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殿様の試写室

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<   2013年 08月 ( 10 )   > この月の画像一覧

夏の終り -1-

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©2012年映画「夏の終り」製作委員会


先日「あまちゃん」の後、そのままNHKを観ていたら瀬戸内寂聴さんが出演しました。
で、そのままずっとTVの前に居座ってしまったとのであります。

小説を読み、それを作者の実人生と思い込んでしまうことはよくあります。
「夏の終り」という小説は寂聴さんが瀬戸内晴美だった頃、自身の体験を書いた私小説です。

だから、やっぱり彼女の実人生なのですが、
この91歳になるお地蔵様のようなお顔の寂聴さんが
「夏の終り」にあるように、2人の男との関係を同時進行させるという道ならぬ恋をしたことに、
羨ましさ――(もちろん、ありますけどね)
ではなく、なにか熱いものを感じます。

「夏の終り」は瀬戸内寂聴さんが半世紀も前に書いた彼女の代表作で、
発売されてから100万部を超えるロングベストセラーであります。
それが映画化されて、いよいよ夏の終りの8月31日に公開されます。

NHKでも「不倫なんて今じゃ普通よねぇ」とおっしゃっていた寂聴さんですが、
それが50年も前のことであれば、普通どころか、人非人、人でなし、恥知らず――と
ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせかけられたことでありましょう。

とのも昨年この小説を読んだときにはあまり良い感じはしませんでした。
ええ、ひがみ、或いは、やっかみ、と、おとりくださって結構でございます。
とはいえ、この作品が妙に気になっていたのも事実。
そんなわけで、本作の試写状を受け取ったときにはいそいそと試写会場へ向かいました。

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監督は「海炭市叙景」(‘10)の熊切和嘉。
主役は満島ひかり。染色家として自立し、2人の男を愛する知子を演じます。
妻子ある不遇の作家・慎吾に小林薫。
身を切るような激しい恋に溺れる年下の男・涼太には綾野剛。

このキャスティングを見て、こりゃ、いいや、と思いました。
知子との愛に身も心も燃やしつくす年下の男、
これを演じるのはやっぱり綾野剛さん以外にはありえません。
NHK連ドラ「カーネーション」でヒロイン糸子の不倫相手・周防を演じた彼、
実に印象的でした。
その涼しい目元にたゆたうなんともいえない色っぽさ・・・
彼が出るのを熱い思いで待ち望んだものです。

この人のえも言われぬ色気は最高ですものね。
この色気があってこそ、一途な恋に身を滅ぼすことも厭わない涼太が生きるのでありますよ。

それと、妻がいながら、知子宅と妻宅にきっちり半分ずつ住まう売れない作家。
優しさとずるさを併せ持つ鼻もちならない男ですが、
小林薫が演じると、こずるいだけでない男の哀れさや身勝手さをも見せてくれるんですね。
はまり役です。

あ、満島ひかりのことを言い忘れました。
ま、どうしても男優の方に目がいってしまうことをお許しください。
彼女も昭和30年代の女らしく、色っぽくなりきらず、好演していました。
話が話しだけに、女性が色っぽ過ぎると下品になっちゃいますからね。

寂聴さんが
「今回の熊切和嘉監督の映画は原作に最も近く、
作者としては生々しさに圧倒され肌に粟を生じて見た」
と言うのも頷けます。

本来なら正視に絶えない結構ドロドロの三角関係が、
昭和30年代のなつかしげな空気の中で、
繁茂する夏草の草いきれのように、あるいは、濃密な闇に浮かぶ仄かに明るい窓のように、
生々しくも美しく描かれています。

これは映画ならではの情景でありましょう。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。
続きは次回までお待ちくださいませ。



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夏の終り
監督/熊切和嘉、脚本/宇治田隆史、原作/瀬戸内寂聴「夏の終り」(新潮文庫刊)、製作/藤本款、伊藤和明、撮影/近藤龍人、音楽/ジム・オルーク
出演
満島ひかり/相澤知子、綾野剛/木下涼太、小林薫/小杉慎吾
8月31日(土)有楽町スバル座、テアトル新宿、キューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー
2012年、日本、112分、http://natsu-owari.com/

by Mtonosama | 2013-08-29 06:01 | 映画 | Comments(4)
黒いスーツを着た男 -2-
Trois Mondes

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© 2012 - Pyramide Productions - France 3 Cinéma

さて、今回も不法移民の登場であります。
それもモルドヴァという国からの移民です。
ヨーロッパでは難民や移民の問題は避けて通れないのでしょうね。
それにしても、モルドヴァっていったいどこ?

モルドヴァ共和国はルーマニアとウクライナに挟まれた小国。
旧ソ連時代には、民族自治共和国のひとつでした。
旧ソ連を構成した15共和国の内、唯一ラテン系民族の国がこのモルドヴァです。

モルドヴァの歴史は11世紀にまで遡ります。
オスマントルコとロシアの支配下を行き来させられ、ロシア革命後はソビエト連邦下に。
ソ連崩壊後、1991年に独立。

九州よりも小さい国で、人口は約360万人。その内、ルーマニア系が78%を占めています。
使用言語はモルドヴァ語(ルーマニア語に近い)とロシア語。
民族的にも歴史的にもルーマニアと近いモルドヴァはルーマニアとの統合を望んでいるようです。
が、その一方で、ロシアとウクライナの支援を受けたウクライナ=ロシア系住民が
沿ドニエストル共和国として独立を主張しているという現実。

ヨーロッパでも最貧国といわれ、さらには政治的な混乱にもさらされているモルドヴァ。
多くの人が亡命や国外脱出を余儀なくされています。

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本作に登場するヴェラたちは、大変な思いをして
モルドヴァからパリへと脱出してきた人々というわけです。

