ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

<   2012年 06月 ( 10 )   > この月の画像一覧

少年は残酷な弓を射る -2-
We Need To Talk About Kevin

f0165567_6261615.jpg

(C) UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010


高級住宅の一室。大きな窓に白いカーテンがかかっていて、夜風に揺れています。
そして、
膨大な数のトマトが路上にあふれ、つぶれ、群衆も真っ赤に染まっています。
白と赤。映画の冒頭からこんなヴィヴィッドな色彩の対比に幻惑されます。
そして、
いずれも一抹の不安感を予想させます――

という次第で始まる「少年は残酷な弓を射る」。
リン・ラムジー監督の細腕(細くないかもしれないけど)でむんずと襟首つかまれました。


f0165567_6391758.jpg

ストーリー
郊外の古くて小さな一軒家に暮らすエヴァ。
赤いペンキが家の壁にぶちまけられても、近所の人は一言も声をかけてくれない。
見知らぬ女性が街を歩くエヴァの頬をいきなり張り飛ばしていく――

それというのも息子ケヴィンがひきおこした事件のためだった。
雑用係として旅行代理店で働き、少年刑務所に収容されている息子に会いにいく日々。
睡眠薬が手放せない夜を過ごしながら、エヴァは少しずつ過去の記憶に向き合っていく。

若かった頃、エヴァは世界中を飛び回る旅行作家だった。
恋人のフランクリンは旅先まで彼女を追ってきた。
彼は家庭を作り、落ち着いた日々を送ることを望んだ。
エヴァもそれを受け入れ、結婚。やがて妊娠。ひどいつわりに苦しむ。
生まれた子はケヴィンと名づけらたが、彼との生活は苦労の連続だった。

赤ん坊の頃は一日中泣き通し、3歳になっても一言も言葉を話さず、おむつも取れない。
6歳の頃の激しい反抗期。まるで母親への強烈な悪意に満ち満ちているかのようである。
でも、どの時期も夫フランクリンが抱けば泣きやみ、夫が帰宅すれば満面の笑顔で出迎えるケヴィン。
「男の子なんてこんなものさ」。フランクリンはエヴァの訴えを理解しようとしない。

そんな時、2人目の子どもを授かるエヴァ。娘セリアは明るい少女に育つ。
ケヴィンも美しく賢い少年に成長するが、思春期ともあいまってエヴァとの関係は悪化するばかり。
難しい息子との関係に疲れたエヴァにとって娘の存在は大きな救いだった。

ある日のこと、セリアが可愛がっていたハムスターがいなくなり、
キッチンのディスポーザーの中で死んでいるのが発見された。思わずケヴィンを疑うエヴァ。
それからしばらくしてエヴァたちの留守中、セリアが強い薬品を顔にかぶり、
片目を失明するという事故が起きた。エヴァの疑いは確信に変わる。

エヴァの言葉を聞いたフランクリンは妻に失望し、ふたりの関係は冷めていく。
言い争いを耳にしたケヴィンは「僕のせいなんだろ」と言い残し、自室へ。
何度も話し合った結果、もう少しこの生活を続けていくことにする夫婦――

その朝、セリアははしゃぎ、夫も彼女と楽しげに遊んでいた。
起きてきたケヴィンにエヴァは「あと3日で16歳ね。お祝いしましょう」。
「さあ、どうかな。忙しいかもしれない」とケヴィン。
仕事にでかけるエヴァ。それが家族の最後の記憶だった……

f0165567_6375135.jpg


思いもよらない衝撃のラストが待ち構えています。

小説では、エヴァが夫フランクリンに宛てた手紙という形式をとっているそうですが、
映画では手紙ではなく、エヴァの視点と記憶が中心になった構成です。
息子ケヴィンとの関係をどう捉えるか、エヴァなりに苦しみ抜いた結論を出しています。
でも、観客がそれを受け入れられるかどうか。
そして、ケヴィンの心の底にあるものは本当にそれだったのか・・・・・
はっきりいってかなりしこりが残ります。

映像の美しさと少年の美しさ。象徴性に満ちたシーンと構成。
愛に満ちた家庭と少年の内部に溢れる処理しがたい衝動。
一歩先の展開を予測させつつ、じらせる心憎い演出。
家族映画であり、犯罪映画であり、絶妙な心理映画で、恐怖映画であると言いました。
映画としては心ゆくまで満足させられます。

しかし、観終わった後もいつまでも残るこのしこりをどうにかしたいのですが。





今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月30日に更新しました。1年の半分がもう終わってしまいますね。いつも応援ありがとうございます☆

少年は残酷な弓を射る
監督/リン・ラムジー、脚本/リン・ラムジー&ローリー・スチュワート・キニア、原作/ライオネル・シュライバー、製作/リュック・ローグ、ジェニファー・フォックス、ロバート/サレルノ、製作総指揮/スティーヴン・ソダーバーグ、クリスティーン・ランガン、ポーラ・アルフォン、クリストファー・フィッグ、ロバート・ホワイトハウス、マイケル・ロビンソン、アンドリュー・オル、ノーマン・メリー、リサ・ランバート、リン・ラムジー、ティルダ・スウィントン、撮影/シーマス・マッガーヴェイ
出演
ティルダ・スウィントン/エヴァ、ジョン・C・ライリー/フランクリン、エズラ・ミラー/ケヴィン
6月30日(土)TOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー
2011年、イギリス、112分、字幕/佐藤恵子、提供/クロックワークス、東宝、配給/クロックワークス、http://shonen-yumi.com/

by Mtonosama | 2012-06-30 06:57 | 映画 | Comments(8)
少年は残酷な弓を射る -1-
We Need To Talk About Kevin

f0165567_6192398.jpg

(C) UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010

怖くて、美しくて、悲しい映画です。
女性なら母親になることが怖くなるし、
男性なら父として夫としてどうあるべきなのかと、頭を抱え込んでしまうでしょう。
そして、今、少年期にある人なら―――
うーん、何を想うでしょう。
150歳にもなってしまうと少年の気持はよくわかりません。

ですが、もう一回―――
女性なら、きっとケヴィンのおそろしいまでの美しさに息を呑むでしょう。
「ヴェニスに死す」のビョルン・アンデルセンの再来かと思う人も多いと思います。


f0165567_6311771.jpg
映画化は困難と言われていた小説「少年は残酷な弓を射る」(”We need to talk about Kevin” ライオネル・シュライバー著)が、リン・ラムジー監督によって映画になりました。
母親を演じるのはティルダ・スウィントン。彼女は製作にも参加しています。



