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殿様の試写室

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カテゴリ:映画( 988 )


ローマ法王になる日まで
-1-

Chiamatemi Francesco-ⅱPapa della gente

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(C)TAUDUE SRL 2015


4年前の3月13日、
史上初のアメリカ大陸出身の
法王が誕生しました。
第266代法王フランシスコ1世です。

先代ベネディクト16世が
いかにもドイツ人という
いかつい方だったので、
新法王はとても気さくなおじいさん、
という印象を受けました。

このアルゼンチン出身の
ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿が
第266代ローマ法王フランシスコ1世に
就任しての初仕事は
就任式の式典時間を短縮したこと。

法王を一目見るために集まった
サンピエトロ広場の
20万人の信徒との直接の触れ合いに
時間を割きました。
従来とは全然違うタイプの法王様です。

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法王就任後初の記者会見で
「私は貧しい人々による
貧しい人々のための
教会を望みます」

と発言。
「日本のキリスト教共同体は
200年以上も聖職者なしで
維持されたのです」

ともおっしゃいました。

スコセッシ監督の『沈黙』
http://mtonosama.exblog.jp/27453065/ 
http://mtonosama.exblog.jp/27462086/

を鑑賞されたのでしょうか。
日本の隠れキリシタンを例に挙げての
「信徒たちが自律的に信仰を貫くように」
という発言です。

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同性愛者を受け入れるという改革は
成立こそしませんでしたが、
「神は新しいことを恐れていないのです。
神が絶えず思わぬ方法で私たちを驚かせ、
私たちの心を開かせ、
私たちを導いていることからもわかります。
神は常に私たちを”新しいもの”にしているのです」

2014.10/19
(ローマ法王庁:パウロ6世の列福式での法王フランシスコからのメッセージより)

と語り、旧態然とした法王庁に新風を吹き込んでいます。

法王庁改革に取り組み
貧しさや困難にあえぐ人々に寄り添い、
環境問題、人種差別、金融システムにも言及し、
「壁を作る」と発言したトランプ大統領候補に
苦言を呈し、
「ローリングストーン」誌の
表紙を飾ったこともあります。

ご覧になった方も多いと思いますが
信徒の足に口づけする法王の
姿には新鮮な驚きを感じました。

第266代ローマ法王フランシスコ1世
教皇就任2013年3月13日
先代ベネディクト16世
司祭叙階1969年12月13日
司教叙階1992年6月27日(ブエノスアイレス補佐司教)
その他2001年:枢機卿
本名ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ
Jorge Mario Bergoglio
出生 1936年12月17日(80歳)
アルゼンチン、ブエノスアイレス
原国籍 アルゼンチン
宗派カトリック(イエズス会)
居住地 バチカン
母校ブエノスアイレス大学
Wikipediaより

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さ、そんな法王ですが、
本作は
♪聖なる、聖なる、聖なるかな♪
と彼を讃える映画ではないんですよ。

以前『光のノスタルジア』
http://mtonosama.exblog.jp/24535828/
という映画を当試写室で上映しました。

この作品はチリ軍事支配下の民衆弾圧を
描いた素晴らしいドキュメンタリー映画ですが、
『ローマ法王になる日まで』も
アルゼンチン軍事独裁政権下での
圧制、迫害が重要な背景になっています。

あの優しいお顔の法王が
どんな時代を生きてきたのでしょう―――
さあ、
続きは次回まで
乞うご期待でございます。





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ローマ法王になる日まで
監督・原案・脚本/ダニエーレ・ルケッティ、原案/マルティン・サリナス、ピエトロ・ヴァルセッキ、
脚本/マルティン・サリナス、撮影/クラウディオ・コッレピッコロ、イヴァン・カサルグランディ、
製作/ピエトロ・ヴァルセッキ
出演
ロドリゴ・デ・ラ・セルナ/ホルヘ・ベルゴリオ(1961~2005)、セルヒオ・エルナンデス/ホルヘ・ベルゴリオ(2005~2013)、ムリエル・サンタ・アナ/アリシア・オリベイラ、ホセ・アンヘル・エヒド/ヴェレス、アレックス・ブレンデミュール/フランツ・ヤリクス、メルセデス・モラーン/エステル・バッレストリーノ、ポンペイオ・アウディヴェルト/アンジェレッリ、パウラ・バルディーニ/ガブリエラ
6月3日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、
YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
2015年、イタリア、スペイン語・イタリア語・ドイツ語、113分、カラー、字幕/山田香苗、ダニエル・オロスコ、提供・配給/シンカ、ミモザフィルムズ、後援/駐日バチカン市国ローマ法王庁、アルゼンチン大使館、イタリア大使館、イタリア文化会館、セルバンテス文化センター東京、
推薦/カトリック中央協議会広報、http://roma-houou.jp/

by Mtonosama | 2017-05-19 07:13 | 映画 | Comments(2)

オリーブの樹は
呼んでいる

-2-

El Olivo

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(C)Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Pelicula A.I.E


日本ではよく大木に
注連縄をつけ、
白い紙を飾り、
(紙垂(しで)っていうんですって)
神様みたいに
大事にしています。

外国にそういう考えは
ないのでしょうかねぇ?

