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殿様の試写室

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<   2014年 03月 ( 11 )   > この月の画像一覧

アクト・オブ・キリング -1-
THE ACT OF KILLING

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©Final Cut for Real Aps,Piraya Film AS and Novaya Zemlya LTD,2012


ああ、わからない。
こんなことを、地域が、世界が、許していたことが。
人はここまで明るく陽気に殺人できるということが。

こんなにも得意げな顔をして同胞を100万も200万も殺せる人間がいるのなら、
ハンナ・アーレントが同胞であるユダヤ人を敵に回してまで
「悪の凡庸」を訴えたことはどうなるのでしょう。

虐殺から40年近く経っていながら、虐殺者たちは反省どころか、
自慢げに自分たちが行ったことを映画にして、自分たちが出演しようというのです。

なんともショッキングな映画であります。
ああ、わかりません。

と、ひとりでわめいていても始まりませんね。
まずはインドネシアで何が起こったのかを見ていかねば。

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1965年9月30日。スカルノ大統領時代のこと。
スカルノ大統領――
1945年8月17日にインドネシアの独立を宣言した人物。
そう、あのデヴィ夫人の旦那さんだった大統領です。
そのスカルノ政権下で「9・30事件」が起こりました。


9・30事件
大統領親衛隊の一部が陸軍トップの6人の将軍を誘拐・殺害。
国営ラジオ局を占拠し、「9・30運動司令部」を名乗ってインドネシア革命評議会の設立を宣言。
クーデターを起こした国軍部隊は権力奪取に失敗しているので、正しくはクーデター未遂事件。
だが、一般に、未遂事件後のスハルトによる首謀者・共産党勢力の掃討作戦に関連する一連の事象全体を指して「9・30事件」と総称している。
1965年10月から翌3月までスマトラ、ジャワ、バリなどで100万人単位の人々が殺害されている。

映画に登場するのは
スハルト政権下で「9・30事件」の首謀者や共産主義者、華僑への虐殺を実行したチンピラたち。
自分たちのその行為を得々と語り、自らその時の様子の映画制作するところを
ジョシュア・オッペンハイマー監督が撮った入れ子構造のドキュメンタリー映画です。

事件の背景として、国軍と共産党の権力闘争、スカルノの経済政策の失敗にともなう国内混乱、マレーシアとの対立により国際連合脱退にまで至った国際政治におけるインドネシアの孤立などがあった。
この事件を契機として、東南アジア最大だったインドネシア共産党は壊滅し、初代大統領スカルノは失脚した。
インドネシア国内では「9月30日運動 Gerakan Tiga-puluh September」、略して「G-30-S」という。
また、クーデター部隊やその協力者をナチスのゲシュタポ(=恐怖政治のイメージ)にかけて、
「ゲスタプ(Gerakan September Tiga-puluh)」ともいわれる。(Wikipediaより)

目年増、耳年増のとのですが、
(あ、すいません。図々しかったです。目や耳に限定するまでもなく本物の年増です)
まったく知りませんでした。

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かつてオランダの植民地であったインドネシアは
戦後スカルノ大統領の下で植民地経済からの脱却をめざしていたんですね。
大統領は、当時勢力を拡大しつつあったインドネシア共産党をその支持基盤とし、
外交的にも親共路線を強めていました。

彼は外国企業の接収、新たな外資導入の禁止、欧米諸国を中心とした外資の排除を図ります。
また、植民地時代から経済分野で優勢な地位を固めていた華人を差別し、
さまざまな輸入品目の規制を図ることで地場産業の振興を図り、自立的な経済の樹立を目指しました。

ですが、これがうまくいきませんでした・・・

これらの経済政策は、
深刻な食糧不足とインフレ率数100%に達する末期的な経済状況を生み出してしまったのです。
さらに、スカルノ政権による外資凍結、外国企業接収は、
それらに利権を有していた欧米諸国からの非難もひきおこしました。

この危機的状況を乗り切るためにスカルノ大統領は民衆のナショナリズムを鼓舞。
その柱となったのがインドネシア国民党と宗教組織そして共産党の三者一体による挙国一致体制でした。

そこへ起きたのが「9・30事件」です。
事件への関与を疑われる難しい立場に追い込まれたスカルノ大統領。
当時、陸軍戦略予備軍司令官だったスハルトと会談しました。
そして、事件後の「治安秩序回復」に必要な全ての権限をスハルトに与えたのです。
これが後にスカルノ自身の政治生命を奪う致命傷になろうとは思いもよらなかったことでありましょう。
更に、この映画にあるような怖ろしい虐殺が起こることも・・・

あ、「9・30事件」前史だけで長くなりすぎてしまいました
知らなかった血塗られたインドネシア史ですが、
映画にはそのような画像はいっさい出てこないので、それだけはご安心を。
しかし、観客の想像力にとりついて離れないとんでもない手法の映画であります。
続きは次回までしばしお待ち下さい。
心肝を寒からしむる映画ではありますが、どうぞご期待下さいませ。



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アクト・オブ・キリング
監督/ジョシュア・オッペンハイマー、共同監督/クリスティーヌ・シン、匿名希望、撮影/カルロス・マリアノ・アランゴ=デ・モンティス、ラース・スクリ―、製作/シーネ・ビュレ・ソーレンセン、製作総指揮/エロール・モリス、ヴェルナー・ヘルツォーク、アンドレ・シンガー、ヨラム・テン・ブリンク、トシュタイン・グル―デ、ビャッテ・モルネル・トゥヴァイト、制作プロダクション/ファイナル・カット・フォー・リアル(デンマーク)
4月12日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次公開
2012年、デンマーク・ノルウェー・イギリス合作、インドネシア語、121分、日本語字幕/金子嘉矢、字幕監修/倉沢愛子、配給/トランスフォーマー
http://www.aok-movie.com/

by Mtonosama | 2014-03-30 06:53 | 映画 | Comments(4)
ワレサ 連帯の男 -2-
Walesa. Czlowiek z nadziei

