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殿様の試写室

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北のカナリアたち -1-

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(C)2012「北のカナリアたち」製作委員会

これは泣けました。

あ、唐突ですみません。
東映創立60周年記念作品として製作された「北のカナリアたち」のことです。

一昨年、松たか子の主演で話題を読んだ「告白」(東宝)。
本作はその著者・湊かなえの著「往復書簡」中の「二十年後の宿題」が原案となった作品です。

湊かなえさん、デビュー作「告白」(‘08)が大ヒット作となり、
そして、今回、「往復書簡」(‘10)が、東映の還暦を記念する本作の原案となりました。
まだ40歳にもならない作家としては、これをどう受け止めているのでしょう。

「作家であり続けたい。そして『告白』が代表作でないようにしたい」
と取材で語っていた湊さんですが、きっとそうなると思います。
湊さんのことをウィキってみたのですが、とてもユニークな経歴をお持ちでした。

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広島県出身。1973年生まれ。大学卒業後アパレルメーカーに就職し、
青年海外協力隊隊員としてトンガに2年間赴いた後、淡路島の高校で家庭科の非常勤講師となる。
結婚後「形に残せるものに挑戦したい」と創作を始めた。
昼は主婦業をこなし、朝晩は執筆に励む。
緻密な構成の支えとして、徹底した登場人物の性格付けを心がけており、
「履歴が決まれば人物が動いてくれる」として執筆前にはどんな脇役でも履歴書を作っている。
2005年、第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。
2007年、第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、
「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、
「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。
デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。
(Wikipediaより)

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さて、映画の方ですが、監督は「闇の子供たち」(‘08)、「大鹿村騒動記」(‘11)の阪口順次。
余談ですが、「大鹿村騒動記」は昨年亡くなった原田芳雄自身が企画し、遺作にもなった話題作です。
そして撮影は名カメラマン木村大作。
初めて監督を務めた「劍岳 点の記」(‘09)でも日本アカデミー賞最優秀監督賞、
最優秀撮影賞など数々の賞を受賞しています。
吉永小百合を筆頭にした俳優陣もすごいですし、さすが邦画界の大御所・東映の還暦記念映画。
力が入っています。
毎週末には親に連れられ、近所の東映の劇場へチャンバラを観に行ったとのとしては
この東映の大作に感無量であります。ヨヨヨ・・・

と、泣き崩れていては話が進みません。
一体、どんなお話なのでしょう。続きは次回までお待ちくださいませ。



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北のカナリアたち
監督/阪本順治、撮影/木村大作、原案/湊かなえ(「往復書簡」幻冬舎文庫)、脚本/那須真知子、音楽/川井郁子
出演
吉永小百合/川島はる、柴田恭平/川島行夫、仲村トオル/阿部英輔、里見浩太郎/堀田久、森山未来/鈴木信人、小笠原弘晃/20年前の信人、満島ひかり/戸田真奈美、渡辺真帆/20年前の真奈美、勝地涼/生島直樹、相良飛鷹/20年前の直樹、宮崎あおい/安藤結花、飯田汐音/20年前の結花、小池栄子/藤本七重、佐藤純美音/20年前の七重、松田龍平/松田勇、菊池銀河/20年前の勇
11月3日(土・祝)全国ロードショー
配給/東映
http://www.kitanocanaria.jp/

by Mtonosama | 2012-10-31 07:20 | 映画 | Comments(6)
みんなで一緒に暮らしたら -2-
Et si on vivait tous ensemble?

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ここに登場する5人の後期高齢者。ただただ温厚な媼や翁を想像したら大間違い。
ひと癖もふた癖もある人たちばかりです。
一応どんな人たちなのかをざっとご紹介しておきましょう。

アルベール&ジャンヌ夫妻
アルベールは日記と愛犬の散歩が毎日の習慣。本人に自覚はないものの記憶を失い始めている。
ジャンヌは元哲学教授。病気が進行していることを知り、人生の最期をどう過ごすか考え始めている。

クロード
独身を謳歌する若い女性が大好きな75歳。
ところが、デートの最中に発作を起こし、息子によって老人ホームに強制入所させられる。

ジャン&アニー夫妻
ジャンは市民活動家。生きがいであったNPOの活動を高齢ゆえに断られプンプン。共同生活推進派だ。
アニーは心理学者。孫たちが家に遊びに来ないことを嘆き、庭にプールを作ろうと計画。
自分の家を提供しての共同生活には絶対反対。

この5人にお世話係のドイツ人学生ディルクも加わって――
さてさて、どんなお話が展開するのでしょうか。


ストーリー
パリの郊外に住む5人は40年来の友人です。
75歳になったクロードの誕生日。
5人はいつものようにアニーとジャン夫婦が暮らす一軒家でバースデイ・パーティ。
気の合った仲間同士、愉快に過ごしますが、
実のところは、心臓発作を起こしたばかりのクロードのことが心配だったり、
夕方には早目にパーティを切り上げなければならないのが面倒だったりします。
共同生活推進派のジャンは
「みんなで一緒に暮らせば問題は一挙に解決さ」
と切り出しましたが、誰も耳を貸そうとしません。
妻のアニーなど
「ヒッピーじゃあるまいし、共同生活なんてまっぴらよ!」
と高らかに宣言。

ある日、ジャンヌに病院から受診結果が届きます。
病はかなり進行。ですが、認知症が進みつつある夫・アルベールには病気は完治したと告げます――

ある日、アルベールが愛犬の散歩中に転倒。救急車で病院へ。
「人生の最後をどう過ごすか考えてこなかった!」
と、動揺する妻のジャンヌ。そんな中、犬のオスカルが保健所に預けられてしまいます。
しかし、犬のいない生活など考えられないアルベールのため、
ジャンとクロードがオスカルを連れ戻してきてくれました。
友人のありがたさを痛感したジャンヌは真剣に共同生活を考えようとアルベールに提案。
そして、夫のために犬の散歩係としてドイツ人学生ディルクを雇うことに。

