲/ジャスティン・ハーウィッツ、作詞/ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール、エグゼクティブ音楽プロデューサー/マリウス・デ・ヴリーズ、音楽監督/スティーヴン・ギシュツキ、振り付け/マンディ・ムーア
出演
ライアン・ゴズリング/セバスチャン、エマ・ストーン/ミア、カリー・ヘルナンデス/トレイシー、ジェシカ・ローゼンバーグ/アレクシス、ソノヤ・ミズノ/ケイトリン、ローズマリー・デウィット/ローラ、J・K・シモンズ/ビル、フィン・ウィットロック/グレッグ、ジョン・レジェンド/キース
2017年2月24日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
2016年、アメリカ、英語、128分、字幕翻訳/石田泰子、http://gaga.ne.jp/lalaland/

by Mtonosama | 2017-02-19 04:30 | 映画 | Comments(8)

ウィーナー
懲りない男の選挙ウォーズ

-2-

Weiner

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(C)2016 AWD FILM LLC, ALL RIGHTS RESERVED.


舌鋒鋭く政敵に迫るアンソニー・ウィーナー下院議員。
論理的に、かつ、明快に迫るその姿。
タジタジとなっている相手を見るにつけ、
ああ、こんな論戦をはれる人が日本にもいたらなあ、
と、つい無いものねだりをしてしまいます。

若くて、そこそこハンサムで、
「闘う政治家」「勇気ある議員」と讃えられるヒーロー。
妻フーマは長年ヒラリー・クリントンの右腕を務めた才色兼備のゴージャスな女性。
二人で並ぶ姿は人々の憧れと敬意を集め、
オバマ大統領に続く民主党の若手として注目されていた
アンソニー・ウィーナー下院議員。

順風満帆とはまさに彼のためにある言葉でした。

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それなのに、
ある日、
あろうことか、
彼はブリーフ1枚の下半身画像をツイッターに投稿してしまったのです!

ハッカー?
誰のしわざか問うよりも
あまりにも雄弁なその画像。
ウィーナーの性スキャンダルは忽ち米国中に知れ渡り、
「闘う政治家」も「勇気ある議員」も泣く泣く辞職するしかありませんでした。

そもそも2016年11月の大統領選で
圧倒的な優勢を誇ったヒラリー・クリントンの
まさかの失速の原因となった私用メール問題は
FBIが彼の捜査をする中で浮上したのだといいます。

げに恐ろしきセクスティング。
政治家にとっては致命的です。

しかし、何と言われようと
ウィーナーには使命があります。
実力もあります。人々の心を動かす情熱もあります。

で、2年後、
ウィーナーはいま再びの想いをこめてニューヨーク市長選に立候補。
「もう一度、チャンスを与えてほしい」と訴える彼の姿は
人々を感動させ、なんと支持率はトップに跳ね上がります―――

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でも、
なんということでしょう!
またしても同じ疑惑が発覚したのです。

昨日まで彼を持ち上げていた世間も、メディアも、掌を返します。
当時のオバマ大統領も「私なら辞める」と冷たく言い放ち、
あのトランプ氏などは「ヘンタイ市長など許さん!」と語気激しく罵ります。

人間の性(さが)と言い切るにはあまりにも愚かしい不始末。
期待させておいてそこで裏切るか・・・

エネルギッシュで、カリスマ性に溢れ、優秀な政治家なだけに
あまりにも無残な結末ではありませんか。
笑っちゃうし、バカだな、と思うんですけど、
なんか一抹の寂しさが残るのは何故なんでしょう。

