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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

<   2009年 07月 ( 7 )   > この月の画像一覧

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                      (C)2009NHK
映像詩 里山さとやま

いきなりですが、「となりのトトロ」のどのシーンが好きですか?
殿は、メイとサツキが庭にまいた木の種が、夜中のうちに芽を出し
ぐんぐん伸びていくところが大好きで、観るたびにワクワクしてしまいます。
ぼわんと伸びて、ゆさゆさ揺れ
またまた、月明かりの夜空を覆いつくすようにぼわんぼわんと茂っていく樹木。
(おそらくはクスノキかな?と勝手に思っていますが)
いきものの育つ姿からは勢いとかエネルギーがもらえるような気がします。

いえ、今回の試写室は「となりのトトロ」ではなく
NHKドキュメンタリー「里山」の劇場版なのですが。

里山は、村落と自然との間にあって、人が利用している森林
人々と木々と動植物が共存するところです。

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写真家今森光彦さんの写真集「里山物語」に触発され
そこに生きる様々な動植物を最新の撮影技術によってとらえたドキュメンタリー「里山」。
シリーズ化され、10カ国以上で放送されました。
世界各地のテレビドキュメンタリー賞や映像賞も受賞しています。
ま、そんな成果をひっさげての今回の劇場版ということでしょう。
「里山」シリーズ第3弾「里山 いのち萌ゆる森」が劇場公開されます。

琵琶湖のほとりにある広い雑木林。
昔、人々はそこで薪や炭を作っていました。今はシイタケを栽培しています。
薪を作るには木を伐らなくてはならないし
シイタケだってホタギにするクヌギを伐ってこなくてはなりません。
一千年もの間、ただ木を伐るだけだったら、里山ではなくハゲ山になってしまいます。

さて、人間のすごいところはここです。
伐採をするとき、人は根こそぎ伐り倒すことはしません。必ず切株を残しておきます。
そうすると、春には切株から新芽が勢いよく芽生え、15年もすると大きく成長し
また利用できるようになります。

これって、種から育てるより、ずっと早いんだそうです。
それに、木を伐れば、森の地面に陽光が射し、そこにあった種子も芽吹くことができますしね。
人間の都合と動植物の生態がうまくマッチして
みんなまるくおさまっています。

何度も何度も伐採されたクヌギは根元がこぶのように変形し
大きなうろができ、そこにミツバチが巣をつくったりします。
ミツバチの巣があんなふうにできているなんて知りませんでした。

クヌギが出す樹液にカブトムシやカミキリムシなどの昆虫が集まってくるのは
ご存知でしょう。
そこで繰り広げられる闘い
勝利者のカブトムシがあおむけになって
その短くも強靭な脚を使って思いっきり相手を投げ飛ばします。
見事な放物線を描いてぶっとぶ負けたカブトムシ。

負けたカブトムシが投げ飛ばされる瞬間。
「ウホーッ」と単純に喜んで観ていましたが、カブトムシが相手を投げ飛ばす瞬間の撮影って
良く考えたら(良く考えなくても)すごく大変なんですよね。

     不粋を承知で、種明かしをすると…
     カブトムシの周囲に20台のデジタルカメラが置かれているのだそうです。
     カブトムシが投げ飛ばされる直前にシャッターを押すと、
     隣のカメラのシャッターが少し遅れて切れ、
     次々と20台のカメラのシャッターが切れるようにセットされています。

     とはいっても、「投げ飛ばされる直前」の判断って…

2年3か月をかけて撮影した里山の四季。
どの季節にも驚くべき自然の営みが映しだされています。

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ぼこぼこと無愛想なオブジェのように里山に立っている切株達から
一斉に新芽が萌えだす様はまるでオペラです。
トトロの夜の木々のように、踊るようにひこばえが芽吹き
歓喜の歌声をあげながら成長していきます。

     最新機器の功績も大きいでしょうが、撮影スタッフの地道な努力には頭が下がります。

里山は太古の自然とは違い、人間の手が加わることで自然と共生できる場所です。
昔の人の智恵はやさしいことにつかわれていたんですね。
それが今も活かされていることに単純にうれしくなります。

映画のキャッチコピーを引用すれば、里山とは「人と自然が約束を交わす場所」。

なるほど。

里山
出演/今森光彦、語り/玄田哲章、安井邦彦、高橋美鈴
ディレクター/菊池哲理、製作統括/村田真一、石田亮史
8月22日(土)新宿ピカデリー他全国順次ロードショー
http://satoyama.gyao.jp/

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by mtonosama | 2009-07-31 06:06 | 映画 | Comments(8)
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               (C)2009「ちゃんと伝える」製作委員会

           ちゃんと伝える

映画って、内容が自分の体験とリンクすると、結構沁みます。

     子ども時代は厳しくて、うまくコミュニケーションをとれなかった父が
     末期ガンで入院し、息子は悔いを残したくないと、毎日毎日父の病室を
     見舞う…

と、いきなりの筋書きばらしですが、殿も昨年同じ体験をしたので
しんみりと鑑賞しました。
そしたら、園子温監督も昨年おとうさんを亡くしているのだそうです。

     園子温監督といえば「自殺サークル」(‘02)で
     ものすごくショッキングな自殺シーンを描いています。
     同じく死を題材にしたこの「ちゃんと伝える」にも構えてしまう方がおいででしょう。

