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殿様の試写室

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カテゴリ:映画( 940 )

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(c) MMVII by RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC and PARAMOUNT VANTAGE,
A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION.All Rights Reserved.

イントゥ・ザ・ワイルド
INTO THE WILD

ショーン・ペンは嫌いです。
「俺ってすごいだろ。こんな演技は俺にしかできないんだぜっ」
ムンムンした臭みを身体中から発散している感じがしませんか?
もちろん、あのちょっと暗い顔とセクシーさが好きという人も多いのでしょうが。
でも、それは俳優ショーン・ペンの話。

監督ショーン・ペンがやってくれました。
“Into the Wild” 「荒野へ」。
もう、タイトルからしてそそられるではありませんか。

荒野、荒地。
むかし「荒地派」という現代詩のグループがありましたっけ。 そうそう「青年は荒野をめざす」も。
今もむかしも青年は荒野をめざすのです。

クリストファー・マッカンドレスはアラスカを目指しました。
そして1992年の夏
その地で彼の遺体が発見されました。
ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」にある豹を思わせる意外な死に場所
24歳という若さ
米東海岸の豊かな家庭に育ち、
優秀な成績で大学を卒業し、ハンサムで誰からも好かれ、
将来を嘱望されていた青年がすべてを捨てて旅立ち、
2年後に死んだのです。

この出来事に当時アメリカ中の人々が関心を寄せました。
ジャーナリストで登山家のジョン・クラカワーもその一人。
綿密な追跡取材の後に彼が発表したノンフィクション「荒野へ」はベストセラーになりました。
そして、ショーン・ペンも読み、読後すぐに映画化を決意します。

映画はクリストファーがアラスカでたった一人生きる100日を超す日々と
アラスカに至るまでの家庭生活やさまざまな人との出会いが交互に重なって描かれています。
その経緯はスパイラルをなしながら、印象的で、荘厳なラストに収束していきます。

        北カリフォルニアのパシフィック・クレスト・トレイルを旅する
        中年ヒッピーのカップルとの出会い、
        サウスダコタの広大な農場、カヤックによるコロラド川の急流下り、
        水路によるメキシコ国境越え、貨物列車にもぐりこんでの気ままな彷徨

最高のロードムービーです。
同時に、心の荒野に安住することを選ばず、
地の果てアラスカという現実の荒野に分け入り、
たった一人で果敢に生き抜いた人間を見事に描ききった感動的な映画です。
彼の勇敢な生き方には拍手を送りたい気分です。

遺体のそばにあったフィルムを現像したという
実物のクリストファー・マッカンドレスがエンドロールのバックに出てきます。
その端正な笑顔には悲壮感はみじんもなく、
自分の人生を生き抜く青年のさわやかな充足感が満ち、
死ぬためにではなく生きるために生きている笑顔でした。

        ショーン・ペン監督にもあらためて拍手を送らねば―――

監督・脚本/ショーン・ペン
キャスト
クリストファー・マッカンドレス/エミール・ハーシュ
9月6日シャンテシネ、テアトルタイムズスクエア他全国公開
Intothewild.jp

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by Mtonosama | 2008-08-04 11:49 | 映画 | Comments(5)
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       (c)Copyright 2007 Cholera Love Productions,LLC ALL RIGHTS 

コレラの時代の愛
Love in the Time of Cholera

「コレラの時代の愛」?
どんな時代なんじゃ、と思わず知らずつっこみを入れたくなってしまいます。
「百年の孤独」(‘67)で知られる南米コロンビアのノーベル文学賞作家
ガルシア=マルケスの小説の原題そのままなのですが。

本作は映画化を渋る作家を説得して、ようやく完成した作品です。

      南米にはある種の特異な情念が存在します。
      アマゾン河が流れ、ジャングルがあり
      乾ききった大地には上空から見なければわからない
      鳥やら猿やらの絵が描かれ、
      インディオがカラフルな毛糸の帽子をかぶって農作業をしているかと思えば、
      ピサロやコルテスの末裔が建てた
      とてつもないオペラハウスや大邸宅があります――

