ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

<   2009年 08月 ( 6 )   > この月の画像一覧

f0165567_5413677.jpg

ボヴァリー夫人
Spasi I Sokhrani
Madame Bovaryもしくは Save and Protect

思春期。
中学3年から高校1年くらい?
人によってはもう少し早かったり、あるいはもう少し遅かったり
数年の開きはあるのでしょう。
ちょっと大人の世界をのぞきたくなる年頃
その頃、みなさんはどんな本をお読みになりましたか?

殿は、枕の下に隠して「チャタレイ夫人の恋人」を読みました。
裁判になるほど、大したことは書いてないな、などと思ったりしながら(笑い)。

「ボヴァリー夫人」も1850年代の発表当初はフランスで風俗紊乱の罪に問われたり
日本でも、1916年の刊行時には発禁処分となっています(1920年に解除)。
とはいえ、「ボヴァリー夫人」、近代史に初めてリアリズムをもたらした金字塔的な作品。
なかなか、であります。

f0165567_5423462.jpg


映画「ボヴァリー夫人」は1989年、今から20年前の作品です。
監督はアレクサンドル・ソクーロフ。

     4年前、終戦直後の昭和天皇を描いた「太陽」で話題になった監督です。
     当試写室でも‘08年12月に彼の作品「チェチェンへ アレクサンドラの旅」を
     上映しています。

ちょっと硬派な印象のあるソクーロフがなにゆえ「ボヴァリー夫人」を?

監督いわく
「中学生の頃、読んだ文学の中で『ボヴァリー夫人』が最も明快な印象を与えた一冊だったのです」
中学2年だったそうですよ。

さて、おませなソクーロフ少年を感動させた小説「ボヴァリー夫人」のあらすじです。

田舎医者シャルル・ボヴァリーは最初の妻を病で亡くし、美しいエマと再婚。
エマは農家の娘だが、修道院で寄宿生活を送った夢見がちな女性。
夫シャルルは凡庸な男ながら、エマを心から愛している。
田舎での単調な結婚生活。
エマは小説を読み、ピアノを弾き、絵を描き、鬱々とした気分を晴らしている。
そんなある日、夫シャルルが侯爵の病を治し
夫婦そろって城に招待される。
今まで小説でしか知らなかった上流社会の生活を目の当たりにして
あらためて夫との夢のない生活に幻滅するエマ。
そんな中で出会ったのが公証人の書記を勤めるレオン青年だった。
両者ともに恋心を抱くが、想いを告白できないまま、レオンは去る。
エマは彼が去った心のすきまを埋めるように
プレイボーイの貴族ロドルフと恋のアバンチュール。
だが、気まぐれなロドルフとの仲は続かず、彼女は体調を崩す。
妻とロドルフとの関係にまったく気付かないシャルルは
妻のため、いろいろな薬を取り寄せるが…
観劇をして気分転換するよう勧められたエマ。
街に出かけると、思いがけずレオンと再会。
二人は再び燃え上がる恋の炎に、今度こそ身を任せるのだった。
その後もエマはレオンに会うため、夫を偽って、毎週のように街へ。
レオンとの逢瀬のため、大金をつぎこむエマ。
高利貸しから借金を重ね、ついに裁判所から差し押さえ命令が。
エマは、レオンに助けを求めるが、彼は去っていく。
そして、絶望したエマは…

f0165567_5421797.jpg


1989年には167分だった作品をソクーロフ監督が128分に編集した本作。
フローベール没後130周年を記念して上映されます。
文芸映画というジャンルに入るわけですが
これを観たとき、ちょっと、いえ、かなり驚きました。

     文芸映画に期待する映像ってありますよね。
     まして19世紀フランスの小説なのですから
     美しい田園風景や
     素晴らしいインテリア、それやこれやに
     「なんて素敵なの」
     とうっとりしながら鑑賞するのが、これまでの文芸映画ではないですか。

     ところが、ボヴァリー家の窓の外に広がるのは埃っぽい山や汚い納屋。
     家畜や肥やしの匂いが漂ってきそうな風景です。
     実際、ハエが唸りを上げ、エマが大切にしている品々にたかっていたりします。
     このハエの羽音が映画を通してずうっと聞こえてきました。