クロードもまた若い女性とのデートの最中に心臓発作を起こして入院。
息子によって老人ホームに入所させられた彼を見て、友人たちは脱走作戦を決行するのでした。

そんなこんなで共同生活をするしかなくなった5人組。
犬の散歩係だったディルクを5人のお世話係として契約し、
いよいよジャンとアニーの家に引っ越してきました……


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いくら自分は若い気でいても周りはそうは観てくれません。
例えば、市民活動家のジャン。
派手にシュプレヒコールを叫び、若者たちよりも過激に行動します。
でも、機動隊員は、彼を拘束するどころか、割れものを扱うような丁重なふるまい。
プレーボーイのクロードはデートの前に医師にバイアグラの処方を頼みますが、
心臓に悪いからと断られたり――

気持だけは若くても身体は容赦なく老いていきます。
老いの渦中にありながら、素直にそれを認められない後期高齢者たち。
でも、それでいいのだと思います。
老い支度も死に支度も人それぞれですものね。
「あれ、知らない内に玉手箱を開けてしまったのかな。こんなに腰が曲がっちゃったよ」
でいいのかもしれません。

そんな中で、弱っていく肉体と折り合いをつけながら、
ひとつずつ死に支度を整えていくジャンヌはすごい!立派!凛々しい!
まるで、“ハノイ・ジェーン”と呼ばれていた頃のジェーン・フォンダを見るようです。

自分の入る棺を決め、お葬式の段取りも書いて遺していくジャンヌ。
そう、お葬式はパーティのようにみんなでシャンパンを飲み、
そのグラスはジャンヌが眠るピンクの棺の蓋の上に置いておくように・・・・・
なんて素敵な仕切りでしょう。

このジャンヌの凛々しさのおかげで、
ほのぼのとしつつ、涙を誘うラストシーンが生きてきます。

それにしてもジェーン・フォンダはいつまでもきれいです。
やはり身体を鍛えることって大切ですね。
彼女を見習ってしっかりエクササイズしないと、と心に誓った150歳のとのであります。





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みんなで一緒に暮らしたら
監督・脚本/ステファン・ロブラン、撮影/ドミニク・コラン、音楽/ジャン=フィリップ・ヴェルダン、美術/ダヴィッド・ベルサネッティ
出演ジェーン・フォンダ/ジャンヌ、ジェラルディン・チャップリン/アニー、ダニエル・ブリュール/ディルク、ピエール・リシャール/アルベール、クロード・リッシュ/クロード、ギイ・ブドス/ジャン、ベルナール・マラカ/ベルナール、カミノ・テシェイラ/マリア、グウェンドリーヌ・アモン/サヴィーヌ、ブリアール犬/アルベールの愛犬オスカル
11月3日(土)よりシネスイッチ銀座、梅田ガーデンシネマ他にて順次ロードショー
2011年、フランス/ドイツ、フランス語、96分、字幕/古田由紀子、配給/セテラ・インターナショナル、スターサンズ、http://www.cetera.co.jp/minna/

by Mtonosama | 2012-10-28 07:48 | 映画 | Comments(8)
みんなで一緒に暮らしたら -1-
Et si on vivait tous ensemble?

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(c)LES PRODUCTIONS CINEMATOGRAPHIQUES DE LA BUTTE MONTMARTRE/ROMMEL FILM /MANNY FILMS /STUDIO 37/HOME RUN PICTURES

先月、当試写室で上映した「桃(たお)さんのしあわせ」。
http://mtonosama.exblog.jp/18004827/ http://mtonosama.exblog.jp/18014554/
60年の間、リーさんという香港に暮らす家族に仕えたメードさんのエンディングノートともいえる映画でした。 

「みんなで一緒に暮らしたら」もフランス版エンディングノートでしょうか。
ジェーン・フォンダやジェラルディン・チャップリンといったゴージャスな女優や
若手ではダニエル・ブリュールが出演。

笑ったり、しんみりしたり、いわば、お固くない老い支度、死に支度の映画です。
75歳とは思えないナイスバディのジェーン・フォンダがアメリカ訛のフランス語で
(アメリカからフランスに永住した元哲学教授という設定なので)
合理的に、きっぱりと、そして、明るく、死に支度をする女性を演じています。

病気や、老いや、死は、一般的にはあまり楽しい話題とはいえないのだけれど、いずれ行く道。
どうせ、いつか向かい合わなくてはならないのならば、
笑いながら、今後向かうであろう未知の領域を覗いてみるのも悪くありません。

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登場するのは、人生の終わりをどのように過ごすべきか、を考え始めた5人の男女。
彼らが1軒の家で一緒に暮らし始めたら、というお話なのですが――

これって日本でも雑誌などでよく紹介されてますよね。
コーポラティブハウスとかいうんですか?
例えば、シングルの女性たちが退職後、土地や建物を共同購入して暮らす、みたいな。