しかし、この映画はあちらの世界へ去っていく父親を見送る
その日までをきちんと描いた作品。
主人公は、日々の暮らしを大切に生きつつ
死にゆく父とじっくり向かい合います。
わが身にふりかかった思いもかけない運命とも対話しながら。

    「自殺サークル」のあのスピーディな死の連鎖とは対極にある死です。

死にゆく父は奥田瑛二が、見送る息子はEXILEのAKIRAが演じます。
髪も切り、ひげも剃り落としたAKIRAが
地方都市のまじめなサラリーマンになりきっています。

      《ストーリー》
      豊橋のタウンマガジン編集部に勤務する27歳の史郎。
      彼は毎朝ジョギングで通勤します。
      町の人に挨拶し、豊川の土手を走り、吉田城を臨む歩道橋を
      結構早いスピードで走りぬけます。
      会社に着き、ウェアを着替え、仕事をします。
      そして、時間が来ると同僚に声をかけ、父の入院する病院に向かいます。

      地元の高校サッカー部で鬼コーチとして知られていた父。
      高校時代の史郎もサッカー部に属していました。
      学校で「おとうさん」と声をかけようものなら「先生と呼べっ!」と猛烈に怒鳴られ
      家でも厳しい父。
      いつしか父とは打ち解けられなくなっていた史郎でした。

      しかし、史郎は父の入院を機に毎日必ず1時間は病室を訪れ
      父とのつながりを取り戻そうとしたのでした。恋人の洋子も時に同行します。
      やがて父は「元気になったら、湖へ連れて行ってくれ。ふたりで行きたい」
      と告げます。

      そんなある日史郎は父の担当医に呼び止められます。
      数日前、胃痛を感じていた史郎は検査をしてもらっていたのでした。
      「史郎さん、はっきり言います。あなたはガンです。おとうさんよりもタチが悪い…」
      思いかけない医師の言葉…


「ちゃんと伝える」は詩のような映画です。

   父の入院
   釣り竿の上のセミの抜け殻
   史郎へのガンの告知
   恋人の洋子に事実を告げられないこと

これらの大切な事実が扇の骨だとしたら
その骨をその時々の軸として、ストーリーは語られます。
あるいは、少し前と今とを行きつ戻りつして
ぱちんぱちんと開く扇の面のように
父の入院が
洋子に事実を告げようとする瞬間が
描かれ、史郎の心の揺れを伝えます。

   さすが「ジーンズをはいた朔太郎」と称された園子音監督。
   17歳で詩人としてデビューした鬼才らしいひとひねりした構成です。

その特有のリズム感に身をまかせ
豊川のどこか懐かしい商店街を歩く史郎と洋子の恋人同士を見ていると
死は淡々とした日常とともに存在する日常のもうひとつの側面という気がします。

ラストは感動的です。
でも、泣くために映画を観たい、という方には向かないかも。
泣けばすっきりしますが、涙は洪水のように大切なものを押し流してしまいます。
「ちゃんと伝える」はあくまで、しみじみと、じっくりと心に沁み込む映画です。

人も、映画も、何かを伝えなくちゃいけないんですから。

男性の2人に1人、女性は3人に1人がガンを抱える日本。
この映画のような残酷な展開も案外普通に起こることかもしれません。

ちゃんと伝える
監督・脚本/園子温
キャスト
AKIRA/北史郎、奥田瑛二/父、高橋惠子/母、伊藤歩/中川洋子
8月22日(土)シネカノン有楽町1丁目ほか全国ロードショー
chantsuta.gyao.jp

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by mtonosama | 2009-07-26 05:54 | Comments(12)
映画『未来の食卓』

未来の食卓
NOS ENFANTS NOUS ACCUSERONT

食の国フランスの監督が食べ物をテーマにしたドキュメンタリー映画をつくりました。
食べることはどうしたって環境問題や国家の政策とかが関係してきますよね。

この映画も2004年ユネスコパリ本部で開かれた会議のシーンが
たくさん登場します。

地球を憂える世界中の科学者が、司令室に心配そうな顔を集めている
あの昔の東宝怪獣映画のようです。
(ちょっと譬えが古すぎましたか…)

そこで、あるガン研究者が
「人間の行動が病を生むのです。その最たるものが化学汚染です」と発言しました。

そもそもジャン=ポール・ジョー監督がこの映画を撮る気になったのは
2004年、自身が結腸ガンになったことがきっかけでした。
病気の原因を追求し、多くの事実を知るにつれて
これを作品にすることが映画監督としての使命だと思ったということです。