撮った監督も選挙キャンペーン開始後6週間目の
思わぬ方向転換にとまどったでしょうが、
撮らせた本人もよく最後まで撮らせたものです。

あ、でも、完成した映画は観なかったそうですが。







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ウィーナー
監督・製作/ジョシュ・クリーグマン、エリース・スタインバーグ、製作総指揮/ジュリー・ゴールドマン、クリストファー・クレメンツ、キャロリン・ヘプバーン、リリー・ファン
撮影/ジョシュ・クリーグマン、編集/イーライ・デプレ、脚本/ジョシュ・クリーグマン、エリース・スタインバーグ、イーライ・デプレ
出演
アンソニー・ウィーナー、フーマ・アベディン、ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、バラク・オバマ、ドナルド・トランプ
2017年2月18日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開
2016年、アメリカ、英語、96分、カラー、http://www.transformer.co.jp/m/weiner/

by Mtonosama | 2017-02-16 07:43 | 映画 | Comments(4)

ウィーナー
懲りない男の選挙ウォーズ
-1-

Weiner

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(C)2016 AWD FILM LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

トランプ大統領がアメリカ中を、
いえ、世界中をひっかきまわしている昨今です。

今回、当試写室で上映する本作の主人公、
ウィーナーが何も問題を起こしていなかったら、
FBIはヒラリー・クリントンの私用メールを調べなかったかも。
そうしたら、トランプ大統領は生まれていなかったかも、しれません。

ま、政治の世界で「たられば」を言っても始まらないんですけどね。

え、ウィーナーって誰かって?

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アンソニー・ウィーナー
1964年、NY・ブルックリンに弁護士の父と高校の数学教師の母の間に生まれる。
1985年、ニューヨーク州立大学プラッツバーグ校で政治学の学資を取得し、卒業。

1991年、27歳で南ブルックリン区からニューヨーク市議選に立候補し、
ニューヨーク市史上最年少の市議に。
1998年、連邦議会選挙に初出馬し、当選。
2005年、ニューヨーク市長選に立候補し、落選したが、強力な次点候補になる。

2010年、長年ヒラリー・クリントンの側近だったフーマ・アベディンと結婚。
2011年5月27日、ウィーナーはツイッターの公式アカウントから
自身の卑猥な写真を女性フォロワーに送信。
当初は否定していたが、
「過去3年間で約6人の女性と卑猥なメッセージや写真のやり取りをしていた」
と認める。

この行為はセクスティング(Sexting)と言われ、性的なテキストメッセージまたは写真を携帯電話間で送る行為であり、sexとtextingの混成語である。textingとはSMSのことである。(Wikipediaより)

2011年6月21日、正式に議員辞職。

2013年5月、本作の始まりでもあるニューヨーク市長選に立候補。

さて、本作は2011年のセクスティング騒ぎで政治の世界から転落した
ウィーナーがNY市長選で奇跡のカムバックを遂げる―――
という感動のドキュメンタリーになるはずだったのですが・・・

ところが、
人生には何が起こるかわかりません。

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監督はジョシュ・クリーグマンとエリース・スタインバーグ。
ジョシュはウィーナーが2005年に市長選に立候補した時、スタッフとして働き、
後にスタッフのNYチーフとなった人物。

政治を離れ、映画の世界に入りましたが、
ウィーナーとの関係は続いていて、2013年の市長選に立候補すると聞いた時、
その様子を記録しようと本作の撮影を開始。
選挙キャンペーン初日から最後まで撮り続けました。

エリースはジョシュと映画やTVのプロジェクトで共同監督を務めてきた人。
映画を撮り始めたときはすごいカムバック・ストーリーになると思っていたそうです。
ま、それが思わぬ方向転換。

エリースの場合、ジョシュとは違ってウィーナーに対する認識は
ニュースで得た程度。きわめて中立的な立場でした。

それにしても、本作はどうして方向転換を遂げることになったのでしょう。

続きは次回まで乞うご期待ということで。



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ウィーナー
監督・製作/ジョシュ・クリーグマン、エリース・スタインバーグ、製作総指揮/ジュリー・ゴールドマン、クリストファー・クレメンツ、キャロリン・ヘプバーン、リリー・ファン
撮影/ジョシュ・クリーグマン、編集/イーライ・デプレ、脚本/ジョシュ・クリーグマン、エリース・スタインバーグ、イーライ・デプレ
出演
アンソニー・ウィーナー、フーマ・アベディン、ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、バラク・オバマ、ドナルド・トランプ
2017年2月18日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開
2016年、アメリカ、英語、96分、カラー、http://www.transformer.co.jp/m/weiner/

by Mtonosama | 2017-02-13 05:50 | 映画 | Comments(2)