      そんな土地だから、愛する女性と結ばれる日を51年9か月と4日
      待ち続けた男を主人公とした小説が書かれたとしてもなんの不思議もありません。

あ、聞こえましたよ。「そんなのストーカーじゃん」って言ったでしょう。

確かに、狂気じみていますけどね。

そこはなんといっても原始の魂と古代の神々、
スペイン爛熟期の文化が混在する南米ですから。

      

      1879年、スペインとの長い独立戦争に勝利し、活気にあふれる
      コロンビアの港町カルタヘナ。電報配達員のフロレンティーノは母
      と二人、貧しいながらも静かな日々を送っていました。
      ところが、配達先の裕福なラバ商人の娘フェルメーナを一目見た
      途端、恋に落ちます。情熱的なラブレターを送り続け、フェルメーナ
      の心を射止めることができました。これを知った彼女の父親は二人
      の仲を裂くため、娘を遠く離れた親戚の家に預けてしまいます。

      時を経て、彼女はその恋に見切りをつけていました。そして、父の
      望んだ通り、裕福な医師フベナルと結婚してしまったのです。

      嗚呼、フェルメ―ナ。汝の名は女なり。その心はなんと移ろいやす
      いことでしょう。

      彼女の結婚のその日からフロレンティーノの狂おしい51年9か月
      4日が始まったのでありました…

 

フロレンティーノを演じるのはハビエル・バルデム。1969年生まれのスペイン人です。
今年3月に公開された「ノーカントリー」でなんとも恐ろしい殺し屋を演じ、
アカデミー賞助演男優賞をとった俳優ですから、印象に残っている方も多いはずです(実は「ノーカントリー」では彼の怪演が残像となって怖い思いをしました)。

フェルメーナへの一途な想いを秘める一方で、
求められるままに622人もの女性と関係を持つフロレンティーノ。
真に愛する女性への想いと、622人の女性との交渉が
彼にとってなんの矛盾もないのかどうか、男ならぬ身の知るところではありません。
が、しかし、誰かに、あるいは、何かに夢中になっている人間は
異性にとって魅力的な存在ではあります。

 「ノーカントリー」のあの殺し屋がコレラの時代ではなんとも愛らしく上品に変身しているし、
アマゾンクルーズのシーンもロマンティックで旅心をそそります。

ただ、惜しいのは英語がつかわれていること。
スペイン語ならもっと南米の情念と狂おしいまでの男の純情を感じることができるのに、
と残念でなりません。
あ、スペイン語はできないんですけど…
でも、どうせ、字幕を読むにしても、その国の言葉の方が雰囲気が出るってものじゃありませんか。

監督/マイク・ニューウェル、脚本/ロナルド・ハーウッド
キャスト
フロレンティーノ/ハビエル・バルデム、フェルミーナ/ジョヴァンナ・メッツジョルノ
8月9日よりシャンテ・シネ、Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開


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by Mtonosama | 2008-07-28 14:45 | 映画 | Comments(4)
この自由な世界で
it’s a free world…


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(c) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol Films S.A.

唐突ですが、1930年代に起こったスペイン市民戦争に夢中になっていた時期が ありました。
R・キャパの撮影した「崩れ落ちる兵士」の写真で有名な内戦です。
そのスペイン市民戦争を描いた「大地と自由」(‘95)を観たのが
ケン・ローチ監督との出会いでした。
「この人すごい。これは『カタロニア讃歌』だ。スペインの内乱をまんま映画にしてくれた!」
鼻の穴をふくらませて感動したのを思い出します。

一昨年はアイルランドの独立を描いた「麦の穂をゆらす風」で
パルムドール大賞を受賞した監督ですが、
やはりこの人の真骨頂は現代社会の片隅に生きる
名もないおじさん、おばさん、おねえさん、おにいさんを
切り取って見せてくれるところにあるような気がします。
 
「この自由な世界で」の主人公はアンジーという33歳のシングルマザー。
11歳の一人息子を両親に預け、ルームメイトのローズと暮らしています。
移民相手の職業紹介所の仕事もバリバリこなしているのだけれど、
上司のセクハラまがいの嫌がらせをかわしたら、その翌日にクビ。
頭にきたアンジーはローズを誘い、派遣業を立ち上げます。