2000年も自分の土地にある巨木って
とても大事な存在。
売り払うなんてこと
できないと思うんですが。

「そうだよなぁ」
とポール・ラヴァ―ティさんも
思ったんでしょう。きっと。

だから、
この脚本を書き上げました。
夫婦で作った
とってもヒューマンな映画です。

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ストーリー
スペイン・バレンシア州の田舎町。
そこの養鶏場で働く20歳のアルマ。
少し気が強く
父親とは口げんかばかりだが、
オリーブ農園を経営する祖父
とは心が通じ合っている。

でも、
その祖父は何年も前から
話すことをやめてしまっていた。
近所の人とも家族とも
孫娘のアルマとすら喋ろうとしないのだ。

それは息子のルイスが
家族で細々と経営するオリーブ農園を嫌い、
スペインの好景気時代に
樹齢2000年のオリーブの大木を
売り払って商売を始めたからだ。

好景気は去り、
経済危機をもろに食らったルイスは
実家に戻るしかなく
父子の関係はギクシャクしたまま。
祖父はついに食事も摂らなくなってしまった。

アルマは考えた。
祖父を救えるのはあのオリーブの樹だけ。
なんとか、あの樹を取り戻さなければ――

アルマの友人たちは
その思いつきを諦めさせようとする。
だが、彼女は
変わり者の叔父アーティチョークや
養鶏場の同僚ラファを口車に乗せ、
友人たちや町の住人たちも
説き伏せてしまう。

ドイツのどこかに移植された
オリーブの樹を取り戻す―――

こんな荒っぽい想いだけで
計画も、金もなく、
ラファにトラックを手配させ、
一路ドイツへ。

だが、その樹の放つ独特なオーラ故、
アルマの友人たちは
その樹がどこにあるかつきとめた。
なんと、
2000歳のオリーブは
デュッセルドルフの環境企業の
ロビーにあったのだ。

一方、食事を摂らなくなった老人と
樹齢2000年のオリーブの樹を
元の場所に戻そうという孫娘のニュースは
ソーシャル・ネットワークを通じて
ヨーロッパ中を駆け巡っていた。

デュッセルドルフに到着した3人。
だが、オリーブの樹を返そうと
3人を待ち受けている人などどこにもいない。

アーティチョークとラファは
ここに来て初めてアルマが
嘘をついていたことを知る。

が、しかし、
この挑戦に乗り出したのは
自分たちだけではないことも知ったのだった……

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スペインからドイツ・デュッセルドルフまでの
ロードムービーです。

祖父と孫娘の深い絆。
それはこの地に生きてきた農民たちの
血流を物語るものでもありましょう。

さらに
家族愛を語り、
その背景に厳然と存在する社会問題にも
目を向けながら、
人が生きるには何が大切なのか。

そんな
昔から変わらない
スローで温かい存在を
大地と自然を通じて教えてくれる
心温まる映画でした。





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オリーブの樹は呼んでいる
監督/イシアル・ボジャイン、脚本/ポール・ラヴァ―ティ、製作/フアン・ゴルドン(モレナ・フィルムズ)、共同製作/ミヒャエル・ヴェバー、ヴィオラ・フューゲン(ザ・マッチ・ファクトリー・プロダクションズ)、
撮影/セルジ・ガジャルド
出演
アンナ・カスティーリョ/アルマ、ハビエル・グティエレス/アーティチョーク、ペップ・アンブロス/ラファ、マヌエル・クカラ/祖父ラモン、
ミゲル・アンヘル・アラドレン/父ルイス・ミゲル
5月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2016年、スペイン、99分、字幕翻訳/安藤里絵、配給/アット エンタテインメント
http://olive-tree-jp.com/

by Mtonosama | 2017-05-16 05:42 | 映画 | Comments(10)

オリーブの樹は
呼んでいる
-1-

El Olivo

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(C)Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Pelicula A.I.E


オリーブというとイタリアの専売特許
のような感もありますが、
スペインもオリーブの大産地です。

そう、これは
赤茶けた広大な大地を
埋め尽くすようなオリーブの林が
圧巻のスペイン映画。

ローマ時代の頃からそびえ続ける
オリーブの樹が登場します。
その幹は両腕を拡げても
それどころが3人4人と
手をつないでも
まだまだ足りない
巨大な古木。

幹は魔法使いの顔のような
深い皴で覆われ、
ところどころに開いた洞は
深い闇を包み込んでいます。

2000年も生きている巨木の
存在感たるや
思わず手を合わせたくなるほど。

ところが
そのオリーブの木々に
とんでもないことが起きているのです――

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8年も不況下にあるスペイン。
その影響の大きさには
測り知れないものがあります。

例えば、
本作の舞台であるオリーブ農園もそうだし、
若い人々にとっては
就職問題もあります。

そもそも
この映画誕生のきっかけは
脚本家のポール・ラヴァ―ティが
樹齢2000年のオリーブの樹が
大地から引き抜かれ、
販売されているという新聞記事を
読んでショックを受けたこと。