といったモルドヴァ豆知識を下敷きにして、行きます。


ストーリー
自動車ディーラーに勤めるアランは、修理工から出世。
社長にも認められ、今は社長令嬢との結婚を10日後に控える人生最高潮の男。
だが、深夜、羽目を外した彼はパリの街を酔っ払って暴走中、一人の男を轢いてしまった。
呆然として車から降り立ったアランだが、同乗する友人に言われるまま、
男を置き去りにして逃走――

その一部始終を目撃していた女がいた。ジュリエットだ。
救急車を呼び、被害者を助けた医者志望の彼女は、翌日、病院を訪れ、
男の妻ヴェラと出会う。ヴェラとその夫はモルドヴァからの移民で、不法就労者だった。

罪悪感にさいなまれながら眠れぬ夜を過ごし出社したアラン。
新聞であの事故の目撃者がいたことを知り、動揺する。
被害者の容態を知ろうと病院へ行き、昏睡したままの男を見て激しい後悔の念に駆られるのだった。

そんなアランを目にしたのがジュリエットだ。
慌てて立ち去るアランの後姿を見た彼女は事故現場から立ち去った犯人に違いないと確信。
だが、そのことをヴェラには告げず、単独でアランの居場所をつきとめる……


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人生の最盛期において突然見舞われる不運。
アランにとっても不運だが、不法就労しか生きるすべのない移民が異国で事故にあうこと。
これもまた大きな不運です。
その間に立ち、良識にしたがって行動しながら、のっぴきならない立場に追い込まれていくこと。
これも不運です。

人生の底辺から這い上がり、やっと幸運を手にしようとする若者が少し羽目を外したからといって、
彼を責めることはできない筈。
しかし、事故の代償はあまりにも大きいものでした。
たまたまその日に酒を呑んでしまったこと。
たまたまその日その時間にモルドヴァの男がその道を横切ったこと。
そして、たまたま恋人と喧嘩してバルコニーに出たジュリエットが一部始終を目撃してしまったこと。
たしかに間が悪すぎます。
しかし、殺された側はそれでは済まされません。

印象的なシーンがあります。
結局亡くなってしまった夫の臓器提供を要請する医師たちに対して、
「なぜ無償なの?ただで提供することなどできない」
と激しく喰ってかかるヴェラ。
医者は「臓器売買は非人道的であり、ご主人の臓器の無償提供によって
多くの人を助けることができます」
と口ごもりながら言うことしかできません。
追い詰められたヴェラの要求に対し、
西側社会の人道的見解、つまり、マニュアル(?)のいかに無力なことか。
とても印象的でした。

ストーリーやテーマと関係のないところに心を打つ部分があります。
映画ってほんとに一筋縄ではいきませんね。





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黒いスーツを着た男
監督/カトリーヌ・コルシニ、脚本/カトリーヌ・コルシニ、ブノワ・グラファン、音楽/グレゴワール・エツェル、撮影/クレール・マトン、製作/ファビエンヌ・ヴォニエ
出演
ラファエル・ペルソナーズ/アル、クロチルド・エム/ジュリエット、アルタ・ドブロシ/ヴェラ、レダ・カテブ/フランク、アルバン・オマール/マルタン、アデル・ハネル/マリオン、ジャン=ピエール・マロ/テスタール、ローラン・カペリュート/フレデリック、ラシャ・ブコヴィッチ/アドリアン
ヒューマントラスト渋谷他にて全国順次公開中
2012年、フランス、フランス語、90分、http://www.cetera.co.jp/kurosuits/

by Mtonosama | 2013-08-26 07:20 | 映画 | Comments(6)
黒いスーツを着た男 -1-
Trois Mondes

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© 2012 - Pyramide Productions - France 3 Cinéma


非常に古典的な問題を描いた映画です。
古典的ではありますが、いえ、古典的であるがゆえに、
解決の難しい問題を描いた作品です。
いえ、解決が難しいからこそ、時代を問わず問いかけられる問題なのでしょうけれど。

最初からいきなり何ワケのわからないこと言ってるんでしょうねぇ。すいません。

でも、おいおい判明するはずですから、おつきあいくださいませ。

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邦題「黒いスーツを着た男」、原題は“Trois Mondes”。<3つの世界>です。
AOKIのCMじゃあるまいし、
「黒いスーツを着た男」というタイトルはちょっとねぇ・・・・・
<3つの世界>の方がうんと真相をついていると思います。
ま、邦題をつけるというのもなかなか難しい作業でありますから、ここではこの位に。

監督と共同脚本を担当したのはカトリーヌ・コルシニ。
これまで女性を主人公にした作品を数多くつくってきた彼女ですが、
本作で初めて男性を主人公にしました。

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その主人公がラファエル・ペルソナーズ。
最優秀男優に与えられるパトリック・ドベール賞も受賞し、
「アラン・ドロンの再来」ともいわれるフランス映画界のニュースターです。
「ELLE」や「VOGUE」で特集を組まれ、人気沸騰中の俳優。
1981年生まれの32歳です。う~ん、お年頃ですよね。
本作ではアランという逆玉の輿に乗る自動車ディーラー会社のセールスマンを演じています。
人生順風満帆のこの男、実は、結婚式前に羽目を外し、交通事故を起こしてしまうのですね。
それもまた酔っ払った挙句、友人たちに言われるまま、
はねた男をそのまま置き去りにして、逃げてしまったのです。
それをめぐるお話というのが本作であります。
ただ、特記すべきはその俳優たちのすばらしさ。

