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殿様の試写室

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マリーゴールド・ホテルで
会いましょう -2-
The Best Exotic Marigold Hotel

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(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

さて、エキゾチシズム溢れる神秘の国インドへ英国からやってきた男女7人。
主人公のイヴリンを筆頭に、皆なんらかの問題を抱えています。
日本風にいえば還暦を過ぎた方々ですが、人生順風満帆なんて人はひとりもいません。
英国も日本も高齢者というのはそんなものでしょう。いえ、高齢者には限りませんね。

原作はデボラ・モガーの”THESE FOOLISH THINGS”。
ベストセラー「チューリップ熱」で知られ、「プライドと偏見」(‘05)の脚本も担当した人気作家です。
そして、このインドを舞台にしたシルバーエイジの面々の織りなす人間模様や恋模様を
映画化したのがジョン・マッデン監督。
「Queen Victoria 至上の愛」(‘97)「恋に落ちたシェイクスピア」(‘98)の監督です。
監督は、今回、ジャイプールを始め、大勢の人々が行き交う街中でのロケを敢行。
さしものジュディ・デンチも
「インドは、それまで当然だと思ってきた全てを攻撃してくるわ」
と口走ったという大変な体験だったようですよ。

さあ、一体どんなお話でしょうか。


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ストーリー
40年間連れ添った夫が遺したものは多額の負債。
返済のため、住みなれた家を売却することにしたイヴリンは同居を勧める息子の誘いを断り、
インドの高級リゾートホテルでの1人暮らしを決めます。

"マリーゴールド・ホテルで過ごす穏やかで心地よい日々"
イヴリンの他6人の男女がこのインドのホテルのプランに申し込んでいました。

ダグラスとジーン
イギリスに家を買う筈だった夫婦、ダグラスとジーン。
ダグラスの退職金で事業を始めた娘が失敗し、予算の都合でインドで暮らすことに。

ミュリエル
股関節の手術を受けたいミュリエル。イギリスの病院だと半年待ちと言われ、
大嫌いなインドで手術を受けることに。

ノーマン
独身者ノーマンの悲願は異国の地インドでの最後のロマンス。

マッジ
結婚と離婚を繰り返し、孫もいるマッジ。
でも、彼女のインド滞在の目的は「お金持ちの夫」を探すこと。

グレアム
突然、判事を辞めたグレアムは数十年前インドに住んでいたことが。
その頃の友人に会いたいのですが、実のところ、迷っています。

そんな事情を抱える7人がやっとの思いで辿り着いたジャイプール、
マリーゴールド・ホテルは、最初に目にした写真とは大違い。
電話は通じないし、ドアのない部屋も。
屋根付きバルコニー?そんなもの一体どこに!?
でも、若い支配人ソニーは
「ホテルは現在改装中。写真は将来像を載せました」
と、悪びれるところはありません。

7人はジャイプールの街のエネルギーに圧倒されつつも、行動を開始。
まず、イヴリン。彼女は街に飛び込み、生まれて初めての就職を果たします。
元判事のグレアムはそんなイヴリンを信頼し、秘めた過去を打ち明けます。
ダグラスもまた文句ばかり言っている妻のジーンを残し、1人で街を探検。
インド嫌いだったミュリエルもホテルのメイドの純粋さに心を動かされ、
少しずつ変わってきました。
そうそう、マッジもノーマンもロマンスを求めて大忙しです。

一方、若き支配人ソニーは父親のホテルを復活させ、
世界中から客を呼ぶという大望を抱き、地元の投資家に援助を依頼していました。
ところが、母親にはそんなつもりは毛頭なく、恋人のいるソニーの意向を無視して、
名家の子女との結婚話を一方的に進めています。

7人がインドに来て45日が過ぎたころ、
それぞれに輝き始めたインドでの日々に突然終りがやってきました。
母親の説得に屈したソニーが恋人とも別れ、マリーゴールド・ホテルを閉鎖すると言うのです。

さあ、イヴリンたちの運命や、いかに……

個性の強い7人のイギリス人たちを凌ぐインド人たちの強烈な個性とエネルギー。
鼻もちならない欧米至上主義の英国人たちがジャイプールの喧騒と熱気の中で
次第にインドになじみ、変わっていく様子がなんとも楽しいです。

居場所も自信もなくし、重ねたものは年齢だけという高齢者たちが、
夢に燃える若いソニーのために忘れていた力を発揮するラストシーンは痛快。
だてに歳をとってきたんじゃないやい、という高齢者の底力を見せてもらいました。

人生っていくつになっても変えることができるのかもしれません。
ああ、楽しかった。





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マリーゴールド・ホテルで会いましょう
監督/ジョン・マッデン、脚本/オル・パーカー、原作/デボラ・モガー(”THESE FOOLISH THINGS”、製作/ブレアム・ブロードベント、ピート・チャーニン、製作総指揮/シェフ・スコール、リッキー・ストラウス、ジョナサン・キング、撮影/ベン・デイヴィス
出演
ジュディ・デンチ/イヴリン、ビル・ナイ/ダグラス、ぺネロープ・ウィルトン/ジーン、デヴ・パテル/ソニー、セリア・イムリー/マッジ、ロナルド・ピックアップ/ノーマン、トム・ウィルキンソン/グレアム、マギー・スミス/ミュリエル
2013年2月1日(金)TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
2011年、イギリス=アメリカ=アラブ首長国連邦、英語、ヒンディ語、124分、日本語字幕/杉山緑、配給/20世紀フォックス映画
http://www.foxmovies.jp/marigold/

by Mtonosama | 2013-01-31 07:10 | 映画 | Comments(16)
マリーゴールド・ホテルで
会いましょう
-1-
The Best Exotic Marigold Hotel

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(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.