地中海域でローマ時代から
広く栽培されているオリーブ。
その誇りに充ちた巨大な樹が
売られています。
それも、環境を謳う企業が
イメージアップのために
買っていくのだそうです――

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実際、ポールは10年ほど前から
高速道路の脇やオフィスの庭に置かれた
オリーブを見て違和感を感じていたといいます。

脚本を書いたポール・ラヴァ―ティは
英国の名匠ケン・ローチとの
名コンビ、
『麦の穂を揺らす風』(’06)
『わたしは、ダニエル・ブレイク』(’16)で
http://mtonosama.exblog.jp/27631503/
http://mtonosama.exblog.jp/27640294/
2度のカンヌ国際映画祭パルムドールに
輝いています。

その妻イシアル・ボジャインが
本作の監督であります。

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イシアル・ボジャイン監督
マドリード生まれ。
幼い時に女優としてスタート。
ケン・ローチ監督の『大地と自由』(’95)で
ヒロインと共に闘う女性兵士を演じた。
1995年に監督として
長編デビュー作を発表。
第2作『花嫁の来た村』で
1999年カンヌ国際映画祭国際批評家週間賞受賞。
2003年『TE DOY MIS OJOS』
(TAKE MY EYES)
はゴヤ賞作品賞ほか7部門で受賞。
ポール・ラヴァ―ティが脚本を書いた
『ザ・ウォーター・ウォー』(’09)で
ゴヤ賞3部門受賞、
ベルリン国際映画祭パノラマ部門観客賞を受賞。
2010年アカデミー賞外国語映画賞の
スペイン代表作品にも選出されている。

「大不況でスペインは貧しくなっただけでなく
希望を失ってしまった」
と監督は言います。

だけど
きっとそんな状態に
いつまでも
甘んじている筈はありません。

さあ、どんなお話でしょうか。
続きは次回まで乞うご期待であります。



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オリーブの樹は呼んでいる
監督/イシアル・ボジャイン、脚本/ポール・ラヴァ―ティ、製作/フアン・ゴルドン(モレナ・フィルムズ)、共同製作/ミヒャエル・ヴェバー、ヴィオラ・フューゲン(ザ・マッチ・ファクトリー・プロダクションズ)、
撮影/セルジ・ガジャルド
出演
アンナ・カスティーリョ/アルマ、ハビエル・グティエレス/アーティチョーク、ペップ・アンブロス/ラファ、マヌエル・クカラ/祖父ラモン、ミゲル・アンヘル・アラドレン/父ルイス・ミゲル
5月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2016年、スペイン、99分、字幕翻訳/安藤里絵、配給/アット エンタテインメント
http://olive-tree-jp.com/

by Mtonosama | 2017-05-13 06:59 | 映画 | Comments(2)

三毛猫ひかちゃん 
-54-



あたし、ひかちゃん。

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ふ、相変わらずクールでしょ?


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あら、何かしら。

あ、そうそう。
シネコヤへ行くって言っていたわね。
あらま、珍しく歩いていくようよ。


『聖者たちの食卓』
Himself He Cooks
監督/バレリー・ベルトー、フィリップ・ウィチェス
2011年、ベルギー、65分

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(C)Polymorfilms

な、なによ。
このお鍋。

洗ってるところみたいね。
こんな大きなお鍋となると大変な重労働だわね。

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(C)Polymorfilms

『聖者たちの食卓』
インドのシク教総本山ハリマンディル・サーヒブで、
毎日振る舞われる約10万食の食事が
どのように用意され、
人々を満たしているのか、
その様子をとらえたドキュメンタリー。

日本では「黄金寺院」の呼び名で知られている、
インドのシク教総本山にあたる寺院
ハリマンディル・サーヒブでは、
人種や階層に関係なく、
巡礼者や訪問者に食事が無料で提供されている。
毎日約10万食に及ぶ、
その大量の食事が
どのように用意されているのか、

無駄のない支度の様子や、調理、後片付け、
巡礼者たちがひとつの家族になったかのような
食卓の風景も映し出し、
人々が公平に満たされることで心穏やかになる世界や、
無償で働く人々の厳かな存在を描き出していく。
映画.com

すごいわねえ。

最初っから最後まで
ナレーションもセリフも
一言もないんだって。
ゴーゴーとかまどの火が燃える音や、
水を流す音、
そんなありのままの音があるだけ。

10万人の食事の支度って
半端じゃないわよ。
朝もやの中、畑で食材を収穫し、
お馬さんがお寺まで運び、
善男善女が小麦粉をこねてお団子を作り、
それを麵棒でのばして、
手際よく鉄板の上で
ナンを焼き上げていた。

みんな軽くカメラ目線に
なってるところが可愛いかったそうよ。

みんなで支度をし、
やってきた人たちを誘導し、
食器を配り、
そこに、おかずを盛っていくんだって。

お掃除を始めたから
もうおしまいね、と思ったら
またこねてのばしてナンにして、を
繰り返すの。
10万食といったらそういうことよね。

ほんとに、インドってすごい国だわ。


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あ、あたし?