「あの俳優は渋いね」とか「いぶし銀のような演技だね」などとは
よく年配の俳優に対して言う誉め言葉ですが、
本作に関しては30代の若い俳優にもこの言葉があてはまります。

アランのひき逃げを目撃した女性ジュリエット、
ひき逃げされたモルドヴァ不法移民の妻ヴェラ、
そして、アランに逃亡を煽る友人フランクとマルタン。

みんな際立っています。ひとりひとりの個性が光っているんですねぇ。

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アランが属している企業倫理最優先の世界。
ジュリエットが属している市民としての良識が生きる世界。
そして、ヴェラが生きる不法移民という陰の世界。

3つの世界が期せずして出会ったとき、何が起きるか。
そして、それはどのように展開していくのか。
社会の光と影。それをとりもつ筈の良識や言語というものの脆弱さ。

新しいようでいて、古くから存在するテーマを、
若きいぶし銀たちの渾身の演技が鋭くえぐりだします。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。
続きは次回までお待ちくださいませ。



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黒いスーツを着た男
監督/カトリーヌ・コルシニ、脚本/カトリーヌ・コルシニ、ブノワ・グラファン、音楽/グレゴワール・エツェル、撮影/クレール・マトン、製作/ファビエンヌ・ヴォニエ
出演
ラファエル・ペルソナーズ/アル、クロチルド・エム/ジュリエット、アルタ・ドブロシ/ヴェラ、レダ・カテブ/フランク、アルバン・オマール/マルタン、アデル・ハネル/マリオン、ジャン=ピエール・マロ/テスタール、ローラン・カペリュート/フレデリック、ラシャ・ブコヴィッチ/アドリアン
ヒューマントラスト渋谷他にて全国順次公開中
2012年、フランス、フランス語、90分、http://www.cetera.co.jp/kurosuits/

by Mtonosama | 2013-08-24 06:32 | 映画 | Comments(4)
三毛猫ひかちゃん -6-


あたし、ひかちゃん。

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いけない!
この暑さで、新聞読みながらつい眠ってしまったわ。

最近ね、あたしを見に来る人が多いの。
ジャスミンちゃんでしょ、シドくんでしょ、それに、ラクダくん。
みんなを均等に喜ばせてあげようとすると、
いくら若いあたしでも疲れちゃうのよね。

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あたしって人見知りをしないタイプなの。
世間には知らない人が来ると、どこかへ隠れちゃう猫もいるって聞いてるわ。
でも、あたしは違うの。
今日だって、テーブルの上でジャスミンちゃんにカメラ目線をあげてるのよ。

あたしはね、知らない人が来ると興奮しちゃうタイプかな。
時速53kmで部屋の中を突進し、障子や襖や壁を駆け上がったりするの。
邪魔されたら、もう絶対に容赦しないの。
噛みつき、ひっかき、何があろうと前進しちゃうんだから。
こないだもね、らくだくんがお泊りしてベッドに寝てたから、噛みついてあげたわ。
わぁわぁ騒いでたけど知るもんですか。

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そんなこんなで騒いだ後だから赤鼻のひかちゃんになってしまったわ。
あたしね、興奮するとピンクの鼻が真っ赤になるの。
あ、肉球の白い部分も赤くなるのよ。

いつまで暑いのかしらね。
皆さんはどこかへお出かけ?
あたしはどこにも行かないでおうちの中でゴキブリやカナブンと闘ってるわ。
今度は大物にも挑戦するから、待っててね。
また、来るわね。

ひかり


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by Mtonosama | 2013-08-21 05:56 | 映画 | Comments(18)
トラブゾン狂想曲 
-小さな村の大きなゴミ騒動 - -2-

Der Müll im Garten Eden

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世界中どこでも、国は中央を遠く離れた地方のことなど真剣に考えてはくれません。
これって、自分の生まれ育った土地や生活を守るには自分たちが声を上げるしかない、ってことですわね。

そんなわけでファティ・アキン監督、
自分の父祖の地であるチャンブルヌ村の事件をドキュメンタリー映画に仕上げました。

さあ、トラブゾン・チャンブルヌ村で起こったゴミ問題。どんな経緯を辿るのでしょう。


1990年代半ば黒海周辺地区に生じるゴミを処理するため、トラブゾン地方にゴミ埋め立て施設建築計画が持ち上がる。
1997年1月、トラブゾンの村チャンブルヌにある廃鉱となった銅山が、ゴミ廃棄場の候補に。
1998年5月、地域の環境コミッションは、環境への影響の研究と計画の実行とは無関係と決定。
この頃、既に銅山はゴミ施設には適当ではないという証拠が出ていたが、処理場建設が始まる。
村人たちが抗議行動を組織、作業を妨害。だが、作業は警察の保護下で続行される。

2006年5月、チャンブルヌ市当局はゴミ処理場建設許可申請を却下。
ところが、政府は市長を提訴。結局、市長は建設許可を出さざるを得なくなる。
12月、処理場建設続行。
建設条件として示されていた民家と処理場間の最低距離も守られてはいなかった。
2007年4月、ファティ・アキンはオスマン・ぺぺ環境大臣にゴミ処理場建設について
インタビューを申し込むが、大臣は拒否。

当初、ゴミは梱包して輸送されるという説明だったが、ゴミ廃棄はザツそのもの。
ゴミが運び込まれて5日目には処理場のゴムシートの破れ目から汚水が運河と小川に流れ込んだ。