で、とりあげたのがフランス南部アルルに近い小さな村バルジャックの試みでした。
この村ではすべての学校給食と高齢者向けの宅配給食をオーガニックにしようと
立ち上がっていたのです。
そんなバルジャック村の1年間を撮影したドキュメンタリー映画が
「未来の食卓」です。
原題は”NOS ENFANTS NOUS ACCUSERONT”『子供たちは私たちを告発するでしょう』。

     南仏の心地よい木陰でおじさんが二人くつろいでいると
     数人の小学生が「パンを買ってください。オーガニックのパンです」とやってきます。

     おじさんのひとりは、偏った食生活が身体にどんな影響を与え
     農薬を含む化学物質がどれだけ人間の体に被害を及ぼすか
     について告発を続けているジャーナリストのぺリコ・ルガッスです。

     「オーガニックってなんだい?」と尋ねたおじさんに
     「自然のままということです」と女の子は自信たっぷりで答えました。

     映画『未来の食卓』
   
         自然のまま。
         化学肥料を使わない。農薬を使わない。
         有機農法ということ。

     おじさんたちが木陰でくつろぐバルジャック村は美しい田園風景が広がっています。
     でも、数年前までは土壌や水が汚染されていて
     病気にかかる村人たちが大勢いました。

     映画の中でも小児ガンで子どもを亡くした母親がインタビューに答えています。
     ブドウ農家の妻が農薬調合をする夫の体調について語ります。
     そう、化学汚染の恐ろしさについて、です。

     なにより農薬散布の際のいでたちの厳重さといったら!
     モモの農家もブドウ農家もおとうさんたちは
     「風の谷のナウシカ」の防毒マスクみたいなものをつけて作業していました。
     わかってはいたけれど、農薬ってそこまですごい毒なんですね。
     ブドウ農家のおかみさんが語っています。

     「家で夫が農薬を調合する時、知らない内に吸い込んでしまいます。
     そうすると3日間鼻血が止まらなくなるわ。
     友人はワイン畑に農薬を撒く度に8日間排尿できなくなると言ってます」

     私たち、そうやってできたワインを飲んでいるんですけど…

     現在、バルジャック村のあるガール県のオーガニック農家数は278世帯。
     フランス国内でのオーガニックの学校給食導入のリーダー的存在です。

     もちろん在来農法を続けている農民たちもいて
     一斉に有機農法に転換できないのも事実。
     ですから、村のあちこちで話し合いが行われます。
     みんなが納得しないと、ことは始まりませんから。
     給食初日の保護者説明会で
     村役場での集会で
     あるいは子どもを学校まで送っていった帰り道で

     村長さん同席で在来農法農家とオーガニック農家が意見を述べます。
     生徒たちの父兄も看護士さんも皆が意見をいい、疑問をぶつけます。
     おかあさんたちも本音で語り合います。

     「オーガニックって高いじゃない?」

     「全部オーガニックにするのは無理だから、余計なものを買わなくなったわ。
     必要な分だけ買うの。冷蔵庫は空っぽだけど、大事なのは温かい食事だわ」

     「私も今は効率よく買っている。今の世の中は食べ過ぎ。
     少し減らしても害にならないわよ」
     
     などと、少しばかり耳に痛いことを含め、主婦たちがおしゃべり。


     観客も「そうだよな」、「確かに」、あるいは「やれやれ」とつぶやきながら
     スクリーンをみつめます。

      
映画の中には、一般農家の畑と30年前から有機栽培を行っているブドウ畑が登場します。
これはちょっとショックでした。
土が全然違うのです。
農薬を使った土は硬く固まっています。
それに対して有機栽培の土はふかふか。指でつっつくとミミズが働いていました。

硬い土は大雨が降ると水を吸収することができないので、雨と一緒に流れていき
ついには岩盤が顔を出してしまいます。
一方、柔らかい土は水を吸収し、さらに土の中に蓄えておくこともできるのです。

もともと農耕に適した土壌だったものを
化学肥料や除草剤などを使って、土を殺してしまったのですね。

     唐突ですが、司馬遼太郎が書いていたことを思い出しました。
     蒙古の草原は薄い土がおおっているだけで、農耕には適していません。
     だから彼らは家畜に草を食べさせた後、またその地に牧草を自生させるために 
     ゲルをたたみ、次の土地に移動していました。
     彼らの移動牧畜生活は自然環境に即したものだったのです。
     しかし、勤勉な漢民族はとにかく空いてる土地があれば耕して何かを植えたい。
     その結果、薄くデリケートな土壌を破壊してしまった、というのです。


食べ物の問題はどうしても農業政策や、環境問題など大きな問題に発展してしまいます。

でも、だからって先送りしてると、それこそNOS ENFANTS NOUS ACCUSERONT.
『子供たちは私たちを告発するでしょう』。

フランスは食糧自給率が100%を超えているのだそうです。
日本は40%以下です。
私たちはガール県バルジャック村からだけ食料を輸入するわけにはいきません。
っていうか、食糧自給率40%以下って大変な問題ですよね。