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(C)2013 AKSON STUDIO SP. Z O.O., CANAL+CYFROWY SP. Z O.O., NARODOWE CENTRUM KULTURY, TELEKOMUNIKACJA POLSKA S.A., TELEWIZJA POLSKA S.A. ALL RIGHTS RESERVED


今またウクライナ・クリミア半島ではロシアが乗り込み、緊張状態にあります。
プーチンさん、あなたはスターリンやブレジネフのようにはならないでください。

という訳で、とてもタイムリーな公開となった「ワレサ 連帯の男」。
公開時の4月5日にはウクライナ情勢も良い方向に向っているといいのですが。

映画は1980年代初頭、イタリアの女性ジャーナリスト、オリアナ・ファラチが
インタビューのためにワレサのアパートを訪問するシーンから始まります。

さあ、ポーランド史の激動のページを見ていきましょう。


ストーリー
1980年代初め。
グダンスクのレーニン造船所で電気工として働くレフ・ワレサの家に
イタリアから有名なジャーナリスト、オリアナ・ファラチが取材に訪れた。

ワレサは1970年12月に起こった食糧暴動の悲劇から語り始めた。
物価暴騰に抗して立ち上がった労働者たちの行動を政府が武力鎮圧した事件だ。
この時、彼は両者に冷静になるように呼びかけたが、混乱の中、検挙される。

グダンスクのアパートでつつましく暮らしていたレフとダヌタ。そして、子どもたち。
この事件の後、家族は大きな歴史の転換期の真っただ中を進み、
レフはそのカリスマ性を高めていくのだった。

1970年の事件から9回目の記念日。
造船所で演説しながらリーダーとしての使命を自覚するワレサ。
それから半年後1980年8月。
ワレサはレーニン造船所のストライキ指導部のトップに立ち、
「連帯」委員長として自由と権利のために闘う反体制の象徴となる。
そして、8月31日。
政府と労働者との間で政労合意が行われる。
これは社会主義圏としては画期的なことであった。

1981年12月。戒厳令。
その布告直後、ワレサは自宅から連れ去られる。
その時ワレサは必ず戻ってくると、腕時計と結婚指輪をはずしダヌタに預けるのだった。
そのまま一年間軟禁されたワレサは自由を奪われ、仲間との接触も遮断される。
孤立の中で政府への協力を求められ続けた。

1982年ソ連のブレジネフ書記長死去。
ワレサは解放され、人々の熱狂的な歓迎の中、再び運動に身を投じていく。

1983年10月ワレサ、ノーベル平和賞受賞。
出国できないワレサに代わり、ダヌタが授賞式に出席、スピーチを行う。

1989年、政府、「連帯」、カトリック教会が円卓会議。
「連帯」の勝利。

1989年11月9日、東西ベルリンの壁が崩壊。
その6日後、ワレサはワシントンに招待され、スピーチを行うのだった……

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実写フィルムを挿入しながらの緊迫感溢れる映像には圧倒されます。

作品中、拘束されたワレサが政府側の人間に「お前も政治家ならイエスかノーか即答しろ」
という言葉を投げかけられ、
「俺は政治家じゃない。一人の電気工なんだ!」と答えるシーンがありました。
ここ、最高!
また、ダヌタが朝から晩までおしかける労働者や支持者に対し、一喝するシーン。
おー、よく言ってくれた!と胸のすく場面や、
思わずクスッと笑ってしまう場面などなど。

電気工から労働者たちのカリスマ的な指導者へと変わっていくレフ・ワレサの成長。
この映画はそんな英雄の記録にとどまってはいません。
これはレフ・ワレサという一人の英雄の話であるだけでなく、
すばらしい夫婦、家族の話でもある点にアンジェイ・ワイダの老成を見ることもできます。

夫だけではなく、弱々しかった若妻ダヌタも歴史の奔流に揉まれ、8人の子どもを産み育て、
公安の手によって夫を何度も連れ去られるという試練をくぐり抜ける内に
力強く変わっていきます。
レフ・ワレサのみが英雄なのではなく妻ダヌタも英雄なんです。
ダヌタを演じたアグニェシュカ・グロホフスカ、素晴らしかった!
(ポーランド映画はいいんですけど、この名前の難しさだけはなんとかしてほしいわ)

ワレサはレジェンドなんかじゃなく、
夫であり、父であり、一家庭人であることを
ダヌタもまた自分を犠牲にして英雄ワレサを支える妻という側面ではなく、
新しい社会のために共に闘った人間であることを描き出している感動的な映画でした。





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ワレサ 連帯の男
監督/アンジェイ・ワイダ、脚本/ヤヌシュ・グウォヴァツキ、撮影/パヴェウ・エデルマン、美術/マグダレナ・デュポン、音楽/パヴェク・ムィキェティン、製作/ミハウ・クフィェチンスキ
出演
ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ/レフ・ワレサ、アグニェシュカ・グロホフスカ/ダヌタ・ワレサ、マリア・ロザリア・オマジオ/オリアナ・ファラチ、ミロスワフ・バカ/造船所所長、マチェイ・シュトゥル/神父、ズビグニェフ・ザマホフスキ/公安職員、ツェザルイ・コシンスキ/公安職員
4月5日(土)より岩波ホールにてほか全国順次ロードショー
2013年、ポーランド映画、ポーランド語・イタリア語、127分、字幕翻訳/久山宏一、吉川美奈子、提供/ニューセレクト、NHKエンタープライズ、配給/アルバトロス・フィルム
http://walesa-movie.com/

by Mtonosama | 2014-03-27 06:20 | 映画 | Comments(6)
ワレサ 連帯の男 -1-
WALESA. MAN OF HOPE