当時30代のソクーロフ監督はどうしてここまで原作の色を変えたのでしょう。
エマが抱える絶望感をきわだたせたかったのでしょうか。
19世紀のフランスの田舎に生きる知的な女性の抱える朦朧とした不満を強調したのでしょうか。

     この映画が完成した1989年はソ連崩壊の年です。
     ソクーロフ監督もまたソビエト政府当局から受け入れられず、
     その作品は公開禁止処分を受けていました。
     不倫という背徳も含め、あらゆる表現が禁止されていた監督にとっては
     エマの暮らす田舎町は監督の置かれた状況に他ならなかったのかもしれません。

観終わった後、甘い文芸映画を期待したおのが不明に恥じ入った次第です。
思春期真っ最中の生徒さんや思秋期にあるご婦人殿方にとっては
ちょっと刺激が強すぎるかもしれません。
原作を読んでみたくなる映画です。

ボヴァリー夫人
監督/アレクサンドル・ソクーロフ、原作/「ボヴァリー夫人」(ギュスターヴ・フローベール著)
脚本ユーリィ・アラボフ
キャスト
セシル・ゼルヴダキ、R.ヴァーブ、アレクサンドル・チェレドニク、B.ロガヴォイ
1989年=2009年/ソ連=ロシア/カラー、配給/パンドラ
http://www.pan-dora.co.jp/bovary/
10月3日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー

ワンクリック、お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡いつも応援してくださって本当にありがとうございます♡
by mtonosama | 2009-08-30 06:23 | Comments(8)
f0165567_5512641.jpg

    (c)2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会   写真/瀧本幹也

f0165567_5515282.jpg



     その昔、ダッコちゃんというお人形がはやりました。
     体長30センチ位の黒いビニール人形です。
     大きな丸い目は見る方向によってウィンクしたり、開いたり。
     両手両足はコアラのように前につきだし、腕にしがみつきます。
     これだけのことなのに、なぜか爆発的に大流行。
     なかなか手に入らないほどでした。

     ダッコちゃんは子どものおもちゃ屋さんで売られていた空気人形でしたが
     是枝裕和監督の新作に登場する「空気人形」は
     大人のおもちゃ屋さんで販売されるお人形。

     ギリシャ時代、ピグマリオンの昔に戻るまでもなく、
     人形愛好者って結構多いようです。
     昨年も「ラースとその彼女」なんて映画が公開されました。
     (正直、これはちょっとひいてしまいましたが)

     本作主人公の「空気人形」は
     ピグマリオンの愛した象牙の像のように、アフロディテによって命を吹き込まれるまでもなく
     一人で歩き始めます。
     そして、一人でいろいろな人間と接点を持とうとするけなげな人形です。

待望の最新作「空気人形」。
昨年6月「歩いても 歩いても」
12月に「大丈夫であるように-Cocco終わらない旅~」
と、当試写室でも、是枝監督作品は2本上映しています。

「Cocco」以来、9ヶ月ぶり。
是枝監督はとても早いペースで映画を作っているのだなぁ、と思ったら
なんと本作は9年もかけて大切に磨いてきた作品でした。

原作は業田良家の傑作短編集「ゴーダ哲学堂 空気人形」(‘00)の表題作です。

長編2作目の「ワンダフルライフ」(‘98)以降
オリジナルストーリーだけを発表してきた監督にとっては珍しく、原作のある映画。
わずか20ページの短編漫画を9年かけて2時間6分の作品に完成しました。

さて、そのお話ですが、これがまた今まで是枝監督作品に抱いていたイメージを
見事にひっくり返してくれるものです。
是枝監督といえば
ドキュメンタリー風の作品あり、時代劇あり、ホームドラマあり、もろドキュメンタリーあり。

映画にも文体というものがあるとしたら、監督は実に多くの文体を持っています。
今回は、う~ん、なんといったらいいのでしょう。
〈生きる〉ということ、〈誰かを求める〉ということ、〈孤独な心〉ということを描くための文体。
メルヘンのような文体とでもいいましょうか。

f0165567_5522726.jpg


     《ストーリー》
     開発の波から取り残された都会の片隅。
     小さな家々が並ぶ町。
     通りに面した古いアパートの窓から、朝の光がたっぷりと射し込んでいます。
     部屋の住人・秀夫は勤務先のファミリーレストランへ出勤。