老後の生活を、気候も良く、物価も安い海外で送りたいという年金生活者。
洋の東西を問わず、それは彼らの憧れなのでしょうか。
ま、現実的にはかなり問題が多いようではありますが、
夢を見るだけだったら許してもらえるかもしれません。

「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」は
イギリス人の男女7人が
“不思議の国インドの高級リゾートホテルで日々を過ごしませんか”
というキャッチフレーズや美しい写真に魅せられて
インドはジャイプールへとやってきます。
そこで繰り広げられる恋あり、涙あり、夫婦喧嘩ありのお話ですが・・・・・

出演は「Queen Victoria 至上の恋」(‘97)で第70回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、
「恋に落ちたシェイクスピア」(‘98)で第71回アカデミー賞助演女優賞を受賞した
世界一の“女王”女優ジュディ・デンチ。
女王さまを演じたらこの人ほど適役、そして、貫禄たっぷりの人はいないでしょう。


ジュディ・デンチ
1934年イングランド・ヨークシャー州生まれの英国女優。1957年にオールド・ヴィック・カンパニーの『ハムレット』のオフィーリア役で舞台デビュー。 1961年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加し、多くの舞台に出演。以後、ウエスト・エンドの舞台にも立ち、6つのローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞など数々の賞を受賞。女優だけでなく、舞台の演出も手がける。イギリスのテレビドラマにも多数出演している。
1985年の『ウェザビー』以降、劇場用映画にも多く出演。とくに『ゴールデンアイ』以降の『007』シリーズでジェームズ・ボンドの上司「M」(3代目で初の女性)を演じて、イギリス国外でも広く知られるようになった。
1988年にはその貢献が認められてイギリス王室から「Dame(デイム)」の称号を授与された。これまで6度オスカー(アカデミー賞)にノミネートされており、エリザベス1世を演じた『恋におちたシェイクスピア』(1998年公開)で助演女優賞を受賞した。
(Wikipediaより)


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うまい、とか、すごい、とか、存在感がある、とか、
もうそんなありきたりな言葉は超越した「Dame(デイム)」ジュディ・デンチ。
あ、ちなみにdameというのは辞書によれば《1等・2等勲爵士に叙せられた女性の敬称。
またknight,baronetの夫人に用いられる正式の敬称で男のSirに相当する。
Dame Janet (Baker)のように常に(姓ではなく)名前を伴う、のだそうです。

いや、しかし、彼女が出てくると他を圧するような存在感を感じてしまうのですが、
(すいません。ありきたりな言葉しか出てこなくて)
そんなジュディ・デンチが本作で演じるのは、女王さまでも、007の上司でもなく、
専業主婦イヴリン。
それも40年連れ添った夫に先立たれて遺されたものは多額の負債だけだったことを知らされた主婦です。
でも、演じるのがジュディ・デンチですからね。
ただ茫然として嘆いているだけじゃありません。

彼女と一緒にマリーゴールド・ホテルで暮らす他の6人も味のある名優揃いです。
なんてったって英国映画の良さはこれ。
地味なんですが、渋くって、クスッと笑わせてくれて、とにかく俳優たちが芸達者。
味があります。

あ、そうでした。マリーゴールド・ホテルの、口から先に生まれたような支配人を演じるのは、
あの「スラムドッグ$ミリオネア」の主人公を演じたデヴ・パテル。
インド系移民の両親を持つ生まれも国籍もイギリス。彼もまた若き英国名優です。

ところで、インド。
好きな人はとことん惚れてしまうけれど、嫌いな人はニ度と行きたくないという国といいますが・・・・・
本作では一体どんなインドを楽しめるのでしょうか。
続きは次回までお待ちください。乞うご期待でございます。



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マリーゴールド・ホテルで会いましょう
監督/ジョン・マッデン、脚本/オル・パーカー、原作/デボラ・モガー(”THESE FOOLISH THINGS”、製作/ブレアム・ブロードベント、ピート・チャーニン、製作総指揮/シェフ・スコール、リッキー・ストラウス、ジョナサン・キング、撮影/ベン・デイヴィス
出演
ジュディ・デンチ/イヴリン、ビル・ナイ/ダグラス、ぺネロープ・ウィルトン/ジーン、デヴ・パテル/ソニー、セリア・イムリー/マッジ、ロナルド・ピックアップ/ノーマン、トム・ウィルキンソン/グレアム、マギー・スミス/ミュリエル
2013年2月1日(金)TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
2011年、イギリス=アメリカ=アラブ首長国連邦、英語、ヒンディ語、124分、日本語字幕/杉山緑、配給/20世紀フォックス映画
http://www.foxmovies.jp/marigold/

by Mtonosama | 2013-01-28 06:34 | 映画 | Comments(8)
明日の空の向こうに -2-
JUTRO BEDJIE LEPIEJ

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(C)Kid Film 2010

ちょっと前なら、ソ連から衛星国ポーランドへと逃げ出していく映画など考えられなかったかもしれません。
今ではその逆にフランス人からロシア人になろうという時代ですしね。
(それにしてもドパルデューさん、立派な体格になられました)

あ、ソ連といっても旧ソ連、本作ではロシア共和国の小さな村からの脱出です。
150歳のとのとしては、時代は変わったんだなぁ、としみじみ思わされる映画でした。
といっても、暗く厳しい映画ではありません。

確かに、親のない子ども達が、住む家もなく、行政の保護も受けず、
鉄道の駅舎に寝泊まりし、物乞いしたり、ちょっとばかりのものをくすねたりしながら生活するなど、
ヌクヌクと暮らす私たちから見れば、とても厳しい状況に思えます。

でも、何から何までガチガチに管理され、
学校やら塾やら習い事で一日がつぶされ、原っぱで駆けまわることも知らない
日本の子どもたちや、昔は子どもだった人たちから見れば、
自分でものごとを決め、冒険ともいえる国境越えを決行する
ペチャ、ヴァーシャ、リャパの生き方は希望に満ちているように見えることでしょう。
そして、とても羨ましいことかもしれません。

ちっちゃなペチャはお兄ちゃんたちとの冒険が楽しかっただけかもしれませんけどね。
でも、ペチャだってただのおねだり上手なだけじゃないんですよ。

さあ、一体どんなお話なんでしょうか。


ストーリー
時代は現代。場所はポーランドと国境を接する旧ソ連の貧しい田舎町。
そんな町の古臭い駅舎を走り回り、楽しそうに遊んでいる少年たち。
6歳のペチャと10歳のヴァーシャの兄弟。
身寄りも家もない2人は駅員たちに見つからないように駅舎の中で寝泊まりしています。

ある日、同じ境遇の11歳のリャパと兄のヴァーシャは以前から計画していた冒険を
実行に移すことにしました。
その計画とは、
貨物列車に乗り込み、国境近くの町に移動。
歩いて国境を越え、ポーランドに行く、というもの。
彼らは外国に行けば良い暮らしができると信じていました。
当初、ヴァーシャは足手まといになる弟をおいていくつもりでした。
でも、兄たちの様子に何かを察したペチャはしっかり2人を追いかけます。
ヴァーシャもまた泣きながら後を追っかけてくる小さな弟を放ってはおけず、
連れていくことに――