    学歴なんかないけど、仕事はできるんだから。
    来年は中学に上がる息子だって、いつまでも両親に預けておくわけにはいかないし。
    お金だってもっと稼げるはず。
    私を使い捨てにしたやつらも見返してやらなくちゃ…

舞台はロンドン。
職を求め、あるいは命の安全を求め、世界各国から移民たちが集まってくる都市です。
EU拡大以降、東欧の新規加盟国に労働市場を開放したイギリスには
ポーランド、ウクライナなど東欧圏の移民労働者が多く、
この映画でもポーランド人の青年がアンジーに思いを寄せ、
通訳として彼女の仕事を手伝う役柄として登場しています。

ここで問題となるのが不法移民労働者の場合。
職業紹介所にとって不法移民の就労はタブー。

反体制的な本を出版したことで逮捕され、
イギリスに亡命申請したものの認められず、ロンドンに隠れ住むイラン人の元出版業者
就労ビザのないウクライナ人

彼らが働くこと、彼らを働かせること自体が犯罪です。
そこはもうマフィアが関わる危険区域。焦ったアンジーが足を踏み入れ、
映画の中でも息詰まる展開を見せるのが不法移民の問題なのです。

アンジーは自分の幸福のためにあくどいことを平気でやってしまう今時の娘ですが、
彼女を見守る父親は古き良き時代の労働者。
団結や倫理観、今ではダサいといわれる価値観の中で生きてきた人です。
父娘そして新旧世代の価値観のずれは仕方ありません。
労働をとりまく環境も変わりすぎてしまいました。

父親はただ娘を見守り続けるだけですが、
この父親が本当に良い味を出していました。
無茶をする娘を心配しながらも、余計なことは言わず、
毅然と見守る姿には無骨ながらも深い愛情があふれています。

この父親を演じたのはなんと役者未経験の元港湾労働者コリン・コフリン。
筋の通った父親は演技ではなく、彼の人生そのものなのでしょうか。
移民問題は今日的なテーマですが、
その背後には不器用な父親を通してケン・ローチの視線が感じ取れます。

手探りでがむしゃらに生きる若い人たちへの励ましとも導きともとれる視線。
やはり、この人は名匠の名に値する監督です。

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監督/ケン・ローチ、脚本/ポール・ラヴァティ
出演
アンジー/キルストン・ウェアリング、ローズ/ジュリエット・エリス、父親ジェフ/コリン・コフリン
8月、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー
www.kono-jiyu.com

by Mtonosama | 2008-07-08 16:14 | 映画 | Comments(8)
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©YALLA FILMS - WILD BUNCH - FRANCE 3 CINEMA.
敵こそ、我が友
~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~
Mon Meilleur Ennemi

  敵の敵は味方、敵の味方は敵?二重否定が苦手です。
すんなり肯定文で語ったら、わかりやすいのに、なんで二重否定にするの?
「おいしくないことはない」。
もう!はっきりおいしい、と言えばいいではないですか。
殺してないことはない、悪くないことはない。
殺したんでしょ?悪いんですよっ!
と、世の中、簡単に行けば、こういう映画は作られないわけで…

     強制収容所が連合国軍兵士たちによって解放されるシーン。
    痩せさらばえたユダヤ人収容者たち、
    縦縞の薄汚れた囚人服を着せられたかれらがヨロヨロしながら金網の外へ出てきます。
    さわやかで健康的なアメリカ軍兵士はかれらにとっては解放者です。
    それにひきかえ悪鬼のようなドイツ兵士。

         これがアメリカ映画のお約束といえる描き方。
         アメリカにとってナチスは大いなる敵だったはず。

    クラウス・バルビー
    ゲシュタポとしてドイツ占領下のフランスで多くのユダヤ人やレジスタンスの活動家を
    殺し、拷問し、強制収容所へと送り込んだドイツ人。
    かつての映画なら、戦後は存在しないはずの人間です。
    しかし、彼は第二次世界大戦後、仇敵アメリカ陸軍情報部に入り、
    反ソ・反共産運動のスパイとして働きました。
    アメリカもまたナチである彼の情報を利用するため、彼を守り抜きます。
    フランスからの身柄引き渡し要求を逃れるため、バルビーを南米に亡命させたのも
    アメリカ陸軍情報部でした。
 