「少年は残酷な弓を射る」
2003年に発表されたライオネル・シュライヴァーによる小説。殺人を犯した少年の母親が彼女の夫に宛てた手紙という一人称視点の形式を採る。
訳者/光野多惠子、堤理華、真喜志順子、発行日/2003年4月14日(アメリカ)、2012年6月15日(日本)、発行元/サーペンツ・テール(アメリカ)、イースト・プレス(日本)
Wikipediaより

「少年は残酷な弓を射る」は英国女性作家文学賞オレンジ賞を受賞したベストセラーです。
女性作家の小説を女性監督が映画化し、主演女優が製作にも関わる――
女性が表に出ることをことさらにあげつらうまでもないのですが、
本作から受けた強い衝撃のため、ついクレジット・タイトルに目が行ってしまいました。

f0165567_6332586.jpg

撮影日数わずか30日。低予算のプロジェクト。
低予算ゆえセットを組む予算もなく、撮影は全てロケかロケセットで行われたという本作。
しかし、窮すれば通ず、です。
プロダクション・デザイン担当の女性が廃校になった職業訓練校を見つけ出し、
それを病院、小児科、少年鑑別所、学校、そして、
主人公の夫婦が初めての夜を過ごした旅先のうらさびれたトロピカル・ホテルにまで作り変えてしまいました。

なぜ、そんな内輪話を紹介したかというと、
とてもそんな安上がりな映画とは思えなかったからなんですけどね。

映画は3つの時間から構成されています。
主人公エヴァが暮らす現在、
息子ケヴィンが生まれるまでの夫婦の幸せな時代、
そして、成長期のケヴィンとエヴァとの息のつまるようなNY郊外での日々。
フラッシュバックのように挿みこまれるいくつかのシーン。
なんとも不安の嵩ずる構成です。
知らず知らず肩をこわばらせ、ハンカチを握りしめて注視していました。

この映画をジャンル分けすることは難しいです。
家族映画でもあれば、犯罪映画でもあり、絶妙な心理映画で、
ものすごくサスペンスフルな恐怖映画でもあります。

一体どんな映画なのでしょうか。乞うご期待でございますよ。



今日もクリックをお願いできれば嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月27日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

少年は残酷な弓を射る
監督/リン・ラムジー、脚本/リン・ラムジー&ローリー・スチュワート・キニア、原作/ライオネル・シュライバー、製作/リュック・ローグ、ジェニファー・フォックス、ロバート/サレルノ、製作総指揮/スティーヴン・ソダーバーグ、クリスティーン・ランガン、ポーラ・アルフォン、クリストファー・フィッグ、ロバート・ホワイトハウス、マイケル・ロビンソン、アンドリュー・オル、ノーマン・メリー、リサ・ランバート、リン・ラムジー、ティルダ・スウィントン、撮影/シーマス・マッガーヴェイ
出演
ティルダ・スウィントン/エヴァ、ジョン・C・ライリー/フランクリン、エズラ・ミラー/ケヴィン
6月30日(土)TOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー
2011年、イギリス、112分、字幕/佐藤恵子、提供/クロックワークス、東宝、配給/クロックワークス、http://shonen-yumi.com/

by Mtonosama | 2012-06-27 06:49 | 映画 | Comments(8)
クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち -2-
CRAZY HORSE

f0165567_695294.jpg

(C) 2011 - IDEALE AUDIENCE - ZIPPORAH FILMS, INC.TOUS DROITS RESERVES - ALL RIGHTS RESERVED

1951年5月19日
アラン・ベルナルダンがクレイジーホースを創業した日です。

それから、既に61年。
最新の音楽と前衛的なスタイルで、フランスだけでなく世界中の観客に受け入れられたクレイジーホースも
代が変わり、2005年にはベルナルダン一家から新しい経営陣に変わりました。

映画には新しい総支配人アンドレ・ダイセンバーグ、そして、
コンテンポラリーダンス界の鬼才フィリップ・ドゥクフレを演出と振付に迎えた後の
クレイジーホースが描かれています。

f0165567_6402919.jpg

さて、ダンス好きのワイズマン監督の話をちょっと聞いてみましょうか。
監督は、2009年4月、パリのジョルジュ・サンク大通りにある「クレイジーホース」の
メカニズムを撮影するために無制限の撮影許可を獲得しました。
クレイジーホースのショーはアートなのかストリップなのか?
商業的なエロティック・ファンタジーとは?
バレエとはどう違うのか?

そんな疑問の他に、監督をひきつけたのは、
クレイジーホースをめぐって揺らめくいろいろな立場の人の幻想だったそうです。

美女の裸体を見せることによって、大金を稼ぎたいオーナーや株主たちの幻想、
より美しく芸術的な舞台を演出したい演出・振付家の幻想、
ショーを観る観客たちの幻想、
ダンステクニックと鍛え抜いた肉体を、半裸で、あるいは、全裸に近い状態でさらし、
役に扮するダンサーたちの幻想――

相矛盾したさまざまな立場の人々の幻想がスクリーンに去来します。

f0165567_6215892.jpg

そして、映画の始まりはこんな風に――
1人の男のシルエット。
その指と手が、悪魔の横顔を形作り、犬を吠えさせ、鳩を飛ばします。
そんな素朴ともいえる影絵が、
ピンクの水玉のライトを浴びて揺れるダンサーたちの美しい背中とヒップに変わっていきます。

映画の父リュミエール兄弟をひきあいにだすまでもなく、映画の始原は光と影。
光があるから影が生じるし、影があるから光がきわだつ。
そして、人の目は光と影を追って動きます。
映画の始まりとも言える影絵の世界から、
煌めくライトと美しいオブジェとも見紛う裸体への移り変わり。
これ、とっても鮮烈でした。

そんな目にも鮮やかで、もったいないような美女たちのレビュー風景はもちろん
フィリップ・ドゥクフレとダンサーたちの練習風景。
ダンサーが踊りやすく、より美しく見えるために考え抜かれたコスチューム。
優しく、穏やかな口調ながらすさまじいまでのプロ意識を見せる衣裳係。
オーナーや演出家、スタッフたちの利害がぶつかりあう会議。
毎週1回行われ、ゲイのダンサーも参加するオーディション。
ダンサーたちの休憩時間・・・・・

ハレの場であるステージと日常風景が、
ダンスをこよなく愛するフレデリック・ワイズマン監督の手によって切り取られました。

それにしても、鏡の前に立ってポーズを決めるダンサーたちの背中の筋肉にはビックリ。
はい、最近腰痛防止のため腹筋背筋を鍛えているのでついつい筋肉に目が行ってしまうんです。