国境近くの町に着いた3人。
まずは、おねだり上手で可愛いペチャを朝市のおばさんに言い寄らせ、食べ物を入手。
その後、町外れで炭焼きをしているリャパの知りあいのおじいさんを訪ね、泊めてもらいます。
おじいさんはリャパたちが越境することも知っていました。
その上で、ペチャに「お前には危険だ。俺とここで一緒に暮らそう」と言ってくれるのですが、
ペチャは「3人で行くんだ」と、断固として言い張るのでした。

とうとう国境まで辿り着きました。
高圧電流が流れている金網の下を空き缶で掘り、身体が通れるだけの穴を開けます。
警備兵の隙をついて、金網をくぐり抜ける練習を重ねる3人。
そして、深夜、ついに越境に成功。

朝日の中、ポーランドの草原を駆け、川の水で道中の汚れを落とします。
高く、青い空を見上げ、「お空はどこも同じだね」とつぶやくペチャ。
ヴァーシャは「これからは僕たちの空さ」――

ところが、ポーランドは3人が想い描いていた場所とは少し違っていました。
言葉は通じないし、村の子どもたちも見知らぬ3人に意地悪だったり。
3人は警察に出向き、保護を申し出ることにしました。
しかし、法律では越境者は収容所に送られ、本国に送還されることになっているのです。
警察の担当者は、幼い3人が必死の思いで越境したことに心を動かされ、
なんとか送還せずにすませる方法はないものかと思案します。
ペチャも精いっぱいのおねだりをするのですが……

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3人は結局護送車に乗せられ、苦労して来た道を逆戻り。
空は青く、高く、優しい風も吹いています。
護送車が田舎道をゴトゴト走り、
“これぞロシア”という感じの懐かしい曲がバックに流れます。
今は亡きロシアの人気歌手アルカディ・セヴェルヌイの歌声です。
今回は残念な結果に終わったけれど、この次は明るい明日を迎えるに違いない――
そんなエンディングでした。

政治的な迫害から逃げるためとか、より豊かな生活を求めて、とかいうのではなく、
3人が国境の向こうに夢見たものは希望だったのですね。

ちょうど「大脱走」でスティーブ・マックィーンがスポーツを楽しむみたいに脱走したように、
「スタンド・バイ・ミー」で少年たちが死体を探す冒険旅行に出たように。
みんな目的を達成することはできなかったけれど、希望を持っていました。

例え、今日は苦い結果に終わったとしても、明日に希望をつなぐことは可能なんですよね。
この3人のように若くなくたって。





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☆2013年1月25日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

明日の空の向こうに
監督・脚本/ドロタ・ケンジェジャフスカ、撮影監督/アルトゥル・ラインハルト、編集/ドロタ・ケンジェジャフスカ、アルトゥル・ラインハルト、美術/アルトゥル・ラインハルト、音楽/ミハル・パイディヤク、ホンザ・マルティヌク、歌/「鶴は翔んでゆく」(1974・78年録音)アルカディ・セヴェルヌイ、製作/キッド・フィルム、アルトゥル・ラインハルト、共同出資/ポーランド映画芸術協会、アグニシェスカ・オドロヴィッチ、共同製作/丹羽高史、ズビグニェフ・クラ、チャレフ・リソフスキ
出演
オレグ・ルィバ/ペチャ、エウゲヌイ・ルィバ/ヴァーシャ、アフメド・サルダロフ/リャパ、スタニスワフ・ソイカ/警察官、ズィグムンド・ゴロドヴィエンコ/老人、アレクサンドラ・ビッレヴィチ/花嫁、キンガ・ヴァレンキェヴィチ/かわいらしい少女、スタニスワフ・ザヴァツキ、アントニ・ワンチュコフスキ/国境警備隊、アンゲリカ・コジェ/パンを持った少女
2013年1月26日(土)より新宿シネマカリテ他全国順次ロードショー
2010年、ポーランド・日本合作、118分、後援/ポーランド大使館、配給/パイオニア映画シネマディスク、配給協力/シナジー、http://www.pioniwa.com/ashitanosora/ 

by Mtonosama | 2013-01-25 06:51 | 映画 | Comments(4)
明日の空の向こうに -1-
JUTRO BEDJIE LEPIEJ

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(C)Kid Film 2010

3人の子どもが主人公の映画です。なかでも一番小さなペチャくんの可愛いことといったら。
最近、子どもが気になるとの。
150歳になり子ども還りしてしまったのか?と、ちょっと不安ではあります。

古くは「禁じられた遊び」(‘52)、「鉄道員」(‘56)、
昨年末、当試写室でも上映した「駆ける少年」、
子どもの登場する映画には記憶に残る名画が多いのですが、
本作も子ども映画の傑作に加えたいと思います。

最近、日本でも子役が人気です。
彼らは彼らで可愛いし、演技も上手ですけれど、
達者な子役さん程、妙にこまっしゃくれていて、実はちょっと苦手。
ヘンにお芝居しない方がいいのに、と思うのですが。

その点、ペチャはじめヴァーシャ、リャパを演じた3人は、
いわゆる子役という玄人俳優ではありません。
実の兄弟であるウクライナ出身の10歳のエウゲヌイ・ルィバと6歳のオレグ・ルィバ、
チェチェン出身の11歳、アフメド・サルダロフはオーディションの末に選ばれたまったくの素人。
でも、だとしたら、彼らこそ天性の俳優です。

おねだり上手なレディキラーのペチャ。
小さくて足手まといな弟ペチャが、邪魔くさくって仕方なくて
かまったりいじめたりしながらお兄ちゃんとしてキメるときはバシッとキメるヴァーシャ。
そして、リーダー格のリャパ。
演技初体験の彼らは、原っぱのバッタや小川の魚、頭上を吹き抜ける風が自然である以上に自然です。
大地の子どもたちでした。

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本作「明日の空の向こうに」はドロタ・ケンジェジャフスカ監督の
「木漏れ日の家で」(‘07)以来4年ぶりとなる新作。
「カラス達(Wrony)」(‘94)、「僕がいない場所」(‘05)等でも描いた子どもたちの世界を
母親あるいは近所のおばさんのように優しくさりげない視線でみつめた作品です。


ドロタ・ケンジェジャフスカ監督
1957年、ポーランドのウッチ生まれ。母親が映画監督のヤドウィガ・ケンジェジャフスカ。76年にウッチ大学で文学を学び、78年からはモスクワで映画演出法を学んだ。その後、ウッチの国立映画大学で映画製作をより専門的に学び、81年に卒業。82年に短編劇映画「卵Jajko」を発表し、ミュンヘンでのヨーロッパ学生映画賞で1位。数多くの映画賞を受賞して注目される。91年に発表した初長編映画「ディアブリィ・悪魔(Diably, diably)はダディニャ・ポーランド映画祭で最優秀監督賞・審査員特別賞をはじめ、数々の映画祭で受賞。94年「カラス達(Wrony)」では国際的に高い評価を受け、同作で撮影を担当したアルトゥル・ラインハルトと結婚。以後、98年「何もない(Nic)」、05年「僕がいない場所(Jestem)」、そして2011年に日本で公開されミニシアター系最大のヒット作品となった「木漏れ日の家で(Pora Umirac)」(‘07)と、彼女が監督と脚本、アルトゥル・ラインハルトが製作と撮影を担当している。