     1951年南米ボリビアに到着した彼はクラウス・アルトマンと名を変え、
    ボリビア軍将校やボリビア在住の元ドイツ軍将校と交流を持ち、関係を深めていきます。
     1964年ボリビア軍事政権樹立の陰の立役者であり、
    チェ・ゲバラの暗殺計画にも関わった人物なのです。

     1983年ボリビアから追放され、仏領ギアナで逮捕されるまで、
    戦後約半世紀歴史の闇の部分で暗躍したバルビーですが、
    その間に彼の戦争犯罪は時効を迎えていました。

     戦争犯罪の時効は20年です。
    1965年には逃亡中のナチス戦犯は無罪放免されてしまいます。
    それを防ぐため1964年に立法化されたのが
    「人道に対する罪」には時効がないという法律でした。
    これがあったためにバルビーの裁判は可能になりました。

     しかし、もしも、この法律がなければ、バルビーは平然と生き続けていたのでしょうか?
    そしてボリビアの地にドイツ第四帝国を打ち立て、
    ハーケンクロイツの旗をたなびかせようとしたのでしょうか?

     ケヴィン・マクドナルド監督はバルビーの実の娘、歴史学者、弁護士、
    バルビーの友人、ボリビアの内務大臣、そしてバルビーの被害者たち、
    多くの人々にインタビューし、
    それぞれの立場から多面的にバルビーの実像を描きだしていきます。
    実の娘が「パパはやさしい人だったわ」と言っても、
    バルビー個人の犯罪性、残虐性は歴史学者や被害者たちが実証します。
    あるいは法律家がアメリカ政府の意図を客観的に証言します。
 
     バルビーは結局終身刑を受け、刑務所内で病死しましたが、
    そんなバルビーもおそらくはアメリカ陸軍情報部の庇護がなければ
    生き延びることさえできなかったでしょう。 

     巨大な国家権力がナチズムを信奉し続けた個人(=クラウス・バルビー)を
    利用したことによって、チェ・ゲバラは殺され、ボリビアの平和は後退しました。

     歴史は単純な肯定文だけでは語れません。
    知らなかった重い現実の前に深いため息が出ます。

     http://www.teki-tomo.jp/ 
    7月26日、銀座テアトルシネマ他にて公開
by Mtonosama | 2008-07-03 09:28 | 映画 | Comments(2)
クライマーズ・ハイClimber’s High

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          (C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ

     「1985年8月12日、羽田発大阪行き日航123便御巣鷹山に墜落」
    生まれていない人はともかく、あの頃、物心ついていた人なら
    あの悲惨な事故は記憶に刻みつけられているのではないでしょうか。

     あれからもう23年。これを短いとみるか、長いとみるか。
    遺族にとってはまだ23年。
    ざっくり開いた傷口にようやく薄い皮膜ができ始めたところかもしれません。
    映画化に当たっては実に細かい配慮が必要だったことでしょう。

     「クライマーズ・ハイ」は2003年に出版された横山秀夫の同名小説を
    映画化したもの。
    自身、地元群馬の地方紙社会部記者としてあの事故を取材した人間として
    その体験をベースに著した同書はNHKでも佐藤浩市主演でドラマになっています。

     事故を報道する側である新聞記者に軸足を置いた映画ではありますが、
    日本中をテレビの前に釘付けにしたあの事故にまつわる作品である以上、
    御巣鷹山の現場を離れるわけにはいきません。
    墜落現場の再現にはとても力が入っています。

    急峻な斜面から生えているような鶴のマークの尾翼。
    夏の空をかきまわすように旋回するヘリコプター。
    しかし、カメラが地面を避けて撮影するなど、
    神経を遣った演出です。
    当時、現場で取材したカメラマンも遺体をうつしこまないアングルに
    心を砕いたはずだからです。

    一匹狼の遊軍記者と過去の特ダネにいつまでもこだわる上司や同僚との確執
    中央紙に対する地方紙のびみょーな思い
    友情、家族、登山。
    盛り沢山な内容ながら、やはり関心はあの事故へと戻っていってしまいます。

