ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

<   2010年 03月 ( 11 )   > この月の画像一覧

ザ・コーヴ -1-
THE COVE

f0165567_538265.jpg


(c)OCEANIC PRESERVATION SOCIETY. ALL RIGHTS RESERVED.

話題作の登場です。
去年から、ニュースでもたびたびこの映画があまり愉快ではない形で伝えられていました。
しかし、ジャーン!と登場してきたのはアカデミー賞授賞式。
「ザ・コーヴ」が長編ドキュメンタリー賞を受賞したのを見て
「な、なんということ…」と絶句してしまいました。

「ザ・コーヴ」は和歌山県太地町で行われているイルカ漁を撮影した映画です。
(ちなみにcoveとは「(湾内の)入り江」「小湾《bayより小さい》」と辞書にあります)

とき、あたかも
シー・シェパードが日本の調査捕鯨船に侵入して逮捕されたり
ワシントン条約締結国会議でクロマグロ禁輸問題が討議されたり
世界中の目が水産生物へと向いている時期。

「環境問題のシンボル的存在であるクジラを殺すな!」
「水産資源を枯渇させるな!」と

f0165567_9314082.jpg


なんとなく日本に分が悪い状況での「ザ・コーヴ」アカデミー賞受賞。
日本人にとってはおさまりの悪いものを含みつつ、いよいよ日本公開となります。

2009年1月にサンダンス映画祭で観客賞を受賞したのを皮切りに
世界中の映画祭で上映され、23もの賞を受賞した「ザ・コーヴ」。

日本でも昨年10月の東京国際映画祭で緊急上映されています。
事前に上映中止を求める声明が出されたため、会場には警備員が配備され
物々しい雰囲気の中での上映だったということです。

授賞式でも映し出されていたイルカの血で真っ赤に染まった入り江の風景は
かなりショッキングなものではありました。
この映画を観た太地町の姉妹都市オーストラリア・ブルーム市の市議会が
昨年8月姉妹都市提携を解消しようとした(その後10月の市議会で解消は撤回される)
というのも、記憶に新しいところです。

ところで、「わんぱくフリッパー」というテレビドラマをご存知ですか?
イルカっていつも笑ってるし、可愛くて賢い生き物だなぁって
世界中に教えてくれたアメリカの大人気テレビシリーズです。

『わんぱくフリッパー』 (原題: Flipper)は、1960年代にアメリカ合衆国で製作され
日本でも放映されたテレビドラマシリーズである。
マイアミの公園警察官ポーター・リックス、息子のサンディとバド、2人の息子が飼っている
イルカのフリッパー、ペリカンのピート、犬のスプレーが、フロリダのコラルキー公園を
舞台にして活躍する海洋冒険ドラマで、NBCテレビで1964年に放送された。全88話で完結。
主役のイルカ、「フリッパー」の訓練は、後にイルカ保護運動家となるリック・オバリーが行っていた。(Wikipediaより)


f0165567_930078.jpg


「ザ・コーヴ」で中心的役割を果たしたのが
「わんぱくフリッパー」でイルカを調教したリック・オバリー氏です。

リックはもともとイルカを捕獲する立場の人間でした。
ところが、最も長い時間を一緒に過ごしてきたイルカが彼の腕の中で
死んだことをきっかけに、現在ではイルカ保護の立場に転向。
Save Japan Dolphins連盟(http://www.savejapandolphins.jp/)の
キャンペーン活動指導者として日本のイルカ殺しを中止させるために
活動しています。

イルカ殺し?そして、イルカを食べている?本当に、日本で?

外国人にこういう形で指摘されるのって、あまり愉快ではないけれど
次回は、彼らの言い分を聞いてみることにしましょう。

というわけで
To be continued.

ザ・コーヴ
監督/ルイ・シホヨス、プロデューサー/フィッシャー・スティーヴンス、ポーラ・デュプレ・ペスマン、エグゼクティブプロデューサー/ジム・クラーク、編集/ジェフリー・リッチマン、脚本/マーク・モンロー、共同プロデューサー/オリビア・アネマン、音楽/ジェイ・ラルフ
出演
ルイ・シホヨス、リック・オバリー、サイモン・ハッチンズ、チャールズ・ハンブルトン、ジョー・チズルム、マンディ=レイ・クルークシャンク、カーク・クラック
6月26日(土)、シアターN渋谷他全国ロードショー
2009年、アメリカ映画、91分、提供/メダリオンメディア、配給/アンプラグド
http://thecove-2010.com/

ブログランキングに参加しています。
今日もポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月31日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-31 06:10 | Comments(10)
               トロッコ -2-

f0165567_432781.jpg


                 © 2009 TOROCCO LLP

「小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事を―――といったところが、ただトロッコで土を運搬する―――それが面白さに見に行ったのである」

芥川龍之介の「トロッコ」はこんな風に始まります。

映画はもうここから違います。
しつこいようですが、小説は小説、映画は映画と、切り離して楽しみましょう。
え、うるさいって?すいません。
では、いきます。

ストーリー
幼い息子たちがぐっすりと眠るマンションの一室で、母・夕美子が電話をしています。

夏休みに入ったある日、敦(あつし)と凱(とき)の兄弟は母に連れられ
父・孟真の故郷、台湾を初めて訪れました。
急死した父の遺骨を実家に届けるためです。

敦たちを迎えに来てくれたのは叔父夫婦。孟真の弟・孟堅夫妻でした。
父の実家に着くなり、敦の抱える遺骨の箱に、老人が杖を振り下ろします。
「この親不孝者め!」

それがおじいちゃんでした。
「台湾では子どもが親に先立つのは大罪だから、叱ってから家に迎える習わしなの」
と孟堅の妻がそっと夕美子に教えます。

お父さんが亡くなる前に敦に手渡した一枚の古い写真
セピア色に変色した写真に写っている〈トロッコを押す少年〉。
おじいちゃんでした。
翌日、おじいちゃんは敦と凱を連れて写真の場所を探します。
村を歩きながら、おじいちゃんは
「この線路は山の木を日本に運ぶためのもの。子どもの頃、この線路をずっと行けば
日本に行けると思っていた」
と話してくれました。その言葉は日本語でした。
おじいちゃんは母親に叱られた敦を慰めてくれたり
一緒にお風呂に入ってくれたり、とても優しい人でした。

f0165567_472067.jpg


村の子どもたちとも仲良くなった兄弟。
はしゃぐ2人を見て夕美子はかたわらの孟堅に
「あんな楽しそうな顔を見るのは久しぶり」と呟きます。
孟堅は言います。
「敦を見ていると子どもの頃の兄貴を思い出す。
日本人として教育されたことを誇りに思っていたおやじは終戦と同時に日本から捨てられた。
それなのに古い価値観を押し付けるおやじに兄貴は反発していたよ」。