あたしは食べるのと寝るのが専門。
今日も飼い主が帰ってくるまで寝てるのよ。

連休の一日もこんな風に過ぎていくの。
聖者のまどろみってところかしら。

ひかり


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by Mtonosama | 2017-05-10 05:51 | 映画 | Comments(8)

『わすれな草』
マルテ・ジーヴェキングさん来日

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(C)Lichtblick Media GmbH


4月16日、赤坂の東京ドイツ文化センター
またの名をオーアーゲー(ドイツ東洋文化研究協会)
通称ゲーテ協会で
「認知症にやさしい」生活圏とは――
家庭及び地域における認知症との向き合い方について
と題したパネル・ディスカッションがありました。

ここに
『わすれな草』のダーヴィット・ジーヴェキング監督が
http://mtonosama.exblog.jp/27720980/
http://mtonosama.exblog.jp/27729241/
出席するというので行ってきました。

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ところが、
監督は家族の急病ということで欠席。
その代り、
監督の父であり、
本作の出演者でもあり、
主人公を一番身近で支え続けた
夫のマルテさんが出席しました。

他のパネラーは
若年性認知症デイサービスの創設者・前田隆行氏
認知症の人の認知機能障害に関する研究や
認知症の人を含めた社会環境のダイバーシティ実現
に向けた実践を中心に研究活動を行う研究者・河野禎之氏、
そして、若年性アルツハイマー型認知症の杉本欣也氏と町田克信氏。

若年性アルツハイマー型認知症の方を
拝見したのは初めてなので少し緊張しました。

という感想自体が禁忌になっているのではないか――
少し複雑な気持を拭うことができないまま
お話をうかがっていました。

☆認知症を恐れることはない

お二人は前田隆行氏が運営する
町田市の『DAYS BLG!』という
次世代型デイサービスに通っています。
前田さんは
「認知症は厄介ではあるが、恐れることはない。
自分なりに対策はとれる」と発言。

「認知症後の人生においては
生活の場がどうあるべきかを考え、
企業も自治体も住みやすい地域づくりを
考えていくべき」
と筑波大学研究者・河野禎之さん。

マルテさんは
「ドイツではこの病気に偏見があり、
友人たちが去っていった」
と語ります。

☆発病後は?

町田さんは
電気エンジニアとして働いていた頃に発病し、
発病後も仕事を続けていましたが、
トラブルはなかったといいます。

杉本さんは発病して
11年経過しましたが、
デイケアのメンバーに囲まれていると
楽しくて仕方がないそうで、
家にひきこもってはいません。
例えば、カーディーラーで洗車したり、
散歩の途中でみつけた
草ぼうぼうの家の草取りをしたりします。

お二人はデイサービスが楽しいということですが、
マルテさんの妻グレーテルさんの場合は
デイサービスが嫌いで、
4年間マルテさんと二人っきりで過ごしました。
認知症になると自尊心が崩壊し、
他者から認められていた部分が消え去り、
本人にも周囲にもつらいことです。

妻の介護に参りかけていた
マルテさんの転機となったのが息子ダニエルの登場。
息子は映画撮影を通じて父を助け、
母の介護もしました。

杉本さんは散歩をし、
町田さんは以前からの趣味である
山登りや無線ハムを続け、
生き甲斐を感じながら暮らしています。

健康な頃のグレーテルさんも好奇心が旺盛で
冒険したり、登山をしたり、バイオリンも上手でした。
しかし、
発病後は何もできなくなってしまいました。
ただ、人間に対する好奇心を失なうことはなく、
誰にでも屈託なく話しかけることはできたそうです。

☆ケアの場から生きる場へ

認知症はひとりひとり症状が違い、
こんな病気だと決めつけることはできません。
だから、家族が認知症になったり、
自分がそうなることを恐れていても始まりません。

社会的弱者も、健康な人も、皆が暮らしやすい社会を研究する
河野さんは認知症に優しい生活圏を作り出すことが必要だといいます。
例えば、交通、仲間、隣人など生活行為に伴う様々なシーンを
優しいものに変えていくこと。

認知症の人が暮らす場所を
ケアの場ととらえるのではなく
生きる場所ととらえ直すこと。
認知症の人が暮らす場は
サービスを受ける場ではなく、
生きている場なのです。

☆目の前にいる認知症の彼女と
新しい気持ちで向き合う


マルテさんは言います。
「アルツハイマーは治る病気ではありません。
だとしたら、周囲の意識を変えることです」
「頭の中のコンピューターに頼らず、
過去のグレーテルは忘れて、
いま目の前にいる認知症の彼女と
新しい気持ちで向き合うことです」
初めて会った人のような気持ちを持って接する――
そうして
「グレーテルとの間に新しい愛の形を発見しました」
非常に印象的な言葉でした。

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『DAYS BLG!』を運営する前田さんも
必要なのは認知症の治療ではなく、
周囲の治療だと言います。
社会の偏見を変えること。
「BLGは認知症当事者と話し、活動するという活動を通じて
気づきのターニングポイントを作り出していきたいと思っています」