     あ、しかし、キーワードが
    「チェック、ダブル・チェック」 
    ビリー・ワイルダー監督の「地獄の英雄」(’51)の中で
    田舎新聞の編集長がいつも言う口ぐせで、
    この映画の中でも主人公がたびたび口にする、
    重要な意味を持った言葉。
    アメリカで映画づくりを身につけた原田眞人監督らしい解釈です。
    要チェック、ダブル・チェックですよ。

    監督:原田眞人
    出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子ほか
    7/5(土)より、丸の内TOEI他、全国ロードショー
    配給:東映×ギャガ・コミュニケーションズ
    http://climbershigh.gyao.jp/

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by Mtonosama | 2008-06-27 16:54 | 映画 | Comments(2)
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              COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY

いま ここにある風景
エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ「CHINA」より
Edward Burtynsky;Manufactured Landscapes

    中国福建省の巨大な工場。カナリア・イエローでコーディネートされた
    建物と労働者たちの作業着。
    カナダ・オンタリオ州の朱色に染まった川。
    正直言って、きれい!と感じてしまいます。
    というのも、カナダを代表する国際的な写真家エドワード・バーティンスキーの
    写真そのものが素晴らしいから。
    そして、彼が被写体として捉えた〈産業の風景〉が映像として動き出したのが
    この映画だから。
    「いま、ここにある風景」はジェニファー・バイチウォル監督が
    写真家バーティンスキーとともに旅し、
    その自然破壊の光景を撮影したドキュメンタリー映画です。

    Curiosity killed the cat.ということわざもありますが、
    好奇心からつい観てしまった映画。そこにあった悲鳴をあげる地球の惨状。
    知ってしまった想像を超える自然破壊。
    きれい、と感じたその映像の奥から恐ろしい現実が見えてしまいました。
    絶望のあまり、気の小さい猫ならほんとに死んでしまうかもしれません。

    「長江哀歌」(賈樟柯監督)でも見た三峡ダムの底に沈む街。
    それがここではもっと破壊が進み、すべてが瓦礫と化していました。
    それでも砂塵や煙の中で人々が働いています。
    中国だけではありません。
    バングラデシュでは痩せた若者が解体されるタンカーから
    船底に残った原油を手でかき出していました。
    消費者であり、生産者であり、被害者であり、加害者である私たちにとって
    目をそむけているわけにはいかない
    いまここにある風景です。

スタッフ
監督:ジェニファー・バイチウォル、撮影監督:ピーター・メトラー

7月12日東京都写真美術館ホール、シアター・イメージフォーラムにて公開、全国主要都市にて順次公開

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by Mtonosama | 2008-06-23 14:45 | 映画 | Comments(2)
     
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ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン
Le Voyage du Ballon Rouge


      侯(ホウ)孝(シャオ)賢(シェン)監督がパリを舞台に映画を撮りました。
      アルベール・ラモリス監督の「赤い風船」に敬意を表した作品です。
       「珈琲時光」(‘03)で彼が神保町の古本街や鬼子母神の路面電車を
      舞台にしたときも感じましたが、どうも侯監督には見慣れた風景の中を
      流れる時間に魔法をかける力があるようです。
       この映画の中にも本来のパリとは違うようなアジア的なゆったりとした
      時が流れています。

 7歳のシモンは人形劇師のママと二人暮らし。駅前で街灯にひっかかった赤い風船を
 見つけるが、高すぎて手が届かない…
 ママは新作劇の発表準備で忙しく、中国人留学生ソンをベビーシッターとして雇い入れ
 る。ソンは映画学校の学生だ。シモンを学校に迎えにいき、家に向かう道すがらシモン
 に「赤い風船」の話を語りきかせるのだった…

       石畳の路地をソンの黒い髪とシモンの麦わら色の髪が揺れています。
      その後を赤い風船が子犬のようについていきます。
      少年と街並にカメラを向け撮影するソン。
      離婚したパパや友人の間にママはいろんな問題を抱え込んでいて
      時々おかしくなることもあるけど、
      そんなことは生きていれば誰にでも起こること。
      深呼吸しながらやり過ごせばいいよ、
      そんな気持ちにさせてくれる映画です。