たかが世界の終わり
-2-

Juste la fin du monde

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(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual


グザヴィエ・ドラン監督の監督の背景にはいつも
ゲイと母があったのですが、本作では家族も登場します。
はい。ゲイも母も家族も全部出るということです。

若い監督さんの場合、とがってて
触るとケガをしちゃいそうな部分ってありますよね。

自分のことを思い返してみても
親や家庭、家族なんて「なんぼのもんや」ってとんがらかっておりましたしね。
あ、いまは年の功できわめて温厚ですが。

それにしても、
グザヴィエは28歳にして既に老大家の視点を持っているような。
そんなグザヴィエの最新作とはどんなお話でしょうか。

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ストーリー
空港からタクシーに乗り込み、実家に向かう人気作家のルイ。
12年ぶりに会う兄を待ちわびていたシュザンヌが抱きついてくる。
幼い頃の彼女しか記憶にないルイは戸惑う。
兄の妻カトリーヌに「初めまして」と挨拶すると
「一度も会っていないの?」と大げさに驚いてみせる母。
重い気持ちを抱えて戻ってきたルイを
母、妹、兄嫁は明るく優し気に迎える。

会話を続けようと子供の話をするカトリーヌに
「ルイが退屈してるだろ」と決めつけ、
それを咎めるシュザンヌを「化粧が濃いぞ」とけなす兄アントワーヌ。
言い合いを始める兄妹の傍らで、
カトリーヌはルイのもの言いたげな視線に気づく。

不機嫌な兄を避け、シュザンヌはルイを自分の部屋に連れてゆく。
都会で成功した兄に憧れ、雑誌や新聞に載った彼の記事を集めていたシュザンヌ。
だが、気が付けば絵葉書しか送ってくれないルイを責めていた。
「どうして急に帰ってきたの?」
真相に迫る問いかけをしながら自らはぐらかしてしまう妹。
答えない兄。

一方、物置部屋で母はルイと向き合う。
引っ越し先の住所を教えない息子に嘆きながら、それでも抱きしめる母。
「なぜ帰ってきたの?」
と訊ねた母にやはり答えられないルイ。
母は息子の深刻そうな表情を見ると
「元気そうでよかった」と話を変えてしまう。
「今日は泣いたり、告白したりする日じゃないわ」

昼食の席で兄アントワーヌの憎々しい物言いはさらに激しく、
シュザンヌとの激しい口げんかになる。
怒りのあまり席を立つシュザンヌ。
兄を叱責する母。
ルイもかつての自分の部屋に逃げ込み、
若き日の甘い思い出に耽る。

兄とタバコを買いに出かけるルイ。
車内でも怒るアントワーヌ。
「なんで帰ってきたんだ」とキレ、荒々しく車を走らせる。

帰宅し、母自慢のデザートを囲む家族を前にルイは……

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朝、実家に帰り、夕暮れには戻っていく――その一日を描いているのですが、
ルイの懊悩が昏いまなざしとなって深部を流れているような印象の映画です。

ルイは言おうとしているのに母も妹も兄もそれを聞こうとしません。
まるで耳をふさいでいるみたいに。

「アントワーヌ、なんなの?あんたは怒鳴ってばっかりいて」
とのが親だったら一喝しちゃいます。
「ルイも、ルイよ。話があって帰ってきたんなら、さっさと言っちゃいなさい」とも。

でも、それだったら面白くもなんともないですわね。

もう子供じゃなくなった自分が久々に帰郷しても
居場所もなければ、立ち位置もわからなくなっている。
家族も何かを察していながらそれを聞かないことで家族であり続けようとする―――

そんなの家族じゃない?