芸術的なバレエであれ、ショービジネスであれ、
それらを支えるのはダンサーたちの誇りをかけたプロ意識であり、鍛え抜いた肉体なんですね。
見せることを目的とした肉体の美しさとそれを維持する努力には脱帽するしかありません。
アートか、ストリップか。
そんなことはもうどうでもいいです。

圧倒されるような女性の肉体の乱舞の中で、影が薄い男性陣ですが、
クレイジーホースでは男性も踊ります。
こちらは裸ではありませんし、お歳も若干召しておいでですが、
彼らの一糸乱れぬタップダンスもすごいですよ。

パリのクレイジーホースにはなかなか行くことはできませんが、
この映画でステージだけでなく、楽屋も、練習も、女性のダンスも男性のダンスも堪能させてもらいました。
もう100年分位のパリを楽しんだ気分です。





今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月24日に更新しました。いつも応援してくださって誠にありがとうございます☆

クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち
監督・音響・編集/フレデリック・ワイズマン、撮影/ジョン・デイヴィ、製作/ピエール・オリヴィエ・バルデ
出演
フィリップ・ドゥクフレ、クレイジーホースダンサーほか
6月30日(土)Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー
2011年、フランス・アメリカ、134分、日本語字幕/古田由紀子、配給/ショーゲート、後援/フランス大使館、フランス観光開発機構、ユニフランス・フィルムズR-15、http://crazyhorse-movie.jp/

by Mtonosama | 2012-06-24 06:35 | 映画 | Comments(8)
クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち -1-

CRAZY HORSE

f0165567_535481.jpg

(C) 2011 - IDEALE AUDIENCE - ZIPPORAH FILMS, INC.TOUS DROITS RESERVES - ALL RIGHTS RESERVED

おそらく「殿様の試写室」初のR-15指定の映画です。
いわゆる15歳未満の入場(鑑賞)禁止という映画です。

ま、とんでもないわっ!

と、お思いの皆さまもせっかくここまでお越しくださったのですから、
もうしばらくおつきあいください。
観光ツアーではなかなか足を運べないパリの夜の顔、クレイジーホースを覗いてみましょうよ。

あ、踊り子さんにお手を触れないでください。
って―――
そういう映画じゃないですから。


クレイジーホース
パリの3大ナイトショーのひとつ。高級感が漂うジョルジュ・サンク通りにあるパリで最も前衛的なキャバレー、クレイジーホース。音と光に彩られた洗練されたクレイジーホースのショーは、まさに「ヌードの芸術」。モード関係者、アート関係者、洗練されたステージパフォーマンスに目がない女性にも好評。
日本ではあまり馴染みのないキャバレーショーだが、世界各国、選りすぐりのダンサーが出演し、奇抜な衣装や舞台装置、エキサイティングな各種ダンスや歌などで男女を問わず観客を魅了。宝塚やミュージカルやバレエが好きな方などにも、本格的に楽しめるエンターテイメントの一つ。ムーランルージュ、リドを観たら次はクレイジーホースという人も多い。

ドレス・コード
基本的には狭い会場に人がひしめきあっており、カジュアルからドレスアップした人まで様々です。男性の方は正装、もしくは、ジャケットかネクタイを着用、 ジーンズとスニーカーはNGです。女性は、ロングである必要はありませんが、膝丈程度の長さのドレスを着用(少し高級なレストランで食事をする時のような恰好でOKです)。
今までの経験から、服装でサービサーの態度は変わります。ワンピース、ヒール、アクセサリー、出来るだけ素敵な格好でお出かけしましょう。
http://paris-travel.amary-amary.com/c_theater/crazyhorse.php

f0165567_5413567.jpg
なんかワクワクしますね。
本物の大人の社交場っていう感じ。R-15指定なのも無理はありません。
15歳未満のボクやワタシたち。こういう贅沢な世界に足を踏み入れるのは大人になるまで待ってくださいね。



さて、クレイジーホースは要するにキャバレーですが、
現代の日本のそれを思い浮かべると大間違い。

フランスのキャバレーは19世紀の末からパリで発達し、
社会風刺を含む歌や寸劇、ダンスを見せて当時の紳士淑女を楽しませた酒場のことをいいます。
第1次世界大戦と第2次世界大戦の狭間で花開き、
バレエの他に「芸術的なダンス」のなかったフランスにとって
キャバレーは新しいダンスというアート発表の場でした。

「ムーランルージュ」「リド」「クレイジーホース」。
パリの3大キャバレーです。

そのクレイジーホースを題材にドキュメンタリーを撮ったのが、
「ダンスといえばこの人」ともいうべきフレデリック・ワイズマン監督。
「BALLETアメリカン・バレエ・シアターの世界」
当試写室でも上映した「パリ・オペラ座のすべて」http://mtonosama.exblog.jp/11865047/
など、ダンスとダンサー、そして、彼らを支える裏方の人たちを撮らせたら
この方をおいてはいないかもしれません。

元々は弁護士で、大学でも教えていたことのあるワイズマン監督。

ダンスはダンスでも、今回はヌードダンサーたちに密着したドキュメンタリー作品を撮りました。
さあ、一体どんな映画なのでしょう。
乞うご期待でございます。



今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月21日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

クレイジー・パリ 夜の宝石たち
監督・音響・編集/フレデリック・ワイズマン、撮影/ジョン・デイヴィ、製作/ピエール・オリヴィエ・バルデ
出演
フィリップ・ドゥクフレ、クレイジーホースダンサーほか
6月30日(土)Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー
2011年、フランス・アメリカ、134分、日本語字幕/古田由紀子、配給/ショーゲート、後援/フランス大使館、フランス観光開発機構、ユニフランス・フィルムズR-15、http://crazyhorse-movie.jp/

by Mtonosama | 2012-06-21 05:54 | 映画 | Comments(8)
ワン・デイ 23年目のラブストーリー -2-
ONE DAY

f0165567_550363.jpg

©2011 Focus Features LLC. All Rights Reserved

7月15日。エマとデクスター2人の愛と人生が語られるこの日は
イギリスでは聖スウィジンの祝日とされています。

この日をうたったこんな詩が。

聖スウィジンの日が雨ならば40日間、雨続き
聖スウィジンの日が晴れならば40日間、雨はなし

さあ、エマとデクスターの23年間の7月15日はいったいどんな空模様なのでしょうね。


ストーリー
1988年7月15日スコットランド。
卒業式の後、エマは同級生のデクスターと
初めて言葉を交わします。真面目で優秀なエマ。遊び人のデクスター。
正反対の2人でしたが、その夜、成り行きでエマの部屋へやってきたデクスター。
しかし、泥酔した彼はベットに入るや爆睡。