ある日、おじいちゃんに日本から手紙が届きます。
その手紙を読んだおじいちゃんは、おばあちゃんに無言で手渡しました。
それは恩給欠格者通知――
おじいちゃんは日本兵として2年間軍役についたのですが
「現在日本国籍を有していないため、恩給の対象者にはならない」
という通知でした。

翌日、おばあちゃんが救急車で入院!
夕美子も敦と凱を留守番させ、病院に向かいます。
前夜、2人は、おばあちゃんが母に「子供たちをしばらく預かろうか」と
話すのを聞いていました。

「僕たち、ここに置いていかれるかもしれない」
と不安になった敦は凱を連れて森へ向かいます。
そこにはおじいちゃんが「日本につながっている」といったトロッコが…

日本と台湾との関わり
家族の問題――
映画「トロッコ」には新しい要素が盛り込まれています。

トロッコの疾走シーンでは
敦と凱の昂揚感が100年前の良平の興奮を思い起こさせます。
生い茂る緑。吹き出す汗。
やがて2人を襲う、人生で初めて直面する大きな不安。

小さな2人の頭上を覆い、周囲に絡み合う樹木と猛烈な湿度感に
観客も汗ばむ思いで手を握ります。

映画として心ゆくまで楽しませてもらいました。

f0165567_465596.jpg


トロッコ
監督/川口浩史、脚本/川口浩史、ホアン・シ―ミン(黄世鳴)、音楽/川井郁子、撮影監督/リー・ピンビン(李屏賓)、美術監督/ホアン・ウェンイン(黄文英)、
出演
尾野真千子/矢野夕美子、原田賢一/矢野敦、大前喬一/矢野凱、ホン・リウ(洪流)/おじいちゃん、チャン・ハン(張翰)/叔父、ワン・ファン(萬芳)/叔母、ブライアン・チャン(張睿家)/鳥をつかまえた青年、メイ・ファン(梅芳)/おばあちゃん
5月、シネスイッチ銀座より全国順次ロードショー
116分、日本語・中国語(北京語・台湾語)、2009年、日本、配給/ビターズエンド、www.torocco-movie.com

ブログランキングに参加しています。
今日もポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月28日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-28 04:36 | 映画 | Comments(8)
               トロッコ  -1-
f0165567_6223923.jpg

© 2009 TOROCCO LLP

3月初めに、当試写室で川端康成原作「掌の小説」を上映しましたが
その時、芥川龍之介原作「トロッコ」が映画化されたことをお知らせしました。

5月、その「トロッコ」がいよいよ公開されます。
この小説は学校の教科書で読んだ方が多いと思います。
本作で監督デビューする川口浩史さんもそうなんですって。

殿は貸本漫画の世界を卒業した中学生になってから
自分で買って読んだのですが、感動しました。
そして、漫画ではなく、文章によって、こんな感動を呼び起こしてくれた芥川龍之介
という作家に心酔してしまいました。
子どもですから、思いつめると、ただただ一途(いちず)。
芥川龍之介に出会った日から数百年は経ちましたが
いまだに芥川・いのちです。

だから、この作品が映画化されると聞いて、不安を感じたのは事実。

まず、初恋の人が変わり果てた姿で姿を現したらどうしようという不安。
次に、自分のイメージを思いっきり崩されてしまったら…という不安。

怖いもの見たさと芥川への執着から「トロッコ」の試写へ足を運びました。

f0165567_6363832.jpg


        すると
        なんということでしょう!

        「トロッコ」はすっかり変わっていました。

でも、これ正解です。

原作は2段組でわずか4ページ強の短編。
それも芥川の圧倒的な筆力で読ませる作品。
これに映画で太刀打ちしようたって、はなっから無理な話です。

舞台は、小田原熱海間から台湾へ
時代は、大正時代から現代へ
トロッコを押すのは、8歳の良平から敦(8歳)と凱(6歳)の兄弟へ
と、原作とは大きく設定を変えていました。

その理由は、日本にトロッコの線路が最早なく
台湾にはあったという、極めて映画的な事情です。
しかし、「なんで台湾が舞台なんだ?」と言わせないだけの説得力を
この映画が持つに至ったのは撮影監督リー・ピンビンの存在でしょう。

ホウ・シャオシェン監督の「花様年華」(‘00 )
「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」(‘07)http://mtonosama.exblog.jp/8401953
トラン・アン・ユン監督の「夏至」 (’00 )、「ノルウェイの森」(‘10)
是枝裕和監督の「空気人形」 (’09)http://mtonosama.exblog.jp/11800043
などで撮影監督をつとめ、これらの名だたる監督たちから絶大な信頼を寄せられている
台湾出身のリー・ピンビン撮影監督。

したたる緑とあらゆるものをうるおす豊潤な湿度を描きだすことでは
彼にかなう人はいないのではないかと思っています。
川口浩史監督とリー・ピンビン撮影監督は
川口さんが助監督をつとめた行定勲監督の「春の雪」(‘05)で出会いました。
監督に、台湾に残るトロッコ線路の存在を教えたのも実はこのリーさん。