ポーランドはどちらかといえば地味な印象、それに、歴史的にはいつも虐げられてきた国。
でも、伝説的な映画監督を大勢輩出している国であります。
アンジェイ・ワイダしかり、
ロマン・ポランスキーしかり、
クシシュトフ・キェシロフスキーしかり。
そのアンジェイ・ワイダに指導を受けたアグニェシュカ・ホランド監督(「ソハの地下水道」)。
http://mtonosama.exblog.jp/17961754/ http://mtonosama.exblog.jp/17971415/
そして、本作のドロタ・ケンジェジャフスカ監督。
いずれもポーランド映画が世界に誇る優れた女性監督です。

幾多の名作を世に送り出してきたポーランド映画界。
地味などと言ったらしかられてしまいます。

しかし、どんな名画も先立つものがなければ始まらないというのがこの世の非情なる現実。
当試写室のラストにポーランド・日本合作とあることにお気づきでしょうか。
実は、資金不足で難航していた本作の企画に出資者として参画、製作を実現したのが、
今回、配給会社として名を連ねているパイオニア映画シネマディスクの丹羽高史さん。
「カラス達(Wrony)」(近日日本公開予定)でケンジェジャフスカ監督の才能に着目、
「僕がいない場所」「木漏れ日の家で」などを日本に紹介してきた人物です。

親のいない小さな子ども達が自分たちの知恵と勇気と愛嬌と、
持てる力のすべてを出して国境を超えるロードムービー。
こんな名画の誕生に日本が関わっているとは、なんとも嬉しいことです。

さて、どんなお話かは次回のお楽しみということで。乞うご期待でございます。



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☆2013年1月22日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

明日の空の向こうに
監督・脚本/ドロタ・ケンジェジャフスカ、撮影監督/アルトゥル・ラインハルト、編集/ドロタ・ケンジェジャフスカ、アルトゥル・ラインハルト、美術/アルトゥル・ラインハルト、音楽/ミハル・パイディヤク、ホンザ・マルティヌク、歌/「鶴は翔んでゆく」(1974・78年録音)アルカディ・セヴェルヌイ、製作/キッド・フィルム、アルトゥル・ラインハルト、共同出資/ポーランド映画芸術協会、アグニシェスカ・オドロヴィッチ、共同製作/丹羽高史、ズビグニェフ・クラ、チャレフ・リソフスキ
出演
オレグ・ルィバ/ペチャ、エウゲヌイ・ルィバ/ヴァーシャ、アフメド・サルダロフ/リャパ、スタニスワフ・ソイカ/警察官、ズィグムンド・ゴロドヴィエンコ/老人、アレクサンドラ・ビッレヴィチ/花嫁、キンガ・ヴァレンキェヴィチ/かわいらしい少女、スタニスワフ・ザヴァツキ、アントニ・ワンチュコフスキ/国境警備隊、アンゲリカ・コジェ/パンを持った少女
2013年1月26日(土)より新宿シネマカリテ他全国順次ロードショー
2010年、ポーランド・日本合作、118分、後援/ポーランド大使館、配給/パイオニア映画シネマディスク、配給協力/シナジー、http://www.pioniwa.com/ashitanosora/

by Mtonosama | 2013-01-22 06:09 | 映画 | Comments(8)
東京家族 -2-

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(C)2013「東京家族」製作委員会

「東京家族」は2011年4月1日のクランクインを目指して準備されていたそうです。
そこを襲った3月11日の東日本大震災、そして、福島原発事故。

製作は延期され、約1年を経て、新たに書き直された脚本で撮影が開始されました。
映画は震災後の2012年5月、東京が舞台です。

「東京物語」「東京家族」
どちらも大変な時期を経て製作された作品という共通点があります。

「東京物語」で笠智衆が演じた父・周吉を演じるのは「東京家族」では橋爪功、
東山千栄子が演じたおっとりとした母親は吉行和子。
そして、原節子の役は蒼井優が演じます。

さあ、どんなお話なのでしょうか。


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ストーリー
上京&再会
2012年5月、
瀬戸内海に浮かぶ小島に暮らす平山周吉と妻のとみこは子どもたちに会うために上京。
品川駅に迎えに来るはずの次男の昌治は間違って東京駅へ。
次男と会えないまま、夫婦は郊外で開業医をする長男・幸一の家へタクシーで向かう。
不注意な弟に呆れる長女の滋子。歓迎の支度に大忙しの長男の妻・文子。
周吉・とみこが到着し、大きくなった孫たちと対面。
やがて昌治も現れ、久しぶりに家族全員が楽しげに食卓を囲む。

日曜日、両親と次男を連れて横浜見物へ向かうはずだった幸一だが、
急患のため往診へ行くことになってしまった。
とみこはすねる孫を連れて近くの公園で遊ぶ。
だが、9歳にして既に将来を諦めたような孫の言葉にそっとため息をつく。

長女・滋子の家
幸一の家を後に、美容院を経営する滋子の家に行く周吉ととみこ。
ところが、滋子は忙しくて、両親をどこにも案内することができない。
夫の庫造は周吉を駅前の日帰り温泉へと連れ出す。

次男・昌治
滋子に頼まれ、東京案内をする昌治。柴又帝釈天の鰻屋で昼食。
ビールを注ごうとする昌治に断る周吉。
大酒呑みだった周吉は幸一に諭され、断酒しているからだ。
舞台美術の仕事をする昌治に将来の見通しはあるのか、
と問いただす周吉をつっぱねる昌治。昔から自分には厳しい周吉が苦手だった。
その頃、滋子は美容院の仕事が忙しく、両親の相手ができないから、
兄妹でお金を出し合って横浜のホテルに泊めてあげようと幸一に提案していた。

横浜のホテル
横浜のホテルの広い部屋で所在なく窓の景色を眺める周吉ととみこ。
慣れないホテルでの寝苦しい一夜を過ごした夫婦は
2泊の予定を切り上げて滋子の家に帰ってきてしまう。
そんな両親に、今夜は都合が悪いからいてもらっては困ると突き放す滋子。
周吉は同郷の友人宅へ、とみこは昌治のアパートへ行くことになる。