     ベッドの上には昨夜の名残をうっすらと漂わせる空気人形が
     大きな目を見開いて横たわっています。
     その人形がかすかにまばたきをし、ゆっくりと窓辺へ歩き出しました。

     ビニールの体を透過した日の光が半透明の影を床に落とします。

     クローゼットから選び出したメイド服を着て
     人形は外へ出ました。

     空気人形はいろんな人に出会います。
     日が落ちる頃、人形はレンタルビデオ店の店員・純一に興味をひかれ
     次の日からその店で働き始めます。

     仕事にも慣れてきたある日のこと
     人形は棚から突き出した釘で手を傷つけてしまいました。
     人形の体から勢いよく噴出する空気に驚いた純一は…

空気感…。
というより、映画の中の人形の動きはまさに空気そのもの。
ゆるやかな風のように歩み、蝶の翅のまきおこす微かなゆらぎのように微笑みます。
だって、空気人形ですからね。

次第に言葉を覚え、心を持つ人形を演じるのは韓国の女優ぺ・ドゥナ。
彼女のたどたどしい日本語は言葉を覚え始めた人形のそれとリンクして
とても自然です。

空気って、どこか優しげで、たよりなげで
それでいて私たちの生存を確実に保証してくれるもの。
なのに、いつか消えてしまうかもしれない。

そんなかろうじて存在しているような空気の中で
人はいつも何かを求めて生きています。
若さとか愛とか生とか性とか。
それは必ずしも本物を手にすることはできないのかもしれません。
で、代用品で我慢することを覚えるのですね。
赤ちゃんがママの代わりにバスタオルの切れ端を吸うみたいに。
恋人のいない男が空気人形を愛玩するように。

映画の最後に吉野弘の「生命は」という詩が出てきます。
   
     

     生命は
     自分自身だけでは完結しないようにつくられているらしい
     花も
     めしべとおしべが揃っているだけでは
     不充分で
     虫や風が訪れてめしべとおしべを仲立ちする
     生命は
     その中に欠如を抱き
     それを他者から充たしてもらうのだ
     ……(後略)

    
 
    
うん、うんと頷いてしまいます。人間って寂しい生き物ですね。
大人を泣かせるメルヘンです。

空気人形
監督・脚本・編集/是枝裕和、原作/業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形」(小学館ビッグコミックスペシャル刊)、撮影監督/李屏(リーピン)賓(ビン)
キャスト
ぺ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真理、丸山智己、
オダギリジョー、富司純子
9月26日(土)シネマライズ、新宿バルト9他全国ロードショー
http://www.kuuki-ningyo.com/index.html

ワンクリック、お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2009-08-25 06:40 | 映画 | Comments(14)
f0165567_537498.jpg

            (c)2008 PointBlank Films Inc. All Rights Reserved.
リミッツ・オブ・コントロールThe Limits of Control

        わが地方都市の駅前付近でのことです。
        ひとりのアフリカ系外国人男性が目の前を歩いていきました。
        少し短躯のガッチリ系で、スキンヘッドの頭はコリッと小さく
        スーツも決まっています。
        2ビートで肩を揺らして歩き、ラルフローレン・ポロスポーツの
        爽やかなフレグランスが後ろを歩く殿の鼻先に漂ってきます。
        このポロスポーツ氏
        おしゃれなスーツが自分でも気に入っているらしく
        2ビートの歩調はそのままで
        ショーウィンドウに映る姿に時々目をやるところなど
        なんだか笑いを誘ってくれました。

「リミッツ・オブ・コントロール」
主人公の〈孤独な男〉はスペイン中を2ビートで歩き回ります。
シルク混のメタリックカラーのスーツをビシッと着こなして
彼の方がポロスポーツ氏より少しクール…かな。