ファティ・アキンはドイツ緑の党党首クラウディア・ロートをチャンブルヌに招待。
メディアを通じてこの問題への関心を喚起。

2008年1月、悪臭の発生。
住民の不平を受け、ゴミは土で覆われたが、土の圧力によって汚水が上昇し、悪臭は消えない。

トラブゾン工科大学海洋調査学科は、チャンブルヌの森林を通って流れる水を使った水産試験場を運営している。
2010年1月、この水に混入したゴミ処理場からの汚水によって試験場の250種の魚が汚染される。
海洋調査学科は処分場を告訴。
7月18日、大雨により、処理場の水が溢れだし、村の斜面を流れ落ちる。悪臭の拡大。
村人たちは処理場までデモ。そこで地方政府の環境担当官僚に面会する。その模様がテレビ放映。

海水浴をした子どもたちが下痢、高熱などの症状を訴えて通院。
役人たちはその原因を調査せず、汚水に含まれた重金属や化学物質の影響も一切調査してこなかった。

8月25日。チャンブルヌに再び豪雨。
川が決壊し、処理場から溢れだした汚水は町の中心部に。

12月6日、処分場の容量を増やすための壁が作られている間に、汚水処理場の壁が倒壊。
住民が提訴。
その後、汚水が高濃度で汚染されていること、畑が収穫不能となっていることが証明される。
法廷は汚染された土の撤去を命じた。

この過程でチャンブルヌの住民は3500人から1200人に減少。
処理場はさらに2年間稼働を続ける……

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と、こんな経緯を足掛け5年にわたって撮りためたドキュメンタリー。ま、ファティ・アキン監督の言ってみればきわめて個人的ともいえる作品です。監督の想い出の地でのゴミ処理場問題を撮影したものですから。

でも、これ、どうしても日本で起こっている福島や東北の問題と結びつけたくなってしまいます。監督の動機は個人的なものであっても、かなり普遍的な問題です。黙っていたら、臭いものや危険なものは小さな田舎の村に押し付けられてしまいます。

処理場は2~3年後に閉鎖される予定ですが、
それも、ほんとかなぁ?
閉鎖時にはゴミの上に土がかぶせられますが、ゴミが完全に分解されるには相当な年月がかかるんですよね。
これだって、あの問題を思い出させます。
放射能が消えるには10万年かかるというあれです。

例え、村の処分場を閉鎖したとしても、当局は違う場所に処分場を建てるでしょう。
そして、そこでも同じような問題が起きることでしょう。

今後のことを考えると、ちょっとばかり、いえ、かなり、絶望的な気分になります。
でも、監督のコメントを聞くと諦めてちゃいけないかも、と思えてもきます。

監督は言います。
「この作品は少なくとも、責任者に対し国際基準に合致した焼却施設を建築するよう
説得する材料になるかもしれません。
というのも、彼らの単純な解決法は、友人よりも敵を作る、
ということが彼らにもわかり始めているからです


ファティ・アキン監督。ヨーロッパ三大映画賞を制覇したあなたのような監督が
映画を武器に闘えば、少しは希望が見えてくるかもしれませんね。

今までの監督のものとは色合いの違う映画を楽しませてもらいました。





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トラブゾン狂想曲 -小さな村の大きなゴミ騒動 -
監督/ファティ・アキン、撮影/ブンヤミン・セレクバサン、エルヴェ・デュー、音楽/アレクサンダー・ハッケ、編集/アンドリュー・バード
8月17日[シアター]イメージフォーラム他順次ロードショー
2012年、ドイツ、98分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kyousoukyoku/

by Mtonosama | 2013-08-18 06:30 | 映画 | Comments(6)
トラブゾン狂想曲
-小さな村の大きなゴミ騒動 - -1-

Der Müll im Garten Eden

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ファティ・アキン監督作品です。
ドイツ映画です。
ドイツといえばゴミ処理先進国なので、
原題”Der Müll im Garten Eden”(「エデンの園のゴミ」)というタイトルも納得できます。

しかし、監督の名前はどこから見てもゲルマン風ではありませんね。
そうなんです。彼の父親は1965年に出稼ぎ移民としてドイツにやってきたトルコ人。
小学校教師をしていた母もその3年後、結婚のためドイツに。
彼はハンブルグ生まれのトルコ移民二世です。


1973年生まれのファティ、最初は俳優を志していましたが、
在ドイツのトルコ系移民など、同じような役ばかりさせられることにうんざり。
ハンブルグ造形芸術大学へ進学し、95年に監督デビューしました。

偽装結婚から生まれる愛を描いた「愛より強く」で、2004年ベルリン国際映画祭金熊賞を
はじめ2004年ヨーロッパ映画祭最優秀作品賞などを受賞。一躍有名に。

「そして、私たちは愛に帰る」では2007年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞と全キリスト協会賞を受賞。http://mtonosama.exblog.jp/9988444/
生地であるハンブルグを舞台にした「ソウル・キッチン」(‘09)は
2009年ベネチア交際映画祭審査員特別賞を受賞。http://mtonosama.exblog.jp/12183212/
なんとファティ・アキン監督、30代の内にベルリン、カンヌ、ベネチアの三大映画祭受賞という栄光に輝いたのであります。

と、冒頭からファティ・アキン監督の紹介をしてしまいましたが、
それは本作「トラブゾン狂想曲」が、
カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞をとった「そして、私たちは愛に帰る」と深い関係があるから。
本作は「そして、私たちは愛に帰る」のラストシーンの舞台になったトルコ・トラブゾン地方で
起きたゴミ処理場建設事件を記録した作品だからなんです。

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2005年に、監督は祖父母の故郷、トルコ北東部・黒海沿岸にあるトラブゾン地方の村
チャンブルヌを訪れました。
その美しさに感動した監督が耳にしたのは驚くべき事実。