自分自身の「トロッコ」の心象風景はそれぞれ心の中にしっかり封印し
川口「トロッコ」を楽しむのも悪くないと思います。これもあり、です。

って、殿も大人になったものだ…
ということで、ストーリーのご紹介は後編で。

続く

トロッコ
監督/川口浩史、脚本/川口浩史、ホアン・シ―ミン(黄世鳴)、音楽/川井郁子、
撮影監督/リー・ピンビン(李屏賓)、美術監督/ホアン・ウェンイン(黄文英)、
出演
尾野真千子/矢野夕美子、原田賢一/矢野敦、大前喬一/矢野凱、
ホン・リウ(洪流)/おじいちゃん、チャン・ハン(張翰)/叔父、ワン・ファン(萬芳)/叔母、
ブライアン・チャン(張睿家)/鳥をつかまえた青年、メイ・ファン(梅芳)/おばあちゃん
5月、シネスイッチ銀座より全国順次ロードショー
116分、日本語・中国語(北京語・台湾語)、2009年、日本、配給/ビターズエンド、
www.torocco-movie.com

ブログランキングに参加しています。
今日もポチっとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月25日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-25 06:57 | Comments(6)
       オーケストラ! -2-
                    Le Concert


f0165567_5241848.jpg

                (c)2009 - Les Productions du Tresor

さて、天才指揮者アンドレイはなにゆえ清掃員になったのか?
いきますか

ストーリー
1980年、ソ連・ブレジネフ政権はユダヤ人を排斥。
ボリショイ交響楽団からも多くのユダヤ人が連行され
それに反対したロシア人は解雇されました。
混乱の中
指揮者だったアンドレイはいつの日か復帰することを夢見て
清掃員としてボリショイ交響楽団に残りました。

それから30年――
アンドレイはいつものようにグズグズと支配人の部屋を掃除しています。
そこへ、1枚のファックスが届きました。

それは
《2週間後に行われるはずだったLAフィルの公演が中止になった。
代わりに出演してもらえないか》
というパリ・シャトレ劇場からの出演依頼でした。


瞬間、アンドレイの頭にとんでもない考えが閃きます
クビになったかつての仲間たちを集めて偽のオーケストラを結成し
シャトレ劇場に出演しよう


アンドレイはまず元チェロ奏者、今は救急車の運転手をしているサシャに声をかけます。
「冗談でしょ」とサシャ。
当然の反応です。
でも、サシャは自分でも気づかぬ内に、アンドレイをおんぼろ救急車に乗せて
昔の仲間を訪ねまわっていました。
タクシー運転手をしている団員、蚤の市の業者やポルノ映画のアフレコで生計を立てる団員。
その後の暮らしぶりはとりどりでしたが、みんなアンドレイの誘いを喜んで受け入れます。

マネージャー役は、かつてユダヤ人追放命令を執行した元支配人の共産党員イヴァン。
そのときの剛腕ぶりを評価したアンドレイはサシャの反対を押し切って声をかけたのです。

f0165567_52555100.jpg

マネージャーを快諾したイヴァンは早速あやしいフランス語を駆使して
シャトレ劇場の支配人オリヴィエを騙すことに成功。
演奏曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に
ソリストには若手美人スター・ヴァイオリ二ストのアンヌ¬=マリー・ジャケを指名。
パスポートはジプシーのヴァイオリン奏者が全員の偽造品を24時間で調達しました。
いよいよ寄せ集めオーケストラがパリへ飛び立ちました…

「オーケストラ!」は3色の糸で編みあげられたコメディです。
音楽。ソ連。比較文化論(ちょっと大げさか)。
基本、この太い糸でザクザク編まれつつ
ユダヤ人問題や老共産党員のあの時代へのノスタルジー
先進国とちょっと遅れて登場した国の対照が
さし色として編み込まれていく、とでもいいましょうか。
それが結局、深い色合いとなって楽しませてくれる手練(てだれ)のコメディです。

f0165567_5265586.jpg


イヴァンがマネージャーを快諾したホントの理由
フランス共産党とロシア共産党の時代錯誤的な集会風景
いわくありげなアンヌ=マリー・ジャケのマネージャー・ギレーヌとアンドレイの会話。

チャイコフスキーの美しいヴァイオリンの調べにのせて
観客の心にきざした疑問がひとつひとつ明らかになっていきます。

大人の映画ですねぇ。これ、お勧めです

オーケストラ!
監督・脚本/ラデュ・ミヘイレアニュ、共同脚本/アラン=ミシェル・ブラン、マシュー・ロビンス、原案/ヘクトール・カベッロ・レイエス、ティエリー・デ・グランディ、音楽/アルマン・アマール、製作/アラン・アタル、撮影監督/ローラン・ダイアン
出演
アレクセイ・グシュコブ/アンドレイ・フィリポフ、メラニー・ロラン/アンヌ=マリー・ジャケ、フランソワ・ベルレアン/オリヴィエ・デュプレシス、ドミトリー・ナザロフ/サシャ・グロスマン、ミュウ・ミュウ/ギレーヌ・ドズ・ラ・リヴィエール、ヴァレリー・バリノフ/イヴァン・ガヴリーロフ、アンナ・カメンコヴァ/イリーナ・フィリボヴナ
4月17日(土)Bunkamuraル・シネマ、シネ・スイッチ銀座他全国順次ロードショー、2009年、フランス、124分、配給/ギャガGAGA★、http://orchestra.gaga.ne.jp/

ブログランキングに参加しています。
今日もポチっとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月22日に更新しました。いつも応援してくださって、ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-22 06:03 | Comments(4)
         オーケストラ! -1-
                  Le Concert

f0165567_5581725.jpg

             (c)2009 - Les Productions du Tresor

オーケストラ   オーケストラ!
感嘆符がついているといないとでは、雰囲気がまったく違いますよね。
ひとつで、なんか楽しげ。期待できそうな感じが湧き上がってきます。

映画の中で演奏されるのは
モ―ツァルト「ピアノ協奏曲第21番ハ長調kv467」
チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35」
あるいはバッハ「無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007」
他にもロッシーニ、シューマン、パガニーニ…
なじみの曲もあれば、そうでない曲もありますが、とにかくクラシックのオンパレード。

f0165567_611499.jpg


にもかかわらず
にやりとしたり、ハラハラしたり、なおかつ、政治の不条理に怒ったり。
そんなことができるのも感嘆符がかけた魔法のせいかもしれません。
はたまた脚本のおもしろさでしょうか。