コードネーム〈孤独な男〉。
彼はある組織に属しています。たぶん。
スペインに降り立った彼が受けた指令は
「自分こそ偉大だと思う男を墓場に送れ」…
え? 「自分こそ偉大だと思う男」ってなに?
最初から狐につままれたまま、あたふたと〈孤独な男〉を追う殿。
  
f0165567_5385096.jpg


     〈ストーリー〉
     カフェでは必ずエスプレッソを2つ注文し
     携帯電話も銃も持たず
     任務についている間はいかに魅惑的な女性に誘われようと
     肌を合わせることはしない。

     指令を果たすべく移動する〈孤独な男〉。
     移動の先々に現れる様々なコードネームを持った男女。
     〈クレオール人〉〈ヴァイオリン〉〈分子〉etc,etc.
     彼らは皆一様に「スペイン語は話さないのか?」と問いかけ
     小さな紙片をマッチ箱に入れて〈孤独な男〉に手渡す。

     デジャ・ビュと化した光景。
     判で押したような仕事ぶりの〈孤独な男〉。

     村上春樹の小説に出てくる芝刈りのアルバイト学生のように
     あるいはゴルゴ13のように
     〈孤独な男〉は四角く、きっちりと
     それは気持ちよく任務遂行に向けて仕事を続ける。

     そして、荒野の中にあるアジトへたどり着き…

スーツの色がグレーからブラウンに変わり
いよいよ任務遂行か!
と期待し、裏切られ
観客は〈孤独な男〉の後をついて、スペイン中を移動するのです。

f0165567_5383055.jpg


     前作「ブロークン・フラワーズ」から4年目。
     ジム・ジャームッシュ監督の最新作です。
     ビル・マーレイ、イザック・ド・バンコレ、工藤夕貴など
     かつてのジャームッシュ作品の俳優が総出演。
     音楽は日本のロックバンド「ボリス」が担当しています。

ジャームッシュ監督の新作ができたと聞くとスタコラ駆けつけてしまう。
なぜか気になる存在です。
しかし、勢い込んで観れば観るほどはぐらかされてしまうんですよね。
っていうか
なんなんですか?これは!とでもいえばいいのか
え~、わかんない!と言ってしまうか。

「常識的にいけばこういう展開になるに違いない」
というドラマツルギーが通用しません。
いつもながら目でびっくり!
ワンテンポ遅れて頭でびっくり!!の展開。裏切ってくれるんです。

映画の冒頭にはA・ランボー「酔いどれ詩人」の一節
      「無情な大河を下りながら―――
      もはや船引きの導きを感じなくなった」

が引用されます。

     監督は「この詩は精神錯乱のメタファーなんだ。作為的な感覚の混乱だよ」
     などと澄ましていますが
     「そんなの冒頭で出すなよな」と逆らいたくなります。
     ある年代にとって、ランボーは聖なるイコン。
     その部分でひきずられてしまうではないですか。

と、いつもながらジャームッシュ監督の作品には脳内をひっかきまわされます。

しかし、今回の場合、同じ会話が繰り返され、同じ品物の受け渡しがあり
カフェに行けばいつだってエスプレッソは2つだし
〈孤独な男〉は何も話さないし
定型化された場面の繰り返しと折々のありえないシーンの挿入。
そう。例えば、裸の美女が透明なレインコートを着て、
ホテルの部屋に闖入したり、というような。

同じパターンプラス非現実的なシーン。
それゆえに安心と期待感があるということは言えるかもしれません。
なんといってもカッコいいですし。

監督と神経戦を戦いつつ、スペインの風景を楽しんでしまいました。
この映画、くくりはやはりロードムービーですから。

リミッツ・オブ・コントロール
脚本・監督/ジム・ジャームッシュ
キャスト
イザック・ド・バンコレ/孤独な男、アレックス・デスカス/クレオール人、ジャン=フランソワ・ステヴナン/ウエーター、ルイス・トサル/ヴァイオリン、パス・デ・ラ・ウェルタ/ヌード、ティルダ・スウィントン/ブロンド、工藤夕貴/分子(モレキュール)、ジョン・ハート/ギター、ガエル・ガルシア・ベルナル/メキシコ人、ヒアム・アッバス/ドライバー、ビル・マーレイ/アメリカ人、ヘクトル・コロメ/アメリカ人2
9月19日(土)シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