7月中旬シネスイッチ銀座にてナイトショー公開、全国主要都市にて順次公開


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by Mtonosama | 2008-06-17 06:59 | 映画 | Comments(0)
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   Copyright Films Montsouris 1956

赤い風船 
Le Ballon Rouge


古い映画を観て、登場する子どもの愛らしさに感動した後、
ふっと我に返ります。
「今じゃもうお腹の出たおじさん(おばさん)になってるんだよな」
なんか切ない。
「赤い風船」も「白い馬」も半世紀も前の作品なので、
主人公たちもおじさんどころか、おじいさんだけど…。

 昨年カンヌ国際映画祭監督週間に出品されたアルベール・ラモリス監督
の二作が上映されます。
 50年以上も前の作品なのに美しい映像で楽しむことができ、
 主人公の子どもたちも50年前のまま。か、可愛い。

  「赤い風船」(1956)はいわさきちひろさんの絵本で覚えている方も多いはず。
 真っ赤な風船とパスカルという男の子との交友(!)を描いたお話です。
 SFXなんて言葉すらない時代、丁寧に、丁寧に、手作りで作られた映画。
 まず映像にうそがないことに感激します。

  赤い風船は最後に悪ガキたちに割られてしまい、
 パスカルはパリのあちこちから現れた無数の風船に連れられて空高く飛んでいきます…

白い馬

 Crin Blanc



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  「白い馬」(1953)は南仏の湿地帯に生きる誇り高い野生馬『白いたてがみ』と
 少年フォルコとの友情を描いた物語。
 子どもって人ならぬものと心を通わせられる生き物だったのです。
 忘れてましたが。

  水を蹴って走る馬の力強さ。フォルコの凛とした乗馬姿。
 大地を駆ける野生馬の群れ。『白いたてがみ』をつけねらう牧場の男たち。
 フォルコは彼を守るため、広大な湿地帯を駆け抜けます。
 二人をその先で待っているものは…

  ラモリス監督の映画が名作と語り継がれるその理由を納得しました。
 映像の詩人にして職人、彼は偉大です。
 7月中旬シネスイッチ銀座で「赤い風船」「白い馬」の二本立てで公開。
 「赤い風船」にオマージュを捧げた侯孝賢 の「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」も公開。 

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by Mtonosama | 2008-06-15 16:58 | 映画 | Comments(1)
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歩いても 歩いても

♪歩いても 歩いても 小舟のよぉ~うに♪
と頭の中でリフレインしながら、映画の解説を読んでいたら
『家庭劇(ホームドラマ)の伝統の中で』という一節が目に入りました。
小津安二郎が描いた父娘の哀感、
あるいは向田邦子の「寺内貫太郎一家」の系統なのだそうです。
この映画はホームドラマなんですね。
でも、ジャンル分けは不要です。
是枝裕和監督は今回も良い映画を見せてくれました。
小舟になって映画の流れに身を任せることのできる心地の良い作品です。

海の見える風景の中を赤い電車が行きます。あれは京浜急行?
夏の午後、傾斜地に密集した家々、都会ではないけれど田舎でもない。
既視感が期待感を呼びおこし、物語へと引き込まれていきます。

横山良太40歳。現在、求職中の絵画修復士で妻と息子と一緒に実家に向かっている。今日は兄純平の命日。坂道を登り、実家に着くと姉のちなみと母が台所で食事の支度をしている。父は引退した開業医。母は専業主婦。姉ちなみは夫と子ども二人で近所に住み、近々この家をリフォームして両親と暮らすつもりになっているのだが。にぎやかに昼食をとり、母と良太家族は墓参りにでかける…

横山家の夏の一日を淡々と描いた映画。
良平が抱き続ける兄への劣等感やひがみ、
後継ぎを失った父が決して口に出すことのない思い、
食事の支度に専念しながら、時に母の胸をよぎる
「あんなことで死んでしまった」長男への無念。
さまざまな色のさまざまな思いがこの映画の底に流れます。
是枝作品の常連YOUと今回が初出演の樹木希林のかけあいににんまりしながら、
夏の浜を洗う波のようなできごとに身を浸しているうちに結構グッショリぬれてしまう…
おだやかですが、じわりとしみこむ映画です。