私たちは認知症から遠くにいるために
気づけないということなのですね。

良いお話を聞くことができました。

最後に一冊の本をご紹介します。
「認知症になっても人生は終わらない」
認知症の私が、認知症のあなたに贈ることば
著:認知症の私たち
協力:NHK取材班


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わすれな草
監督・脚本/ダーヴィッド・ジーヴェキング、撮影/アドリアン・シュテーリ、編集/カトリン・フォークト、音楽/ジェシカ・デ・ルイジ、製作者/マルティン・ハイスラー、
カール=ルートヴィヒ・レッティンガー
4月15日(土)渋谷ユーロスペース他、全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、88分、カラー、字幕/渋谷哲也、
配給/ノーム特別協力:ゲーテ・インスティトゥート/東京ドイツ文化センター、
http://www.gnome15.com/wasurenagusa/

by Mtonosama | 2017-05-07 06:53 | 映画 | Comments(12)

マンチェスター・バイ・ザ・シー
-2-

MANCHESTER BY THE SEA


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(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.


マンチェスター・バイ・ザ・シー。
夏はリゾート地として
ボストンに住むお金持ちが
バカンスを楽しむ街。
ボストンから車で約1時間半。
日本でいえば東京から葉山、
といった距離感でしょうか。

冬場はリゾート客もなく、
地元客が田舎臭いバーで飲んだくれている――
マンチェスター・バイ・ザ・シーはそんな街です。

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ストーリー
ボストン郊外にあるアパートの前で雪かきをしているリー。
担当する4棟のアパートの浴室の水漏れやトイレ修理、
ペンキ塗りなどの雑務をこなす便利屋だ。
腕は良いのだが、
不愛想で入居者からクレームを受けることも多い。

そんな彼にある日1本の電話がかかる。
マンチェスター・バイ・ザ・シーに住む
兄のジョーが倒れたというのだ。

1時間半後に病院に着くと、
医師と兄の仕事仲間のジョージが
「ジョーは1時間前に息をひきとった」と告げる。

以前、ジョーはうっ血性心不全という診断を受け、
5年から10年の余命と告げられていた。
弱っていた心臓がとうとう力つきたのだ。

遺体安置室で冷たくなった兄を抱きしめ、別れを告げると、
リーは医師やジョージと共に今後の相談をした。
甥のパトリックにも父の死を知らせなければならない。

パトリックを高校まで迎えに行く車中、
以前と変わらない街並みを見ながら
リーは昔のことを思い出していた。

ジョーと幼いパトリックの3人で
船で釣りに行った楽しかった一日。

あの日、帰宅したリーは
2人の娘と生まれたばかりの長男を抱きしめ、
体調が悪く床に臥していた妻ランディに
パトリックが大きなスズキを釣ったことを報告したものだ。


叔父の車に乗って病院に到着したパトリックは
父を一瞥しただけで
遺体安置室を後にする。

翌日、兄の遺言を聞くために
パトリックと弁護士の許へ向かうリー。
弁護士が彼に告げたのは
兄はリーをパトリックの後見人に指名し、
養育費も準備し、家も船もローンを完済してある、
引越費用も用意してあるから、
マンチェスター・バイ・ザ・シーに移り住むように、
ということだった。

リーは弁護士の言葉を聞きながら、
強烈な痛みと共に、この街で住んでいた頃の記憶を
蘇えらせていた…

死を覚悟して弟の引越費用まで用意しておいた兄。
いい加減な男ではありません。
誰からも信頼され、
息子もしっかりと育てあげた人です。

それなのに、迷い続けるリー。
何かがありそうですね。

そう、何かがありそう、それも深刻な何かが―――

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とはいえ、この叔父と甥のコンビが良いんですわ。
笑わせます。
良い子に育ったパトリックですが、
二股交際はするし、
父の亡くなった夜に
寂しいからと彼女を家に泊めるし。
まあ、やることはやっちゃう高校生です。

保護者としてふるまうべきか
ものわかりのいい大人としてふるまうべきか。
甥の若さとやんちゃさにとまどいながらカバーする
元やんちゃなリーもおかしいです。

よくできたシナリオに
達者な俳優たち。
良い映画です。

人間の俳優たち同様
マンチェスター・バイ・ザ・シーという街も
すごい俳優でした。





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マンチェスター・バイ・ザ・シー
監督・脚本/ケネス・ロナーガン、プロデューサー/ローレン・ベック、マット・デイモン、クリス・ムーア、キンバリー・スチュワード、ライアン・ストウェル、ケヴィン・J・ウォルシュ、撮影//ジョディ・リー・ライプス
出演
ケイシー・アフレック/リー・チャンドラー、ミシェル・ウィリアムズ/ランディ、カイル・チャンドラー/ジョー・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ/パトリック、グレッチェル・モル/エリーズ、カーラ・ヘイワード/シルヴィー、C・J・ウィルソン/ジョージ
5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
2016年、アメリカ、137分、カラー、配給/ビターズ・エンド/パルコ
http://manchesterbythesea.jp/

by Mtonosama | 2017-05-04 05:55 | 映画 | Comments(8)

マンチェスター・バイ・ザ・シー
-1-

MANCHESTER BY THE SEA


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(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.