この映画でも、2組の夫婦と1人暮らしの男性が一緒に暮らそうか、となるんですが、
そこはなんといってもフランス。一筋縄ではいきません。

映画の中でもジェラルディン・チャップリンが演じるアニーが言います。
「ヒッピーじゃあるまいし、共同生活なんて絶対イヤ!」

うん、そりゃそうだ。
いくら40年来の友人同士とはいえ、個人主義の権化(?)であるフランス人が5人、
ひとつ屋根の下で暮らすなんて!
絶対、大変そう。

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今や、人生の終わりをどう過ごすかは、世界中の高齢世代の関心事――
本作も2011年ロカルノ国際映画祭でお披露目されたときは万雷の拍手喝采を浴びたとか。
5年越しの企画を実現させたのは、フランス映画界が期待する1970年生まれの監督、
ステファン・ロブランです。
彼はまた、2度のアカデミー賞を受賞したジェーン・フォンダを
40年ぶりにフランス映画に出演させました。

皆さまよくご存知の通り、ジェーン・フォンダは名優ヘンリー・フォンダを父に持ち、
弟はピーター・フォンダ、姪はブリジット・フォンダという映画一家の一員。
ですが、彼女、父ヘンリー・フォンダとの間には大変な確執がありました。


1950年12歳のとき、夫ヘンリーの浮気を苦に神経を病んでいた母が4月に自殺。
それなのに、同じ年の12月に彼はもう再婚。これを期に父娘の間の溝は深まっていきます。
その後、ジェーンはロジェ・バディム監督と結婚(‘65)、離婚(‘73)、
離婚後3日後に政治活動家のトム・ヘイドンと結婚。
反戦、反体制、ウーマンリブの闘士として活躍した時期も。

ジェーン自身、人生の荒波を泳ぎ抜いてきました。
そうするうちに父との間にも少しずつ変化が――
あの「チャイナ・シンドローム」(‘79)で5度目のアカデミー賞主演賞候補にあがった頃、
父ヘンリーとの歩み寄りを見せ、
名優といわれながらアカデミー賞を取ったことのない父のために「黄昏」(‘81)の映画化権を獲得。
見事ヘンリー・フォンダに人生初のアカデミー賞主演男優賞をもたらしたのです。

と、まあ、彼女の人生だけでも1本の映画ができそうですが、
本作は後期高齢者5人の老い支度のお話。
(まだまだ、とのの半分の年齢ですけどね)

さあ、一体どんな内容なのでしょうか。
続きは次回までのお楽しみ。乞うご期待でございますよ。



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みんなで一緒に暮らしたら
監督・脚本/ステファン・ロブラン、撮影/ドミニク・コラン、音楽/ジャン=フィリップ・ヴェルダン、美術/ダヴィッド・ベルサネッティ
出演
ジェーン・フォンダ/ジャンヌ、ジェラルディン・チャップリン/アニー、ダニエル・ブリュール/ディルク、ピエール・リシャール/アルベール、クロード・リッシュ/クロード、ギイ・ブドス/ジャン、ベルナール・マラカ/ベルナール、カミノ・テシェイラ/マリア、グウェンドリーヌ・アモン/サヴィーヌ、ブリアール犬/アルベールの愛犬オスカル
11月3日(土)よりシネスイッチ銀座、梅田ガーデンシネマ他にて順次ロードショー
2011年、フランス/ドイツ、フランス語、96分、字幕/古田由紀子、配給/セテラ・インターナショナル、スターサンズ、http://www.cetera.co.jp/minna/

by Mtonosama | 2012-10-25 06:37 | 映画 | Comments(6)
菖蒲
-2-

TATARAK

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なぜ短編小説が1時間半の映画になりえたか?
アンジェイ・ワンダ監督はどんな魔法を使ったのでしょうか。

そこには1人の撮影監督の死が関わっています。
この撮影監督は本作の主演女優クリスティナ・ヤンダの夫であり、
ワイダ監督の友人でもあるエドヴァルト・クウォシンスキです。

「菖蒲」撮影の半ばに彼が病死したことによって、
この映画は3つの世界に分けられることになりました。

本来の小説世界
夫が亡くなる最期の日までをホテルの部屋で語るクリスティナ・ヤンダのモノローグの世界
映画「菖蒲」の撮影現場を映し出したドキュメントの世界

さ、この3つの世界が1本の映画になると、一体どんなことになるのか、
まずは、ちょっと覗いてみることにしましょう。


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ストーリー
f0165567_6484272.jpg女優のクリスティナ・ヤンダはホテルの部屋でめざめたばかり。
「この映画は去年撮る予定だった。わたしはワイダに出演は無理だと伝えた」
彼女はカメラに向かって、この映画を撮影する予定だった撮影監督で夫のエドヴァルト・クウォシンスキの発病からその最期の日まで、
そして、ふたりの愛と苦悩の日々について、語り始める――

ポーランドの小さな町。1960年代。町には美しい大きな河が流れている。f0165567_6583999.jpgその町に住む医師とその妻マルタには深い心の傷があった。夫婦はワルシャワ蜂起で息子2人を亡くしていたのだ。最近、体調が悪いと訴えるようになったマルタを診察した夫は、彼女が余命いくばくもないことを知る。だが、そのことを本人に伝えられずにいた。マルタを心配して友人が訪ねてきた。