オーガニックねぇ。一過的な流行に終わらせるわけにはいかない大事なことです。

未来の食卓
監督・プロデューサー/ジャン=ポール・ジョー、プロデューサー/ベアトリス・カムラ・ジョー
出演
エドゥアール.ショーレ、ペリコ・ルガッス他
8月8日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
http://www.uplink.co.jp/shokutaku/

予告編をご覧ください。


映画『未来の食卓』

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by mtonosama | 2009-07-21 05:40 | Comments(8)
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          (C)COPYRIGHT 2006 cinema11undici-Rai Cinema

ポー川のひかり
Cento Chiodi

額縁に入れていつも眺めていたい映画のシーンってありませんか?
殿の場合、この映画のワンシーンにそれはありました。

「ポー川のひかり」というタイトルですが
額縁におさめたいそのシーンは
ポー川の土手の上に拡がる
乾いた高い空とか
夏の光をはね返してゆったりと流れるポー川の水面とかではなく
(これはこれで切り抜きたい気分ではありますが)
映画の冒頭に登場する無数の古文書です。

     その古い宗教書は翅をひろげた大きな蛾のようにページを開き
     太い釘に貫かれ、昆虫標本のように床にとめられていました。

     ボローニャ大学の奥まった聖域のような空間。
     荘厳な高い窓から射し込む光に充たされたその空間の
     床一面に散乱する釘刺しの古文書。
     その釘は十字架にイエスをうちつけた釘そのままの
     まがまがしさ。

     発見した守衛さんが腰を抜かすのも無理はありません。

恐ろしいけれど、美しいシーンです。
オリジナルタイトル“Cento Chiodi”は「百本の釘」という意味。
すごく印象的にタイトルを表現してます。

     監督はエルマンノ・オルミ。
     1978年ベルガモの農夫の生活を描いた「木靴の樹」で
     カンヌ国際映画祭グランプリを受賞
     1988年には「聖なる酔っぱらいの伝説」で
     ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受け
     2005年にはオムニバス映画「明日へのチケット」で
     薫り高い小篇を撮っています。
     1931年生まれ78歳のオルミ監督ですが
     「ポー川のひかり」が最後の劇映画になるとのこと!

なぜもう劇映画を撮影しないのでしょう。
50年以上も前から撮り続けてきたドキュメンタリー映画に関しては
これからも撮り続けるというのですが。

「最後の劇映画である」と公にした以上
そこには監督の深い想いがこめられているにちがいありません。

    「まず何よりも最後の所作は自分の一生の意味を集約するものだという自覚である。
    ここで私が自分に向けた根本的な問いは―――中略―――
    『誰について語るのか?』だった」


    と語る監督が、この映画の主人公としたのはキリストでした。

それも、十字架にかけられ
その自らの重さのため、手と足に打たれた釘を支えに
十字架からずりおちそうになっている、あの惨めな磔刑像のキリストではなく
いきいきと笑い、人々と語り
怒りのあまりブチ切れることもある人間イエス・キリストでした。

だから、冒頭、宗教書を釘刺しの刑に処したのでしょうか。
今の世に怒り狂うイエスの怒りを表現するために。

     殿の中学高校はミッションスクールでした。
     毎日始業前にはクラス礼拝があり、週に1回は全校礼拝。
     礼拝当番なんてものもありました。
     毎日、聖書を読み、お祈りなどをしていると、
     イエスも天上の人と思いこんでしまいます。

     ところが、ある日、聖書の中に次のような内容をみつけました。
     (マルコによる福音書11章です)。

        のどが渇いたイエスがいちじくの木をみつけ、その実を食べようと
        近づいていったら、ひとつの実もなかったそうです。
        怒ったイエスはそのイチジクを呪い、枯らしてしまったというのです。

     「あらま、なんてわがままな。イエスは偉い人ではなかったのかい」と
     数十年にわたって思い続けていました。

     そんな素朴な疑問が
     監督の言葉を知り、この映画を観て、氷解したような気がします。
     そうだ!イエスは人間だったんだ!
     怒るし、笑うし、酒だって飲んでいたんだ。そうか。

〈ストーリー〉
夏休みで学生たちのいないボローニャ大学
守衛は大量の古文書が太い釘で床に打ちつけられているのを発見。
容疑者は将来を嘱望されている哲学科の若い主任教授だった。

教授は車を走らせていた。
ポー川のほとりで車を乗り捨て、キーやジャケット、財布も川に投げ捨てた。
そして川岸にある朽ちかけた小屋をすみかにした。

生活用品を買いにポー川の土手を歩き、町へ向かう教授。
郵便配達の青年ダヴィデにパン屋の場所を教えてもらい
そのパン屋で若い娘ゼリンダと知り合う。
翌朝、小屋の修理を始めた彼に配達途中のゼリンダが声をかける。
郵便屋のダヴィデもやってきて小屋を建て直す相談にのってくれる。
小屋の近所で共同生活をする老人たちも手伝いに来てくれる。
教授の顔に笑顔が戻り始めた。
人々はその風貌から教授をキリストさんと呼ぶようになっていた。