ワンクリック、お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡いうも応援してくださり、ありがとうございます♡
by mtonosama | 2009-08-20 06:31 | 映画 | Comments(14)
f0165567_538999.jpg

          (c)2008 The Weinstein Company, LLC All Rights Reserved.
正義のゆくえ
I.C.E.特別捜査官

Crossing Over


殿様の試写室、初の超大物スターの登場です。
ハリソン・フォードです。
ハリソン・フォードが主役の社会派映画。
ハリソン・フォードがインディ・ジョーンズ以外の貌を見せる作品。
ハリソン・フォードが出演する移民問題を扱った作品です。
ハリソン・フォードが(って、しつこい)。

6月に当試写室で上映した「扉をたたく人」が
捕まる側を描いた映画だとすると
「正義のゆくえ」は捕まえる側を描いた映画。

     ひとつの現象を両面からとらえる。
     なんと学究的な態度でありましょう(笑い)。
     ものごとには裏もあれば表もある。影もあればひなたもありますから。

というわけで、本作は妻と別れ、一人娘ともしばらく会っていないという
初老のI.C.E.特別捜査官が主人公です。
この捜査官。少しばかり情が濃すぎて、本来の任務以外の親切心を
起してしまったりするところがかえって罪つくりな人物。

そんな彼の周囲で起きる移民問題を
7つのエピソード(!)に分けて描いた作品。
7つですよ。7つ。
それだけアメリカの抱える移民問題は多いんですね。

そうそう、監督のウェイン・クラマー自身、映画監督をめざして
南アフリカ共和国から渡米後、グリーンカード(永住許可証)を取得。
アメリカに帰化した人です。

映画の中にも南アフリカ出身のユダヤ系移民が登場します。

     エピソード1
     グリーンカードを入手したいミュージシャン志望のギャビン。
     永住権申請のための「特殊移民(司祭・宗教関係者)」という項目に目をつけ
     なんとかユダヤ人学校の講師として働き始めます。

ギャビンはユダヤ教徒でもないし、ヘブライ語も話せないんですけどね。
このエピソードのラストはなかなか粋で二ヤリとさせられます。

     I.C.E.というのはImmigration and Customs Enforcementの略。
     移民・関税執行局のことです。
     2003年のアメリカ連邦政府の全面的再編に伴って新たに編成された組織。
     まだ新しい組織です。
     連邦政府の再編は2001年9月11日の同時多発テロがきっかけとなって行われたもので
     その目的はやはりテロ対策。
     一応、縦割り行政の弊害をなくし、効率的に業務を遂行する
     という大義名分はありますが。

現在1,100万人以上の不法滞在者がいるといわれるアメリカ。
カリフォルニア州はかつてメキシコ領だったこともあり
ロスアンゼルス市の人口400万人のうち25%以上がメキシコ系住民です。

f0165567_5443319.jpg


     エピソード2
     マックスたちI.C.E.の捜査官は市内の縫製工場で不法就労者を一斉逮捕。
     その中に、メキシコから幼い息子を連れて越境してきたミレヤがいた。
     彼女は「息子を人に預けているの。住所を書くから助けて」とマックスにすがるが
     彼はそれを断る。その結果、ミレヤは息子をアメリカに残したまま強制送還され…

アメリカにはカナダ、オーストラリアなどを祖国とする移民もいます。
彼らは在来のアメリカ人と区別しにくいところから「目に見えない移民たち」と呼ばれることも。

     エピソード3
     女優志望のクレアはオーストラリア出身。
     念願の映画出演のチャンスが到来するが、その条件は労働許可をとること。
     なんとしても役がほしいクレアはとんでもない屈辱的な条件を受け入れることに…

マックスの同僚ハミードはイラン系アメリカ人。
彼らはLAに40万人以上が生活し、全米最大のコミュニティを形成しています。
イラン系アメリカ人は移民の中では裕福な層に属し
ビバリーヒルズ34,000世帯中6,000世帯がイラン系という調査結果があります。