スタッフ
監督・原作・脚本・編集/是枝裕和、撮影/山崎裕
キャスト
良平/阿部寛、妻/夏川結、ちなみ/YOU、母としこ/樹木希林、父恭平/原田芳雄

シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館他にて6月28日全国公開
 
by Mtonosama | 2008-06-05 12:25 | 映画 | Comments(0)
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マンデラの名もなき看守 
Goodbye Bafana


ネルソン・マンデラ。
約半世紀にわたって南アフリカを支配した人種隔離政策(アパルトヘイト)と闘い、南アフリカ共和国初の大統領となった人物。
この映画はマンデラが初めて自身の人生の映画化を許した作品です。
といっても、威風堂々と大統領就任演説をする姿や、アパルトヘイトを終焉させた功を讃えて授与されたノーベル平和賞受賞が
誇らしげに描かれているわけではありません。
そこにあるのは彼の27年にわたる獄中での日々と彼を担当した看守ジェームス・グレゴリーとの心の交流でした。

白人世界の専売特許のように扱われてきた「自由と平等と民主主義」。
その旗を掲げたはずの白人が、南アフリカでは抑圧者として君臨し、
その理念を実体を持ったものとして輝かせたのは、ネルソン・マンデラという反政府運動家の黒人でした。

白人は偉いと無条件に信じ、親子4人の豊かで平穏な暮らしだけを大切にしていた若い看守が
マンデラという偉大な魂と触れあう内に自分自身の生き方、
そして、人種差別のない自由で平等な社会にめざめていく姿がこの映画では淡々と描かれています。

「恋におちたシェークスピア」でハンサムなシェークスピアを演じたジョセフ・ファインズは
本作でゴリゴリの人種差別主義者から次第に人間性にめざめていく様子を演じています。
彼もまた役柄の看守グレゴリー同様、この作品によって殻を破られた人物かもしれません。

 こんがらかった白と黒。
猫や犬は白毛も黒毛も関係なく、パンダやシマウマは白毛と黒毛が同居さえしているのに、
人間はどうしていつもややこしいことになるんでしょうか。

ストーリー 
南アフリカの首都ケープタウンから12キロほど離れた洋上に浮かぶロベン島は
17世紀以来刑務所として使われてきた島。
20世紀後半には政治犯が収容されていた。
グレゴリーがこの島に家族と共に赴任すると、国家公安局のジョルダン少佐から
ネルソン・マンデラの担当看守に任命される。
グレゴリーがマンデラの故郷の近くに育ち、彼らの言語であるコーサ語を話せることから、
マンデラが面会者と交わす会話内容をスパイさせたかったからだ。
半年後、マンデラ夫人が面会に来る。息子が運転免許をとったこと、
そして反政府運動の指示などがコーサ語で話された。
グレゴリーは会話の内容を報告し、その結果、夫人は逮捕され、マンデラの息子は交通事故で死ぬ。
グレゴリーは自分の報告のために暗殺されたのではないかと心を痛めつつ、
息子を持つ父としてマンデラにお悔やみを述べるのだった。
 はたしてマンデラは危険なテロリストなのか、本当に白人だけが優れているのか。
グレゴリーの心は大きく揺れ始めていた……


キャスト 
ジェームス・グレゴリー(ジョセフ・ファインズ)
ネルソン・マンデラ(デニス・ヘイスバート)
グロリア・グレゴリー(ダイアン・クルーガー)

スタッフ
監督:ビレ・アウグスト
製作:ジャン=リュック・ファン・ダム、イラン・ジラール、アンドロ・スタインボーン
脚本・台詞:グレッグ・ラッター、ビレ・アウグスト

5月17日(土)よりシネカノン有楽町1丁目、シネマGAGA!他にて全国順次ロードショー

mandela.gyao.jp

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by Mtonosama | 2008-05-16 19:03 | 映画 | Comments(2)