その頃、ポー川から彼のジャケットなどが見つかり
警察は自殺を疑い始めていた…

     「自転車泥棒」(‘48)とか「苦い米」(’49)とか、に描かれた
     第二次世界大戦後の貧しかったイタリア。
     モノクロながらも広い空の明るさを感じさせる貧しかったあの時代。

     そう、ネオ・リアリズモというんですか?
     あのおっとりとした時の流れを感じさせる映像の中で
     キリストさんや村人たちが素朴に穏やかに語り
     ポー川は昔と変わらずゆるやかに流れ続けています。

この映画を現代のキリスト教が抱える諸問題への告発とみるのか
宗教がらみで繰り返される愚かな戦争への怒りとみるのか
心穏やかに生きようよ、キリストさんはいつでも来てくれるよ
という救いの映画とみるのか。

自身、アッシジのフランシスとも呼ばれるエルマンノ・オルミ監督が
最後の劇映画となる作品「ポー川のひかり」で問いかけてきました。

ポー川のひかり
監督・脚本/エルマンノ・オルミ、撮影監督/ファビオ・オルミ
キャスト
ラズ・デガン、ルーナ・ベンダンディ、アミナ・シエド、ミケーレ・ザッタラ、ダミアーノ・スカイーニ、
フランコ・アンドレアーニ
8月1日(土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショー
http://po-gawa.net/

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by mtonosama | 2009-07-16 05:51 | Comments(14)

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クララ・シューマン 
愛の協奏曲

Geliebte Clara


クララ・シューマン。
小学生のとき、学校の図書館でこの人の伝記を読みました。
なぜ?
うーん、わかりません。
多分、ヘレン・ケラーの伝記を読み
女性つながりで「クララ・シューマン」を手にとったくらいのことだと思います。
彼女が100マルク紙幣の顔になるほどすごい女性だったことなど
もちろん知りませんでした。
ま、小学生ですから、そんなに深い考えがないのは仕方ありません。

     しかし、当時のかすかな記憶がこの映画に導いてくれたのですから
     小学生の読書もなかなか侮りがたいものです。
     例え、その時読んだはずのクララ・シューマンの人生を
     まったく覚えていなかったとしても、です。

監督はヘルマ・サンダース=ブラームス。
この名前を見てもわかるように、彼女はヨハネス・ブラームスの末裔にあたります。
ヨハネス・ブラームス。
この映画の重要なキーパーソンであります。

     監督はそのヨハネスの叔父の子孫。
     ヨハネス自身には子どもがいませんでしたし、その兄弟にも男子はいませんでした。

     ヨハネス・ブラームスに子どもがいなかったということ。
     そのこともまた、この映画の内容に期待を持たせる歴史的事実です。

映画はコンサートピアニストとして名を馳せるクララ・シューマンが
演奏ツアーにでかける列車の中から始まります。
クララ34歳、夫ロベルト43歳。
既に7人も子供のいる音楽家夫妻であります。

     《ストーリー》
     ハンブルグのコンサートホールをうめる満員の聴衆
     華やかにピアノを演奏するクララ・シューマン。
     奏でるは、夫ロベルト・シューマン作曲の「ピアノ協奏曲イ短調Op.54 ~第1楽章」。
     演奏を終えたクララに促され、夫のロベルトも壇上に上がります。
     興奮した聴衆に取り囲まれるシューマン夫妻。
     その時、二人に声をかけた若い男がいました。
     彼の名はヨハネス・ブラームス。作曲家だという20歳の青年でした。
     クララは彼が演奏しているという波止場の居酒屋へ
     豪華なステージ衣装のまま、駆けつけます。
     陶然としてヨハネスの演奏に聴き惚れるクララ。

     シューマン一家はデュッセルドルフにやってきました。
     ロベルトがデュッセルドルフ市の音楽監督に就任したのです。
     一家を迎えたのは、家政婦や料理人もいる大きな邸宅。
     家事から解放されたクララは「作曲を再開できるわ」と瞳を輝かせます。
     ところがロベルトの放った言葉は「私の妻では不足なのか?」

     その頃、ロベルトはひどい偏頭痛をかかえていました。
     指揮の仕事はもちろん、交響曲「ライン」の作曲も進みません。
     夫の代わりに指揮者として楽団員の前でタクトを構えるクララ。
     彼らの嘲りをものともせず
     (女性が指揮をするなど、当時はとんでもないことなのです)
     見事に指揮をやってのけます。

     ある日、シューマン邸に訪問客がやってきました。
     ヨハネス・ブラームスです。
     留守番の子ども達の前で逆立ちをやってみせたり、すっかり人気者に。
     そして、シューマン一家とブラームスとの同居生活が始まりました…

病気がちの夫、大勢の子ども、生活苦。
ピアニストとしても、作曲家としても、ありあまる才能を持ちながら
女であるということで多くの犠牲を払うクララ。
21世紀の現代でも女性は自己実現のために
何かを犠牲にしなければならないことは往々にしてあります。