アメリカでは「21歳以上のアメリカ市民の親」は永住権が取得可能で
さらに5年経つと市民権を申請できます。

     エピソード4
     バラエリ家の家長サンジャールが市民権を得て
     「アメリカ人になること」を祝うパーティを開く。
     華やかな人々が豪華な邸宅に集まっていた。
     ハミードに招待されたが、ひとり浮いているマックス。
     同様に、場にそぐわないバラエリ家の娘ザーラと気が合った。
     彼女はまじめで優秀な兄たちとは違い、この家では鼻つまみ的な存在。
     そのザーラがある晩、無残な姿で発見され…

韓国系移民は今や日系移民を超え、全米総数は約108万人。
コリアンタウンのあるLAには全米最大の韓国系コミュニティが形成されています。

     エピソード5
     ヨンは18歳。市民権取得を目前にした高校生だ。
     両親はクリーニング店を営んでいる。
     ある日、コリアンの不良グループがヨンを商店襲撃に誘い…

国民の90%がイスラム教徒であるバングラデシュ。
彼らは出稼ぎ労働者となって世界中で働いています。

     エピソード6
     15歳のタズリマは敬虔なイスラム教徒。
     ある日、学校の授業で
     「9.11の実行犯を怪物や殺人鬼と決めつけず、人間扱いすべきだ」
     と発言し、非難を浴びる。
     その晩、彼女の家はICEとFBIの強制捜査を受ける(!)。
     アメリカで生まれた彼女の弟と妹は市民権を持つが、
     3歳で渡米したタズリマは両親ともども不法滞在者である。
     そして、彼女だけが拘置されてしまう。
     移民弁護士デニスが彼女の弁護を担当するが、FBIの提示した選択肢は…

アメリカに占めるアフリカ系米国人の比率は12.1%。
アメリカ人の8人に1人はアフリカ系です。
移民・関税執行局などといっても、そもそもアメリカは、先住民族と
望まずして移民にさせられたアフリカ系一世の多くを除けば
自由意志による移民たちによって成り立つ国です。

f0165567_548333.jpg

  
     エピソード7
     アリークはナイジェリア出身の7歳の孤児。
     市民権はないので、出生地はアメリカではない。
     ナイジェリア在住の父親は彼女を認知しない。
     養護施設に保護され、里親を待ちながら2年近くも施設に暮らしている。
     担当の移民弁護士デニスは彼女をひきとろうとするが…

7つのエピソードはアメリカが抱える移民問題の多様性を語っています。
バングラデシュ出身のタズリマのケースは
9.11以降の魔女狩りにも似たアメリカのヒステリックな対応を象徴していますし
メキシコ出身の不法移民は、その近さと、彼らの貧しさゆえに
長い間繰り返されている問題です。
今ではLAの生産現場では彼らなしではたちゆかないという現実も。

そして、印象的なシーンは最後の最後に訪れます。

インディ・ジョーンズだって、こんな現実を目の前にしたら、逃げ出すしかないかもしれません。
少しおじいさんになったハリソン・フォードですが
任務と人情の間で揺れ動く姿に心そそられる殿です。

f0165567_5505348.jpg


正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
監督・脚本/ウェイン・クラマー、製作/フランク・マーシャル、ウェイン・クラマー
キャスト
ハリソン・フォード/マックス・ブローガン、レイ・リオッタ/コール・フランケル、アシュレイ・ジャッド/デニス・フランケル、ジム・スタージェス/ギャビン・コセフ、クリフ・カーティス/ハミード・バラエリ、アリシー・ブラガ/ミレヤ・サンチェス、アリス・イヴ/クレア・シェパード、ジャスティン・チョン/ヨン・キム、サマー・ビシル/タズリマ・ジャハンギル
9月19日(土)、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショ-
配給/ショウゲート
http://www.seiginoyukue.jp/

ワンクリック、お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2009-08-15 05:51 | 映画 | Comments(20)
f0165567_6541116.jpg

                     (C)プール商会
プール

〈プール〉という言葉に、ついつい目が行ってしまいます。
なにせ、殿が唯一できるスポーツは水泳なもので。

そんなわけで、今回も〈プール〉につかまってしまいました。
四角形のなかにブルーの水をたたえたプールを想像するだけで
脳をとろけさせる、まったりした快感のとりこになります。