1989年7月15日ロンドン。
作家になることを夢見ているエマは1人でこの街のアパートに越してきます。
引越しを手伝い、不安げなエマを元気づけるデクスター。

1990年7月15日ロンドン。
作家とは程遠いメキシコ料理店で働くエマ。
落ち込むエマはデクスターに電話しますが、彼はパリで恋と休暇を楽しんでいました。

1991年7月15日ロンドン。
エマのメキシコ料理店にテレビ局で働くデクスターが、恋人を連れて来店。
作家への夢を諦めかけているエマに彼は言います。
「君は面白いし、頭も良い。魅力的でセクシーだ。君にひとつだけプレゼントするとしたら『自信』かな」。

1992年7月15日。
始めて2人きりのバカンスに訪れたエマとデクスター。
誰もいない夕暮れのプール。「友達の関係」と心に決めてはいたものの
普段とは違うロマンティックな雰囲気が2人の距離を縮めます。
「ずっと前からあなたに夢中だったの」と想いを告げるエマ。
なのに、デクスターときたら「旅先だからいいだろ?」と割り切った関係を迫ってくるだけ。

1993年7月15日。
テレビの音楽バラエティショーでMCを務めるデクスター。
毎晩のパーティの後、泥酔しながらも電話をかける相手はエマでした。

1994年7月15日。
華やかだけれど自堕落な日々を送るデクスター。母は重病、父とは反りが合わず、
落ち込んだ彼が電話をするのはやはりエマ。
その日はかつての同僚イアンとエマとの初デートの日でした。
彼女をいつも好きでいてくれるイアンに安らぎを感じるエマ。

1995年7月15日。
教師になったエマはイアンと暮らしながらもテレビの中のデクスターを見守っていました。
なのに、母を亡くし、マスコミから最低よばわりをされても、低俗番組に出演するきれいなだけのモデルとつきあうデクスター。

1996年7月15日。
エマはドレスアップしてデクスターとの久々のディナーに出かけます。
美しいエマに驚くデクスター。
「本当はイアンのことは愛していないの」と打ち明けるエマでしたが、
酔っ払った彼は真剣にエマの話を聞きません。
「愛しているわ。でも、もう好きじゃない」
そう言い放ち、エマはデクスターの前から立ち去るのでした。
f0165567_5103253.jpg

3年後、1999年7月15日。
デクスターへの想いを綴ったエマの詩を読んでしまうイアン。
一方、デクスターは新しい恋人シルヴィにプロポーズをしようとしています。

2000年7月15日。
大学時代の友人の結婚式で再会するエマとデクスター。
その折、デクスターからシルヴィアとの結婚式の招待状を手渡されるエマ。

2001年7月15日。エマの書いた児童書が出版されます。
シルヴィアと結婚したデクスターは新しい仕事で再出発をはかるのですが、
シルヴィアの心は彼から離れていました。

2年後、2003年7月15日パリ。
作家になる夢を果たしたエマが暮らすパリを訪れるデクスター。
しかし、エマには既にフランス人の新しい恋人がいました。
「一緒にやらないか。君と僕とで」とデクスター。
エマは「そう思ったわ。80年代の終わりに」
すれ違いを重ねる2人の想い……


f0165567_5272621.jpg

晴れの日もあれば、雨の日もある。
人生ってそんなもの。
おっといけない。150年も生きているとついつい達観し過ぎてしまいます。

でも、同時代に青春時代を送った人や、今この時、出会いの時を生きているカップルにとっては
きっととても共感できる映画に違いありません。

ラストシーンに向って扇を少しずつ開閉するようなシーンの積み重ね方。
ある一瞬を印象的に描き出すにはなかなか効果的な手法でした。

だけど、イギリスが舞台で、デクスター役のジム・スタージェスだって英国人、
監督もデンマーク人なのに、アメリカ映画ってどうしてこうアメリカ的なんでしょう。
どこからともなくアメリカの匂いがしちゃうんですよね。
アメリカの匂いがどんな匂いかははっきりとは言えませんが。

それにしても同い年の男女って女子の方が確実に大人です。
「デクスター、エマの気持に早く気付けよな」ってつっこみを入れていた150歳の女子であります。





今日もポチッとしていただければ嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月18日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

ワン・デイ 23年目のラブストーリー
監督/ロネ・シェルフィグ、原作・脚本/デイヴィッド・ニコルス(ハヤカワ文庫)、製作/ニーナ・ジェイコブソン、撮影監督/ブノワ・ドゥローム、音楽/レイチェル・ポートマン、主題歌/エルヴィス・コステロ
出演
アン・ハサウェイ/エマ、ジム・スタージェス/デクスター、パトリシア・クラークソン/アリソン、ケン・ストット/スティーヴン、ロモーラ・ガライ/シルヴィ、レイフ・スポール/イアン
6月23日(土)TOHOシネマズ 有楽座他全国ロードショー
2011年、アメリカ、107分、日本語字幕/古田由紀子
http://oneday.asmik-ace.co.jp/

by Mtonosama | 2012-06-18 05:22 | 映画 | Comments(10)
ワン・デイ 23年目のラブストーリー  -1-
ONE DAY

f0165567_6482982.jpg

©2011 Focus Features LLC. All Rights Reserved

殿様の試写室へようこそ!
さて、突然ですが、皆さまにはこれだけは外せない記念日ってありますか?
結婚記念日?初めて1,000メートルを泳いだ日?生まれて初めて飛行機に乗った日?
それぞれに記念日はあると思うのですが、
この映画「ワン・デイ 23年目のラブストーリー」の記念日は、ま、どちらかといえば普通。
ある男女が初めて出会った日ですから、映画としては珍しくはありません。

でも、ちょっとだけ変わっているのは、
この映画が、2人の出会いの日である7月15日という日だけで、構成されていること。

1988年7月15日、スコットランド。
とある大学の卒業式、卒業生同士として初めて言葉を交わし、
1年後の7月15日彼女は夢をかなえようとロンドンに引っ越し、彼は荷物運びを手伝う。
3年後の7月15日彼は新しい恋人を連れて彼女の働く店へやってくる――