それでも、死期が迫ったら帰っていきたいところは家族の許なのかもしれませんね。

それにしても、ヴァンサン・カッセル演じる不機嫌な兄。
すごかったです。
『トム・アット・ザ・ファーム』にも出てきた
怖ろしいおにいさんを思い出してしまいました。

どうぞ、また一回り大きくなったグザヴィエ・ドランの新作をご覧になってください。





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たかが世界の終わり
監督・脚本/グザヴィエ・ドラン、原作/ジャン=リュック・ラガルス、撮影/アンドレ・テュルパン、音楽/ガブリエル・ヤレド、美術/コロンブ・ラビ、編集/グザヴィエ・ドラン
出演
ギャスパー・ウリエル/ルイ、レア・セドゥ/スザンヌ、マリオン・コティヤール/キャサリン、ヴァンサン・カッセル/アントワーヌ、ナタリー・バイ/母
2017年2月11日(土)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAロードショー
カナダ・フランス合作映画、99分、カラー、字幕翻訳/原田りえ、
http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/

by Mtonosama | 2017-02-10 06:58 | 映画 | Comments(8)

たかが世界の終わり
-1-

Juste la fin du monde

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(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual


グザヴィエ・ドランの第6作目にして最新作。
『たかが世界の終わり』です。


グザヴィエ・ドラン監督
『マイ・マザー』(’09)で監督デビューした時はなんと19歳。
2010年『胸騒ぎの恋人』では
弱冠20歳でその後の創作スタイルを固めます。
2012年『私はロランス』
性にまつわる様々な障害や偏見が以前ほどではなくなった90年代が舞台。
LGBTをめぐる問題を前面に打ち出した映画で、
日本で初めて紹介されたドラン作品となりました。
2013年『トム・アット・ザ・ファーム』
主人公トムが交通事故で死んだ恋人ギョームの葬儀に出席するため、
彼の実家を訪ねたことから始まるちょっと怖い映画でした。
http://mtonosama.exblog.jp/23216811/ http://mtonosama.exblog.jp/23232949/
2014年『Mommy/マミー』
奔放なシングルマザーと矯正施設から退所してきたばかりの
多動性障害を持ち、情緒の不安定な15歳の少年。
そんな母子の生活に休職中の高校教諭も巻き込んで展開する
心と心のぶつかり合いを描いた作品。
いやあ、ドランって年を経るごとに映画も成長していくようです。
http://mtonosama.exblog.jp/23915924/ http://mtonosama.exblog.jp/23926931/
そして
2016年『たかが世界の終わり』

新作発表の度にカンヌやベネチアの国際映画祭に出品され、
『Mommy/マミー』など、あのジャン=リュック・ゴダール監督と並んで
カンヌ国際映画祭審査員特別賞に輝いています。
授賞式で「夢を捨てなければ、世界は変えられます」と
熱く語ったのは記憶に新しいところです。


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実は、心のどこかで一過性の美男子監督だと思っていました。
いやいや、とんでもない間違いでした。
一体どこまで進化するのか。グザヴィエ・ドラン。

本作の原作はジャン=リュック・ラガルスの同名戯曲で、
監督デビュー作『マイ・マザー』の母親役を演じた
アンヌ・ドルヴァルから渡されていたものでした。
でも、その時は作品に反感を覚え、しまい込んだまま忘れていたそうです。

それから4年経って、ふと読み返してみると
登場人物の言葉や感情、不安などがよく理解できたんですって。
本作の理解には自分自身が大人になることが必要だったんでしょう。
といっても、その時点でもまだ23歳ですが。

その戯曲に登場するのは
12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。
母マルティーヌは息子の好物料理を用意し、
兄が出て行った時はまだ幼かった妹のシュザンヌも
おしゃれをして兄を待ちわびます。
そっけなく迎える兄のアントワーヌ。
その妻カトリーヌとは初対面です。