それも屋外プールならなおさら好ましく
プールの周囲に、木々が茂り緑陰を作っていたりしたら、最高です。
ゆったりと背泳で泳ぐと、目に映るものは青い空に流れる真っ白な雲。
申し分ないではありませんか。
いつまでも、いつまでも、ノタリノタリと泳いでいたくなります。

        「かもめ食堂」「めがね」の制作スタッフが送る第3弾が「プール」。
        タイのチェンマイを舞台に
        漫画家・桜沢エリカが映画のために書き下ろした漫画を原作に撮影されました。
        脚本・監督は大森美香。
        そして、出演はおなじみ小林聡美、加瀬亮、もたいまさこという癒しキャラ。
        タイ・チェンマイのなまぬるくゆる~い空気を感じて
        ほっと一息つけそうな映画ではあります。

f0165567_6542952.jpg

                     (C)プール商会

        《ストーリー》
        チェンマイ国際空港に背の高い日本女性がひとりおりたちました。
        大学の卒業旅行で、母を訪ねてきたさよです。
        母の京子は4年前から、さよと祖母を日本に残し
        チェンマイ郊外にあるゲストハウスで働いています。
        その間の事情はしかとはわかりませんが
        さよにとってはあまりおもしろくはない出来事。
        不機嫌そうな顔をしている理由もわからなくはありません。
        その上、空港に迎えに来たのは母ではなく、母の同僚の市尾。
        チェンマイの街を案内してもらいながら到着したのは
        小さなプールのあるゲストハウスでした。
        住人はビーというタイ人の子どもとオーナーの菊子さん。

        母・京子はわが子のようにビーの世話を焼いています。
        夕方、さよの歓迎パーティのためおいしそうなご馳走が
        たくさんテーブルに並びました。
        でも、さよは「疲れた」と部屋に入って寝てしまいます。

        ビーは母親と生き別れになったタイ人の子どもです。
        市尾はビーの母親探しを手伝っています。
        オーナーの菊子は医師から余命宣告を受けています。
        でも、彼女はプール脇のデッキチェアに端然と腰をおろしニコニコ笑っています。
        ひとりひとりがそれぞれの事情を抱え
        それでも、人生の中庭のようなこの土地で
        一日一日をゆったりと生きています。

        チェンマイに来て4日目
        さよは母に自分を残してタイに行ってしまった理由を問いかけました。
        さよ自身、少しずつ変わってきている自分を感じながら…

プールの水面に風がさざ波を起こし、スコールが激しく打ちつけても
それは四角いブルーの水面だけのできごと。
大きな事件は何も起こらず、この土地では一日が淡々と流れていきます。

「めがね」で、主人公は〈携帯の通じないところ〉を
条件に旅先に選んでいたけれど、「プール」のこの場所もきっとそうなんでしょう。

「かもめ食堂」「めがね」「プール」。癒し三部作といった印象です。
はたして3匹目のどじょうはどんなお味でしょうか。

プール
脚本・監督/大森美香、原作/桜沢エリカ(「プール」幻冬舎刊)
キャスト
小林聡美/京子、加瀬亮/市尾、さよ/伽奈、もたいまさこ/菊子、ビー/シッティチャイ・コンピラ
2009年、日本、96分、スールキートス配給
9月12日(土)シネスイッチ銀座・新宿ピカデリーほか全国ロードショー
http://pool-movie.com/

ワンクリック、お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2009-08-10 07:16 | 映画 | Comments(13)
f0165567_1373726.jpg

(c) 2004 - Rectangle Productions / Leap Films / 1551264 Ontario Inc / Arte France Cinema

クリーンClean

「クリーン」は当試写室で4月に上映した「夏時間の庭」の監督オリヴィエ・アサイヤスの作品です。
主役は「花様年華」(‘00)で、なんとも切なげな女性を演じたマギー・チャン。

しかし、オリヴィエもマギーも前作のイメージを抱いて、本作を観ると
ある意味、期待が裏切られます。

     といっても、以下の程度のことですけれど。

     オリヴィエって音楽好きだったのね。80年代ロックですか!?
     マギー、今っぽいお洋服もとても似合うのね。さすが、ミス香港。
     そうですか!?お二人はご夫婦だった。え?3年で別れた?
     そして、マギーさん、今の彼氏はドイツ人?
  