ボストンに近い海辺の町
マンチェスター・バイ・ザ・シー。
冬枯れの寂しげなリゾート地が舞台となっています。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
第89回アカデミー賞主演男優賞と脚本賞を受賞しました。

主演のケイシー・アフレックは
ベン・アフレックの実弟です。
ベンは本作にプロデューサーとして参加した
マット・デイモンの親友なんですって。

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脚本はケネス・ロナーガン。
監督も務めました。

ケネス・ロナーガン
1962年ニューヨーク市に生まれる。
高校時代から脚本を書き、
ウェズリアン大学、ニューヨーク大学で脚本・演出を学ぶ。
演劇の世界で成功を収めた後、
ロバート・デ・ニーロ主演『アナライズ・ミー』(’99)の
脚本で映画界でも成功。
その後もマーティン・スコセッシ監督に抜擢され、
『ギャング・オブ・ニューヨーク』(’03)の脚本で
アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネート。
マーティン・スコセッシ監督は
「彼には人間を理解する素晴らしい能力がある――
彼は登場人物の心を、状況の核心を、
創り上げることができる」
と絶賛する。

と、鳴り物入りで喧伝される作品の場合、
アレレ?ということがままありますよね。

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が、しかし
本作は違います。
アメリカ映画にありがちな
妙な気取りやスノッブさも無く、
業界の内幕ばらしもなく、
きわどいHもありません。
(って、偏見過ぎますか?)

ケイシー・アフレック演ずる
ボストン郊外で団地の便利屋として働く主人公リーが
兄ジョーの死をきっかけに
故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってきます。
兄の遺言で16歳の甥パトリックの
後見人となった主人公ですが・・・

とまあ
一言でいえば家族の映画です。
ちょっと一言過ぎますかね。

仲の良い兄弟
仲の良い父子
仲の良い叔父甥

ジョーの死は弟と息子に深い悲しみをもたらしますが、
本来、仲の良い叔父と甥
楽しかった過去も共有しています。
リーが故郷に戻り、パトリックの後見人になることには
何の不都合もありそうにはありません。

でも、
ま、そう一筋縄ではいかないのが
世の常、映画の常。

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真冬のリゾート地という寒々しい背景
海鳥の鳴き声が灰色の空に響く街。

この街も主人公並みの存在感ですが、
主人公リー・チャンドラーを演ずる
ケイシー・アフレックも
影をひきずる孤独な男を好演しています。

そして、
もう一人存在感を出しているのが
甥パトリックを演じたルーカス・ヘッジズ。
灰色の重い雰囲気になりがちな画面に
若さという明るさを添えてくれました。

さあ、いったいどんなお話でしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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マンチェスター・バイ・ザ・シー
監督・脚本/ケネス・ロナーガン、プロデューサー/ローレン・ベック、マット・デイモン、クリス・ムーア、キンバリー・スチュワード、ライアン・ストウェル、ケヴィン・J・ウォルシュ、撮影/ジョディ・リー・ライプス
出演
ケイシー・アフレック/リー・チャンドラー、ミシェル・ウィリアムズ/ランディ、カイル・チャンドラー/ジョー・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ/パトリック、グレッチェル・モル/エリーズ、カーラ・ヘイワード/シルヴィー、C・J・ウィルソン/ジョージ
5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
2016年、アメリカ、137分、カラー、配給/ビターズ・エンド/パルコ
http://manchesterbythesea.jp/


by Mtonosama | 2017-05-01 05:44 | 映画 | Comments(6)

ノー・エスケープ
自由への国境
-2-

DESIERTO

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(C)2016 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.


いやはや
砂漠といっても砂じゃないんですねぇ。
ごつごつとした岩山が続く赤茶けた大地。
空は青いし、太陽は容赦なく照りつけています。

150歳のとのなど一歩この地に降り立ったら
一瞬にして気化してしまいそうな過酷な荒地です。

登場人物は15人の移民と
正体不明の襲撃者と1匹のセパード犬。
あ、犬だから人物ではありませんけど。

ストーリー
メキシコとアメリカの3,152kmにわたる国境。
そこを1台のトラックが越えようとしている。
幌をかぶせた荷台で膝を抱える移民たち。
“I love you”
おもちゃのクマの機械的な声が響く。
アメリカに先に入国した家族に会うため、
メキシコから不法入国を試みる
モイセスの持ちものだ。

それぞれの想いを胸にした移民たちを乗せたトラックが
国境を越えようとしていた時、
エンジントラブルが発生。
15人の移民たちは
砂漠を徒歩で越えることになってしまった。
国境の有刺鉄線をくぐって抜け、
アメリカ領内に。
遮るものとてない砂漠。
発見されることを警戒しながら
都市部へと向かう移民たち。