その時、訪れた船着き場のカフェでマルタはひとりの美青年を見かける。
その若さと美しさは彼女がとうの昔に失ってしまったもの。
彼はまた戦争中に死んだ息子たちと同じくらいの年頃でもあった。

f0165567_70391.jpg翌日、マルタは河辺で偶然その青年ボグシに出会い、声をかける。若い彼が語る不満や悩みに耳を傾け、優しいまなざしを向けるマルタ。だが、彼は人生への野望もなく、この小さな町で一生生きていこうとしていた。
そんな彼にマルタは本を読み、教養を高めるように忠告。そして、次の日、一緒に河で泳ぐことを約束するのだった。
約束の河辺に昂揚した気持で向うマルタ。
その時、目に飛び込んできたのは楽しげに恋人と橋の上で語らうボグシの姿。
思わず踵を返すマルタだったが、気づいたボグシは彼女を追いかけてきた。
再び河辺に向ったマルタは河の中に生えている菖蒲を取ってきて、とボグシに頼む。
夏の到来を祝う聖霊降臨祭には菖蒲が欠かせないのだ。
生命の祝祭でもある聖霊降臨祭。
ボグシは軽々と向こう岸まで泳ぎ、菖蒲をひと束抱えて戻ってきた。
河辺で抱き合うふたり。
青年はほてった体を冷ますようにもう一度河に飛び込み、菖蒲を持ち帰ろうとする。
だが、その美しい肢体はもう浮かび上がることはなかった――

その河辺の撮影現場。
主演女優ヤンダはひどく動揺し、現場から走り去る。
雨の中、通りすがる車に同乗し、動揺を抑えきれないまま逃げていく女優――

ホテルの一室での女優のモノローグはまだ続いている……

これまでに観たワイダ作品との違いに当惑しました。
しかし、老いつつある女性と輝きに満ちた若さに包まれた美青年との対比。
死とはもっとも遠い筈の青年の死。
河の流れと、その流れに揺れる菖蒲。

ことさらに説明的なシーンがあるわけではないのに、
生と死。青春と老い。愛と別れ。
人生の折々の局面が、心に、頭に、ひそやかに、そして、印象的に迫ってきます。
3つの世界が不協和音もなくひとつになっていました。
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エドワード・ホッパー「朝の日ざし」(‘52)

すいません。終りに近くなって、またまた最初の話題に戻るのですが、
映画と絵画のことでもう一言。
監督がこの作品で意識した絵画はエドワード・ホッパー。
女優クリスティナ・ヤンダがホテルの一室で独白するシーンの客室は
美術のマグダ・デュポンに頼んでホッパーの絵を基に建ててもらったものだそうです。

とのの中では、アンジェイ・ワイダのイメージと、
都会の孤独と寂寥感を描きだしたホッパーの作品は結びつきません。

いずれにせよ、「菖蒲」はアンジェイ・ワイダの意外な横顔を覗かせてもらった作品でした。





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菖蒲
監督/アンジェイ・ワイダ、撮影監督/パヴェウ・エデルマン、作曲/パヴェウ・ミキェティン、美術/マグダレナ・デュポン、プロデューサー/ミハウ・クフィェチンスキ
出演
クリスティナ・ヤンダ/マルタ、クリスティナ・ヤンダ/女優、パヴェフ・シャイダ/ボグシ、ヤドヴィガ・ヤンコフスカ=チェシラク/マルタの友達、ユリア・ピェトルハ/ハリンカ、ヤン・エングレルト/医師
10月20日(土)より岩波ホールにてロードショー(全国順次公開)
2009年、ポーランド、87分、ポーランド語、配給/紀伊國屋書店、メダリオンメディア、配給協力/アークフィルムズ、後援/ポーランド広報文化センター
www.shoubu-movie.com

by Mtonosama | 2012-10-22 07:16 | 映画 | Comments(4)
菖蒲 -1-
TATARAK

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映画と絵画って結びつきやすいです。
とのがすぐ想い起すのは「真珠の耳飾りの少女」(‘04)。
あ、そうそう、当試写室で2011年11月に上映した「ブリューゲルの動く絵」http://mtonosama.exblog.jp/16885040/、http://mtonosama.exblog.jp/16872307/
なんていう絵画そのものを映画にした作品もありました。

今回上映する「菖蒲」はポーランドを代表する作家ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィチの
短編小説を映画化した作品で、絵画とは直接は関係ありません。

なのに、なぜかムンクの「生命のダンス」を連想してしまいました。
「生命のダンス」は北欧の短い夏の始まりを告げる夏至祭のダンスを描いた作品ですが、
あのムンクらしく生・快楽・死を象徴する女性が描きこまれています。

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エドワルド・ムンク「生命のダンス」(1899~1900) 

いえ、この絵のテーマが映画に結びつくとかそういうことではありません。
ただ、ポーランドの短い夏を舞台にしたこのアンジェイ・ワイダ監督らしからぬ抒情的な
タイトルの映画が夏至祭のダンスを連想させただけなのかもしれないのですが。

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アンジェイ・ワイダといえば、
第2次世界大戦下、ソ連軍の捕虜となったポーランド将校達が殺された事件を描いた
「カティンの森」(‘07)http://mtonosama.exblog.jp/12306564/ といい、
「地下水道」(‘56)といい、「灰とダイヤモンド」(‘57)といい、
その映画には骨太な政治的なメッセージを含んだ作品が多いという印象があります。
それが「カティンの森」後の次作がこの「菖蒲」ですから、ちょっと意外でした。

とはいえ、これまでにも監督はヤロスワフ・イヴァシュキェヴィチの小説「白樺の林」、「ヴィルコの娘たち」
を70年代に映画化しているのですが。

この舌をかみそうな名前の作家は、人間の現実にしっかりと根を下ろし、登場人物の性格、
その孤独感を、ポーランドの美しい田園風景を背景にした小説を多く書きました。
アンジェイ・ワイダ監督は彼の小説がお好きなのだそうです。