ロシア・ボリショイ交響楽団の劇場清掃員が
楽団の指揮者に化けて、寄せ集めのオーケストラを引き連れ
花の都パリはシャトレ劇場に乗り込み、喝采を浴びる―――

実は、その清掃員アンドレイこそ、30年前は天才と呼ばれ
ボリショイ交響楽団の首席指揮者を務めたほどの人物。
そして、寄せ集めの団員たちも同じく30年前は
ボリショイ交響楽団の優秀な演奏家たちだったのです。

とまあ、なんとも荒唐無稽なお話なのですが、そそられます。
ラデュ・ミヘイレアニュ監督も、そそられてしまったひとり。

ラデュ・ミヘイレアニュ監督は1958年、ルーマニアのブカレスト生まれ。
80年チャウシェスク政権下にあったルーマニアから亡命。
ユダヤ系ジャーナリストの息子としてイスラエルの保護下に入った。
次いでフランスに移り、IDHEC(高等映画学院)で映画を学ぶ。
80年代、マルコ・フェレーリ監督の助監督を務めた。
短編映画「Les Quatre Saisons」(‘80)を経て、93年に共同脚本も担当した「Betrayal」で
長編映画の初監督を務める。この作品はモントリオール映画祭の審査員特別賞をはじめ
世界中の映画賞を獲得。
2作目の「Train of life」では国際的な成功をおさめ、ヴェネチア映画祭で2つの賞を
サンダンス映画祭で観客賞を受賞。
2005年の「約束の旅路」では、セザール賞最優秀脚本賞を受賞し
ベルリン国際映画祭でも審査員賞をはじめ、3つの賞を獲得した。

監督もまた冷戦下の東欧で歴史の荒波に翻弄されたひとですが
あるプロデューサーから渡されたひとつのシノプシスが
この映画をつくるきっかけとなりました。
それは「パリへ向かう偽のボリショイ交響楽団の物語」というもの。

このアイデアを気に入ったラデュ監督。
プロデューサーに同じアイデアで自分自身の脚本を書きたいと申し出ました。
了承を得て監督は取材のため、ロシアへ。
キャラクター、セリフ、アイデアなどのヒントをしこたま仕入れて書き上げたのが
本作「オーケストラ!」の脚本です。

ロシア取材の成果は随所に。
ゴリゴリの共産党員であるマネージャーの携帯の着信音楽が革命歌「インターナショナル」だったり
動員されたサクラの前で陶酔してアジテーション演説をする老共産党員とか
また、そのサクラの動員を商売にする元指揮者アンドレイの妻とか

f0165567_615889.jpg


専横をきわめたソ連・共産党員のなれの果ては
わびしいような、おかしいような。

あるいは、ソ連・ブレジネフ政権下で行われたユダヤ人迫害の悲話を
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をバックに描くなど
見どころ聴きどころ満載です。

とっても大変な時代のお話なのですが
ロシア人とフランス人、ダサさと洗練、重いと軽い
の対照のおかしさに、つい笑ってしまいます。

でも、ストーリーを貫くのはクラシック音楽。
それも教養としてのクラシックではなく、
人生に密着したクラシックというところがちょっと並みの映画とは違います。

人生に密着したクラシック?
そうなんです。
クラシック音楽って、気取ってるだけじゃないんです。
人生のワンシーンなんです。

それにしても、アンドレイはなにゆえ清掃員になったのか、知りたいでしょう?
ですが、それは次回までのお楽しみということで。

To be continued.

オーケストラ!
監督・脚本/ラデュ・ミヘイレアニュ、共同脚本/アラン=ミシェル・ブラン、マシュー・ロビンス、原案/ヘクトール・カベッロ・レイエス、ティエリー・デ・グランディ、音楽/アルマン・アマール、製作/アラン・アタル、撮影監督/ローラン・ダイアン
出演
アレクセイ・グシュコブ/アンドレイ・フィリポフ、メラニー・ロラン/アンヌ=マリー・ジャケ、フランソワ・ベルレアン/オリヴィエ・デュプレシス、ドミトリー・ナザロフ/サシャ・グロスマン、ミュウ・ミュウ/ギレーヌ・ドズ・ラ・リヴィエール、ヴァレリー・バリノフ/イヴァン・ガヴリーロフ、アンナ・カメンコヴァ/イリーナ・フィリボヴナ
4月17日(土).Bunkamuraル・シネマ、シネ・スイッチ銀座他全国順次ロードショー、2009年、フランス、124分、配給/ギャガGAGA★、http://orchestra.gaga.ne.jp/


ブログランキングに参加しています。
映画ファンもクラシックファンもぜひポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月19日に更新しました。いつも応援してくださり、ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-19 06:31 | 映画 | Comments(6)
              ソラニン -2-

f0165567_592365.jpg


        (C)2010浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会 写真:太田好治

「ソラニン」ってなんだったっけ?
と、思いませんでした?すぐに分かった人は「理科」好きのひと(笑)。

「ソラニンはジャガイモ・トマトの芽に多く含まれるアルカロイド。
多く摂取すれば嘔吐・腹痛・頭痛などの中毒症状を起こす」
と広辞苑にはあります。

ソラニンは毒ですが、その植物の成長のためには必要不可欠な成分なんですって。
これ、ポイントです。カツカツ(と、チョークで黒板をたたく)。

ストーリー

OL2年目の芽衣子(宮崎あおい)。
多摩川に近い小さなアパートで種田(高良健吾)と一緒に住んでいます。
芽衣子、今の職場を気に入ってはいません。
種田、バンド活動をしています。フリーターです。
大学時代、軽音楽サークルで知り合ったふたりはつきあい始めてもう6年。