しかし、
歩みの速度の差から次第に集団がばらけ、
二つに分かれてしまう。
モイセスを含む遅れたグループが
待ってくれるよう必死に叫んでいたその時―――

突然、銃声が響いた。
胸を押さえて倒れる先頭グループのリーダー。
さらに、二発、三発。
見えない襲撃者は
容赦なく移民たちを撃ち殺していく。

からくも逃げ出した第二グループのモイセス達。
だが、そこは身を隠す場もない砂漠。
摂氏50度。
水も武器も通信手段もない。
息子に「必ず会いに行く」と
約束したモイセスは
なんとしてもこの苦境を生きて
潜り抜けねばならない。

モイセスと行動を共にする女性アデラは
危険な故郷の町から安全なアメリカへ行けと
両親から送り出されている。
彼女もまた戻る場所のない人間だ。

迫りくる襲撃者。
牙をむいて追いかけてくるセパード。

モイセスたちに明日はあるのだろうか……

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アドレナリン噴出!
気づくと、「行け、行け!」「やっちまえ!」
と肩をいからせている自分がいました。

ガエル・ガルシア・ベルナル好きのとのとしては
移民たちに肩入れしすぎて
肩がこってしまった訳ですが、
まるで獲物を狩るように
移民たちを撃ち続ける襲撃者も
捨て置けない存在です。

ボロボロのピックアップトラックの助手席に
犬を乗せ、タトゥを刺した筋肉質の二の腕。
どこか影を感じさせるその横顔は
その昔ならベトナム戦争帰りの
心を病んだ兵士を思わせます。
人になじめず、都市に暮らせず、
犬と二人で砂漠に暮らす謎の男を
ジェフリー・ディーン・モーガンが
好演していました。

単なるサバイバル・エンターテインメントでは
終わらない作品ですよ。
強烈なメキシコ映画です。





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ノー・エスケープ
監督・脚本・編集・製作/ホナス・キュアロン、脚本/マテオ・ガルシア、製作/アルフォンソ・キュアロン、カルロス・キュアロン、アレックス・ガルシア、シャルル・ジリベール、撮影/ダミアン・ガルシア
出演
ガエル・ガルシア・ベルナル/モイセス、ジェフリー・ディーン・モーガン/サム、アロンドラ・イダルゴ/アデラ
5月5日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
2015年、メキシコ=フランス、88分、字幕翻訳/松浦美奈、配給/アスミック・エース、http://desierto.asmik-ace.co.jp/

by Mtonosama | 2017-04-28 05:51 | 映画 | Comments(8)

ノー・エスケープ
自由への国境
-1-

DESIERTO

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(C)2016 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.


メキシコとアメリカの間に存在する砂漠。
決死の覚悟でそこを越える不法移民のことは
いろんな映画で描かれてきました。

身を隠すところもない灼熱の世界、
毒蛇やサソリ、おぞましい生き物に加え、
強制送還への恐怖。
さらに自警団に追われもします。
救いようのない貧困から逃れるためには
それでも越境を試みるしかありません。

その挙句
乾燥しきった荒地に屍体となって
ごみ袋のように横たわるしかないとしても―――

2017年1月25日
メキシコ国境の安全を確保するべく、
物理的な壁をただちに建設、
十分な人員による監視を行い、
不法移民、違法薬物・人身の売買、テロ行為を未然に防ぐ

という大統領令に
ドナルド・J・トランプ第45代アメリカ合衆国大統領が署名しました。

そして―――
メキシコとアメリカ間の全長3,152kmに及ぶ
国境の壁が
現実化へと一歩踏み込んだわけです。

『ノー・エスケープ』はタイムリーな作品であり、
時代とリンクしながら
息を呑み、手に汗を握る
最強のエンターテインメントに仕上がっています。

88分間緊張し続け、
肩がこってしまった150歳です。

監督・脚本・編集・製作を担当したのは
本作が商業映画監督デビューとなる
1981年メキシコ生まれのホナス・キュアロン。
アカデミー賞受賞作『ゼロ・グラビティ』(’13)では
父アルフォンソ・キュアロン監督とともに
脚本を手掛け、
数々の脚本賞を受賞しました。

本作でも父アルフォンソと叔父カルロスが
製作に加わっています。
『ゼロ・グラビティ』も宇宙に投げ出された
2人の宇宙飛行士を描き、
いやが上にも緊迫感を高めた
アドレナリン超増量映画でしたが、
今回はそれ以上かもしれません。

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ホナス・キュアロン監督は
移民の体験談を描き出すため、
準備になんと7年間を費やしていますし、
完璧なロケーションを見つけ出そうと
アメリカのみならず、
スペイン、モロッコ、メキシコと
2年以上かけて砂漠を探し回りました。

カリフォルニア州アンザ・ボレゴ砂漠州立公園
デス・ヴァレー国立公園
ユタ州南部、アリゾナ州、ニューメキシコ州、
スペイン・アルメニア地方・・・

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世界中を回った結果、砂漠について多くを学び、
脚本にはその成果を盛り込むこともできました。
撮影地はバハ・カリフォルニア・スル州の砂漠。
携帯の電波も届かず、気温は38℃を越え、
強烈な日差しを遮る影もない乾ききった荒地です。