昌治のアパート
久しぶりの母の手料理に舌鼓を打つ昌治。嬉しそうに見守るとみこ。
そのとき、母に紹介するために呼んだ恋人の紀子がやってくる。
とみこは一目見て紀子に好感を持つ。
昌治との出会いはボランティアで行った福島の被災地でのことだという。
とみこは翌朝出勤前に朝食を届けてくれた紀子にもしものときのためにと現金を預ける。
「昌治は使ってしまうからね」と呟きながら。
一方、周吉。
あてにしていた友人から宿泊を断られた上、断っていた酒を呑んだ挙句、泥酔。
幸一の家でようやく落ち着いたところへ、とみこが上機嫌で帰宅。
だが、その理由を話す前に突然昏倒してしまった……

久々の感激の出会いの後は、親の思いと子どもたちとの思いが食い違い、
次第に不協和音が生じてくる様子。誰にでも経験がありますよね。

何も難しい部分のない素直な映画です。
小津調を彷彿させる画面構成、ローアングルに関しては
「おっ、やってるな」と、思わず声に出しそうになってしまいました。

60年前の俳優たちよりは台詞のテンポが早くなっているような気がするのですが、
当時よりも、時代が前のめりに進んでいるということなのでしょうね。

吉行和子と東山千栄子、外見的にはあまり共通項がないおふたりですが、
おっとりとしたおかあさんは見ていて心が安らぎます。
亡くなった母を思い出しました。
吉行和子も東山千栄子も亡母もまるで似ていませんが、
「母」という存在そのものが安らぎを与えてくれるものなのでしょう。

大震災後の東京物語、いえ、東京家族。
家族の抱える確執、愛情はうっとおしいと思われることもあるけれど、
お互いを結ぶ一本の糸になっているのは確かです。





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☆2013年1月19日に更新しました。「東京家族」は今日から公開です。いつも応援ありがとうございます☆

東京家族
監督/山田洋次、脚本/山田洋次・平松恵美子、撮影/近森眞史、音楽/久石譲
出演
橋爪功/平山周吉、吉行和子/平山とみこ、西村雅彦/平山幸一、夏川結衣/平山文子、中嶋朋子/金井滋子、林家正蔵/金井庫造、妻夫木聡/平山昌治、蒼井優/間宮紀子、小林稔侍/沼田三平
2013年1月19日(土)ロードショー
2012年、日本、2時間26分、製作・配給/松竹株式会社
http://www.tokyo-kazoku.jp/

by Mtonosama | 2013-01-19 06:25 | 映画 | Comments(8)
東京家族 -1-

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(C)2013「東京家族」製作委員会

世界中の映画人から敬愛される小津安二郎監督。
当試写室で上映してきた海外の映画監督も一様にこの巨匠にオマージュを捧げています。
ローアングルからじっくりと撮影し、対象に寄り添う「小津調」とも言われる作風。
とても日本的なのに世界中の監督に敬愛される巨匠です。

そんな巨匠に山田洋次監督もまた大いなる敬意を表し、
自身の監督生活50周年を記念する作品として小津作品の「東京物語」をモチーフに
製作したのが本作「東京家族」です。

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ちなみに「東京物語」ですが、
昨年、世界の映画監督が選ぶ優れた映画の第1位に選ばれました。
英国映画協会発行の「サイト・アンド・サウンド」誌が2012年8月2日に発表した
<世界の映画監督358人が投票で決める最も優れた映画〉に「東京物語」が選出されたのです。
同誌は10年ごとに映画50選を発表しています。

第1位 「東京物語」 小津安二郎監督
第2位 「2001年宇宙の旅」 スタンリー・キューブリック監督
第3位 「市民ケーン」 オーソン・ウェルズ監督
第4位 「8 1/2」 フェデリコ・フェリーニ監督
第5位 「タクシードライバー」 マーティン・スコセッシ監督

並み居る名匠巨匠を押しのけて堂々の1位です。すごいです。

東京物語は1953年に製作されました。
2013年の今年でめでたく還暦を迎えたことになりますね。
1953年11月3日に松竹配給で公開。「キネマ旬報」ベスト10で第2位。
58年にはロンドン国際映画祭でサザーランド賞を受賞し、
世界の小津ブームのきっかけになりました。


東京物語
1953年の夏、尾道に暮らす周吉(笠智衆)と妻とみ(東山千栄子)が
東京の子どもたちに会うため上京してきた。
しかし、長男の幸一(山村聡)も長女の志げ(杉村春子)も毎日の生活が忙しく、
なかなか両親の相手ができない。
寂しい思いをする2人を慰めたのは戦死した二男の妻・紀子(原節子)だった…




笠智衆のあの語り口や土手に立つ姿などが150歳のとのにはとても懐かしい映像です。

さて、山田版「東京物語」こと「東京家族」。
話の大筋も人物もほぼ同じ設定ですが、東京物語から60年経過したこと、
そして、2年前に経験した東日本大震災、引き続く福島原発メルトダウンを経た後に
製作されたということ。
このことに意味があるようです。

1953年に製作された「東京物語」は第2次世界大戦終結から8年経って製作されました。
いすれも大変な経験を経た後に生まれた作品です。
親子の問題、家族の問題、つながりの問題が、
あの時も、そして、今回も、あらためて浮上してくるんですねぇ。

「東京物語」が製作後60年経っても、今日的で世界的な価値を持つ理由、
多くの世界の監督達が認める理由、
そして、山田洋次監督が「東京家族」を撮った理由・・・・・
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それは、別れや出会いを含みつつ、
いがみあい、それでも、求めあう家族というモチーフこそ
世界共通であり、今、この時期最も必要なものだからかもしれませんね。

おっと、ここで締めてちゃいけません。
俳優たち、60年後の日本、どう変わり、どこが同じか、
そのあたりは次回までのお楽しみということで。
乞うご期待でございます。


今日お亡くなりになった大島渚監督のご冥福をお祈り申し上げます。監督、お疲れ様でした。



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東京家族
監督/山田洋次、脚本/山田洋次・平松恵美子、撮影/近森眞史、音楽/久石譲
出演
橋爪功/平山周吉、吉行和子/平山とみこ、西村雅彦/平山幸一、夏川結衣/平山文子、中嶋朋子/金井滋子、林家正蔵/金井庫造、妻夫木聡/平山昌治、蒼井優/間宮紀子、小林稔侍/沼田三平
2013年1月19日(土)ロードショー
2012年、日本、2時間26分、製作・配給/松竹株式会社
http://www.tokyo-kazoku.jp/

by Mtonosama | 2013-01-16 08:36 | 映画 | Comments(6)
東ベルリンから来た女 -2-
Barbara

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(C)ChristianSchulz/SchrammFilm(C)HansFromm/SchrammFilm