やりがいのない仕事とかったるい人間関係。
「会社、辞めちゃおっかな」とつぶやく芽衣子に
「辞めちゃいなよ。ほんとにそうしたいなら。
行きつく先が世界の果ての果てだとしても、芽衣子と俺はずっと一緒なんだから」
そして、芽衣子は辞表を出します。

仕事を辞めた芽衣子は種田がギターとヴォーカルを担当するバンド「ロッチ」の
練習を見にいきます。
メンバーは大学時代のサークルの仲間。
実家の薬屋を継いでいるドラムのビリー(桐谷健太)。
ベースの加藤(近藤洋一)は大学6年生。
加藤のカノジョのアイ(伊藤歩)は芽衣子の親友。
5人で集まれば、すぐに楽しかった大学時代にタイムトリップできます。

でも、その帰り道、酔っ払った種田は生活への不安を口にします
勢いで仕事を辞めた芽衣子だって、焦りや不安は同じ。

自分の不安には蓋をして
「才能ないから、本気じゃないから、いつも逃げてばっかり。
種田は好きな音楽のことで誰かから批判されるのが怖いんでしょ」
と責める芽衣子。
気まずい空気の中、仕事に向かった種田でしたが
芽衣子の言葉をきっかけにして、真剣にギターを弾きたい本当の自分に気づきます。

f0165567_5111323.jpg


種田はバイトを辞め「今度チャンスを掴めなかったら、バンドは解散」と宣言。
スタジオで演奏にうちこむ種田たち。
完成したデモCDをレコード会社やライブハウスに送付したあと
5人は川辺で花火に興じるのでした。
新しい一歩への出発。

数日後、大手レコード会社から連絡が入ります。
ですが、担当者・冴木(ARATA)の提案は「グラビア・アイドルのバックバンドをしないか――」
現実は甘くない。

ある日、種田の口に出した言葉は「芽衣子さん、俺たち別れよう」。
「ウソつき!ずっと一緒だからって言ったじゃん」
でも、その日、種田は家を出ていってしまいました…

よくある青春恋愛映画ではあります。
ネタばらしすると、この後、種田は交通事故で死んでしまいます。

若木をへし折るような突然の死。
泣いているだけの芽衣子、そして、仲間たち。
立ち直れそうもありません。

でも、それだけだったら
「ソラニン食べ過ぎて嘔吐してしまいました。頭も痛くなりました。はい、おしまい」
で終わってしまいます。

覚えていますか?
ソラニンはその植物の成長のためには必要不可欠な成分なんです。

          芽衣子たちは成長します。

f0165567_5103444.jpg


人は生まれてきた以上、なにかを残していかなくてはなりません。
生き残った人は、かつて生きていた人の存在証明をしなくちゃなりません。

          種田くんの存在証明は感動的なラストシーンの中にありました。

今、24歳の人、かつて24歳だった人、漫画を好きな人、嫌いな人。
この感動のラストには泣きます。

ソラニン
監督/三木孝浩、原作/浅野いにお(「ソラニン」小学館ヤングサンデーコミックス刊)、
脚本/高橋泉
出演
宮崎あおい/井上芽衣子、高良健吾/種田成男、桐谷健太/ビリー、近藤洋一(サンボマスター)/加藤賢一、伊藤歩/小谷アイ、ARATA/冴木隆太郎、永山絢斗/大橋、岩田さゆり/鮎川律子、美保純/芽衣子の母、財津和夫/種田の父
4月3日(土)新宿ピカデリー、渋谷シネクイント他全国ロードショー
配給/アスミック・エース、2010年、日本/126分、http://solanin-movie.jp/


ブログランキングに参加しています。
ポチッとクリック、お願いします♪
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月16日に更新しました。いつも応援してくださって、ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-16 05:47 | 映画 | Comments(5)
               ソラニン -1-

f0165567_5351770.jpg


       (C)2010浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会 写真:太田好治

自分のことで恐縮ですが、殿はすばらしい子ども時代を過ごしました。
それは漫画読み放題という時代です。
はい、小学1年のとき、近所のお友達のおうちが貸本屋さんを開業しまして。

もしかして、貸本屋をご存知ない方もいらっしゃいますよね。
貸本屋には貸本用につくられた漫画本がお店の棚いっぱいに並べてあるんです。
子どもにとっては、まさに漫画の森ともいうべき天国のような空間。

読みたい本を選んだら、小さな机に向かって座っているおばちゃんに
1冊につき10円を支払い、家へ持ち帰り、読み終わったら返すというシステム。
そうです、そうです。図書館みたいなものです。

抑えのきかない1年生は毎日おばちゃんのところへ通い
5冊も6冊も借り出して、読み狂っていました。
それも月末ツケ払いという、子どもなのに大人読みの日々。
遠い昔のことですが、「影」という貸本シリーズが記憶に残っています。

大昔の漫画の話を持ち出して、あいすみません。
これほど漫画好きだった殿なのに
映画となると「え、漫画が原作なの?」とひいてしまいます。
漫画の人気にのっかった映画づくりって「ちょっと安直じゃあ、ありませんか」
という漠とした反感がありまして。

でも、昨年、当試写室で上映した是枝裕和監督の「空気人形」も漫画出身でした。
良い漫画=良い映画という公式は存在しませんが、良い映画はやっぱり良いですねぇ。

「ソラニン」も2005年から2006年まで週刊ヤングサンデーに掲載された
浅野いにおさん作の人気漫画です。

f0165567_544424.jpg


大学を出て2年目の男女5人(ひとりは留年中ですが)。
まだ24、5歳という若い年代だから、身体的には元気いっぱい。
でも、「オレ、これでいいんだろうか」とか
「人生、そんなに思い通りにいかないな」とか
「あ~、つまんない」とか
現実からの手痛いパンチに顔や心をしかめることが多くなってきます。

そんなとき、戻っていくのが「あの頃は楽しかったよね」という
共通のへその緒でつながった大学時代の友だちのところ。

原作者の浅野いにおさんは
「言葉にできない不安を感じつつ、必死に希望をみつけようとする。
なのに、どこか心地よい、そんな20代前半という時期は
春のようにあっという間に過ぎ去ってしまうのかもしれません」
と表現しました。

漫画のコマの中から立ち上がって肉体を得た芽衣子さんや種田くんたちが見せてくれる人生の春。
ほんとの春も人生の春も、思わぬ突風が吹いたり、強い雨が降ったり
ほのぼの、ぬくぬくとばかりはいきません。

芽衣子さん、種田くん、ビリー、加藤くん、アイちゃん
5人はどんな人生の春を過ごすのでしょうか。

To be continued.