それはこの地にゴミ処理場が建設されるということ!
この美しさを画面に留めなければという使命を感じた彼は、
「そして、私たちは愛に帰る」のラストシーンをチャンブルヌ村で撮影したのでした。

同時に、ファティ・アキン監督はゴミ処理場建設の事実を記録しようということで、
既に記録を始めていた地元写真家の協力も得て撮影を敢行。
それが本作「トラブゾン狂想曲」であります。

エデンの園にゴミ処理場が建設されるだけでも大変なのに、
そのゴミ処理場ときたら銅鉱山の跡地を利用した非常にザツなつくり。
大量のゴミを投入する穴の底に敷くのは薄っぺらなゴムシート。
ちょっと雨が降ればすぐにも溢れだしそうな小さな汚水処理槽。
(実際に溢れだして大変な事態になるんですけど)。
当局のいい加減な計画や時々、視察に訪れる役人たちに立ち向かうおじさんやおばさんたちの姿を、
5年間にわたって撮り続けました。

さあ、どんな記録映画ができあがったのでしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



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トラブゾン狂想曲 -小さな村の大きなゴミ騒動 -
監督/ファティ・アキン、撮影/ブンヤミン・セレクバサン、エルヴェ・デュー、音楽/アレクサンダー・ハッケ、編集/アンドリュー・バード
8月17日[シアター]イメージフォーラム他順次ロードショー
2012年、ドイツ、98分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kyousoukyoku/

by Mtonosama | 2013-08-15 07:04 | 映画 | Comments(4)
タイピスト! -2-
Populaire

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(C)2012–copyright: Les Productions du Tresor–France 3 Cinema-France 2 CinEma-Mars Films-Wild Bunch-Panache Productions-La Cie Cinematographique-RTBF(Television belge) (C)Photos-Jair Sfez.

きりっと結んだポニーテール、たっぷりとしたスカート、可愛いツィードのワンピ。
ファッションを見ると、「あれ、アメリカ映画?」と思ってしまいますが、フランス映画なんです。
50年代ファッションはアメリカ、フランスを問わず、世界中を駆け巡ったのですね。

あ、すいません。ついお洋服に目が行ってしまいました。

ほんわかピンクなローザを演じたデボラ・フランソワ。
彼女、ダルデンヌ兄弟監督「ある子供」(‘05)でデビューしたベルギー女優です。
とても可愛くて観ていて幸せになりました。
そして、ローザを特訓するルイ。
「美味しんぼ」の山岡士郎みたいな髪型をした彼を演じるのはロマン・デュリス。
「スパニッシュ・アパートメント」(‘02)、「Paris」(‘08)等に出演したフランスを代表するスターです。
彼も大人になりました。おばさんは嬉しいよ。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうね。


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ストーリー
ノルマンディの田舎町に住むローズ・パンフィル。
このまま一生父が営む雑貨屋の手伝いをし、父の勧める相手と結婚して
田舎に埋もれるなんて絶対イヤ、と考える女の子です。

まずは、憧れの職業である秘書を目指し、保険会社の面接を受けに街へ。
その保険会社の社長ルイ・エシャールはなんともほんわかしたローザを田舎者扱いして
追い返そうとします。
その時、ローズはデスクのタイプライターを引き寄せ、猛然とキーを叩き始めました。
1本指ながらその速さといったら!
タイプのお蔭で、1週間の試用期間を勝ちとったローズ。

ところが――
電話のメモはとれない、書類はなくす、シュレッダーはこわす・・・
とうとうルイに「君は秘書には向かない」と宣告されてしまいました。
だが、ある条件を呑めばクビにしないとも。
「ム、セクハラか」と構えたローズにルイが示したのは〈タイプライター早打ち大会〉のチラシでした。

ところが――
熱気に満ちた会場の雰囲気に呑まれ、あっさり予選落ち。
そこで、ルイは特訓を宣言するのでした。
ローズは下宿を出て、ルイが一人で暮らす豪邸に住みこむことに。その日から始まった猛特訓。
まずは1本指タイピングから10本指タイピングへの大矯正。
続いて、難解な文学書のタイプ。
さらに、ルイの幼なじみマリーにピアノレッスンを依頼。
なぜかジョギング、駆け引きの練習、緊張克服の修行、etc.etc.
鬼コーチ・ルイの指導によってみるみる腕を上げるローズでした。

その結果、
ローズは地方大会で圧勝。今や皆の憧れの的です。
ですが、ルイはフランス大会に向けて更に速度と耐久力を強化するように言い渡します。

そんな中、誕生日を迎えたローズ。
なのにパパから何の連絡もなく落ち込むローズを見て、ルイはバースデイケーキを用意してくれました。ところが、プレゼントは、タイピングスピードアップのための秘密兵器・・・
ルイに恋心を抱き始めていたローズはそれを見て怒り爆発。

「お互いのために休暇にしよう。クリスマスも近いから帰省するように」とルイ。
久々に実家に帰ったローズでしたが、父は留守。
一人で母の墓参りを済ませるともうすることがありません。
結局マリーに送られてルイの家に戻るローズでしたが、その時、
なんとマリーはルイの家族にローズを婚約者として紹介します。

いよいよフランス大会の日がやってきました。
始めてのパリに浮かれるローズ。
昨年の女王アニーはファンからの声援に優雅に応え、まるで映画スターのようです。
彼女のバックには大手タイプ会社のジャビー社が。
決勝で二人は同点。延長戦を迎えます。
「ここまで来れば充分だわ」弱気なローズをわざと怒らせるルイ。
ルイの言葉で闘争心が燃え上がったローズ。なんと優勝してしまいました。

喜んでルイに駆け寄るローズ。
ところが、ルイは「もう君には僕は必要ない」と冷たく突き放します。
ローズは2ヶ月後の世界大会に向けてジャビー社と契約。
だが、最強のアメリカの女王が迎え撃つ世界大会でルイのいないローズは勝つことができるのでしょうか?そして、2人の恋のゆくえはいかに……?