登場人物はこの5人のみ。
舞台も飛行場と故郷の家と庭だけ。
そして繰り広げられる歓迎とおしゃべり――
そんな戯曲をもらったら
19歳のグザヴィエならずとも、書棚にしまいこんでしまうことでしょう。

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が、しかし、
そうはさせないのが大きく成長したグザヴィエ・ドラン監督の力量であり、
俳優たちの名演技。

12年ぶりに自分に死が迫っていることを告げるため、
帰郷したルイを演ずるのは
『サンローラン』(’14)のギャスパー・ウリエル。
妹シュザンヌには
女優として初めてカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたレア・セドゥ。
弟ルイにコンプレックスを抱く兄アントワーヌは
『美女と野獣』のヴァンサン・カッセル。
その妻カトリーヌには『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で
アカデミー賞を受賞したマリオン・コティヤール。
母マルティーヌを演じるのは『私はロランス』についで
再びドランと組むナタリー・バイ。

この5人の丁々発止のやりとりと
触れ合えそうで触れ合えないもどかしさ、
家族でありながら、いえ、家族だからこそ傷つけあう人々―――

これはもうこの5人でなければ生まれえないものだったでしょう。

怖いほどに進化するグザヴィエ・ドラン監督。
さあ一体どんなお話なのでしょう。

続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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たかが世界の終わり
監督・脚本/グザヴィエ・ドラン、原作/ジャン=リュック・ラガルス、撮影/アンドレ・テュルパン、音楽/ガブリエル・ヤレド、美術/コロンブ・ラビ、編集/グザヴィエ・ドラン
出演
ギャスパー・ウリエル/ルイ、レア・セドゥ/スザンヌ、マリオン・コティヤール/キャサリン、ヴァンサン・カッセル/アントワーヌ、ナタリー・バイ/母
2017年2月11日(土)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAロードショー
カナダ・フランス合作映画、99分、カラー、字幕翻訳/原田りえ、
http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/

by Mtonosama | 2017-02-07 06:02 | 映画 | Comments(7)

エゴン・シーレ
死と乙女
-2-

EGON SCHIELE –TOD UND MÄDCHEN

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(C)Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH


その画家の作品が好みに合い、演ずる役者が美形で、
さらに、その人生が破天荒で、
その生きた時代に惹かれるのであれば、
やはり観てしまう――
エゴン・シーレはそんな絵描きです。

そして、彼をとりまく女性たちの存在や生き方にもそそるものがあるんですねえ。
さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。

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ストーリー
1918年冬、第一次世界大戦下のウィーン。
その年、世界中に広がったスペイン風邪のため、
画家エゴン・シーレとその妻エディットも床についていた。

スペイン風邪:1918年から19年にかけて世界的に大流行したインフルエンザのパンデミック。感染者5億人、死者5千万人から1億人と爆発的に流行した。一説によると、この大流行により多くの死者が出たため、第一次世界大戦終結が早まったと言われている。

兄の身を案じたゲルティが看病にやってきた。
殺風景な部屋で妊娠中のシーレの妻エディットは死にかけており、
シーレも弱り切っていた。
―――――
8年前、ウィーン美術アカデミーを退学したシーレは
仲間たちと「新芸術家集団」を結成。
その頃、シーレのモデルを務めていたのは16歳になる妹のゲルティだった。

ある夜、仲間と酒を飲んでいたシーレは
「タヒチの部族長の娘」という触れ込みの褐色のモデル・モアに知り合う。
エキゾチックなモアに夢中になるシーレ。
そして、モアに嫉妬するゲルティ・・・

モルダウ河に沿ったクルマウの一軒家での新芸術家集団との狂宴の中
シーレの脳裏をよぎる父の姿。
幼い頃、有価証券をはじめとする一家の資産をすべて暖炉に投げ込み、
梅毒に侵され、狂い死んだ父。