西ドイツへ移住しようという人を徹底的に監視し、
あるいは、西ドイツへスパイを送るなどしていたシュタージ。
盛時にはCIAやゲシュタポ、ソ連のKGBを凌ぐ人数を擁する組織だったそうです。

本作はシュタージが何をしたかを逐一数え上げ、並べ立てる映画ではありません。

しかし、バルバラの用心深い生活ぶり、
定期的に彼女を調べにくるシュタージが行うしつこく屈辱的な検査、
そのようなディテールを積み重ねて、
シュタージの存在がどのようなものだったかを浮かび上がらせます。
そこがまた怖いんですけどね。

さあ、もったいぶってないでストーリーにいきましょうか。


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ストーリー
バルバラ
1980年夏。東ドイツ・バルト海沿岸の町の病院に1人の女医が赴任してきた。
名前はバルバラ。
東ベルリンの大病院に勤務していた彼女は西ドイツへの移住申請を却下され、
この町に左遷されたのだった。
そんな彼女を2人の男が病院の窓から見ていた。1人は同僚医師アンドレ。
もう1人はシュタージの諜報員シュッツ。
“国家への裏切り者”バルバラの日常は常に監視されている。
同僚に対して頑な態度を崩さないバルバラ。
孤立しないように、と忠告してくれるアンドレだったが、
彼女は自分の住居や左遷された理由までもアンドレが知っていることに不信感を募らせる。

ステラ
ある日、ステラという少女が警察官に伴われ、病院に連行されてくる。
矯正収容所から逃亡中、原因不明の病気を発症し、入院することになったのだ。
髄膜炎と診断を下したバルバラは献身的にステラの面倒をみる。

バルバラ
その一方でバルバラは東ドイツからの逃亡計画を進めていた。
そんな彼女の住まいに突然シュタージがやってくる。
家宅捜索され、さらに女性職員によって屈辱的な身体検査まで強要される。
翌日、森の奥で西ベルリン在住の恋人ヨルクと密会するバルバラ。
東ドイツ脱出の日まで残された時間は僅かしかない。

ステラ
回復し始めた少女ステラは、今や心を許すバルバラに収容所で妊娠させられたことを告白。
ニ度と収容所には戻りたくない、この国から逃げ出したい、と懇願する。

アンドレ
アンドレもまたバルバラにある告白をする。
小児科医として致命的なミスを犯したこと、
そのミスをもみ消す代わりに地方病院で働き、シュタージへの密告を強要されたこと――
だが、彼は今の病院での仕事に誇りを感じてもいるのだった。

ステラ
人民警察によって強制退院させられるステラ。
泣き叫んで抵抗する彼女をバルバラは固く抱きしめて見送ることしかできない。

アンドレ
意識不明の少年が病院に運ばれてくる。
自殺未遂と聞き、通報を急ぐ同僚に「意識を回復させることが先だ」と告げるアンドレ。
その少年の脳には大きな血栓が。だが、開頭手術をすることには大き過ぎるリスクが伴う。

バルバラ
“外国人専用”ホテルの窓から恋人の待つ部屋に忍び込むバルバラ。
そして土曜の深夜、デンマーク行きの小舟で脱出する計画を告げられる。
その脳裏に一瞬よぎる医師としての責任。
さらに恋人の言葉が彼女の気持に追い打ちをかける。「西に行ったら、君は働く必要がない」。

バルバラ アンドレ ステラ
バルバラの診断を受け、意識不明の少年の開頭手術が決まる。
それは彼女の脱出の日、土曜日だった。
アンドレに手術に立ち会わないことを告げ、
脱出準備を整え、旅立とうとするまさにその時、誰かがドアをノックした。
ステラだった。再び収容所から脱走してきた彼女は叫ぶ。
「バルバラ、一緒にいて」……


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同僚医師への疑惑、そして、信頼
逃亡資金を隠すため、町外れを自転車で走るバルバラ
バルト海から吹きつける風の音
壁に手をついて身体検査を受けさせられるバルバラ
ゴム手袋をつける女性検査師の手
西ドイツ在住の恋人との森での逢瀬
とてもサスペンスフルで、スリリングな展開、そこに挿みこまれる細かいディテール、
その果てに、監視体制の中で、人が見せる雄々しさや勇気が胸をうつ映画でした。
人としての使命を貫き通す――
そんな時代がかった大仰な言葉がさりげない余韻となって漂います。

壁崩壊時、シュタージ関係者は大慌てで証拠隠滅を計りました。
文書資料などをシュレッダーにかけ、あるいは手で引き裂いたりした証拠物件は約1万5500袋。
写真やネガは約144万枚。映像は約2700巻。盗聴テープなどの音声資料は約3万1千本も残されています。http://goodboone.com/izime/politics/post-666.html

シュタージ文書管理庁が保管する膨大な記録がすべて明らかになるには
まだまだ時間がかかるのでしょうね。





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東ベルリンから来た女
監督・脚本/クリスティアン・ペッツォルト、製作/フロリアン・ケルナー・フォン・グストルフ、ミヒャエル・ヴェーバー、撮影/ハンス・フロム
出演
ニーナ・ホス/バルバラ、ロナルト・ツェアフェルト/アンドレ、ライナー・ボック/クラウス・シュッツ、ヤスナ・フリッツィ・バウアー/ステラ、マルク・バシュケ/ヨルク、クリスティーナ・ヘッケ/看護手シュルツェ、ヤニク・シューマン/マリオ、アリツィア・フォン・リットベルク
2013年1月17日(土)Bunkamuraル・シネマ他にて全国順次ロードショー
2012年、ドイツ映画、ドイツ語、105分、日本語字幕/吉川美奈子、協力/東京ドイツ文化センター、配給/アルバトロス・フィルム
http://www.barbara.jp/

by Mtonosama | 2013-01-13 07:19 | 映画 | Comments(10)
東ベルリンから来た女 -1-
Barbara

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(C)ChristianSchulz/SchrammFilm(C)HansFromm/SchrammFilm

お隣の国ではいまだ南と北に分断されたままですが、
今から24年前にはドイツも東と西に分かれていました。
とのは150歳ですから、1989年のあの日、ベルリンの壁を人々が越える様子を
TVのニュースで見ています。
でも、あの年に生まれた赤ちゃんにとって壁の崩壊は教科書の中のできごとなのでしょうね。
その赤ちゃんたちも今年は年男、年女。月日の経つのは早いものでございます。