ソラニン
監督/三木孝浩、原作/浅野いにお(「ソラニン」小学館ヤングサンデーコミックス刊)、
脚本/高橋泉
出演
宮崎あおい/井上芽衣子、高良健吾/種田成男、桐谷健太/ビリー、近藤洋一(サンボマスター)/加藤賢一、伊藤歩/小谷アイ、ARATA/冴木隆太郎、永山絢斗/大橋、岩田さゆり/鮎川律子、美保純/芽衣子の母、財津和夫/種田の父
4月3日(土)新宿ピカデリー、渋谷シネクイント他全国ロードショー
配給/アスミック・エース、2010年、日本/126分、http://solanin-movie.jp/


ブログランキングに参加しています。
ぜひクリックひとつお願いします♪
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月13日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-13 05:57 | Comments(10)
掌の小説 -2-

f0165567_554392.jpg


                    ©「掌の小説」製作委員会

さてさて、本作は4人の新進気鋭の監督たちによるオムニバス映画です。
ですが、4編すべてに共通するものが2つあります。

1つは満開の桜。
そして、もう1つは昨年12月24日に亡くなった名優・奥村公延さん。

奥村さんが4篇の作品を綴り合わせる1本の糸のように登場し、それがとても印象的です。
本作は奥村さんの最後の作品となりました。合掌。

第1話「笑わぬ男」 (原作:「笑わぬ男」「死面(デスマスク)」)

監督は岸本司さん。初の劇場長編作品「アコークロー」が全国公開され
沖縄では動員記録を塗り替えるなど、話題になりました。

ストーリー
磨りガラスごしの光がさしこむ小さなアパート。
それは路地の奥にひっそりとたたずんでいました。
住んでいるのは若い夫婦です。
妻は病で臥せっており、夫は売れない小説を書いていました。

アパートから一歩外に出れば、子どもがチャンバラごっこをし
ラッパを吹いて豆腐屋が通る――
昭和の初めでしょうか。当たり前で平和な日常の光景が拡がります。

死期が近づいているのか、妻は夜になると「足が寂しい」と訴え
夫はそんな妻の細く白い足をさすり続けます。
ある日、「桜が見たい」という妻のために、夫は桜の花が咲き誇る裏山へ向かいます…

「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
という一節を思い出させるしいんとした作品。
満開の桜と死とエロスは同じものなのかもしれないと、ふと思ってしまいました。

監督/岸本 司
出演
吹越 満/男、夏生ゆうな/女、コ―ジ―冨田/友人K


第2話「有難う」 (原作:「有難う」「朝の爪」)

f0165567_60116.jpg


NY市立大学院映画学科で2年間映画制作を学んだ三宅伸行監督。
卒業後、カメラマンとして仕事をしながら監督した「116」がパームスクリング映画祭などで
受賞しています。

ストーリー
菊子は母と一緒に乗合バスに乗っています。
町に向かう山道は桜が満開。
菊子たちが乗ったバスの運転手は皆から(ありがとさん)と呼ばれて愛されている青年でした。
バスに道を譲ってくれた大八車や馬車や馬、誰にでも
「ありがとう」と声をかける感じのいい人物だったからです。

「〈ありがとさん〉のバスに乗れたからあんたは運が良い」と喜ぶ母。
桜が咲き誇る山道を、14歳の菊子は娼婦として町に売られてゆくのでした…

満開の桜の下を村から町へ向かうバスが
菊子14歳から22歳への時空の移動を表現しているような静かな不思議な作品。
桜の下で交わされる心優しい挨拶に、心の奥の細い糸が静かに共鳴します。
観ているこちらの口元もゆるみ、「ありがとう」とつぶやきたくなるような。
監督/三宅伸行
出演
寉岡萌希/菊子14歳、中村麻美/菊子22歳、星ようこ/保子


第3話「日本人アンナ」 (原作:「日本人アンナ」)

f0165567_632476.jpg


監督の坪川拓史さんは舞台俳優やアコーディオン奏者として活動しながら映画制作をしています。
1996年から9年の歳月をかけて完成した長編第1作「美式天然」で第23回トリノ国際映画祭・長編コンペティション部門に招かれ、最優秀作品賞、最優秀観客賞をダブル受賞。
日本人としては初の快挙をなしとげました。
本作「掌の小説」では初めてプロデューサーも務めています。

ストーリー
ある日、「私」はロシア人の少女・アンナに財布を掏られてしまいます。
アンナは町の映画館でロシアの歌を歌う少女。
ロシア革命の混乱の中、亡命してきた貴族の娘というふれこみです。
アンナに魅せられた「私」は少女が小さな弟と泊まっている宿をみつけ
隣の部屋の襖のすきまからアンナの姿を覗き見ていました。
そんな日が数日続きましたが、突然アンナは町からいなくなってしまいます。
翌年の春、「私」は満開の桜の下でアンナに良く似た少女と出会います…

大正時代のほの明るい街の活気が懐かしさをそそり
知らない時代のはずなのに、なぜか心にしみる光景。
今は誰も使わない「おにいさま、そうじゃなくってよ」という優しい言葉が
心地よく耳に響きます。
監督/坪川拓史
出演
福士誠治/「私」、清宮リザ/アンナ、菜葉菜/「私」の妹


第4話「不死」 (原作:「不死」)

f0165567_613298.jpg


監督は歌手・川嶋あいのオフィシャルカメラマンとして全国各地で行われた1000回ライブを撮影。
その映像を基に初の劇場公開作品となる長編ドキュメンタリー映画「最後の言葉dear beloved」
(‘05)を発表した高橋雄弥さん。
映画だけでなく、さまざまな分野の映像を精力的に制作しています。