そう、23年間の2人の気持ちと暮らしを7月15日だけを取り出して描いた映画です。
ロマンティックっていえばロマンティックな、だけどちょっと切ないラブストーリー。

f0165567_6514041.jpg

原作はデイヴィッド・ニコルズが書いた同名のベストセラー小説で、彼は今回脚本も担当しています。

主演はアン・ハサウェイとジム・スタージェス。
英国の美しい風景と、今が旬の女優アン・ハサウェイ。
ファッション誌をパラパラめくる感覚で楽しめるきれいな映画でした。

監督はロネ・シェルフィグ。1959年コペンハーゲン生まれの女性監督です。
デンマークでキャリアをスタートし、90年に映画監督デビュー。
2000年には「しあわせになるためのイタリア語講座」でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員賞)、国際映画批評家連盟賞をはじめ、各国の映画祭で受賞し、注目を集めます。
彼女の「17歳の肖像」(‘09)は第82回アカデミー賞3部門でノミネートされていた話題作。実力派の監督です。

原作はベストセラー小説だし、その作家が脚本も担当し、主演はアン・ハサウェイで
舞台はイギリス。主題歌はエルビス・コステロ。もうヒットの条件が鈴なりの映画です。
それに、エルビス・コステロと聞けば、
すぐに思い出すのが「ノッティングヒルの恋人」(‘99)の主題歌“She”です。



とくれば、どんな路線の映画か、想像はつきますよね。

この映画は、エジンバラ、ロンドン、パリを背景に50以上のロケ地で撮影が行われました。
エジンバラではアーサーズシートと呼ばれる丘やモレイプレイス、国会広場で撮影。
ロンドンではあのウェストミンスター寺院で結婚式のシーンを撮りました。
パリではパレ・ロワイヤルやパリ北駅、サン・マルタン運河。
ああ、もうヨーロッパのいいとこどりです。季節はいつだって夏。
だって23年分の7月15日だけで構成された映画ですからね。
旅行気分でヨーロッパの夏をお楽しみいただけます。

さあ、どんなお話でしょうか。
続きは次回でのお楽しみ。乞うご期待でございます。



今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
☆6月15日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ワン・デイ 23年目のラブストーリー
監督/ロネ・シェルフィグ、原作・脚本/デイヴィッド・ニコルス(ハヤカワ文庫)、製作/ニーナ・ジェイコブソン、撮影監督/ブノワ・ドゥローム、音楽/レイチェル・ポートマン、主題歌/エルヴィス・コステロ
出演
アン・ハサウェイ/エマ、ジム・スタージェス/デクスター、パトリシア・クラークソン/アリソン、ケン・ストット/スティーヴン、ロモーラ・ガライ/シルヴィ、レイフ・スポール/イアン
6月23日(土)TOHOシネマズ 有楽座他全国ロードショー
2011年、アメリカ、107分、日本語字幕/古田由紀子
http://oneday.asmik-ace.co.jp/

by Mtonosama | 2012-06-15 06:57 | Comments(4)
キリマンジャロの雪 -2-
Les Neiges du Kilimandjaro

f0165567_673852.jpg

(C) AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

ロベール・ゲディギャン監督は「マルセイユの恋」(‘97)を筆頭に、
自分が生まれ育った港町マルセイユを舞台にした作品をたくさん撮ってきました。
本作「キリマンジャロの雪」でも、なじみの俳優、スタッフと共に、
生活感あふれるマルセイユを描いています。

なじみの俳優?
それはなんといっても実生活でもパートナーである妻のアリアンヌ・アスカリッドでしょうね。
そう、組合委員長ミシェルの妻を演じた女優です。
そういえば、ミッシェル役のジャン=ピエール・ダルッサンも常連。
この俳優さん、4月に当試写室で上映した「ル・アーブルの靴みがき」の刑事役で良い味を出していた俳優です。
http://mtonosama.exblog.jp/17426967/ http://mtonosama.exblog.jp/17438978/
しかし、当たり前のことかもしれませんが、俳優というのはいろんな顔をつくることができる職業ですね。

ところで、映画の中で主人公ミシェルのヒーローとして登場するのはフランス社会党の創立者ジャン・ジョレス。
社会主義と労働運動に邁進してきた人物です。
ミシェルは、職場のロッカーの扉の裏に
ジョレスの有名な演説のフレーズを貼りつけているほど彼を尊敬しています。

労働者を主人公にした映画というと「自転車泥棒」(‘48)や「鉄道員」(‘58)を
思い出してしまいますが(古ッ)、ま、あの流れに近い作品かもしれません。
さあ、一体どんなお話でしょうか。


ストーリー
埠頭の上に青い作業服を着た男たちが並んでいます。
世の中の流れには抗しきれず、ミシェルが組合委員長をしている会社も
リストラを余儀なくされてしまいました。そこで20名の退職者をクジで選ぶことに。
次々に読み上げられる退職者。その中にはミシェルの名前も入っていました。
委員長の権限で自分の名前を外すこともできたのですが、
なんでも公平にしなくてはならないというのがミシェルの考えでしたから。
f0165567_6175934.jpg

ミシェルとマリ=クレールの結婚30周年を祝うパーティの日。
退職社員も含め、多くの仲間が招待され、
孫たちの歌う「キリマンジャロの雪」が流れる中、プレゼントが贈られました。
夫婦の夢だったアフリカ旅行のチケット。
義弟ラウルからはスパイダーマンのコミック本。
それは子どもの頃ミシェルが失くしてしまっていた想い出の本で
幼い字で記された彼の名前も残っていました。

失業してからのミシェルは孫の世話をする他は、時間を持て余すようになります。
そんな夫の姿が気にかかってならない妻のマリ=クレール。

ある夜のこと、ミシェル達が妹夫婦と4人でいつものようにトランプに興じていると、
覆面をした2人組の強盗が押し入ってきました。
強盗は、金品やアフリカ旅行のチケット、そして、スパイダーマンのコミックまで奪っていきました。
まじめに生きてきたのに、なぜこんな目に――
ショックを受けるミシェルたち。
PTSDなのか妹は日常生活を送ることができなくなり、
その夫ラウルは犯人への憎悪を募らせていくのでした。

数日後ミシェルはバスの中でスパイダーマンのあのコミックを手にした兄弟に出会います。
確かめてみるとそのコミックは確かにミシェルのもの。
この兄弟は同じ時にリストラされた元同僚の青年クリストフの弟たち。
まさにこのクリストフこそ強盗の1人であったことを、ミシェルはつきとめました。