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ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィチ
1894年~1980年。ポーランドの小説家、詩人。キエフ大学で法律を学んだが、詩と音楽に熱中。1918年にワルシャワに移り、翌年詩人としてデビュー。小説家としても「白樺の林」(‘32)「ヴィルコの娘たち」(‘33)で地位を確立。一貫して、人間の孤独、愛と死、運命の悲劇性をテーマに作品を発表した。戦後は文壇の中心的存在として活躍。
他の代表作に「尼僧ヨアンナ」(‘43)「菖蒲」(‘58)がある。ポーランド文学史上最も多くの自作がTV化、映画化された作家。アンジェイ・ワイダ監督は「白樺の林」「ヴィルコの娘たち」「菖蒲」を映画化。ワイダ監督は「ヴィルコの娘たち」を作家に捧げ、本人をスクリーンに登場させている。「尼僧ヨアンナ」はイェジ・カヴァレロヴィチ監督が映画化。なお「菖蒲」は1965年アンジェイ・シャフャンスキー監督によっても36分の短編TV映画にされている。

「菖蒲」。
いったいどんなお話なのでしょう。
お読みになった方はご存知でしょうが、掌篇ともいうべき、短い小説です。
1965年にアンジェイ・シャフャンスキー監督がTV映画化したときも36分の短編でした。
それが本作は87分。約1時間半です。
アンジェイ・ワイダ監督、いったいどんな仕掛けでみせてくれるのでしょうか。

乞うご期待でございます。では、続きは次回で。



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菖蒲
監督/アンジェイ・ワイダ、撮影監督/パヴェウ・エデルマン、作曲/パヴェウ・ミキェティン、美術/マグダレナ・デュポン、プロデューサー/ミハウ・クフィェチンスキ
出演
クリスティナ・ヤンダ/マルタ、クリスティナ・ヤンダ/女優、パヴェフ・シャイダ/ボグシ、ヤドヴィガ・ヤンコフスカ=チェシラク/マルタの友達、ユリア・ピェトルハ/ハリンカ、ヤン・エングレルト/医師
10月20日(土)より岩波ホールにてロードショー(全国順次公開)
2009年、ポーランド、87分、ポーランド語、配給/紀伊國屋書店、メダリオンメディア、配給協力/アークフィルムズ、後援/ポーランド広報文化センター
www.shoubu-movie.com

by Mtonosama | 2012-10-19 07:34 | 映画 | Comments(4)
思秋期 -2-
Tyrannosaur

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(C)CHANNEL FOUR TELEVISION/UK FILM COUNCIL/EM MEDIA/OPTIMUM RELEASING/WARP X/INFLAMMABLE FILMS 2010

イギリス映画の奥深さを感じさせてくれる作品でした。
これを俳優出身の弱冠38歳のバディ・コンシダイン監督が撮ったとは驚きであります。

監督の実父がモデルだという救いようのない男と
穏やかで何の不自由もなく暮らす主婦が、人生の秋を迎えた時期に出会います。

これが、例えばロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープだったとしたら、
「恋におちて」(‘84)みたいになるわけですが――
う~ん、そうはいかないんですね。

さあ、一体どんなお話なのでしょうか。

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ストーリー

リーズ。イギリスの工業都市。
ジョセフは失業中のアル中男。妻は糖尿病で早世していた。
失業手当を受けながら、日々町で飲んだくれている。
彼はキレやすく、怒りと暴力の衝動を抑えることができない。
犬を蹴り、ガラスを割り、周囲に当たり散らす。
いつもあちらこちらにトラブルの種をまいて回っているような男だ。

f0165567_6293156.jpg今日もそんなトラブルで仕返しを受けたジョセフは血を流しながら、
とあるチャリティショップに逃げ込んできた。
そこにいたのがハンナ。チャリティの古着屋を営む40代半ばの女。
信心深く、古着の間に蹲って出てこようとしないジョゼフのために祈ろうとする。

彼女はこぎれいな高級住宅地に住み、夫のジェームスと2人で暮らしている。
何不自由なく暮らしている金持ちの有閑マダム・・・・・か。

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明るく、優しいハンナと出会い、ジョセフの心も少しずつ癒されていくように。
だが、彼女もまた酒に逃げ道を求め、その内部に大きな闇を抱える存在だった。

その闇がある日とんでもない事件に発展することに……

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どうしてそんなに理不尽なキレ方をするの?
どうしてそんなことでそこまで怒らなくちゃならないの?
あ~、止めようよ。自分の飼い犬をそこまで思いっきり蹴るのは。

人生の理不尽さに腹を立て、自分の不運はすべて周囲のせいと決めつけ、
人々はすべて自分に悪意を持っているものと思い込むジョセフ。
わかるような気はします。
でも、そこまで暴れる彼を観ていたら暗澹とした気持になってきます。

そして、生活を保証され、親切を押し売りするかのようにチャリティショップで
仕事をするハンナに、ジョセフ同様、八つ当たりしたくなりました。
でも、彼女の抱える闇にゾッとしました。
人って、表から見ただけでは何もわかりません。

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糖尿病で早世した妻をティラノザウルスと呼び、
おそらくは不幸な結婚生活を送ったジョセフ。
仕事も人生もうまくいかず、労働者階級の底辺で這いずり回る彼は、
酒を飲み、周囲に当たり散らすしかないのかもしれません。