10本指タイピングに矯正するためにキーと爪を合わせて色分けするローズ。
なんかこのマニキュア、流行しそうです。
思わず肩に力が入るタイピングシーン。
おしゃれも、特訓も、一歩ずつ前進していくローズのサクセスストーリーも、
ローズとルイの恋の行方も、
過去において楽しませてくれたエンタテインメント映画のおいしい要素満載の映画です。

本作が長編劇映画デビューとなった新人監督レジス・ロワンサル。
またまたフランス映画界に大きな才能が生まれました。
「アメリ」の時みたいに行列ができてるかなぁ。





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タイピスト!
監督/レジス・ロワンサル、脚本/レジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー&ロマン・コンパン、製作/アラン・アタル、撮影/ギョーム・シフマン、音楽/ロブ&エマニュエル・ドートランド
出演
ロマン・デュリス/ルイ・エシャール、デボラ・フランソワ/ローズ・パンフィル、ベレニエ・ベジョ/マリー・テイラー、ショーン・ベンソン/ボブ・テイラー、メラニー・ベルニエ/アニー・ルブランス・ランゲ、ニコラス・ブドス/ギルバート・ジャピ、フェオドール・アトキン/アンドレ・ジャピ、ミュー=ミュー/マドリーヌ・エシャール、エディ・ミッチェル/ジョルジュ・エシャード、フレデリック・ピエロ/ジャン・ポンフィール、マリウス・コルッチ/ルシアン・エシャード、エミリン・バイヤー/ジャクリーン・エシャード、ヤニック・ランドン/レオナルド・エシャード、ナスターシャ・ジラード/エヴィリン・エシャード、キャロライン・ティレット/ヴァンプ、ジャンヌ・コーエンディ/フランソワーズ、ドミニク・レイモン/ショロフスキー夫人、サーペンタイン・テーシエ/寄宿学校の経営者
8月17日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
2012年、フランス、111分、字幕/松岡葉子、提供/ギャガ、コムストック・グループ、配給/ギャガGAGA★、後援/在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
http://typist.gaga.ne.jp/

by Mtonosama | 2013-08-12 07:20 | 映画 | Comments(4)
タイピスト! -1-
Populaire

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(C)2012–copyright: Les Productions du Tresor–France 3 Cinema-France 2 CinEma-Mars Films-Wild Bunch-Panache Productions-La Cie Cinematographique-RTBF(Television belge) (C)Photos-Jair Sfez.

今や過去の遺物となったタイプライター。
もはや知らない世代もおいでかと思われます。

昔はオリベッティとかスミスコロナとかいうタイプライターがあったんですよね。
そうそうアンダーウッド、訳して木下さんなんてタイプライターもありましたっけ。
ま、訳す必要もないんですけどね。

本作は、そのタイプライターが社会へ飛び出す女性の必須アイテムだった時代のお話です。

1950年代末、女性たちの憧れの職業は秘書。
そして、秘書になるために絶対に必要だったのがタイプライター。
そんな時代、〈タイプライター早打ち大会〉という大会が実在したんです。
地方大会から始まり、全国大会、さらに世界大会。
今でいえば全日本電卓競技大会で1位になるようなもの?
いえ、世界一ともなればもっとすごいですよね。
もうスターです。世界の人気者です。女王です。
原題もpopulaire(人気のある)ですよ。

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ノルマンジーの田舎町、雑貨屋の娘ローズ。
彼女も他の女の子たち同様、都会で秘書になりたいと思っていました。
でも、彼女はとってもドジでのろま。取り柄といえばタイプライターの早打ち位。
そんな「スチュワーデス物語」(1983年10月18日 - 1984年3月27日)の(ふるっ)
堀ちえみみたいな
女の子が上司の猛烈な特訓を受け、世界の頂点に立つ――
スポ根ドラマも真っ青な、だけど、とてもキュートなラブコメディです。

この映画、6月に有楽町朝日ホール他で開催されたフランス映画祭2013で観客賞を受賞。
この観客賞というのは観客が“最も面白い”と評価した作品に贈られる最高賞で
前回は「最強のふたり」が受賞しています。

監督&脚本はレジス・ロワンサル。本作が長編映画デビュー作です。
フランスでは2012年に公開された本作ですが、
新人監督作品ながら堂々初登場2位のヒットとなりました。

本作が生まれるきっかけとなったのは、
監督がタイプライターの歴史を取り上げたドキュメンタリーを観たこと。
その中で早打ち大会の様子が紹介されていたのです。
それを観て「え?タイプライターが競技になるの?」とビックリした監督。
調査を始めたところ、何千人もの観衆を集めて開催されたアメリカ大会の写真を発見、
さらには地方大会で優勝した男女から話を聴くこともできました。

たかがタイプライターというなかれ。
競技ともなれば、ライバルを睨みつけてタイピングのスピードを落とさせたり、
プレッシャーをはねのけるため精神統一をしたり、なかなか大変だったようです。
ま、そんな話が本作の中にも随所に生きていますよ。

監督曰く。
「ヴィンテージな面白さもありながら、“ロッキー”のようなスポ根映画にしたいと考えてつくりました」
なるほど。なんか期待できますね。

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2001年に日本でも大ヒットした「アメリ」を思わせるほんわかした女の子が
厳しいコーチの特訓を受けて、タイプライター早打ち世界一になる楽しいお話。
お話の流れは「マイフェアレディ」みたいですし、
50年代に一世を風靡した映画へのオマージュにも満ちています。