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(C)2013 AKSON STUDIO SP. Z O.O., CANAL+CYFROWY SP. Z O.O., NARODOWE CENTRUM KULTURY, TELEKOMUNIKACJA POLSKA S.A., TELEWIZJA POLSKA S.A. ALL RIGHTS RESERVED


ベルリンの壁が倒れ、ソ連邦が崩壊する少し前、
東欧の人々が続々と脱出する様子を海外ニュースで見て異様な高揚感を覚えました。
あの時ほど世界が、歴史がいま目の前で動いていると実感したことはなかったような気がします。

東欧の民主化から25年。
レフ・ワレサはその口火となったポーランドのグダンスクで独立自主労組「連帯」を率いた初代委員長です。

当時、中学生や高校生だった方ならあの立派な口髭のおじさんを覚えておいでではないでしょうか。

レフ・ワレサ Lech Wałęsa
あちらの読み方だとレフ・ヴァウェンサと表記した方が正しいのだそうです。
そう言われても、ワレサの方がなじみ深いですからねえ。

レフ・ヴァウェンサ、いや、やっぱりワレサでいきます。


レフ・ワレサ
1943年9月29日生まれ。職業訓練学校を卒業後、
1967年グダンスクのレーニン造船所の電気工となる。
1969年、ダヌタ夫人と結婚。
1970年に食糧暴動の悲劇を目撃し、1976年以降、スト委員会の一員として活動。
1980年には物価値上げに端を発した造船所の争議を指導。
バルト海沿岸工場間ストライキ委員会に就任。グダンスク合意を勝ち取り、「連帯」の委員長となる。
1981年10月、全国大会で再選されるが、
12月ポーランド政府が戒厳令を発令し、
翌年11月まで身柄を拘束される。
1983年10月、ノーベル平和賞受賞。
1988年~89年の政府・「連帯」・カトリック教会との円卓会議実現に尽力。
1989年、「連帯」合法化後ポーランド初の部分的自由選挙で「連帯」を勝利に導く。
非共産主義政権発足。
1990年大統領に就任。1995年まで務める。

最近はあまり姿をお見受けしないという点でもまさに生きながらにしてレジェンドと化したワレサ氏であります。

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その生きた伝説レフ・ワレサを映画化したのが、
これまたポーランド映画界のアンジェイ・ワイダ監督。
今年米寿を迎えながら次々と話題作を送り続ける巨匠です。

アンジェイ・ワイダ監督。
その作品を初めて観たのは近所の名画座だったような。
「灰とダイヤモンド」(‘58)。
ズビグニエフ・チブルスキー演ずる主人公が干したシーツにしがみつきながら倒れるシーンが
思春期の少女(わたしのことです)の心をぶちぬきました。
この作品でアンジェイ・ワイダの名前を覚えました(遠い目)。

そのワイダ監督はグダンスク・レーニン造船所の労働者をテーマに
「大理石の男」(‘76)[鉄の男](‘81)と戦後ポーランドの変わりつつある時代を撮ってきました。

本作「ワレサ 連帯の男」は「男」シリーズから約30年を経て
三度同じテーマで描いた作品です。

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1970年から1980年代の東欧の国々はソ連の下、社会的に束縛され、経済的にも苦しく、
非常に困難な状況にありました。
1968年チェコ・プラハの春をソ連の戦車が踏みにじった光景もショッキングなものでした。
本作の舞台ポーランドでも同様に、人々は食糧を、そして、自由を、連帯を求め、闘っていました。
そのことを映画に記録し、後世に伝えるのは、同時代を生きた自分しかいない――
間もなく90歳になろうとするアンジェイ・ワイダ監督がまさにライフワークとして
メガホンをとったのが「ワレサ 連帯の男」です。

さあ、いったいワイダ監督は何を残そうとしたのでしょうか。
続きは次回までお待ちくださいませ。
乞うご期待でございます。



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ワレサ 連帯の男
監督/アンジェイ・ワイダ、脚本/ヤヌシュ・グウォヴァツキ、撮影/パヴェウ・エデルマン、美術/マグダレナ・デュポン、音楽/パヴェク・ムィキェティン、製作/ミハウ・クフィェチンスキ
出演
ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ/レフ・ワレサ、アグニェシュカ・グロホフスカ/ダヌタ・ワレサ、マリア・ロザリア・オマジオ/オリアナ・ファラチ、ミロスワフ・バカ/造船所所長、マチェイ・シュトゥル/神父、ズビグニェフ・ザマホフスキ/公安職員、ツェザルイ・コシンスキ/公安職員
4月5日(土)より岩波ホールにてほか全国順次ロードショー
2013年、ポーランド映画、ポーランド語・イタリア語、127分、字幕翻訳/久山宏一、吉川美奈子、提供/ニューセレクト、NHKエンタープライズ、配給/アルバトロス・フィルム
http://walesa-movie.com/

by Mtonosama | 2014-03-24 05:58 | 映画 | Comments(4)
ダブリンの時計職人 -2-
Parked

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©Ripple World Pictures Ltd・Helsinki Filmi Oy All Rights Reserve


低く雲が垂れこめ、波しぶきが風と共に打ちつける海辺の駐車場。
寒そうです。
観光バスの中から「素敵ねぇ。これが冬のアイルランドなのね」
と“いい旅夢気分”に浸る分には確かに趣深いものがありましょう。
イェイツの詩の一節を口ずさむ分にも最高のロケーションではありましょう。
イェイツを読んだことはありませんけど。

だけど、ここで夜を過ごすとなると、
それもヒーターもつけない車の中で、
ああ、病み上がりの体には想像するだけでもつらいです。

映画でよかった――

さあ、一体どんなお話なのでしょうか。


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ストーリー
ロンドンで働いていたフレッドは失業して故郷のダブリンに帰ってきた。
しかし、ダブリンにはもう親も家もなく、彼が暮らすのは海辺の駐車場に停めた車の中。
寒い夜を過ごし、朝日と共に目覚めるとカーラジオをつけ、ひげを剃り、
小さな植木鉢の植物に水をやる。
それから失業保険申請のため役所の窓口を訪れる。
失業保険の支給を受けるためには窓口で書類に記入し、
支給の基準を満たしているのかどうかを申告しなければならないのだ。
その基準の1つは「定まった住居があること」。
住む場所があり、郵便物を送ることができるということだ。
フレッドはいつもここで申請をはねられる。
そんなわけで今日も不親切な窓口の職員から却下のスタンプを捺した書類が突き返された。