しかし、時代は19世紀。
才能はあるものの、神経が細く、病弱な夫。
夫を気遣いつつ生活のためにコンサートツアーを続けるクララ。
当時の女性としては恵まれていたとはいえ
いったいどれだけ多くのことを諦めねばならなかったでしょう。

そこへ、降ってわいたように現れたのがヨハネス・ブラームスです。
才能にあふれ、そして、なにより彼女を深く敬愛してやまない若く美しい男。
クララとの歳の差は14歳。

     こんな場合、神経質で薬物依存の夫より、若い崇拝者に心が傾くでしょう。
     そりゃ、もう絶対です。

しかし、この3人の間には音楽という魔物(あるいは天使?)も介在していたのです。
危うい三角関係は音楽によって補完されつつ
切なくも美しい結晶を形成していきました。

ヨハネスが妻に寄せる想いに気づき、嫉妬のあまり妻を激しく打ちすえるロベルト。
ロベルトにとって
ヨハネスは妻を奪う憎い恋敵でありながら
音楽家ロベルト・シューマンの唯一の理解者であり、その音楽の後継者でありました。
妻と音楽との間で苦悩するロベルト。
そして、妻に告げます。「私がいなくなってもヨハネスがいる」

でも、この息詰まるような緊張に耐えられず
ヨハネスはシューマン家を去っていきます。
必死にひきとめるクララに「昼も夜もあなたを想い続けます」と言い残して。

     ああ、なんとドロドロの修羅場でありましょう。

しかし、さらにロベルトに苦難が襲いかかります。
音楽監督の職を奪われてしまったのです。
クララは失意の夫を優しく慰めるしかありませんでした。

愛とは、重たいものです。
そして19世紀ロマン主義のこの時代、才能をもった女であるということは
なんと難しいことでありましょう。
「私の妻では不足なのか?」と問われ
「不足よ」と断言できないのは、愛ゆえ?それとも、時代ゆえ?

愛の葛藤と女としての生き方。
問うべきものの多い映画です。
ただの音楽映画でも、ただの恋愛映画でも、ただの女性映画でも
ありません。

     クララを演ずるのは「善き人のためのソナタ」「マーサの幸せレシピ」などに
     出演したマルティナ・ゲデック。
     100マルク紙幣や結婚前の楚々としたクララよりは少し逞しい感じがするのは
     否めませんが
     8人もの子供を生み育て
     (三角関係でもめているさなか、8人目の子どもを出産したのです)
     病弱な夫を支え、コンサートピアニストをするからには
     この位逞しくないと。

「流浪の民」や「子供の情景」などの名曲を作ったロベルト・シューマン
「ブラームスの子守歌」や「大学祝典序曲」を作曲したヨハネス・ブラームス
(すいません。知ってる曲名が少なくて)
彼らの音楽家以外の素顔もまた情熱的でありました。

     才能ある者も、ない者も、生きるということはやはりなかなか大変なことです。
     がんばろ。

クララ・シューマン 愛の協奏曲
監督・脚本:ヘルマ・サンダース=ブラームス
出演:マルティナ・ゲデック/クララ・シューマン、パスカル・グレゴリー/ロベルト・シューマン、
マリック・ジディ/ヨハネス・ブラームス
2008年/ドイツ・フランス・ハンガリー合作/109分
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
7月25日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

www.clala-movie.com

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by mtonosama | 2009-07-11 06:23 | Comments(16)
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妻の貌(かお)

早速ですが、文末のスタッフの部分をご覧いただけますか?

そうなんです。
監督、撮影、編集、ナレーターのすべてに
川本昭人(あきと)という名前が入っています。
こんなふうに言いきってしまっても差支えなければ
この人は素人のおじさんです。

    広島に住む82歳の川本昭人さんは50年以上もカメラを回し続けています。

    「蝶々先生」(‘69)          東京国際アマチュア映画コンクール受賞
    「私のなかのヒロシマ」(‘73)   東京国際アマチュア映画コンクール受賞
    「おばあちゃん頑張る」(‘74)   東京国際アマチュア映画コンクール受賞
    「妻の貌」(‘01)           神奈川映像コンクールグランプリ(短編)
                        山形国際ドキュメンタリー映画祭2001招待
    (「妻の貌」(‘08)          劇場公開ニューバージョンを完成)

    という受賞歴が撮影の長さとその実力を物語っています。

広島に生まれ、2005年に引退するまで
酒造会社の社長・会長として働いていた川本さん。
彼は1958年の長男誕生をきっかけに8ミリカメラを回し始めました。
良いおとうさんってことですね。

以来、川本さんが撮り続けているのは「家族」。
ただ、妻のキヨ子さんが被爆による甲状腺ガンを患っていることから
川本さんが撮影する家族の背後にはいつも原爆がついてまわっているのですが。

「妻の貌」は川本さんの初長編映画です。
新藤兼人監督の勧めもあって挑戦しました。
過去の作品(「一粒の籾」‘64、「私のなかのヒロシマ」’73、「おばあちゃん頑張る」’74、
「きのう今日あす」‘79、「お嫁さん頑張る」’84、「絆」‘85、「ヒロシマに生きる」’02)