50年代のファッションも可愛いので、乞うご期待でありますわよ。ウフッ。



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タイピスト!
監督/レジス・ロワンサル、脚本/レジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー&ロマン・コンパン、製作/アラン・アタル、撮影/ギョーム・シフマン、音楽/ロブ&エマニュエル・ドートランド
出演
ロマン・デュリス/ルイ・エシャール、デボラ・フランソワ/ローズ・パンフィル、ベレニエ・ベジョ/マリー・テイラー、ショーン・ベンソン/ボブ・テイラー、メラニー・ベルニエ/アニー・ルブランス・ランゲ、ニコラス・ブドス/ギルバート・ジャピ、フェオドール・アトキン/アンドレ・ジャピ、ミュー=ミュー/マドリーヌ・エシャール、エディ・ミッチェル/ジョルジュ・エシャード、フレデリック・ピエロ/ジャン・ポンフィール、マリウス・コルッチ/ルシアン・エシャード、エミリン・バイヤー/ジャクリーン・エシャード、ヤニック・ランドン/レオナルド・エシャード、ナスターシャ・ジラード/エヴィリン・エシャード、キャロライン・ティレット/ヴァンプ、ジャンヌ・コーエンディ/フランソワーズ、ドミニク・レイモン/ショロフスキー夫人、サーペンタイン・テーシエ/寄宿学校の経営者
8月17日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
2012年、フランス、111分、字幕/松岡葉子、提供/ギャガ、コムストック・グループ、配給/ギャガGAGA★、後援/在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
http://typist.gaga.ne.jp/

by Mtonosama | 2013-08-09 07:19 | 映画 | Comments(6)
楽園からの旅人 -2-
Villaggio di cartone

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(C) COPYRIGHT 2011 Cinemaundici

当試写室で上映しただけでも
「海と大陸」
http://mtonosama.exblog.jp/19020859/ http://mtonosama.exblog.jp/19092898/
「ぼくたちのムッシュ・ラザール」
http://mtonosama.exblog.jp/17762227/ http://mtonosama.exblog.jp/17772823/
「ル・アーブルの靴みがき」
http://mtonosama.exblog.jp/17426967/ http://mtonosama.exblog.jp/17438978/
「君を想って海をゆく」
http://mtonosama.exblog.jp/15073145/ http://mtonosama.exblog.jp/15091252/
などなど。

難民を描いたヨーロッパ映画は結構目につきます。
難民問題はもう限定された一地域の問題でも、特殊な問題でもないのでしょう。
ヨーロッパの人々とアフリカやイスラム圏の人々という大きなくくりの中の
経済や政治社会問題として描かれるのではなく、
人と人の関わりとして映画化されるようになってきているのかもしれません。

さあ、劇映画に復帰したオルミ監督、いったいどんな映画をみせてくれるのでしょうか。


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ストーリー
イタリアのとある街で、
もう半世紀もの間、人々が集い、祈りをささげた教会が取り壊されようとしていた。
椅子も祭壇もキリストの磔刑像も撤去された。

夜、ひとりの男が怪我をした家族を連れて司祭館にやってくる。
男は技師で、怪我をした家族は不法入国者だった。
それを皮切りに、教会堂には“旅人たち”が次々とやってきた。
皆アフリカから長い旅路を経て辿り着いた人々。
教会堂には段ボールでつくった家ができあがっていく。急ごしらえの小さな村である。

そんな小さな村にもいくつかのグループがあった。
身重の女性以外はみな旅の途中で亡くなったグループ。
世界を良くするためには暴力しかないというイスラム原理主義のグループ。
言葉の力を信じる技師のグループ。
どのグループも旅の途中で多くの仲間を失っていた。

その中のひとりの少年は難破船の中で一冊のノートを拾っていた。
そこには世界が始まる頃の美しい大地が描かれ、
「すべての子はひとりの母から生まれた」という言葉が記されていた。
その後のページは水にぬれたためか、開くことができない――

身重の女性が出産する。“旅人たち”は女性や生まれてきた赤ん坊の世話をし、
老司祭はそこにキリストの誕生を見るのだった。
若者たちの間には恋も芽生えようとしていた。

そこへ、保安委員が不法移民を取り締まるために教会を訪れた。
老司祭は「教会はすべての人に開かれています」と彼らを退ける。

翌日、“旅人たち”は老司祭と技師を残して、フランスへと旅立つ。
聖堂は明日になればあとかたもなく壊されてしまうだろう。
しかし、人間たちの物語は明日もまたとぎれることなく続いていく……


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天井に開いた天窓。そこから降り注ぐ雨。洗礼盤に集められるその雨水。
その水で生まれたばかりの赤ん坊を沐浴させる。
相も変わらぬ難民たちの厳しい現実を背景としながら、それでも希望が香り立つ映画です。

旅人たちも老司祭もすべてを失った人々でした。
破壊された教会もそうです。
祭壇やキリスト像をひきおろされ、権威もなくし、ただの家になってしまいました。
ところが“旅人たち”はその何もかもなくした“家”へ救いと安らぎを求めて訪れたのです。
そこでの出会いや新しい命の誕生がなにかをひきおこしたようです。
絶望の淵に立っていた司祭は生きがいを見出し、
通り過ぎていくだけの“旅人たち”を通じ、真の愛に気づきました。
“旅人たち”はまた次の地へ向かう力を得ました。