ストーリー
毎日毎日、同じ木の下で凧を揚げ続ける老人・新太郎。
彼はある日雑踏の中で、遠い昔に死んだ恋人みさ子をみつけ
手に手をとって、桜の木に向かって歩き始めます。
そこはかつてみさ子が亡くなった場所でした。

数十年の時を経て、恋人に再会した新太郎は満開の桜の木の下で
高々と凧を揚げ始めました…

4編を通じて顔を出していた凧を持った老人の姿が本編でようやく明らかになります。
満開の桜と死。美しく、淋しく、幻想的な作品です。

ひとびとが桜に狂うのは今が限りと咲く花に自分を重ねるからなのかもしれません。

f0165567_629135.jpg
 

さあ、もうすぐ桜が咲きます。花見ですよぉ―――
監督/高橋雄弥
出演
奥村公延/新太郎、香椎由宇/みさ子

「掌の小説」
監督/坪川拓史、三宅伸行、岸本司、高橋雄弥、原作/川端康成(新潮文庫)、プロデューサー/浅野博貴、坪川拓史、小林洋一、撮影/板垣幸秀、八重樫肇春、主題歌/「四季」Kagrra(KINGRECORDS)
出演
吹越満、夏生ゆうな/寉岡萌希、中村麻美、長谷川朝晴/福士誠治、清宮リザ、菜葉菜/香椎由宇、奥村公延
3月27日(土)より、ユーロスペースにてモーニング&レイトショー 他全国順次公開予定
2010年、日本、80分、カラー&モノクロ、配給/エースデュース、配給協力/グアパ・グアポ、www.tenohira-kawabata.com/

ブログランキングに参加しています。
この寒さでは花見気分にもなれませんが、春を待つ間、ポチッとクリックお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月10日に更新しました。いつも応援してくださり、ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-10 06:46 | 映画 | Comments(10)
掌の小説 -1-  

f0165567_5234581.jpg


                  ©「掌の小説」製作委員会

昨年来、日本の文芸作品がたくさん映画化されています。
昨年は社会現象や流行語にもなった小林多喜二「蟹工船」。
生誕100周年を迎えた太宰治の「ヴィヨンの妻」。
今年も太宰治「人間失格」、川端康成の本作「掌の小説」
芥川龍之介「トロッコ」そして村上春樹「ノルウェイの森」と続いています。

「ノルウェイの森」はキャストも発表され、今秋公開の予定です。
ちなみに主人公ワタナベ役は松山ケンイチ、直子役は菊池凛子だとか。
読んだ人が多い小説なだけにそれぞれ思い入れも深く
このキャスティングにはいろいろな意見がありそうですね。
監督がベトナム出身のトラン・アン・ユンだけにちょっと意外な配役でした。

いえいえ、今回は「ノルウェイの森」は関係ありません。
恥ずかしながら、ちょっと熱くなってしまった殿ですが
おなじみの小説が映画化されるのって、緊張します。
お気に入りの作家の、それも、好きな作品だったりすると
映画化によってイメージが変わってしまうのって、絶対イヤですよね。
殿の最大ガッカリは江戸川乱歩小説の映画化作品です。
(あ、でも、乱歩の「芋虫」を原案にした若松孝二監督の「キャタピラ」は観てみたいですが)

いけない、いけない。話がそれてしまいました。
「掌の小説」です。川端康成です。

f0165567_5321542.jpg


「掌の小説」
川端が40年余にわたって書き続けてきた作品集で、話の長さは短いもので2ページほど、長いものでも10ページに満たない122編の短編小説を収録したもの。

本人は「この巻の作品の大半は二十代に書いた。多くの文学者が若い頃に詩を書くが、私は詩の代りに掌の小説を書いたのであったろう。無理にこしらえた作もあるけれども、またおのずから流れ出たよい作も少くない。今日から見ると、この巻を『僕の標本室』とするには不満はあっても、若い日の詩精神はかなり生きていると思う」と評しています。(WIKIPEDIAより)

かなりの自己評価ですね。でも、12年後に出された全集ではこれを覆し
「わたしの歩みは間違っていた」と自己嫌悪を述べているそうですが。

川端康成といえばノーベル文学賞受賞作家
あるいは「伊豆の踊り子」「雪国」の作者というように日本を代表する作家です。
映画化された作品も多いですよね。

f0165567_5263572.jpgところが、この作家ほど本人のイメージと作品が違う人っていないんじゃないでしょうか。
殿なんて、川端康成の「眠れる美女」を読んだとき、そのじっとりとしたエロティシズムにびっくりしました。
「眠れる美女」は2005年ドイツで映画化され、ヴァディム・グロウナが監督、製作、脚本、主演をこなしましたが、いやぁ、まいりました。
小説も映画も、あのぎょろりとした目の大先生という川端の風貌とエロティックな老人愛がどうしても結びつかず当惑したものです。

文芸作品の映画化は監督の思い入れの激しさみたいなものにがっかりというか、ちょっとひいてしまう部分もあるものです。


しかし
時代の空気を描きだすことを大切にした4人の監督の映像には
おおげさなものがなく、川端康成の「詩精神」が漂っていました。

あ、そうなんです。
この映画は「笑わぬ男」「有難う」「日本人アンナ」「不死」という4作を
4人の監督がオムニバス形式で綴ったものです。

というところで、4話のご紹介は次回までお待ちください。乞うご期待であります。

To be continued.