からの映像を挿入した1時間54分の作品です。

     妻のキヨ子さんは1945年8月6日女子挺身隊として軍需工場に働いていたとき
     被爆しました。
     原爆で家族を失い、自身も絶えず倦怠感に悩まされていましたが
     1968年甲状腺ガンと診断され、手術を受けました。
     時に酸素吸入も必要とする身体で、川本さんの母を13年間在宅介護。
     その最期を看取ります。

     その合間に初孫が生まれ、長男が歯科医として開業し
     体の弱かった次男も結婚。
     次々に孫が誕生します。
     その度にキヨ子さんはかいがいしく働きます。
     家族のために身を粉にして働く昔ながらのおかあさんです。

     そんなキヨ子さんがある晩アイロンをかけながら
     部屋のテレビから流れる原爆詩集「慟哭」の朗読を
     アイロンの手を休めることもなく、じっと聴き入っています。
     原爆で亡くなった家族のことが胸中をよぎるのでしょう。
     虚空をじっとみつめるキヨ子さんの強い眼力がとても印象的です。

川本さんはいつも、いつもカメラを構えているので、家族にとっては
カメラを構えるおとうさんは当たり前になってしまっているのでしょうか。
とりたててカメラ目線になることもない家族の普通の姿が撮影されています。

     ただ、姑を見送った後、キヨ子さんは川本さんに怒りをぶつけます。
     「おばあちゃんは心の支えだった。私を頼りにしてくれた。
     あなたなんて、私を素材にして、仕事の肥やしにしているだけ…」

素人と書きましたが、半世紀もカメラを回し続け
一貫したテーマを追求し続ける姿勢はプロを超えているかもしれません。
逆に、頑固といってもいいこの姿勢はプロには真似できないでしょう。
しかし、それ以上に50年にわたって被写体であり続けること…
川本さんにも、キヨ子さんにも、ともに執念にも似た思いがあったと思います。

原爆を描き続けていると、広島の人にさえ
「まだ原爆と家族を撮り続けるのか」と言われるそうです。

「警告ができるほど強い作品でもないですが、また原爆が落ちるようなことがあったら大変ですよ。―――中略―――原爆に対する怒りがあるんですね。もちろん妻も。やはり今回の作品は若い世代の方々に見てほしい」
と川本さんは語ります。

     「人間は遺伝子のキャリアーだ」と村上春樹の「1Q84」にありました。
     あの日、無残にキャリアーであることを絶たれてしまった多くの命を
     忘れてはいけないのだと思います。

孫の誕生、孫の入学式、孫の成人式。
ほんとによくある家族のイベントがここには映し出されています。
しかし、この当たり前な風景が
あの日を生き抜いてきた人たちにとっては限りない僥倖なのでしょう。

妻の貌
監督・撮影/川本昭人、編集/川本昭人・小野瀬幸喜、ナレーター/川本昭人、岩崎徹、谷信子
7月25日(土)~平和のためのロードショー
ユーロスペース(www.eurospace.co.jp モーニングショーでの上映)
川崎アートセンターhttp://kawasaki-ac.jpにてロードショー
8月1日 (土 )ジャック&ベティ www.jackandbetty.netにてロードショー
あさぎ色・桃色の折り紙付き特別鑑賞券¥1300発売中
(折った折り鶴を各劇場に持っていくと、千羽鶴にして広島平和記念公園内の「原爆の子の像」
に寄贈されます)

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by mtonosama | 2009-07-06 06:22 | 映画 | Comments(10)
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© 2008 (Buffalo Soldiers and On My Own Produzione Cinematografiche) – All Rights Reserved
セントアンナの奇跡
Miracle at St.Anna


スパイク・リー監督、3年ぶりの新作です。
でも、今までと作品のカラーがちょっと、いえ、かなり違います。
そうなんです。今回は第2次世界大戦イタリア戦線が舞台。

スパイク・リーといえば
常に黒人としてのアイデンティティを意識した作品を描いてきた社会派監督です。
「Do the Right Thing」とか「マルコムX」とか、黒人が主人公の作品をつくってきたし
人種差別と闘い続け、常にとんがった発言を繰り返してきました。

例えばクリント・イーストウッドの「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」には
黒人兵士が登場しないことをあげて
「彼は人種差別主義者だ」と非難したり。
トレードマークの丸いメガネはご愛嬌ですが、ちょっとヤンチャな監督さんという印象がありました。

そのスパイクが戦争映画を撮りました。
それも、かなり正統派の戦争映画ですから
意外に感じる方も多いのではないでしょうか?