1911年
尊敬するグスタフ・クリムトのアトリエを訪れるシーレ。
そこで彼は燃えるような赤毛と青い瞳が印象的なヴァリと運命的な出会いを果たす。

シーレとヴァリはノイレングバッハで暮らし始める。
ヴァリはシーレにとってかけがえのないパートナーとなっていた。
ところが
シーレは13歳の少女の誘拐罪で告発されてしまう。
それどころか幼児性愛者というレッテルを張られることに。
シーレから離れていくパトロン達。
1912年5月、ヴァリは裁判でシーレの無罪を証言し、彼は禁固刑を免れる。

裁判の後、ウィーンのアトリエに移り住んだシーレとヴァリは
向かいに住む中産階級の娘アデーレ・エディット姉妹の好奇の的となっていた。
やがて第一次世界大戦が勃発。
ゲルティはかつてはシーレの仲間だったアントンと結婚。
式に出席したヴァリは
「私は結婚を求めない」とシーレに告げるのだった……

その後、シーレも徴兵されるのですが、
「結婚協定」――結婚している兵士は戦場に妻を同行し、
兵舎ではなくホテルで夜を過ごすことができる――
に飛びついて結婚相手に選んだのはなんとヴァリではなく、
中産階級の娘エディットでした。

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どんなに自由奔放に生きる芸術家でも
結婚相手となると自分の身分に属する相手を選ぶ――
そんな時代だったんですね。

泣き喚くことなく毅然としてシーレの許を立ち去るヴァリの姿が
美しいのです。

従軍看護婦としてダルマチア戦線へ赴いたヴァリは
2年後、猩紅熱で死去します。23歳でした。

ヴァリの美しさと凛々しさと悲しさが際立つ作品です。







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エゴン・シーレ 死と乙女
監督/ディーター・ベルナー、脚本/ヒルデ・ベルガー、ディーター・ベルナー、原作/“Tod und Mädchen:Egon Schiele und die Frauen”「死と乙女:エゴン・シーレと女性たち」ヒルデ・ベルガー著、撮影/カーステン・ティーレ、美術/ゲッツ・ワイドナー
出演
ノア・サーベトラ/エゴン・シーレ、ゲルティ/マレシ・リーグナー、ファレリエ・ペヒナー/ヴァリ・ノイツェル、ラリッサ・アイミー・ブレードバッハ/モア、マリー・ユンク/エディット、エリーザベト・ウムラウフト/アデーレ、コーネリウス・オボンバ/グスタフ・クリムト
2017年1月28日(土)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
2016年、オーストリア・ルクセンブルグ作品、ドイツ語、109分、http://egonschiele-movie.com/

by Mtonosama | 2017-02-04 06:56 | 映画 | Comments(6)

エゴン・シーレ
死と乙女
-1-

EGON SCHIELE –TOD UND MÄDCHEN

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(C)Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH


オーストリアの画家といえば
やはりグスタフ・クリムトとエゴン・シーレが浮かびます。
二人は同時代人であり、
ウィーン分離派の画家であります。

ウィーン分離派
1897年にクリムトを中心に結成された芸術家のグループ。
分離派会員でもある建築家、オルブリッヒの手になる分離派会館の屋根には
巨大な黄金のキャベツが燦然と輝き、
入り口には
Die Zeit Ihre Kunst,Ihre Kunst Ihre Freiheit.
(時代には芸術を、芸術には自由を)
という分離派のモットーが掲げられている。

嗚呼、憧れの世紀末、憧れのウィーンなのであります。

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今回、当試写室で上映するのは20世紀の幕開けと共に
ウィーン画壇に出現し、スキャンダルと挑発的な作品を遺し、
28歳の若さで夭折したエゴン・シーレのお話です。

いつも言っているような気がしますが、
画家を主人公にした作品に納得できるものは少ないです。
例外として、2015年6月に上映した『ターナー、光に愛を求めて』がありますが。
http://mtonosama.exblog.jp/24148726/ http://mtonosama.exblog.jp/24159520/