本作「東ベルリンから来た女」は1980年の東独の小さな町が舞台です。
東ベルリンの大病院に勤務していたバルバラという名の美しい女医が、
バルト海沿岸の小さな病院に勤めることになりました。
西独移住の申請を却下され、この小さな町にとばされてしまったのです――
というのがこの映画のオープニング。

バルバラはバスから降りるとベンチに座り、
病院が始まる時間までタバコを吸って過ごします。
その組んだ脚が長くて、とてもきれいです。

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ベルリンの壁が崩壊する9年前。
東ドイツでは、シュタージという機関によって人々は監視されていました。
シュタージStasi。
東ドイツの秘密警察・諜報機関である国家保安庁Ministerium für Staatssicherheitの通称です。
Staatsicherheit。ほらね、下線部分をつなげるとStasiになりますよね。
職場や隣近所はもちろん恋人や夫婦ですら密告しあう陰惨な監視体制でした。

シュタージといえば、第79回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「善き人のためのソナタ」(‘06)があります。
国家保安庁で働く諜報員を主人公にしたフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の感動作でした。
東ドイツがなくなった後も旧東独人に皮膚感覚として残る監視体制の残渣に
風穴を開けたともいえる映画だったかもしれません。

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「善き人のためのソナタ」から6年目につくられた本作は、
その風穴を更に拡げ、シュタージによって委縮させられていた主人公の心に光を当て、
いかなる体制下にあっても揺るがない人としてのあり方、愛、誇りを浮き上がらせました。

シュタージの捉え方が客観的になり、じっくりと観察できるようになったのでしょうか。
もうあれから20年以上経ちましたからね。
シュタ―ジ映画は第2ステージに上がったのかもしれません。

監督はクリスティアン・ペッツォルトです。

クリスティアン・ペッツォルト
1960年生まれ。壁崩壊時には29歳で、両親は東独からの逃亡者です。デュッセルドルフに近いヒルデンに生まれ、ベルリン自由大学でドイツ語と演劇を学びました。その後、ドイツ映画テレビアカデミーで監督の勉強をしながら、ハルン・ファロッキやハルトムート・ビトムスキーの助監督も務めました。

壁崩壊の前に東ドイツで留学生活を送った人が
「お店がなんにもなくて寂しかった」と言っていたのを覚えています。
ものが溢れ返った東京から行けば、なおさらその寂しさは募ったことでしょう。

お店も映画館もない寂しいバルト海沿岸の小さな田舎町。
実は、そこで展開されるできごとは
ハラハラドキドキの緊張からジワリとした感動へと変わるのですが、
さて、いったいどんなお話なのでしょうか。
続きは次回に。乞うご期待でございます。



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東ベルリンから来た女
監督・脚本/クリスティアン・ペッツォルト、製作/フロリアン・ケルナー・フォン・グストルフ、ミヒャエル・ヴェーバー、撮影/ハンス・フロム
出演
ニーナ・ホス/バルバラ、ロナルト・ツェアフェルト/アンドレ、ライナー・ボック/クラウス・シュッツ、ヤスナ・フリッツィ・バウアー/ステラ、マルク・バシュケ/ヨルク、クリスティーナ・ヘッケ/看護手シュルツェ、ヤニク・シューマン/マリオ、アリツィア・フォン・リットベルク
2013年1月17日(土)Bunkamuraル・シネマ他にて全国順次ロードショー
2012年、ドイツ映画、ドイツ語、105分、日本語字幕/吉川美奈子、協力/東京ドイツ文化センター、配給/アルバトロス・フィルム
http://www.barbara.jp/

by Mtonosama | 2013-01-10 06:38 | 映画 | Comments(8)
アルバート氏の人生 -2-
Arbert Nobbs

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(C)Morrison Films

アルバート氏がなぜ男性として働かなくてはならなかったか。
その背景にはアイルランドが抱えていた大変なできごとがありました。
ジャガイモ飢饉です。


ジャガイモ飢饉
1801年グレートブリテン及びアイルランド連合王国の成立以降、アイルランド島はロンドンの連合王国政府、連合王国議会による直接統治下に置かれていたが、国民の大半は農業に依存。さらにアイルランドでは農地は長子相続ではなく兄弟全員が分割相続できたため、農地の細分化が進んだ。
当時、小作農家は主に麦を栽培していたが、地代を納めなくてもすむように自宅の小さな庭地でジャガイモの栽培を始めた。それによってジャガイモが貧農の唯一の食料となり、飢饉直前には人口の3割がジャガイモに依存する状態に。しかし、1845年から49年までヨーロッパ全域でジャガイモの病気が発生。壊滅的な被害を受けた。
アイルランド以外のヨーロッパ諸国では貴族や地主が救済活動を行ったが、アイルランドの貴族や地主のほとんどはアイルランドには在住しておらず、自分たちの地代収入減少を心配し、アイルランドの食糧輸出禁止に反対。餓死者が出ているにもかかわらず、アイルランドから食糧が輸出され続けた。

最終的には、人口の20%近くが餓死あるいは病死、10%から20%が国外へ脱出した。これにより婚姻や出産が激減し、アイルランドの総人口は最盛期の半分にまで減少した。

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引用が長くなりました。
とまあ、このような状況下、女の子で、その上、孤児のアルバートが生きていくためには
男になるしかなかったんですね。


ストーリー
19世紀。アイルランド。モリソンズホテル。
ここでウェイターとして働くアルバートは、人づきあいを避け、ひっそりと生きる中年男。
”彼“には大きな秘密があった。
それは、“彼”が男性として生きてきた女性であったということ。

ある日、ハンサムで背の高いペンキ屋ヒューバートがモリソンズホテルへやってくる。
ホテルの女主人から彼を自分の部屋に泊めるように命じられるアルバート。
なんとか逃れようとするものの叶わず、同じベッドに寝ることに。
そして、1匹の蚤のために女であることをヒューバートに知られてしまう。

このことが女主人にバレてしまえば仕事を失うことになると思ったアルバートは、
ヒューバートに決して口外しないよう懇願。
秘密を守ることを約束したヒューバートだったが、それにはある事情があった――

これを機にヒューバートと親しくなったアルバートは彼の生き方に感銘し、影響を受ける。
孤独な生活を変え、他者と目を合わせて生きる日々を送り始めるのだった。

ウェイターとして生きながらコツコツと貯めてきたお金で自分の店を持つ夢
信頼できる友人
共に人生を生きる伴侶を探すこと

これまで諦めていたことがひとつひとつ現実になりつつあった……

”彼“が秘密を守り続けるためには、他者から注意を払われないようにしなければなりませんでした。
それには、自分の気配を消しながら、客への気配りをするというウェイターの仕事が最適だったのでしょう。