        「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」には黒人兵がいない!と
        スパイクはこぶしを振り上げましたが
        実際のところ、硫黄島攻略当時
        黒人兵はアメリカ軍上陸部隊の1%にも満たなかったらしいのです。

        それにしても、第2次世界大戦を描いたハリウッドの戦争映画には
        黒人兵があまり出てこないのは確かですけれど。

そこで、「セントアンナの奇跡」です。
この映画の舞台となるイタリア・トスカーナは
ムッソリー二率いるイタリア軍が1943年連合国に降伏すると
ナチス・ドイツによって制圧され、激しい戦闘が展開された最前線でした。
そこに送りこまれたのが第2次世界大戦時に実在した黒人だけの部隊
第92歩兵師団“バッファロー・ソルジャー”です。

1944年8月12日。“セントアンナの大虐殺”という事件がありました。
ナチス・ドイツがトスカーナ地方にあるサンタンナ・ディ・スタッツェーナ市に暮らす
無実の一般市民たちを殺害した事件です。
物語はこの虐殺から生き残った一人のイタリア人少年と
バッファロー・ソルジャーの黒人兵士との出会いを通じて
とてつもなく感動的な展開を見せてくれます。

        原作はジェームス・マクブライドの”Miracle at St.Anna”。
        彼の叔父がバッファロー・ソルジャーの一員で、幼い頃に語ってくれた話を
        思い出しながら、現地調査を重ね、2003年に出版された小説です。
        ジェームス・マクブライドは本作では脚本も担当しています。

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   《ストーリー》
   1983年NY。
   初老の郵便局員が窓口に切手を買いにきた男を一目見るなり射殺。
   郵便局員には前科も借金もない。
   ただ、家宅捜査された彼の部屋から、大理石製の彫像の頭部が出てきた。
   それはフィレンツェのサンタ・トリニータ橋を飾っていたもので
   1944年ナチが橋を爆破した時から行方不明になっていたものだった。

   1944年イタリア。
   彼はトスカーナで戦っていた。
   所属部隊はバッファロー・ソルジャー。
   最も過酷な最前線に送り込まれる黒人だけの部隊である。
   彼を含む4人が偵察隊として潜入した先で怪我をした一人の少年を助けたために
   部隊とはぐれてしまう。

   少年を見捨てることのできなかった兵士はトレイン。
   心優しい大男だ。
   彼はフィレンツェで拾ってきた彫像の頭をいつも腰からぶら下げていた。
   少年を邪魔にする身勝手なビショップ。
   イタリア語が話せ、首から下げた十字架にキスをする信心深い無線兵のヘクター。
   リーダーは知的で思慮深いスタンプス。
   はぐれた4人は共に行動するしかなかった。

   4人は少年の治療と食料を求めて或る村に。
   レナータという英語が話せる女性とその家族が暮らす家に厄介になる。
   故国アメリカと違い、黒人だからと差別をしない村人たちと
   心安らぐひとときを過ごす兵士たちだった。
   だが、そんな彼らを待ち受けていたのは…

1984年から1944年へ。NYからトスカーナへ。時空を超えて展開する感動作。
そして、その時空の超え方が巧みなのです。

        水たまりの中を走る革靴が、宙に浮いた瞬間、
        それは戦場のぬかるみを進む兵士の軍靴に変わります。

        これぞ、映画の様式美!と思わず膝を打つうまさ。
        スパイク・リー、すごい。名匠になってしまったのですか?

ご安心ください。彼のあのとんがりは随所に顕在してますから。
「アメリカは俺たちを兵士としてここに送った。
ちょっと前なら雑用係か料理人しかさせなかった俺たちをさ」

と、戦時中にも露骨な差別をしたアメリカを非難することは忘れていません。

とはいえ、スパイク・リー監督。やはり少し変わったような気がします。

映画のラスト近くで、
アメリカ軍、虐殺されるイタリア市民、そしてナチの兵士が
それぞれの場所で、それぞれの言葉で、祈りをあげるシーンがあります。
次第に高まっていく祈りが
天に届くかのような
聖歌が人々を包み込むかのような
霊的で感動的な場面でした。

黒人も白人もない
司祭は自分は殺されてもいいから、市民を助けてくれという
ナチス・ドイツの兵士も一人の父親にかえりました
そして、祈ります。
政治利害が、民族が、人種がぶつかりあう戦場に流れる
英語、イタリア語、ドイツ語の祈り。
大いなる愛とでもいうべきものに心がふるえました。

スパイク・リーが変わったと感じたのはこのシーンのせいだったのかもしれません。

セントアンナの奇跡
監督/スパイク・リー、原作・脚本/ジェームス・マクブライト(原作本「Miracle at St.Anna」)
キャスト
デレク・ルーク/オーブリー・スタンプス二等軍曹、
マイケル・イーリー/ビショップ・カミングス三等軍曹、ラズ・アロンソ/ヘクター・ネグロン伍長、
オマー・ベンソン・ミラー/サム・トレイン上等兵、マッテオ・シャボルディ/アンジェロ少年、
ルイジ・ロ・カーショ/アンジェロ大人

7月25日(土)TOHOシネマズシャンテ、テアトルタイムズスクエア他にて全国ロードショー

http://www.stanna-kiseki.jp/

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by mtonosama | 2009-07-01 06:54 | 映画 | Comments(20)