ある日、フレッドが暮らす駐車場に黄色い車が入ってきた。
新しい隣人だ。
カハルというその青年は顔色が悪く、少し痩せ過ぎだが、なかなか良いヤツだった。
彼が大事そうに持っていた壊れた腕時計をフレッドが直したことから2人は次第に仲良くなり、
フレッドはカハルと日々を過ごす内に新しい自分を発見していく。
例えば、車は制限速度内で走るだけではなく、
思いっきりエンジンをふかしてドリフトするのが痛快だったりとか。
公衆トイレで体を洗うのではなく、市営プールでシャワーを浴び、泳げば気持が良いとか。

そんなある日、ちょっとした事件が起きる。
フレッドはプールで出会ったピアノ教師ジュールに一目惚れしてしまったのだ。
もの静かで上品な彼女と、住む家もない自分。
かなわぬ恋と一度は身をひこうとしたもののカハルに励まされ、
彼女と会うためアクアビクス教室に通う。そして自宅に招かれることに。
お茶を飲み、動かない時計を修理すると、2人の間の歯車も回り出す。

その一方、カハルはどうにも縁の切れないドラッグのため、
大きなトラブルに巻き込まれ……


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この映画を観た後、海辺を自転車で走ることがありました。
そのとき、海に面した駐車場の横を通ったのですが、
もしここに何ヶ月も車が停まっていたら、すぐに通報されてレッカー車が来るのだろうな、と思いました。

首都ダブリン市内の駐車場に長い間、同じ車が停まっている状況って、
ダブリン市民が鷹揚なのか、あるいは、そんなことには気を遣っていられないほど
経済状況が切羽詰まっているということなのか――

でも、どんなにお金がなくても、
フレッドは駐車場に停めた我が家をきれいに掃除し、整頓し、植木鉢に毎朝お水をあげ、
洋服もコインランドリーで洗濯し、いつも身ぎれいにすることを心がけています。
彼はホームレスだからといって自棄にならず、日々の生活を大切にしているし、
恋もするし、人としての誇りを大切に生きています。

思うに、失業し、住む家もない人間が
良い暮らしをしてる人を見れば、妬ましいし、羨ましいし、
第一、自分が惨めになるのじゃないでしょうか。

フレッドはおとぎ話の主人公か?
いえ、いえ。
小太りの冴えないおじさんだけど、まじめに生きてきた人が失業するのが現実なら、
失業、家なし生活でも、誠実に規則正しく生きる人がいることも現実。

明日がどうなるかはわからないのはフレッドだけではありませんものね。
だったら、今日という一日を規則正しく生活することが生きるということなのでしょう。
そう。時計のように、です。
時計のようなリズムは生きていく上で重要なことだと思うのです。

フレッドがいて、カハルがいて、ジュールがいて、杓子定規な役所の職員がいて、
それぞれがからみあって人生は流れていきます。

バブルがはじけようと、失業しようと、
人はまず今日という日を生きていかなくちゃならないのですものね。

そうしている内に小さな希望も灯り始めるんだよな。
大きな悲しみも優しい想い出となって心の糧になるんだよな。






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ダブリンの時計職人
監督/ダラ・バーン、プロデューサー/ドミニク・ライト、ジャクリーン・ケイン、脚本/キーラン・クレイ、撮影/ジョン・コンロイ、製作/Ripple World Pictures Limited,Ireland
出演
コルム・ミーニー/フレッド、コリン・モーガン/カハル、ミルカ・アフロス/ジュールス
3月29日(土)より新宿K’s inema、渋谷アップリンク他にて公開
2010年、アイルランド、フィンランド、94分、後援/駐日アイルランド大使館
http://uplink.co.jp/dublin/

by Mtonosama | 2014-03-21 06:22 | 映画 | Comments(9)
ダブリンの時計職人 -1-
Parked

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©Ripple World Pictures Ltd・Helsinki Filmi Oy All Rights Reserve

もう、このタイトルにそそられ、早く観にいきたいなぁと思っていました。
時計の一文字が入っているとズキューンと射ぬかれる感じがするとのです。
「時計じかけのオレンジ」(‘72)なんてのもありましたし、
先日映画館で観た作品「鑑定士と顔のない依頼人」のラストシーンでは、
巨大な時計ムーブメントにズキューンでした。

時計ってその小さな体で全宇宙の動きを体現してるって感じがしません?
宇宙であり、摂理であり、時間そのもの・・・・・

あ、すいません。最初から迷走を始めたようであります。

この邦題、ほんとに好きです。
で、うっとりとスクリーンに目をやっていますと、
タイトルが出ました。

ん?
Dublin も clocksmith も clockcraftsman も
「ダブリンの時計職人」という邦題に関連するような単語がどこにも見当たりません。
ただ一言 Parked とあるのみ。
このシンプルな英単語のどこにダブリンとか時計職人とかがあるの?