逮捕されたクリストフに面会したミシェルは、若い彼が言い放った言葉によって、
これまで抱いてきた組合運動への信念を打ち砕かれます。
思わずクリストフを殴るミシェル。
マリ=クレールは今まで見たことのない夫の暴力に動揺し、2人の関係にも影が。

幼い弟2人を養っていたクリストフ。
リストラを受けた彼が生活に行き詰った末の犯行だったことが明らかになりました。
長ければ15年の実刑判決です。
ミシェルの心にはクリストフへの同情が。
ミシェルは告訴を取り下げようとしましたが、既にクリストフの身柄は司法の手に。

一方、マリ=クレール。
彼女はミシェルには黙ってクリストフの弟たちの世話をしていました。
実の母親のネグレクトにあっていた兄弟は、マリ=クレールの暖かい愛情に包まれて
次第に心を開いていきます。
手元に戻ってきたアフリカ旅行のチケットを換金したミシェルも
兄弟のためにその金を役立てようとクリストフのアパートに向うのでした……

f0165567_6204269.jpg

良かれと思ってしたことが若い労働者の反感を生んでしまったり、
定年間近なおやじ労働者の組合至上主義的な思い込みがないとはいえなかったり・・・・・
小さな町とはいえ波風の立たない生活などあるわけはありません。
でも、やがて波はおさまって、マルセイユの明るい太陽のもと、
平穏で平凡な生活がいつも通りに始まります。ああ、ありがたいことです。

落語にも、寅さん映画にも、通じるものがある、人の暖かさ。なんだかホッとします。
マルセイユの海もよそゆきを着た観光地のそれではなく、普段着の顔をしています。
そこに暮らす人の目を通した海であり、街でした。

マルセイユ発の人情映画。
「勇気とは、習慣、モラルとして日々の生活の中に息づくものである」
ジョレスの言葉。しみますねぇ。





今日もポチッとお願いできれば嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月12日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

キリマンジャロの雪
監督/ロベール・ゲディギャン、脚本/ジャン=ルイ・ミレジ、ロベール・ゲディギャン、撮影/ピエール・ミロン(AFC)
出演
アリアンヌ・アスカリッド/マリ=クレール、ジャン=ピエール・ダルッサン/ミシェル、ジェラール・メイラン/ラウル、マリリン・カント/ドゥニーズ、グレゴワール・ルプランス=ランゲ/クリストフ、アナイス・ドゥームスティエ/フロ、アドリアン・ジョリヴェ/ジル、ロビンソン・ステヴナン/刑事、キャロル・ロシェ/クリストフの母
6月9日(土)より岩波ホールにてロードショー、全国順次公開
2011年、107分、フランス、フランス語、提供/クレストインターナショナル、NHKエンタープライズ、協力/東京日仏学院、ユニフランス・フィルムズ、配給/クレストインターナショナル、http://www.kilimanjaronoyuki.jp/

by Mtonosama | 2012-06-12 06:40 | 映画 | Comments(8)
キリマンジャロの雪 -1-
Les Neiges du Kilimandjaro

f0165567_5245015.jpg

(C) AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

「キリマンジャロの雪」と言ったら、パパ・ヘミングウェーのあの名作です。

キリマンジャロの山頂近くに凍りついた豹の死体があった――

とても印象的な脳内シーンを与えてくれた小説でした。
だって、なにゆえ草原を駆けているべき豹が山頂の雪の中で凍りついていなくてはならなかったのでしょう。

がっ、しかし――

本作「キリマンジャロの雪」はあの短編小説とはまったく関係ありません。
この映画タイトルはヘミングウェイのあの作品ではなく、
フランスで1966年に大ヒットしたパスカル・ダネルの歌から来ています。
こちらの「キリマンジャロの雪」は1953年生まれの本作監督ロベール・ゲディギャンの青春時代の思い出の歌。
映画の中では、主人公の結婚記念日のパーティで孫たちがこの歌を歌う微笑ましい場面もあります。

キリマンジャロ。
アフリカ大陸の最高峰、独立峰としては世界最高峰を誇る5895メートルの孤高の山――
f0165567_5254066.gif


ではなく、
本作では陽光きらめくマルセイユが舞台です。
家々の窓からは海と共にクレーンも見えていますよ。
そういえば、とのが昔住んでいた横浜の家からも港のクレーンが見えたものです。

そう、この映画の舞台は、リゾートとしてのマルセイユではなく、
港町であり、庶民の町であるマルセイユです。

主人公はミシェルとマリ=クレール。2人は結婚30年目を迎えた夫婦。
ミシェルは実直な労働組合の委員長で、
マリ=クレールはそんな夫を誇りに思い、支え続けてきた妻。
子どもたちは独立し、孫にも囲まれ、絵に描いたように幸せな熟年夫婦です。

f0165567_528629.jpg


監督ロベール・ゲディギャンは、1953年マルセイユ近郊の小さな港町に生まれました。
父は本作の主人公と同じく港湾労働者。
学生時代は「労働運動の歴史における国家の概念」と題した博士論文を書き、
労働運動にも積極的に関わってきました。ま、そんな時代でもありましたし。

このちょっとおかたい(多分)ゲディギャンを映画へと誘ったのがルネ・フェレ監督。
昨年3月、当試写室で上映した「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」の監督です。
http://mtonosama.exblog.jp/15689906/  http://mtonosama.exblog.jp/15704699/
地方を舞台にして、自分の製作会社で映画をつくるというフェレの流儀がゲディギャン監督に影響を与えました。

フランスで半年以上のロングラン上映を記録し、
300万人を動員した大ヒット作「マルセイユの恋」(‘97)もそうでしたが、
17作目となる本作も地元マルセイユ発信の映画になっています。
労働組合の委員長が主人公と聞くと「社会派の映画か?」と思ってしまいますが、
人情味と、魚を焼く匂いが流れてくるような生活感にあふれた人情映画です。
f0165567_5334047.jpg


監督は、ヴィクトル・ユーゴー(1802~85)とジャン・ジョレス(1859~1914)
――社会主義者であり、政治家であり、雄弁家として民衆から愛された人物――
を敬愛しており、本作「キリマンジャロの雪」はこの2人の偉大な人物に負うところが大きいようです。

まず、ヴィクトル・ユーゴーの「哀れな人々」という詩
―― 19世紀のブルターニュの貧しい漁師が隣家の2人の遺児をひきとる決心をする ――
が本作の下敷になっていますし、
ジョレスの演説
「勇気とは組織の中にだけ存在するものではなく、習慣、モラルとして日々の生活の中に息づくものである」
という言葉が主人公夫婦の行動を支えています。