「掌の小説」
監督/坪川拓史、三宅伸行、岸本司、高橋雄弥、原作/川端康成(新潮文庫)、プロデューサー/浅野博貴、坪川拓史、小林洋一、撮影/板垣幸秀、八重樫肇春、主題歌/「四季」Kagrra(KINGRECORDS)
出演
吹越満、夏生ゆうな/寉岡萌希、中村麻美、長谷川朝晴/福士誠治、清宮リザ、菜葉菜/香椎由宇、奥村公延
3月27日(土)より、ユーロスペースにてモーニング&レイトショー 他全国順次公開予定
2010年、日本、80分、カラー&モノクロ、配給/エースデュース、配給協力/グアパ・グアポ、www.tenohira-kawabata.com/


ブログランキングに参加しています。
久々に川端作品を読んでみようかなと思ったら、ポチっとお願いいたします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月7日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-07 05:57 | 映画 | Comments(10)
ウディ・アレンかく語りき
ウディ・アレン インタビュー


f0165567_5402073.jpg


                           (c)GION

当試写室で2月末に上映した「ウディ・アレンの夢と犯罪」。
今回の作品は過剰なおしゃべりも説明もなく、じっくり見せてくれました。
しかし、監督、やはり話し足りなかったのか、インタビューで猛烈トークです。

え?ウディ・アレンのおしゃべりにはつきあいたくない、ですか?
お気持ちはわかります(笑)。

でも、こにくらしいウディ節炸裂で笑っちゃうはず。
いきます!

Q:「ウディ・アレンの夢と犯罪」ではイギリスの労働者階級が主人公ですね?

ウディ:ユアン・マクレガーとコリン・ファレル演じる二人の兄弟が金持ちの叔父の依頼を拒むことが
できないという状況を作り出すためには、彼らがお金の問題で窮地に陥る必要があったんだ。
僕は金持ちのことは簡単に描ける。
だって、パーク・アヴェニューや僕の子どもたちが通う私立学校の門で毎日彼らと接しているし
僕だってそこに属しているわけだからね。
貧しさ?それは子ども時代にたっぷり体験したよ。
だから、今回は古ぼけた脳みそをひっくり返して脚本を書いたんだ。

Q:今回の映画でも罪悪感について探求していますね?

ウディ:罪悪感というテーマには強い興味を持っているよ。
殺人は道徳的な側面と強迫観念的な側面から罪悪感というテーマを発展させ
掘り下げることを可能にしている。
2人の兄弟は同じ過去を持ち、同じ教育を受けているんだが
殺人に対して2人はまったく違った反応をとる。
1人は自分が陥った危険しか見ないし、もう1人は良心の呵責にとりつかれる。
良心の呵責を強調するのは実はとても簡単なんだ。
とても滑稽なことが起こるようにだってできるよ。
もし、これが別の時代のできごとで、僕が登場人物を演じていたとしたら
この作品を喜劇にしていたと思う。

Q:あなたは喜劇を捨てたんですか?

ウディ:僕がコメディを作ると、悲しい作品だね、と言われるんだ。
僕は悲観的だったかもしれない。
今、僕は30年前のように悲観的ではないよ。
でも、世界は今も悲劇的だね。
神はもう存在しないし、僕たちには自分たちの道徳的な選択しか残されていない。
僕の道徳的な選択はきわめてシンプルだよ。
愛と税金の他には何も重要なものはないってことさ。

f0165567_5471980.jpg

                ”アンジェラ役のヘイリー・アトウェルと”
            (c)2007 WOLVERINE PRODUCTIONS LIMITED.

ギリシャ悲劇がキーワードになっている新作「ウディ・アレン夢と犯罪」。
ウディ監督、悲劇についても大いに語ります。

Q:あなたの変化は観客に受け入れられましたか?

ウディ:僕には昔ニューヨーカーやフランス人といった観客のサークルがあった。
僕の映画はテキサスやミネソタでは1セントだって稼ぐことができなかったんだ。
そこから突然拡がっていった。おかげで資金調達が少しばかり簡単になったよ(笑)。

Q:「マッチポイント」や「ウディ・アレンの夢と犯罪」は暗い作品です。これは、今、あなたが束縛されないまじめな作者でいることができると感じているということでしょうか?

ウディ:僕はギリシャ悲劇の大ファンなんだ。
これらを今でもまだ上演できるなんて素晴らしいことだよね。
僕が最初に愛したものは悲劇だし、若い頃、本当に書きたかったものも悲劇なんだ。
物語や登場人物の悲劇的な次元について取り組むのは今も好きだよ。
イングマール・ベルイマンやテネシー・ウィリアムズ、アーサー・ミラーが好きだったな。
喜劇のことは考えていなかったんだよ。だけど、映画は建築と同様、金のかかる芸術だ。
「ウディは笑わすことができるヤツじゃないか?」と周囲が気づき
「退屈させないでくれ!」と言い始めたんだ。
でも、僕は自分の作品が根本的に変わったとは思わない。
僕は毎年1本の映画を撮るが、それは喜劇かもしれないし、悲劇かもしれない。
僕は滑稽でも、悲劇的でもなく、ただ現実的なだけだと思っているだけさ。

Q:現実というのは?

ウディ:不条理だよ。現実は、表面的に楽しい瞬間のある本質的な悲劇だ。
チャンスに恵まれている人もいれば、そうでない人もいる。
彼らは違う電車に乗って旅をするが、行先は同じ。
みんな歳をとり、病気になり、そして、死ぬ。これで終わり。The Endさ。

Q:あなたは絶望的な考えから逃れる方法として映画を作る、とよく語っていますね。
映画はあなたに活力を与えているものに思えます。


ウディ:映画作りは最高の気分転換であり、気晴らしなんだよ。
現実から逃避するためにも、ずっと映画に没頭していたかったんだ。
でも、今の僕は夜、家に帰ることが嬉しい。少し変わったのかもしれないね。


     ウディ・アレン監督 
     自信があって映画を撮り続けているのか
     毎年1本の映画を撮り続けている内に自信がついてきたのか
     それとも単なるポーズか

     いつも泳いでいるような目つきで、おどおどした印象のある監督
     “いやなヤツ!”と思いつつも、なんか気になる監督です。

(ウディ・アレン監督「ウディ・アレンの夢と犯罪」オフィシャル・インタビューより)

ブログランキングに参加しています。
ウディ・アレン監督をお好きな方も、お嫌いな方もポチっとクリック、お願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♡3月4日に更新しました。いつも応援をありがとうございます♡
by mtonosama | 2010-03-04 06:30 | Comments(10)