Parkedですよ。
Park
名詞なら「公園」「遊園地」。
でも、ここではedがついているので動詞。
となれば、他動詞。「駐車させる」、「~を駐車場に入れる」です。
parkedなので「駐車された」、「駐車場に入れられた」ですね。

はい、そこの居眠りしてるキミ!ここ重要ですよ。

そうなんです。「駐車された」。
これがポイントなんです。
駐車場に停められた車に暮らす中年のホームレスが主人公のアイルランド映画です。

監督はダラ・バーン。

ダラ・バーン監督
アイルランドの放送局RTEで20年間にわたりドキュメンタリー映画制作に携わる。
1994年、初の長編ドキュメンタリー監督作「JFK in the Island of Dreams」で欧州メディアプロジェクトの賞に輝く。以後、数々の社会的・政治的テーマを扱ったドキュメンタリーを制作。本作が初の長編劇映画デビューとなる。

ケルティック・タイガーとよばれる好況に沸いたアイルランドも2008年頃からバブルが崩壊。
現在は経済的に深刻な状況下にあります。
失業率は2013年10月で13.2%(日本4.0%)、失業保険申請者数40万9,900人。
アイルランドの首都ダブリンでは毎日7人がホームレス状態に陥っているということです。

これまでドキュメンタリーを数多く撮ってきたダラ・バーン監督。
バブル崩壊以降、街に増え続けるホームレスをテーマに作品を撮っていました。
そして、彼らについてもっと知りたくなり、
リサーチを重ね、大勢のホームレスに話を訊いてできあがったのが「ダブリンの時計職人」。

本作はフィクションであるし、
主人公のフレッドは監督の取材から生まれた仮想の人物ですが、
ダラ・バーン監督が描くとアイルランドのホームレスはこうまで愛すべき人物となる!
ということかもしれません。

そのフレッドが寝泊まりするのが海岸の駐車場に停められた1台の車の中。
そう、ここでparkedという原題に納得できるんです。

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フレッドに深くかかわる人物も紹介しましょう。
1人はフレッドと同じ駐車場に停めた車の住人カハル。
彼はジャンキーですが、根っからの中毒者ではないんですよ。
止めたい止めたいと思いながらも心の傷ゆえなかなかドラッグと縁が切れない青年です。
止めたいと思っても止められないから中毒というんでしょうが・・・

でもね、彼をみて、その人柄を知り、その体験を知ってしまうと
一概にジャンキーは悪い!って切り捨てられないんですよね。
裁判員の悩みがよくわかります。
それにカハルを演じたコリン・モーガンがまた良くって――
おばさんとしてはギュッと抱きしめたくなってしまうんです。
おっといけない。また過剰な感情移入。

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そして、もう1人。
アイルランド人の夫を亡くしたフィンランド出身のピアノ教師ジュール。
暗さと寂しさをたたえた瞳を持ち、フランクにもカハルにも優しい女性です。

あ、もうひとつ、大切なものがありました。
そう。寒々としたアイルランドの海です。
アイルランドってほんとに素敵ですね。

さあ、どんなお話なのでしょう。
乞うご期待でございますよ。



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ダブリンの時計職人
監督/ダラ・バーン、プロデューサー/ドミニク・ライト、ジャクリーン・ケイン、脚本/キーラン・クレイ、撮影/ジョン・コンロイ、製作/Ripple World Pictures Limited,Ireland
出演
コルム・ミーニー/フレッド、コリン・モーガン/カハル、ミルカ・アフロス/ジュールス
3月29日(土)より新宿K’s inema、渋谷アップリンク他にて公開
2010年、アイルランド、フィンランド、94分、後援/駐日アイルランド大使館
http://uplink.co.jp/dublin/

by Mtonosama | 2014-03-18 05:34 | 映画 | Comments(6)
三毛猫ひかちゃん -14-


あたしひかちゃん。

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そんなに食べているわけじゃないのに・・・

でも、どう見たってあたしの体型ってお隣の壺と同じよね。
さすがにショックで眠ったふりしちゃったわよ。
壺中天という言葉があるっていうけど、
これじゃ猫中壺だわ。

あ、壺中天って前にも言ったわね。
飼い主はどうも壺が好きみたいで、いつもそんなこと言ってるから、
まだ幼いあたしまで、こんな年寄りじみた言葉を覚えちゃった。

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あたし、長さも相当でしょ?
前脚をひっぱられたら、もう少し長くなりそう。
1メートルはあるかしら。
あらっ、お腹も相当だぶついてるわ。


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これでもこじんまりとまとまってるつもりなんですけど。

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あまり太り過ぎてもまずいと思い、時には、こうして戦闘態勢に入ることもあるのよ。

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でも、基本はこれよ。

猫、春眠暁を覚えず、ね。

皆さん、暖かくなってくると花粉だのマダニだの
よろしくないものも活動が活発になるから気をつけてね。
あたしもお外遊びは止めた方がいいかしら。

そうするとますます大きくなりすぎるの?
困ったわ。

この次お会いするときはもっと太ってるかも。
またね。

From ひかり


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by Mtonosama | 2014-03-16 06:22 | 映画 | Comments(12)
ランナウェイ・ブルース -2-
The Motel Life

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(C)2012 Motel Life LLC


この映画の主人公、フランクとジェリー・リーはネバダ州リノに暮らす兄弟です。
父も母も早くに亡くなり、二人だけで身を寄せ合って生きてきました。

ネバダ州はアメリカ合衆国の西部に位置する州で、よく知られている街はラスベガスです。
エルビス・プレスリーの♪ヴィヴァ ラスヴェガス♪なんて歌を思い出します。
なんてったって150歳ですから。

ネバダ州
ネバダ州は売春が合法化されているアメリカ合衆国の2つの州の1つ。その厳しく規制された公認の売春宿のほとんどは田舎の郡にある。(ロードアイランド州では金銭を対価とする性交渉は違法ではないが、売春宿の営業、売春あっせん、路上売春は違法)ネバダ州では免許を受けた売春宿以外での売春行為は例外なく違法である。一般的な理解に反して、ラスベガス(およびラスベガス都市圏を含むクラーク郡)では売春は違法である。2008年6~7月の時点で、ネバダ州に16ある郡のうち8つの郡で28軒の売春宿が営業している。(Wikipediaより)