生き方と職業が合い過ぎるというのも悲しいことだなぁと本筋とは関係のないところで感銘しつつ、
アイルランドの静謐な冬を背景にひそやかに繰り広げられるアルバートの人生に
生きるということの悲しさを感じました。
グレン・クローズが大きなスクリーンで演じたいといった気持がよくわかります。

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グレン・クローズだけでなく脇を固める俳優陣も良かったです。
“大男のイケメン”ヒューバートを演じたジャネット・マクティア、
アルバートが人生の伴侶として夢見るヘレンに扮したミア・ワシコウスカ、
そのヘレンがコロッと騙される野心家ジョー役のアーロン・ジョンソン。
(ちなみに彼は「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」(‘09)でジョン・レノンを演じた俳優です)

決して「自分が、自分が」としゃしゃりでることなく、
人として生きる悲しさや野望や喜びや優しさが、人生そのもののように調和した映画でした。

年の初めにこのような映画を試写できて、今年は春から縁起が良いです。





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アルバート氏の人生
監督/ロドリゴ・ガルシア、脚本/ガブリエラ・プレコップ、ジョン・バンヴィル、グレン・クローズ、原作/ジョージ・ムーア 短編小説「The Singular Life of Arbert Nobbs」、製作/グレン・クローズ、ボニー・カーティス、ジュリー・リン、アラン・モロニー、撮影/マイケル・マコドノー
出演
グレン・クローズ/アルバート・ノッブス、ジャネット・マクティア/ヒューバート・ペイジ、ミア・ワシコウスカ/ヘレン・ドウズ、アーロン・ジョンソン/ジョー・マキンス、ブレンダン・グリーソン/ホフロン医師、ジョナサン・リス・マイヤース/ヤレル子爵、ポーリーン・コリンズ/ベイカー夫人、ブロナー・ギャラガー/キャスリーン、ブレンダ・フリッカー/ポーリー
2013年1月18日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
2011年、アイルランド、113分、配給/トランスフォーマー、後援/アイルランド大使館
http://albert-movie.com/

by Mtonosama | 2013-01-07 06:31 | 映画 | Comments(10)
アルバート氏の人生 -1-
Arbert Nobbs

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(C)Morrison Films


2013年の映画の幕開けは、本作「アルバート氏の人生」です。
なんともしみじみと心のひだにしみこんでくる作品でした。
19世紀のアイルランドを舞台にした静かな背景もまたしみました。


f0165567_516173.jpg 「ガープの世界」(‘82)でデビューし、「危険な情事」(‘87)でマイケル・ダグラス相手に超怖いストーカー女を演じ、「101」(‘97)でもダルメシアンの仔犬たちの毛皮を狙う悪女に扮したグレン・クローズ。
今回はなんと男性になってしまいました。

といっても、宝塚とも、きわもの映画とも違い、
なんとも静かでもの悲しく、なおかつクスッと笑ってしまいもする
感動的な映画でした。
19世紀のアイルランドを舞台にしたいわば時代劇ですが、
望まない性を選ばなければ生きられなかった主人公の
人としてのアイデンティティをも考えさせる非常に今日的な作品です。


おっと、新年早々ネタばれ?あいすみません。

1982年「ガープの世界」で映画デビューし、
いきなり、アカデミー助演女優賞にノミネートされたグレン・クローズですが、
1974年には舞台女優としてのキャリアをスタートさせています。
そして、オフ・ブロードウェイで舞台版「アルバート・ノッブス」を主演したのが1982年。
その演技でオビー賞を獲得しました。

オビー賞は"Off-Broadway Theater Awards"の略であり、その年にニューヨークで上演された優れた舞台に与えられる賞である。ニューヨークの新聞社The Village Voiceが主催する。アメリカにおける演劇に対する賞としては、トニー賞に次いで権威がある。トニー賞がブロードウェイを対象としているのに対し、オビー賞はそのほかをカバーしている。(Wikipedia より)

以来30年。
「死ぬ前にこの役を大スクリーンで演じたい」
と決意したグレンは今回、プロデューサー、共同脚本家、主演女優として本作に深く関わりました。
今年3月に66歳を迎える彼女にとって本作「アルバート氏の人生」はまさにライフワークだったんですね。

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原作は、アイルランド人作家ジョージ・ムーアの短編小説“The Singular Life of Albert Nobbs”(未訳)。
脚本は、グレン自身が原作をもとに草稿を書き上げ、
ハンガリー人脚本家ガブリエラ・プレコップがリライト。
アイルランド人作家ジョン・バンヴィルがアイルランドの風習や方言を取り入れて完成しました。
監督は、「彼女を見ればわかること」(‘01)「美しい人」(‘05)でグレンと組んだロドリゴ・ガルシアです。
ちなみに監督はあのノーベル文学賞作家ガルシア=マルケスの息子。
期待が高まります。

短編小説から書き起こされた脚本であり、舞台作品でもあったことから、
シンプルな構成ではありますが、訴えかけてくる力はとても強い映画でした。

さあ、彼女はなぜ男性として生きてこなければならなかったのか、
また、どのようにして自身のアイデンティティを維持し続けたか――

それについては次回のお楽しみということで。
乞うご期待でございます。



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アルバート氏の人生
監督/ロドリゴ・ガルシア、脚本/ガブリエラ・プレコップ、ジョン・バンヴィル、グレン・クローズ、原作/ジョージ・ムーア 短編小説「The Singular Life of Arbert Nobbs」、製作/グレン・クローズ、ボニー・カーティス、ジュリー・リン、アラン・モロニー、撮影/マイケル・マコドノー
出演
グレン・クローズ/アルバート・ノッブス、ジャネット・マクティア/ヒューバート・ペイジ、ミア・ワシコウスカ/ヘレン・ドウズ、アーロン・ジョンソン/ジョー・マキンス、ブレンダン・グリーソン/ホフロン医師、ジョナサン・リス・マイヤース/ヤレル子爵、ポーリーン・コリンズ/ベイカー夫人、ブロナー・ギャラガー/キャスリーン、ブレンダ・フリッカー/ポーリー
2013年1月18日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
2011年、アイルランド、113分、配給/トランスフォーマー、後援/アイルランド大使館
http://albert-movie.com/

by Mtonosama | 2013-01-04 05:59 | 映画 | Comments(6)