自由と富の国アメリカへと不法入国を試みる
主人公モイセスと15人のメキシコ人が登場します。

主人公モイセスは、
『モーターサイクル・ダイアリー』(’03)で
若き日のチェ・ゲバラを演じた
ガエル・ガルシア・ベルナル。
若々しいチェ・ゲバラが印象的な名作でした。

2001年にはアルフォンソ・キュアロン監督の
『天国の口、終わりの楽園。』で
第58回ヴェネチア国際映画祭
マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞。
名匠たちから引っ張りだこの
メキシコを代表するスターです。

実は彼、ホナス・キュアロン監督が
脚本を書き始めた頃から
出演を熱望。
本作ではエグゼクティブ・プロデューサーにも名を連ねています。

さあ、ドキドキしますね。
一体どんなお話なのでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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ノー・エスケープ
監督・脚本・編集・製作/ホナス・キュアロン、脚本/マテオ・ガルシア、製作/アルフォンソ・キュアロン、カルロス・キュアロン、アレックス・ガルシア、シャルル・ジリベール、撮影/ダミアン・ガルシア
出演
ガエル・ガルシア・ベルナル/モイセス、ジェフリー・ディーン・モーガン/サム、アロンドラ・イダルゴ/アデラ
5月5日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
2015年、メキシコ=フランス、88分、字幕翻訳/松浦美奈、配給/アスミック・エース、http://desierto.asmik-ace.co.jp/

by Mtonosama | 2017-04-25 05:40 | 映画 | Comments(2)

ターシャ・テューダー
静かな水の物語
-2-

TASHA TUDOR

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(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


ターシャおばあさんを紹介したTV番組は
2005年から4本の番組が制作され、
それ以降も地上波とBSで再放送を繰り返す人気番組になりました。

生誕100周年となる2015年には
彼女の多彩な世界を紹介する展覧会も開催されました。
2年をかけて日本全国を回り、38万人を動員したんですって。

そもそも、
なんでターシャ・テューダーが日本で紹介されることになったのかというと――

今回、企画とプロデュースを担当した鈴木ゆかりさんは
以前、松田光絵監督と一緒に海外のガーデニングを紹介する番組を作っていました。
その中で取材したガーデナーの多くが
「憧れはターシャさんのお庭」と言っていたそうなんです。
それでターシャ・テューダーに取材をお願いしたのが、ことの始まり。

ターシャさん、OKしてくれて良かったです。

本作では松谷光絵監督が10年にわたって取材してきた彼女の生前の姿と
今回追加で撮影された新たな映像も加わり、
ターシャ・テューダー完全版として楽しむことができます。

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折れそうに細くて小さなおばあさんが
何エーカーもあるバーモント州の荒地を耕し、
人間技とは思えない見事な庭園を造り出したんですからね。

こんなことを言ってはなんですが、
魔法使いみたいに痩せたおばあさんが造ったんですよ。
天地創造ともいえる快挙です。

そして、敢えて不便さを選び取ったようなその暮らしぶり。
自然に寄り添った暮らしとでもいうのでしょうか。

15歳で肖像画家だったおかあさんのアンティークショップを
手伝っていたことからも影響を受けているのでしょうが、
彼女は園芸家という顔の他に
アンティーク収集家でもあります。
映画をご覧になったら調度品や食器もよ~くチェックしてください。
もう、ため息とともに「素敵!」の一言しか出てきません。

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そうそう、サブタイトルの『静かな水の物語」って気になりません?
映画を観て、湖も川も出てこないのに、
なんで?と思っていたのですが、
松谷光絵監督の言葉で納得がいきました。

ターシャさんは普段から「私はスティルウォーター教よ」と言っていたそうです。
Still Water(静かな水)というのは
大きな波に流されることなく静かに前進するというターシャの生き方と
水に映る自分自身をみつめるというありようを象徴する言葉――

明鏡止水っていうことですか。
卓越した人の言葉には東西相通ずるものがあるんですね。

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庭は生き物なんですよね。
こまめに手をかけてあげないと死んでしまいます。
ターシャさんが9年前に亡くなってから庭はどうなったのでしょう。
もしかして再び荒地に戻ってしまったのでしょうか。

ご安心ください。
ターシャの孫夫婦、ウィンズローとエーミーが
庭もターシャが愛した素朴な暮らしも守り続けています。

コーギー犬もチャボも元気です。

どうぞ明鏡止水の境に浸ってください。






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ターシャ・チューダー
監督/松谷光絵、企画・プロデュース/鈴木ゆかり、製作/堀内大示、山田治宗、撮影/高野稔弘
出演
ターシャ・チューダー、セス・チューダー、ウィンズロー・チューダー、エイミー・チューダー、ジェニファー・チューダー・ワイマン、アン・K・ベネデュース、ケイト・フォデアック、メギー、チカホミニー
4月15日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
2017年、105分、日本、カラー、映像提供/NHK、NHKエンタープライズ、http://tasha-movie.jp/

by Mtonosama | 2017-04-22 03:55 | 映画 | Comments(10)