『クリムト』もあんなに綺麗な女の人の絵を描くのに
なんでこんなキューピーさんの出来損ないのようなおじさんなの?と幻滅しました。
あ、ターナーを演じたティモシー・スポールも仏頂面でしたねえ。
でも、ターナーは風景画の画家だからまだ良いんですよ・・・

絵画は映画を通してではなく、実作を見るしかないという
偏見の塊になってしまっているとのです。

しかし、また悪い癖が出て、
エゴン・シーレの名に惹かれて観に行ってしまいました。

エゴン・シーレの名に惹かれただけではなく、
彼を演じた俳優がとっても美形だったということを
白状しない訳にはまいりますまい。

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エゴン・シーレ
1890年、鉄道官吏の父アドルフと母マリーの第3子として生まれる。
1894年4歳、妹ゲルトルート(愛称ゲルティ)誕生。
1902年12歳、父アドルフ、梅毒により退職。
この年、グスタフ・クリムトがウィーン分離派を結成。
1904年14歳、父死去。叔父が後見人に。
1906年16歳、名門ウィーン美術アカデミーに史上最年少で入学。
1907年17歳、ウィーンにアトリエを構える。クリムトと知り合う。
この年、アドルフ・ヒトラーがウィーン美術アカデミーに2年連続で不合格。
1909年19歳、ウィーン美術アカデミーを退学。友人と「新芸術家集団」を結成。
画家としてデビュー。
1910年20歳、後見人と決別し、生活が困窮。
労働者層の少女らをモデルにした裸体画や自画像を描き始める。
1911年21歳、母の故郷クルマウにアトリエを移す。
クリムトから譲られたモデル、ヴァリと同棲。村人の反発でノイレングバッハに移る。
1912年22歳、ノイレングバッハ事件
不道徳、未成年誘拐の容疑で24日間の獄中生活。釈放後はウィーンにアトリエを移す。
1913年23歳、ミュンヘン、シュツットガルト、ベルリンで個展。
1914年24歳、アトリエの正面に住む中産階級の姉妹アデーレ、エディットと知り合う。
1915年25歳、ヴァリと別れ、エディットと結婚。
その4日後。召集を受け、プラハで入隊。
この年「死と乙女」を描く。
1918年28歳、第49回ウィーン分離派に参加、画家としての地位を確立。
スペイン風邪の大流行により妊娠中の妻エディットが死去。
看病していたシーレも3日後に死亡。

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数多くのモデルとラブアフェアーズを楽しんだというエゴン・シーレ。
その中でもとりわけ大きな存在となったのは
献身的に兄を支え、モデルを務めた妹ゲルティ。
そして、
クリムトのモデルを経て
シーレとは公私にわたってのパートナーであり、
彼の表現世界におけるミューズであり続けたヴァリ。

エゴン・シーレといえば女性遍歴が激しく
退廃的でスキャンダルに満ちた画家というイメージが強いのですが、
さて、本作ではどのように描かれているのでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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☆2017年2月1日に更新しました。風邪が流行っています。皆さまどうぞご自愛くださいね☆

エゴン・シーレ 死と乙女
監督/ディーター・ベルナー、脚本/ヒルデ・ベルガー、ディーター・ベルナー、原作/“Tod und Mädchen:Egon Schiele und die Frauen”「死と乙女:エゴン・シーレと女性たち」ヒルデ・ベルガー著、撮影/カーステン・ティーレ、美術/ゲッツ・ワイドナー
出演
ノア・サーベトラ/エゴン・シーレ、ゲルティ/マレシ・リーグナー、ファレリエ・ペヒナー/ヴァリ・ノイツェル、ラリッサ・アイミー・ブレードバッハ/モア、マリー・ユンク/エディット、エリーザベト・ウムラウフト/アデーレ、コーネリウス・オボンバ/グスタフ・クリムト
2017年1月28日(土)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
2016年、オーストリア・ルクセンブルグ作品、ドイツ語、109分、http://egonschiele-movie.com/

by Mtonosama | 2017-02-01 05:48 | 映画 | Comments(8)