ジョレスの言葉は今となっては古臭く思えるかもしれません。
っていうか、こんな考えは今の時代からはとっくに失われていると思っていました。
だけど、改めて目で追ってみると実に深い言葉ですね。

人情といい、勇気といい、忘れていた大切なものを思い出すかもしれません。
さあ、いったいどんなお話でしょうか。乞うご期待でございます。



今日もポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月9日(土)に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

キリマンジャロの雪
監督/ロベール・ゲディギャン、脚本/ジャン=ルイ・ミレジ、ロベール・ゲディギャン、撮影/ピエール・ミロン(AFC)
出演
アリアンヌ・アスカリッド/マリ=クレール、ジャン=ピエール・ダルッサン/ミシェル、ジェラール・メイラン/ラウル、マリリン・カント/ドゥニーズ、グレゴワール・ルプランス=ランゲ/クリストフ、アナイス・ドゥームスティエ/フロ、アドリアン・ジョリヴェ/ジル、ロビンソン・ステヴナン/刑事、キャロル・ロシェ/クリストフの母
6月9日(土)より岩波ホールにてロードショー、全国順次公開
2011年、107分、フランス、フランス語、提供/クレストインターナショナル、NHKエンタープライズ、協力/東京日仏学院、ユニフランス・フィルムズ、配給/クレストインターナショナル、http://www.kilimanjaronoyuki.jp/

by Mtonosama | 2012-06-09 05:46 | 映画 | Comments(6)
ファウスト -2-
Faust

f0165567_5595380.jpg

(C) 2011 Proline-Film,Stiftung fur Film-und Medienforderung, St.Petersburg,Filmforderung, Russland Alle Rechte sind geschutzt

さて、ソクーロフ監督が見せてくれる「ファウスト」。
オープニングは密教曼荼羅図を想わせるような山々の俯瞰映像。
思わず息を呑むシーンです。
これを観て、もしかして自分はとてつもなく壮大な作品に関わろうとしているのだと
襟を正す気分になったことを告白したいと思います。

これまでも数多くの芸術家をとりこにしてきた「ファウスト」ですから、
ソクーロフ監督としても半端なことはできません。

ソクーロフ的解釈もなかなかです。
だから、あの有名なメフィストフェレスだって出てきません。
代わりに出てきたのが高利貸マウリツィウス。
監督によれば、メフィストフェレスはスピリチュアルな存在であるべき、というのです。

映画では、神秘的でロマンティックなキャラクターを作りたくなかったということで、
高利貸マウリツィウスが登場しました。
なるほど、高利貸ならロマンティックではありません。
それどころか、きわめてシンプルでわかりやすい悪キャラです。

ゲーテは「ファウスト」を劇として書き、
実際に、自分で舞台装置のための下絵まで描いていたそうです。
なるほど、ヴィジュアル展開を予想した作品だったわけですね。
映像美の名手ソクーロフが監督した「ファウスト」。
いったいどのような展開でありましょうか。


f0165567_671262.jpg

ストーリー
森に囲まれたドイツの小さな街。
ファウスト博士は一体の屍を解剖して《魂》の存在を探しています。
「人体のどこにも《魂》をみつけることができない」と嘆くファウストに
助手のワーグナーは「魂の正体を知っているのは神と悪魔だけです」とつぶやきました。
「神など存在しない」と怒るファウストに
「悪魔なら金のあるところにいます。広場の近くに住んでいる男が悪魔と噂されています」
と告げる助手。

研究費もなくなり、まともな食事にもありつけないファウスト博士は
診療所で医師として働く父を訪ねますが、すげなく追い返されてしまいます。
町をさまよい歩くファウストの足はいつしか悪魔と噂される高利貸の家へ。
マウリツィウス・ミュラーと名乗るその高利貸の家には、神父までもが出入りしています。
室内にうず高く積まれた担保物件。
指輪を担保に金を借りようとしたファウストに、マウリツィウスは
「価値を持つのは、時と芸術。金はお貸しできませんが、別の形でならお力になりましょう」と提案。
借金を断られたと思ったファウストは高利貸の家から憤然と立ち去ります。

ファウストが帰宅すると、助手のワーグナーが毒の小瓶を持って近づいてきました。
実は、ファウストは毒を入手するよう彼に命じていたのです。
そこへ現れたマウリツィウス。
彼はその毒を、あっという間に飲み干してしまいました。
平然としているマウリツィウス!
その力に興味を持ったファウストはマウリツィウスに誘われるまま、再び町へ出かけます。

彼らがやってきたのは女たちが集まる洗濯場。
その中にファウストは清楚な若い女性マルガレーテをみつけ、心を奪われます。

次に彼が連れていかれたのは地下酒場。
そこでは兵士たちが陽気に飲んで歌っていました。
マウリツィウスは兵士の1人にわざと酒をかけて騒ぎを起こします。
大騒動の中でファウストは誤ってその兵士を刺し殺してしまいました。

酒場から逃げ出したファウスト。
罪の意識に苛まれ、死んだ兵士の家族に償いをしたいと
マウリツィウスに頼んだ時にわかったのは驚くべき事実でした。
ファウストが殺した兵士は洗濯場の美女マルガレーテの兄だったのです。

葬儀の日、ファウストはマルガレーテを慰めながら、清らかで純真な彼女と語らいます。
充実したひとときを過ごす二人の前に現れたマルガレーテの母。
彼女は、見知らぬ男と二人きりでいるマルガレーテを激しく叱責します。
暗い気持ちを抱えてマルガレーテは教会へ。
母への想いを懺悔するマルガレーテの前へファウストがやってきます。
ファウストの優しい言葉に心を開くマルガレーテ。

恋の予感に心躍らせ、帰宅したマルガレーテを待っていたのは
兄を殺したのはファウストであるという驚くべき事実でした……

f0165567_685092.jpg

ゲーテの原作では「ファウスト・悲劇」と題されたこの戯曲。
プロローグ、第1部、第2部に及ぶ膨大な量の作品ですが、
それを2時間20分の映画にまとめあげるだけでも大変な作業でありましたでしょう。

天才ゲーテが死の間際まで60年近くもかけて完成させた「ファウスト」。
20代で書き始めたものを83歳までひきずり続ける、いえ、こだわり続ける、
いえ、推敲し続ける――
どう表現すべきか、150歳と歳は経ていても天才とは程遠いとのにはわかりません。