およそ対照的なハンナもうわべを装わなくてはならないだけ、
薄気味悪いDV夫との日々には耐えがたいものがあったに違いありません。

人生って一筋縄ではいかないものです。
でも、もしかしたら、良い方向に展開するかもしれない――
そう思えるから生き続けていけるのでしょうけれど。

もの想う秋。思秋期
人生について深く考えてしまう映画です。





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思秋期
脚本・監督/バディ・コンシダイン、製作/ディアミッド・スクリムショウ、撮影監督/エリック・アレキサンダー・ウィルソン
出演
ピーター・ミュラン/ジョセフ、オリヴィア・コールマン/ハンナ、エディ・マーサン/ジェームズ、サミュエル・ポットモレイ/サミュエル、ネッド・デネヒー/トミー、ロビン・バトラー/ジャック
10月20日(土)新宿武蔵野館、梅田ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
2011年、カラー、98分、英語、イギリス、字幕翻訳/岸田恵子、提供/新日本映画社、配給・宣伝/エスパース・サロー、後援/ブリティッシュ・カウンシル
http://tyrannosaur-shisyuuki.com/

by Mtonosama | 2012-10-16 06:20 | 映画 | Comments(8)
思秋期 -1-
Tyrannosaur
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(C)CHANNEL FOUR TELEVISION/UK FILM COUNCIL/EM MEDIA/OPTIMUM RELEASING/WARP X/INFLAMMABLE FILMS 2010

思春期は遠い昔に置いてきてしまったので、思秋期という言葉に心魅かれるようになりました。
思秋期―― もの想う秋にふさわしい美しい言葉ではありませんか。
もしかしたら思春期よりは味わい深い人生の季節かもしれません。

というわけで出かけたのですが、
ウワーッ!
これはものすごい映画でした。
圧倒されてしまいました。

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それゆえ、
「観に行こうと思っているけれど、どうだった?」
と訊かれたとき、
「いやぁ、暗いわ」
と答えてしまったとの。

「思秋期」という美しい言葉に魅かれて観に行くと、手痛いボディーブローをくらいます。
なんてったって、原題が“ティラノザウルス”ですから。

主人公も、その歳(とのより100歳年下の50代というお年頃でしょうか)になって、
これほどまでに追い詰められ、不器用で、悲しく、貧しい人生ではつら過ぎるよ――
と、なんとも暗澹たる気持ちになってしまいました。
ま、己が人生と重ね合わせるから、そんな想いにもなるのでしょうが。

「思秋期」の脚本を書き、監督を務めたのは、
「ボーン・アルティメイタム」(‘07)「ブリッツ」(‘11)などに出演した俳優パディ・コンシダイン。


パディ・コンシダイン
■生年月日 : 1974/09/05
■出身地 : イギリス
■バートン大学で演技の勉強を始めるが、途中で専門を写真に変えブライトン大学を首席で卒業。役者として成功を収める以前はカメラマンをしていた。「24アワー・パーティ・ピープル」「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」「シンデレラマン」など、話題作や大作への出演が続き、印象的な存在感と演技力を見せつけた。多くの映画賞に役者としてノミネートの経験があり、2007年に監督と脚本を勤めた「Dog Altogether」では英国アカデミー賞やヴェニス映画祭など数多くの映画賞の短編作品部門を受賞している。
http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=728913

「Dog Altogether」で、映画監督デビューも果たしたコンシダイン監督の初の長編映画となったのが、
その拡大版ともいえる本作「思秋期」です。

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憧れの監督はケン・ローチ、と語るコンシダイン監督。
まだ40歳にもなっていない彼が、
50代半ばを越えたどうしようもない主人公の心情や行動や人生を
どうしてここまでリアルに描けるのか、と首をかしげていました。
いくら俳優としてさまざまな役柄を演じたとはいえ、
脚本も監督もつとめるとなるとなまじっかな理解や観察だけでは不充分なはずです。

が、しかし、
その理由がわかりました。
なんと、「Dog Altogether」と本作の共通の主人公であるジョゼフのモデルは
コンシダイン監督の実の父親だったのです。

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いや、やばい人物ですよ。この主人公は。

もしも、とのがこういう親を持っていたら、とても映画になどできないでしょうし、
人に話すこともできないかもしれません。
暗い気持になり、衝撃を受けながらも、ラストまで正視していられたのは、
予想外の展開と、主人公ジョゼフを演じるピーター・ミュランの眼の奥に宿る
哀しげで、優しげな光のせいだったような気がします。
また、もうひとりの主役ハンナを演じたオリヴィア・コールマンも
テレビのコメディシリーズ出身とは思えないキャラクターを見せてくれました。
新境地開拓といったところかもしれません。
あ、彼女、最近では「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(‘12)でサッチャーの娘キャロル役を演じています。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。
乞うご期待でございますよ。

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思秋期
脚本・監督/バディ・コンシダイン、製作/ディアミッド・スクリムショウ、撮影監督/エリック・アレキサンダー・ウィルソン
出演
ピーター・ミュラン/ジョセフ、オリヴィア・コールマン/ハンナ、エディ・マーサン/ジェームズ、サミュエル・ポットモレイ/サミュエル、ネッド・デネヒー/トミー、ロビン・バトラー/ジャック
10月20日(土)新宿武蔵野館、梅田ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
2011年、カラー、98分、英語、イギリス、字幕翻訳/岸田恵子、提供/新日本映画社、配給・宣伝/エスパース・サロー、後援/ブリティッシュ・カウンシル
http://tyrannosaur-shisyuuki.com/

by Mtonosama | 2012-10-13 06:52 | 映画 | Comments(6)
フタバから遠く離れて
 Nuclear Nation  -2-

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(C)2012 Documentary Japan, Big River Films

『フタバから遠く離れて』の試写を観終わった時、舩橋淳監督の挨拶がありました。
「ぼくたちはずっとこの町で定点観察をしていきます」
という言葉が印象的でした。
テレビも新聞もやらないことを映画はできるんだ、と嬉しくなりました。