ネバダ州って砂漠と売春の州というイメージ?
しかし、こんなイメージを持たれてしまった住人もつらいですね。

兄弟の暮らすリノは

アメリカ合衆国ネバダ州北西部に位置する商業、観光都市。人口は198,300人(2004年)で州内の規模はラスベガスに次ぐ。また、ラスベガスと共にカジノ・シティとしても名高い。街の愛称は、“The Biggest Little City In The World”(世界で一番大きい小都市)である。 (Wikipediaより)

あまり暮らしたいとは思わないけれど、
イメージ的には荒野を走り続けた末に到着したオアシスって感じですかね。

さあ、兄弟はいったいどんな旅をするのでしょうか。


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ストーリー
ジェリー・リーとフランクはシェラネバダ山脈のふもとリノの郊外に生まれた。
早くに両親を亡くした兄弟。2人の財産はわずかなお金と父のウィンチェスター銃だけ。

フランクは14歳の時から中古車店で働いていた。
店主のアール・ハーリーはフランクを実の息子のように可愛がり、
生きていくための知恵も与えてくれた。
例えばこうだ。
「頭の中に隠れ家を作って、つらいことがあった時はそこへ逃げ込め。にいさんにも夢を話してやれ」

フランクが痛快な冒険話を語り、絵のうまいジェリー・リーがその話をイラストにする。
2人で紡ぎ出した愉快な楽しい絵物語の中でつらい日々も笑いながら生きてきた。

子どもの頃に大けがを負い、何をやってもうまくいかないジェリー・リー。
だが、フランクはそんな兄を見捨てることはどうしてもできなかったし、
ジェリー・リーもまた弟の世話にはなるまいと思いながらも、頼れるのは弟だけだった。

フランクにはアニーという恋人がいた。
だが、アニーが母親に売春を強要されているところを目撃して以来、彼女から遠ざかってしまう。
母親から逃れ、今はエルコに移り住んだアニーはフランクを忘れることができずにいた。

事件が起きる。ある冬の日、ジェリー・リーは子どもを車ではね殺してしまったのだ。
フランクに迷惑をかけられないと自殺を図るジェリー・リーだったが、
死にきれず病院に担ぎ込まれる。

警察が迫り、結局、弟に頼るしかないジェリー・リー。
フランクは逃走資金をつくるため、父の形見のウィンチェスター銃を売り、わずかばかりの金に換える。その金をマイク・タイソンとジェームス・ダグラスの試合に賭けろ、と勧める友人。
フランクは迷った挙句、賭けに出た。
誰もがタイソン有利と思う中、なんとダグラスのKO勝ち。
生まれて初めての幸運。手にした金は9450ドル。

逃走用の車を買おうと久々に訪れたアールの中古車店。
アールは「お前は負け犬じゃない。胸を張って生きていくんだ」と送りだしてくれるのだった……

アール役のクリス・クリストファーソンが良い!
おじいさんになっても良い!!
良い感じに歳をとって登場してくれました。

話を追うだけだと、とても不運で、暗い人生を送る兄弟だけれど、
まるで、マッチ売りの少女のように、
自分で自分を暖めながら、ちゃんと生きていくところに涙もろい150歳はホロリときます。

逃走の途中で寒い戸外に縛られっぱなしの飼い犬を助け、一緒に旅をするところも良い!
泣かせどころいっぱいのマイナーコードが続いた後は痛快なアニメーションに転調して
兄弟だけでなく観客も紛らわせてくれる展開も良い!
ネバダ州を疾駆した気分にさせてくれる心優しいロードムービーでした。





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☆3月13日に更新しました。私ごとではございますが本日は誕生日でございます。映画に関連してはエミール・ハーシュの誕生日でもございます。吉永小百合さんもそうです☆

ランナウェイ・ブルース
監督/アラン・ポルスキー&ガブリエル・ポルスキー、脚本/ノア・ハープスター&ミカ・フィッツァーマンブルー、原作/ウィリー・ヴラウティン、製作/アラン・ポルスキー、ガブリエル・ポルスキー、アン・ルアーク、撮影/ローマン・ヴァシャノフ、音楽/デヴィッド・ホームス&キーファス・グリーン
出演
エミール・ハーシュ/フランク、スティーヴン・ドーフ/ジェリー・リー、アニー・ジェイムス/ダコタ・ファニング、クリス・クリストファーソン/アール・ハーレー
3月15日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
2012年、アメリカ映画、85分、カラー、配給/熱帯美術館、字幕翻訳/チオキ真理
http://runaway-blues.jp/

by Mtonosama | 2014-03-13 07:28 | 映画 | Comments(8)
ランナウェイ・ブルース -1-
The Motel Life

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(C)2012 Motel Life LLC


ロード・ムービー、エミール・ハーシュ、ダコタ・ファニング――
もうお気に入り満載の映画です。

車やバイクでどこかへ移動する映画って無条件に良いですよね。
そこがアメリカの荒野であっても、
ヨーロッパの見知らぬ街であっても。

「イージーライダー」やヴィム・ヴェンダースに骨の髄までむしばまれているとのであります。

その身を映画館のシートにあずけながら、
異空間や、さびれた砂漠の街や、人生のある時期に移動できることこそが
映画の醍醐味でありましょう。
映画は旅、旅は人生、そう、映画は人生なのであります。

最近、旅行に行ってないとの。
せめて映画で旅をさせていただきましょう。

「ランナウェイ・ブルース」。
もうタイトルからして移動感に満ち溢れています。
原題は“The Motel Life ”。
モーテルなんて、もう、ロード・ムービーのお約束ではないですか!
でも、あの華やいでいた50‘s、60’sの頃のモーテルは
いつ頃からか少しニュアンスが変わってきたような気がします。

結局アメリカへは一度も行かない内にモーテルが変質してしまったなんて悲し過ぎますが・・・

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この映画の主人公はモーテルに暮らす兄弟。
そうなんです、モーテルに暮らしているんですよ。
モーテルに暮らすって、日本の感覚からすればインターネットカフェに泊まる感じなんでしょうか。
インターネットカフェや漫画喫茶よりは広くていいじゃない?とは思いますが、
この映画のキーポイントでもある兄ジェリー・リーが描いたイラストを剥がした後の
モーテルの壁紙の白さがとてもわびしかったことはお伝えしておきましょう。