ゲーテの抱き続けた執念というか、情熱というか、生きることそのものというか、
すごすぎます。

これを映画化するとき、なにを前面に出すか、といったら、
思想でも、文学性でもなく、映像そのものでしょう。

ラストの圧倒的な映像とともに、
マウリツィウスの鼻をあかしたファウストのあがきに感銘を覚えたとのであります。

この映画、観るときの気持ちに応じていろいろな色合いを見せてくれるような気がします。





今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆6月6日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

ファウスト
監督・脚本/アレクサンドル・ソクーロフ、台本/ユーリー・アラボフ、共同脚本/マリーナ・コレノワ、撮影/ブリュノ・デルボネル、美術/エレーナ・ジューコワ、製作・音楽/アンドレイ・シグレ
出演
ヨハネス・ツァイラー/ハインリヒ・ファウスト、アントン・アダシンスキー/マウリツィウス・ミュラー(高利貸)、イゾルダ・ディシャウク/マルガレーテ、ゲオルク・フリードリヒ/ワーグナー、ハンナ・シグラ/高利貸の妻、アンチェ・レーヴァルト/マルガレーテの母、フロリアン・ブリュックナー/バレンティン、シグルズール・スクラソン/ファウストの父
6月2日(土)シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー
2011年、ロシア、ドイツ語、140分、日本語字幕/吉川美奈子、配給/セテラ・インターナショナル、http://www.cetera.co.jp/faust/

by Mtonosama | 2012-06-06 06:18 | 映画 | Comments(6)
ファウスト -1-
Faust

f0165567_625445.jpg

(C) 2011 Proline-Film,Stiftung fur Film-und Medienforderung, St.Petersburg,Filmforderung, Russland Alle Rechte sind geschutzt

「ファウスト」といえば誰でも知っています。
誰が書いたかも皆さまよくご存知ですよね。
でも、実際にゲーテのこの名作を読んだことのある方というとどれだけいらっしゃるでしょう?
あ、既にお読みになっていらっしゃる方はごめんなさい。

かつてドイツに実在したといわれる魔術師ファウストの伝説をもとに、
ゲーテが20代半ばから死の直前まで60年近くの年月をかけて完成させた「ファウスト」。
これまでに映画化された本数は両手の指では足りず、演劇や音楽に名を残し、
手塚治虫の漫画にもなっている超有名作品です。
だから、本当は読んでいないかもしれないのに、知ってるつもりになっている方も
相当な数にのぼるのではないでしょうか。
とのも読んだような気もするし、そうでないような気もするし、
150歳の今となっては定かとは申せません。


ファウスト
15世紀から16世紀頃のドイツに実在したと言われるドクトル・ファウストゥスの伝説を下敷きにして、ゲーテがほぼその一生をかけて完成した大作である。このファウスト博士は、錬金術や占星術を使う黒魔術師であるという噂に包まれ、悪魔と契約して最後には魂を奪われ体を四散されたという奇怪な伝説、風聞がささやかれていた。ゲーテは子供の頃、旅回り一座の人形劇「ファウスト博士」を観たといい、若い頃からこの伝承に並々ならぬ興味を抱いていた。こうした様々なファウスト伝説に取材し、彼を主人公とする長大な戯曲を仕立て上げた。(Wikipediaより)


f0165567_6112542.jpg

登場人物はファウストとメフィストフェレスと聖少女グレートヒェン。
悪魔メフィストフェレスと契約して魂を売り渡す代わりに、
あらゆる快楽を手に入れた「ファウスト伝説」は中世以来ヨーロッパ中に伝わっています。
幼いゲーテは人形劇で観て興奮し、おねしょを漏らしたかもしれませんね。

実際に、悪魔と契約を交わしたかどうかはともかく「魔術師ファウスト博士」は実在した人物。
古文書には「かつてあったなかで最も完璧な錬金術師」と書かれているそうです。
ゲーテならずとも魔術師とか錬金術師と悪魔との取引などと聞けば、
怖いものみたさやら、人間の底知れぬ欲望の深さやらで、なんとも気になります。

シューマンが「ゲーテのファウストからの情景」を作曲したのも、
リストが「ファウスト交響曲」を作ったのも、
トーマス・マンが長編小説「ファウスト博士」を書いたのも、
なんとなくわかるような気がします。

悪魔との取引はおそらく良いことではないのでしょうが、
その取引によって自らの才能を開花させ、社会に名をなし、素晴らしい結婚をし、可愛くて優秀な子どもを持ち、大金持ちになり、
そして、そして――
健康な体を持ち、行きたいときに旅行へ行き、美味しいものを食べ、
それでも、体型を維持できて――
う~ん、段々、願いが卑俗になってきたな。

大した願いではないにしても、これが全部かなった後の反動もちょっと怖い。
うまいこと悪魔の鼻をあかせればいいのだけど。
と、まあ、結構悩ましい訳であります。

f0165567_613719.jpg

さて、この名作を今回映画化したのは「ボヴァリー夫人」(‘89)
http://mtonosama.exblog.jp/11831877/
「太陽」(‘05)
「チェチェンへ アレクサンドラの旅」(‘07)
http://mtonosama.exblog.jp/9958217/
のアレクサンドル・ソクーロフ監督。
ソ連崩壊までは、その作品が一般公開されることのなかった監督ですが、
1987年以降は、コンスタントに新作を発表。
世界でも高い評価を受けています。
本作「ファウスト」では、第68回ヴェネチア国際映画祭のグランプリを受賞しました。

「太陽」でも、「ボヴァリー夫人」でも、その映像と解釈にはビックリしましたが、
今回はいったいどんな作品を見せてくれるのでしょうか。

乞うご期待でございます。



今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
☆6月3日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ファウスト
監督・脚本/アレクサンドル・ソクーロフ、台本/ユーリー・アラボフ、共同脚本/マリーナ・コレノワ、撮影/ブリュノ・デルボネル、美術/エレーナ・ジューコワ、製作・音楽/アンドレイ・シグレ
出演
ヨハネス・ツァイラー/ハインリヒ・ファウスト、アントン・アダシンスキー/マウリツィウス・ミュラー(高利貸)、イゾルダ・ディシャウク/マルガレーテ、ゲオルク・フリードリヒ/ワーグナー、ハンナ・シグラ/高利貸の妻、アンチェ・レーヴァルト/マルガレーテの母、フロリアン・ブリュックナー/バレンティン、シグルズール・スクラソン/ファウストの父
6月2日(土)シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー
2011年、ロシア、ドイツ語、140分、日本語字幕/吉川美奈子、配給/セテラ・インターナショナル、http://www.cetera.co.jp/faust/

by Mtonosama | 2012-06-03 06:18 | 映画 | Comments(4)