現実は何も変わったようには見えないかもしれません。
しかし、なにかに小さな火がともったようです。

「人生を信じなさい」
その一言を言いたくてエルマンノ・オルミ監督はもう一度劇映画をつくったのかもしれません。






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楽園からの旅人
監督・脚本/エルマンノ・オルミ、撮影監督/ファビオ・オルミ、編集/パオロ・コッティンニョーラ、音楽/ソフィア・グバイドゥリーナ
出演
マイケル・ロンズデール/老司祭、ルドガー・ハウアー/教会堂管理人、アレッサンドロ・アベル/保安委員、マッシモ・デ・フランコヴィッチ/医者
8月17日(土)より岩波ホールにてロードショー
2011年、87分、イタリア、イタリア語、カラー、日本語版字幕/吉岡芳子、配給/アルシネテラン、http://www.alcine-terran.com/rakuen/

by Mtonosama | 2013-08-06 07:08 | 映画 | Comments(8)
楽園からの旅人 -1-
Villaggio di cartone

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(C) COPYRIGHT 2011 Cinemaundici

外国の街で歩き疲れたとき、安心して休めるのはどこですか?
カフェとかいろいろありそうですが、お金を使いたくないとのは教会です。
なんといっても安全ですし、頼りになります。
都会の教会はいつでもウェルカムでしたから、一人歩きで疲れたときは遠慮なくお邪魔していました。
教会堂の中なら怖い人も悪い人も何もできないですよね。きっと。
クリスチャンではありませんが、神様はきっとお許しくださるはずです。

というわけで、本作「楽園からの旅人」は教会の聖堂が舞台。
っていうか、教会しか出てきません。まるで舞台劇を思わせる映画です。

間もなく取り壊されることになった教会にひとり残る老司祭。
そこへお金もなく、疲れ果てたアフリカからの難民たちが救いを求めてやってきました。
そして、礼拝堂の中に段ボールの村がつくられます。
(原題の”Villaggio di cartone”は“段ボールの村”という意味です)

二夜だけの新しい村に生まれた新しい命。
教会の消える日に自らの使命を見出す老司祭。

礼拝堂に突如現れた段ボールの村で交流する人々を描いた荘厳な物語です。
段ボールと荘厳って似合いませんよね。
でも、人の営みって本来荘厳なものなのだよ、と教えてくれる作品でした。

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監督はエルマンノ・オルミ。
「木靴の樹」(‘78)、「ポー川のひかり」(‘06)などで知られるイタリアの巨匠です。
「ポー川のひかり」は2009年当試写室でも上映しています。
同年末「殿様の試写室」ベスト10でも堂々の1位に輝きました。
自分で選んだのだから「堂々」もないんですけど。
http://mtonosama.exblog.jp/11533228/

しかし、オルミ監督は「ポー川のひかり」を最後にもう劇映画は撮らないと言っていたのですがねぇ。
どうしたのでしょう。
「ポー川のひかり」では現代に姿を現したイエス・キリストともいうべき人物を描きました。
混迷する世界に現れた現代のキリスト。
最後の劇映画とするにふさわしい作品でした。

なのに、どうして?
世界は未だ彼の映画を必要としていると判断したということでしょうか。
しかし、再び、82歳となった巨匠の作品を観られるとは僥倖以外の何物でもありません。


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エルマンノ・オルミ監督
1931年ベルガモ生まれ。父は鉄道員。2歳の時、家族でミラノに移る。
大戦終了後、水力発電所についての映画を撮る。
その後40作以上のドキュメンタリーを制作。
1959年初の長編劇映画「時は止まりぬ」を発表。
その後、ミラノから来た若い2人の男が初めての仕事で出会う困難と夢を描いた「就職」は1961年ヴェネチア国際映画祭でOCIC賞と批評家賞をダブル受賞、国際的な映画祭でも数々の賞を受ける。
1963年の「婚約者」ではイタリア北部から労働力が流出したことにより、南イタリアの工業化が急速に発展した後の顛末を描いた。
この3本は初期の傑作三部作として評価が高い。

1965年には労働問題から離れた作品「一人の男がやってきた」を発表。
ローマ法王ヨハネ23世に捧げている。

1978年、ベルガモの農夫の生活を描いた「木靴の樹」でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。
1987年「偽りの晩餐」でヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞、翌88年には「聖なる酔っ払いの伝説」で同映画祭金獅子賞を受けた。
2005年アッバス・キアロスタミ監督とケン・ローチ監督とのオムニバス映画「明日へのチケット」を発表。
2006年「ポー川のひかり」。これを最後の長編劇映画とし、今後はドキュメンタリー映画を制作していきたいと公表。

2008年ヴェネチア国際映画祭は監督の功績を讃え、栄誉金獅子賞を贈っている。

前言を翻し、再びメガホンをとったエルマンノ・オルミ監督。
エジソンのもとで働いたこともあるという82歳の老監督をいったい何が突き動かしたのでしょうか。

以下は次回まで今しばらくお待ちくださいませ。
乞うご期待でございます。



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楽園からの旅人
監督・脚本/エルマンノ・オルミ、撮影監督/ファビオ・オルミ、編集/パオロ・コッティンニョーラ、音楽/ソフィア・グバイドゥリーナ
出演
マイケル・ロンズデール/老司祭、ルドガー・ハウアー/教会堂管理人、アレッサンドロ・アベル/保安委員、マッシモ・デ・フランコヴィッチ/医者
8月17日(土)より岩波ホールにてロードショー
2011年、87分、イタリア、イタリア語、カラー、日本語版字幕/吉岡芳子、配給/アルシネテラン、http://www.alcine-terran.com/rakuen/

by Mtonosama | 2013-08-03 07:05 | 映画 | Comments(4)