「フタバから遠く離れて」-避難編- が本作だとしたら、
希望編、復興編、未来編も撮り次いでいってくれるのか、と、
映画というメディアの持つ力強さに感動しました。

本作は避難所の旧騎西高校に暮らす双葉町民たちの9ヶ月の日々を
彼らに寄り添って撮影したものです。
定点観測でもあり、時系列に沿った撮影ですから、
お弁当の配布の様子や
天皇皇后両陛下の訪問や、自衛隊軍楽隊の慰問演奏など、
避難生活のハレの部分もケの部分も記録されています。

カメラの眼が避難者の眼とひとつになっていました。


舩橋淳監督
映像作家。東京大学教養学部表象文化論分科卒業後、ニューヨークで映画制作を学ぶ。
長編映画「echoes」(‘01)は仏アノネー国際映画祭で審査員特別賞、観客賞を受賞。
第2作「BIG RIVER」(‘06 主演/オダギリジョー、製作/オフィス北野)はベルリン映画祭、釜山映画祭でプレミア上映される。
またニューヨークと東京で時事問題を扱ったドキュメンタリーの監督も続けており、
アルツハイマー病に関するドキュメンタリーで米テリー賞を受賞。本作の撮影過程を記録した著書「フタバから遠く離れて――避難所からみた原発と日本社会」を10月に出版予定。
‘01 「echoes」(‘01全国公開)
‘06 「BIG RIVER」(‘06全国公開)
‘09 「谷中暮色(Deep in the Valley)」(‘10全国公開)
‘12 「フタバから遠く離れて」
‘13 「桜並木の満開の下に(仮題)」(‘13公開予定)

監督は広島の被曝2世です。
彼は頻繁に避難所へ通い、ボランティア活動もしながら町民たちとの信頼関係を築いてきたといいます。

そうした過程を経て撮影された映画です。

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牛舎の中で死んでいる牛たちの姿に絶句し、
喫煙所でタバコを吸いながら本音を漏らす、おじちゃんやおばちゃんたちの話にうなずきました。
東京へ抗議デモに向った町民たちの声に、自民党本部前に整列し、
手を振って応えるカメラ目線の政治家たちの茶番に腹が立ちました。
「『フタバを返せ』って言ったって返っちゃこないんだけどね」
と自嘲的に話す町民に、どう答えればいいのかわかりませんでした。

9ヶ月の記録は、事故直後の町民の必死だった様子から
表面上は穏やかさが戻った日常までを、とらえています。
最初はよそものだったカメラが彼らと一体化していきます。
その流れの中で町民も町長も変わりました。
原発所在地の町長や市長の会議で声を荒げるどころか、何も語らなかった双葉町町長が
次第に声を発するようになっていくのははっきりと目に見える変化です。
一方、大臣たちは証拠づくりのためでもあるかのように会議に顔だけ出して、
後は用事があるので失礼します、と帰っていきます。

先の見えない避難生活を送りながら、
原発を推進していたことで自業自得と罵られ、自分で自分を責める町民たち。

長いスパンを覚悟に入れ、定点撮影を決意した映画ならではの視点を感じました。

少しでも早く希望を感じられる続編が撮影されることを熱望します。





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フタバから遠く離れて
監督/ 舩橋淳、プロデューサー/橋本佳子、撮影/舩橋淳、山崎裕、音楽/鈴木治行、エンディングテーマ「for futaba 」作曲・演奏/坂本龍一
出演
双葉町のみなさま、双葉郡のみなさま
10月13日(土)よりオーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー
2012年、日本、96分、製作・配給/ドキュメンタリージャパン、ビッグリバーフィルムズ
http://nuclearnation.jp/jp/

by Mtonosama | 2012-10-11 06:23 | 映画 | Comments(8)
フタバから遠く離れて 
Nuclear Nation -1-

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(C)2012 Documentary Japan, Big River Films

フタバ
福島県双葉町。福島第一原発の5号機と6号機がある町です。
昨年3月のあの事故の後、町全体が警戒区域となり、
1423人の町民が250km離れた埼玉県の旧騎西高校へ避難しました。
町全体で移住、という考えられないような事態です。

あれから1年7ヶ月が過ぎようとしています。
国会前では毎週金曜日になると反原発デモが行われています。
でも、メディアでは民主党や自民党の総裁選び一色。
忘れるには早すぎるのではないですか?

テレビや新聞は新しいことだけを追っかけるのが仕事だとしたら、
(それにしても毎週金曜日のデモのこと、もう少し知らせてくれてもいいと思うんですけどね)
テレビや新聞が忘れたように見えた頃、おもむろに、
あのことが今も終わるどころか、継続中であることを知らせるメディアがありました。
何だと思います?
そう、映画です。

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「フタバから遠く離れて」は、町ぐるみの移住という稀有の体験を
現在も続けている福島県双葉町の避難生活を描いたドキュメンタリーです。
あの日、
故郷と共に、
家も、
慣れ親しんだ暮らしも、
仕事も、
祭りも、
想い出を確かめるよすがも、
すべてを失った町民たちの日常を9ヶ月間にわたって記録した映画です。

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さて、冒頭で、双葉町のことを福島第一原発5号機、6号機がある町とご紹介しました。
5号機、6号機?
そうなんです。福島第一原発には6基の原発があるんですね。
1号機から4号機については比較的報道されることが多いのですが、
この5、6号機はあまり意識にのぼりませんでした。

ニコニコニュースにこんなレポートがありました。 http://news.nicovideo.jp/watch/nw104783

福島第一原発には6基の原発があるが、連日のように報道される1~4号機に比べると、
5、6号機の動静はほとんど伝えられない。
 地震発生時に5、6号機は定期検査中。しかも、午後3時35分に到達した高さ15mの津波によって、
1~4号機の全交流電源が喪失したのに対し、5、6号機は1台の非常用ディーゼル発電機が運転を継続、10日後には外部電源に切り替えられ、以降、原子炉内の温度が100度以下になる「冷温停止」が続いている。
 衛星写真で見ればよくわかるが、5、6号機は双葉町にあり、南にある大熊町の1~4号機とは少し離れている。この若干の距離感に「冷温停止」の安心感が、5、6号機の存在を忘れさせる。
by伊藤俊博氏