     ふーん、あのチャイナドレスの儚げなマギーは夢か幻か。
     英語、フランス語、中国語が堪能なマギーに
     またまたドイツ語という新しい言葉が加わるのですね。

     いえいえ、そんな下世話な話はどうでもいいのです。

舞台はカナダ・バンクーバー、パリ。
一人の女性ミュージシャンが、同じくミュージシャンの夫をドラッグ過剰摂取で亡くします。
一人になった彼女は、音楽の他にも、
もうひとつ大切なものがあることを思い出します。

でも、それはドラッグ浸りの彼女の今の生活では絶対に手が届かないもの。
クリーンにならなくては、その手に抱きとめることはできないものなのです。


     《ストーリー》
    少し落ち目のロックスター、リー。
    その妻・エミリーも、歌手としての成功を夢見ていました。
    二人の間にはジェイという男の子がいます。
    でも、ジェイは今、バンクーバーに暮らすリーの両親のもとで育てられています。
    ある晩、エミリーは夫と激しい口論の末、宿泊していたモーテルを飛び出します。
    車の中で夜の港をみつめ一晩過ごし、翌朝戻ってくると
    モーテルの前にはパトカーや警官が。

    リーがドラッグの過剰摂取で息絶えていたのでした。
    その時ヘロインを所持していたエミリーは
    夫の死と向き合うことも許されないまま、逮捕。
    刑務所生活を送ることに。
    「夫をドラッグ漬けにした女」と責めたてられ、家も仕事も失ったエミリー。
    出所後、息子ジェイを預かってくれている舅のアルブレヒトに再会します。
    ところが、彼の口から出た言葉は「ジェイとは距離をおいてほしい」というものでした。

    数週間後、エミリーはモーテル暮らしと縁を切り、
    以前暮らしていたパリに向かいます。
    仕事をみつけ、クリーンになるために。
    
    少しずつまともな生活を送るようになったメアリーに
    サプライジングなニュースが舞い込んできます。それも、ふたつも!
    ひとつは、ロンドンにやってきた舅のアルブレヒトが
    「ジェイと会ってもいい」と言ってきたこと。
    もうひとつは
    彼女の夢だったサンフランシスコでのレコーディングの知らせ。
    だが、そのスケジュールは…

「あれか、これか、どちらかを選びなさい」と二者択一を迫られるのってつらいです。
だって、人間って、あれもこれも欲しいじゃないですか。
究極の選択なんて無理。
そのふたつが人生に必要なら、ふたつとも求めてしまいたい。

確かに「エミリー、ちょっとムシがいいんじゃない?」って
つっこみたくなる部分もあります。
だけど、この映画は20代、30代と勝手をしてきた人間がリセットする物語。
エミリーはムシがいいどころか、すごく頑張ったんです。
若い時ってバカをするものだと思いません?
一生懸命やっていても、周囲からは「あいつバカだな」って言われることもありますし。

     孤立無援のエミリーを支える舅を演じたニック・ノルティが
     とてもいい味を出しています。
     10年位前のニックはゴリゴリの共和党員ってイメージでしたが
     ずいぶん変わりました。
     歳をとることって案外悪くないですね。

気が強い自分勝手なマギー・チャンも
憂いを帯びた母の貌を見せるマギー・チャンも素敵でした。
まさに、アジアの名花です。
いろいろな顔を持つということ。
いろいろな映画を撮れるということ。
この元夫婦、なかなかいいです。

どこかモノトーンで憂愁に充ちた色彩に彩られ
ロックなのに、アンニュイな雰囲気に包まれる映画です。

クリーン
監督・脚本/オリヴィエ・アサイヤス
キャスト
マギー・チャン/エミリー、ニック・ノルティ/アルブレヒト、ベアトリス・ダル/エレナ、ジャンヌ・バリバール/イレーヌ、ジェイムス・デニス/ジェイ
(2004/フランス・イギリス・カナダ/111分/35mm/シネマスコープ/ドルビーSRD)
8月29日(土)シアター・イメージフォーラムにてロードショー
http://www.clean-movie.net/

ワンクリック、お願いします
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村    
♡いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2009-08-05 13:22 | Comments(13)