ネバダ州リノのモーテルに暮らすジェリー・リーとフランク。
兄ジェリー・リーを演じるのはスティーヴン・ドーフ。
ハリウッド娯楽大作からインディ系の映画まで幅広く活躍する個性派俳優です。

そして、不器用な兄を支える心優しい弟フランクはエミール・ハーシュ。
このエミール・ハーシュこそ、
究極のロード・ムービー「イントゥ・ザ・ワイルド」で鮮烈な印象を残した俳優です。
とのと誕生日が一緒なんて嬉しくなってしまいます。
あ、また関係ないことを。

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そして、このフランクの恋人を演じるのがこれまたお気に入りのダコタ・ファニングです。
さらに、さらに、必死に生きるフランクに、年長者として
人生のつらい部分をやり過ごす方法を教えてくれる中古車店の店長には、
なんとカントリー&ウエスタンの大御所クリス・クリストファーソンが扮しています。
彼もすっかりおじいさんになりましたが。

監督は本作が監督デビュー作となるアラン・ポルスキー&ガブリエル・ポルスキー。
監督としては新人ですが、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の「バッド・ル―テナント」(’09)
のプロデューサーとして知られています。
兄弟監督が、兄弟を主人公とする映画の監督としてデビューしたという訳です。

ローマ国際映画祭で観客賞をはじめ、最優秀脚本賞、最優秀編集賞、オンライン批評家賞の
四冠受賞をなしとげた作品ですよ。

あ、そうそう、この映画のもうひとつの主人公というべきジェリー・リーの描いたイラストが
アニメになって別世界を繰り広げるシーンは見ものです。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうね。
続きは次回までしばしお待ち下さいませ。



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☆3月10日に更新しました。沈丁花が香ってきますね。いつも応援してくださってありがとうございます☆

ランナウェイ・ブルース
監督/アラン・ポルスキー&ガブリエル・ポルスキー、脚本/ノア・ハープスター&ミカ・フィッツァーマンブルー、原作/ウィリー・ヴラウティン、製作/アラン・ポルスキー、ガブリエル・ポルスキー、アン・ルアーク、撮影/ローマン・ヴァシャノフ、音楽/デヴィッド・ホームス&キーファス・グリーン
出演
エミール・ハーシュ/フランク、スティーヴン・ドーフ/ジェリー・リー、アニー・ジェイムス/ダコタ・ファニング、クリス・クリストファーソン/アール・ハーレー
3月15日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
2012年、アメリカ映画、85分、カラー、配給/熱帯美術館、字幕翻訳/チオキ真理
http://runaway-blues.jp/

by Mtonosama | 2014-03-10 06:38 | 映画 | Comments(6)
あなたを抱きしめる日まで -2-
Philomena

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(C)2013 PHILOMENALEELIMITED, PATHEPRODUCTIONSLIMITED, BRITISHFILMINSTITUTE AND BRITISHBROADCASTING CORPORATION. ALLRIGHTSRESERVED


実は本作の背景にはアイルランドのカトリック修道院による赤ん坊売買があります。
こうした話はこれまでにも映画化されていまして、
当試写室でも2012年4月に「オレンジと太陽」(ジム・ローチ監督)
http://mtonosama.exblog.jp/17380409/ http://mtonosama.exblog.jp/17391816/
を上映しています。
こちらは1896年から1970年代にかけて行われていた「児童移民制度」を描いた映画で
社会派監督ケン・ローチの息子ジム・ローチらしく極めてシリアスなものでした。

本作の監督はスティーヴン・フリアーズ。
イギリスを代表する映画監督で今年73歳を迎えます。
「わたしの可愛い人 シェリ」(09)の監督です。
http://mtonosama.exblog.jp/14516305/ http://mtonosama.exblog.jp/14535505/

同じ英国の監督であり、
いずれも親子の別離を描き、ひき裂かれた親も子も大きな心の傷を負って生きる
ということが背景になっていながらこうまで違った風合いの映画になるとは!
なんとも興味深いことであります。
映画のエクリチュールとでも申しましょうか。
文体の違いは大きな作風の違いにも通じるのですね。

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いきなりネタばれ全開で申し訳ございません。
しかし、常々公言するごとく、映画はストーリーのみにて成り立つのではあらず、
という持論を持つとの。
え?公言してませんでしたっけ?
じゃ、ただいまをもって公言いたします。

映画は総合芸術であり、ストーリーが良くても、映像が悪ければダメだし、
映像が良くても俳優が悪ければダメ。
全てが良くても、それを観る時の体調や気分が悪ければダメ。
あらゆる環境が整って初めて感動を味わうことができるものです。
映画とはまさに一期一会なのであります。

と、居直り的な言辞を弄してしまいましたが、ま、その辺はご容赦ください。

次にまいりましょう。
ストーリーです。


ストーリー
フィロミナは長年看護士を務め、今は悠々自適の身。
ロマンス小説をこよなく愛し、娘と暮らす年金生活者。
だが、その日、彼女は心が晴れなかった。
古い写真を手にため息をつく彼女に娘のジェーンは声をかける。
「その子は誰?」
「今日はあの子のお誕生日。50歳になるのよ」
フィロミナは隠し続けていた秘密を語り始める。

1952年、アイルランド。
10代のフィロミナは未婚のまま妊娠。
幼い頃に母を亡くし、男女のことを誰からも教わったことのない彼女は
誘われるままに若い男と関係を持ってしまったのだ。
フィロミナは家を追い出され、修道院に入れられる。そこには同じような境遇の女の子たちがいた。
彼女は修道院で男児を出産し、その後、朝から晩まで修道院の洗濯女としてお礼奉公させられたのだという。