双葉町は原発の町であり、かつ、町全体が警戒区域となり全町避難を余儀なくされた町です。

以前より目に触れることが少なくなった原発事故。
だからといって、決して終わってはいません。
はたして終息宣言を出せる状態だったかどうかもわかりません。
まだまだ現在進行中なのだと思います。




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フタバから遠く離れて
監督/ 舩橋淳、プロデューサー/橋本佳子、撮影/舩橋淳、山崎裕、音楽/鈴木治行、エンディングテーマ「for futaba 」作曲・演奏/坂本龍一
出演
双葉町のみなさま、双葉郡のみなさま
10月13日(土)よりオーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー
2012年、日本、96分、製作・配給/ドキュメンタリージャパン、ビッグリバーフィルムズ
http://nuclearnation.jp/jp/

by Mtonosama | 2012-10-08 06:35 | 映画 | Comments(6)
最終目的地 -2-
The City of Your Final Destination

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©2008 ST.PANCRAS INC. ALL RIGHTS RESERVED

さて、前回、ウルグアイ、ウルグアイと騒ぎましたが、
本作の撮影地は実はアルゼンチンです。

未舗装の田舎道。
ずぶずぶと足を呑みこむ底なし沼。
鬱蒼とした密林を背景に、滅びゆくものの色合いを帯びつつ、寂しげに、侘しげに、
しかし、風格を誇示しつつ聳える邸宅。
南米の湖畔に打ち捨てられ、今や朽ち果てようとしているベニスから運んだというゴンドラ。

最高の道具立てではありませんか。
こうしたお膳立てさえ整っていれば、ウルグアイであれ、アルゼンチンであれ、関係ありません。

古色蒼然とした道具、そして、登場人物。
さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。


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ストーリー
コロラド大学の教員オマー・ラザギは、1冊の著書のみを遺し、自殺した作家ユルス・グントの伝記を書くことを計画。
研究奨励金の認可を得るためには作家の遺言執行人たちの公認を得なければなりません。
彼らに手紙をしたためるオマー。ほどなく返信がきました。
しかし、それは公認を却下するというものでした。
オマーの恋人ディアドラはウルグアイへ行って直接交渉せよとオマーを煽ります。

ウルグアイまで飛んできたオマー。
街から遠く離れたオチョ・リオスにある作家の屋敷には、
作家の未亡人キャロラインと作家の愛人アーデンとその娘ポーシャ、
作家の兄アダムとそのパートナーの日本人ピートが今も共同生活を営んでいます。
キャロライン、アーデン、アダムから伝記執筆の公認を得ようと交渉を開始するオマー。

ところがアダムはあっさりと公認します。
ところが、それには亡母が遺した宝飾品の数々をアメリカで売ってほしいという条件がついていました。

アーデンはオマーと過ごす内、彼に共鳴するものを感じ、公認を与える決意をします。

しかし、キャロラインは頑なな態度を変えません。
夫は決して伝記を望んではいなかったと主張し、公認を与えようとはしないのです。

やがて1冊しか著書がないと思われていた作家が実は2冊目の執筆にあたっていたことがわかります。

オマーの出現は遺言執行人たちの気持を揺るがし、
オマー自身も自分の生き方を問い直し始めるのでした……

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夫の愛人と奇妙な共同生活をする未亡人キャロラインの意固地な態度や気難しさが
次第に溶けてゆく様子を演じ切ったローラ・リニーには感服しました。
はかなげな愛人アーデンを演じたシャルロット・ゲンズブールの影が薄れるくらいの存在感でしたねぇ。
すごい女優さんです。
アンソニー・ホプキンスも良かったです。
あ、そうそう、真田広之が演じたのはその愛人役。

最終目的地――
密林を背景にそそり立つ屋敷が最終目的地であるかのように思わせ、そうではありません。
おそらくは湿気や密林の微生物のために朽ち果てようとしている邸宅。
滅びこそ最終目的地であるという隠喩を匂わせつつ、実は違っていた・・・・・
などと小難しく考える必要はありません。

ガルシア=マルケスやホルへ・ルイス・ボルヘスやマヌエル・プイグなど、
南米の土壌から生まれた作家たちの作品の中に漂う
どこか不思議で、幻想的な雰囲気を感じさせる映画でした。

そうした雰囲気を音楽がまた倍加してくれるんですよね。
これは絶対に映画館で体感すべき映画だ、と思います。





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最終目的地
監督/ジェームズ・アイヴォリー、脚本/ルース・プラワー・ジャブヴァーラ、原作/ピーター・キャメロン、撮影/ハビエル・アギーレサロベ、音楽/ホルへ・ドレクスレル
出演
アンソニー・ホプキンス/アダム・グント、ローラ・リニー/キャロライン・グント、シャルロット・ゲンズブール/アーデン・ラングドン、オマー・メトワリー/オマー・ラザギ、真田広之/ピート、アレクサンドラ・マリア・ララ/ディアドラ
10月6日(土)よりシネマート新宿他全国順次ロードショー
2008年、アメリカ映画、117分、字幕/田中武人、提供・配給/ツイン、宣伝・配給協力/太秦、協力/パラマウントジャパン、http://www.u-picc.com/saishu/

by Mtonosama | 2012-10-05 07:22 | 映画 | Comments(7)