母の告白に驚いたジェーンはパーティ会場で出会った元ジャーナリストのマーティンに
母の体験が記事にならないかと持ちかける。
政府の広報担当を辞めさせられたばかりのマーティンはそんな三面記事など書かないと一蹴。
だが、思いなおしたマーティンは契約していた編集社にネタを持ちかけ、
数日後フィロミナお気に入りのファミレスで面会。
食事の好みもジョークもまったくかみ合わない2人だったが、
彼女の修道院での体験に目の色が変わるマーティン。

修道院では毎日朝から晩まで休みなく働かされ、
アンソニーと名付けた息子に会えるのも1日1時間だけ。
そして、3歳になったある日、アンソニーは突然養子に出される。
泣いて後を追ったフィロミナは息子を抱きしめることも別れのキスもできなかった。
修道院を出た後、何度居場所を問い合わせても応えはなかった――

マーティンのジャーナリスト魂に火がついた。

イギリスからアイルランドの修道院へ2人の道中が始まる。
彼女はお菓子を買いこみ、マーティンが借りてきた車に旅のお守りをぶら下げる。
修道院に到着。懐かしくもあり、悲しみのつまる場所だ。
10代のフィロミナに辛くあたったシスター・ヒルデガードには会えなかったが、
別のシスターが当時の記録は火事で焼けてしまったと告げる。
その代わりに1通だけ残っていたという宣誓書を手渡す。
そこには「アンソニーに対する全ての権利を永久に放棄する」と書かれ、
フィロミナの署名もあった。
それは信心深いフィロミナが神の罰を受けようと自ら署名したものだった。
だが、都合の良い書類だけが残されていることに不信感を抱くマーティン。

その後、修道院の近所のパブで怒りをぶちまけるマーティンに
バーテンがとんでもない事実を教えてくれた。
修道院の言う火事とはシスターたちが裏庭で記録を焼いたことだというのだ。
そして、その記録というのはアメリカ人に赤ん坊を1人1000ポンドで売っていたことだと――

燃えるジャーナリスト、マーティン。彼がフィロミナに提案したのはアメリカへ行くこと!
BBC、ワシントン支局に駐在していたマーティンには有力なコネもあるし、
費用は編集社から出してもらえる。
アメリカ旅行どころか飛行機も乗ったことのないフィロミナは大興奮。
アメリカにはいかなる運命が待ちうけているのか……

修道院でひどい目にあわされているにもかかわらず信心深い普通のおばちゃんフィロミナ。
いけすかない英国インテリのマーティン。
性格も趣味も生活環境もまったく異なる2人。
この2人の繰り広げる珍道中がサスペンスフルでありながら、
英国風のシニカルな笑いやらユーモアが見え隠れし、楽しくもあるんです。

絵に描いたように典型的ないやみ男マーティンが
フィロミナとのつきあいで次第に変わっていく様子には笑ってしまいます。

ロマンス小説のあらすじを延々と語り続けるフィロミナも相当どうしようもないおばちゃん。
でも、いざという時にはしっかりと対応できるところはさすが元看護士さん。

彼女を待っていた結末はしんどいものだったけれど、
それを忘れさせるくらい、3歳以降の息子の記憶や仕事を知ることができました。
彼女自身、新しい友人と息子のパートナーとの交流も始まりました。
奪われていた過去を取り戻すことができたんです。

長い人生にはいろいろなことが起こります。
それを追体験することは大変な勇気が必要だけれど、
その結果として得るものも大きいですね。
歳をとるって、人生を生き直す勇気と知恵を獲得するものなのかもしれません。

2人の名優によって人生の素晴らしさを楽しむことができました。
生きていてこその人生です。
良い映画でした。





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あなたを抱きしめる日まで
監督/スティーヴン・フリアーズ、脚本/スティーヴ・クーガン、ジェフ・ポープ、撮影監督/ロビー・ライアン
出演
ジュディ・デンチ/フィロミナ・リー、スティーヴ・クーガン/マーティン・シックスミス、ソフィー・ケネディ・クラーク/若き日のフィロミーナ、アンナ・マックスウェル・マーティン/ジェーン、ルース・マッケイブ/バーバラ修道院長、バーバラ・ジェフォード/シスター・ヒルデガード、ケイト・フリートウッド/若き日のシスター・ヒルデガード、ピーター・ハーマン/ピート・オルソン、メア・ウィニンガム/メアリー、ミシェル・フェアリー/サリー・ミッチェル
3月15日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
イギリス、2013年、カラー、98分、日本語字幕/松浦美奈、後援/ブリティッシュ・カウンシル、提供・配給/ファントム・フィルム
http://www.mother-son.jp/

by Mtonosama | 2014-03-07 06:59 | 映画 | Comments(16)
あなたを抱きしめる日まで –1–
Philomena

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(C) 2013PHILOMENALEELIMITED,PATHE PRODUCTIONS LIMITED,BRITISHFILMINSTITUTE AND BRITISHBROADCASTING CORPORATION.ALLRIGHTS RESERVED


映画スターに似ているといわれることは嬉しい場合もあるけれど、
それはやはりそのスターが誰かということによりますよね。
ジュディ・デンチだったらどうでしょう。
彼女の年齢を考えれば、似ているといわれることはビミョーでしょうか。
でも、友人に彼女にそっくりな人がいます。
顔とか年齢というより、その存在感が似ているので、
ジュディ・デンチの映画を観た後はいつも「あなたが出てる映画、観てきたよ」と報告します。
彼女は怒ることもなく、かといって大喜びすることもなく「そう」と応えます。

前置きが長いですよね。

「あなたを抱きしめる日まで」。
例のごとく、邦題は「なんとかなりません?」な感じです。
オリジナルタイトルはPhilomena。フィロミナ。主人公の名前であります。
50年前に生き別れた息子を捜すアイルランドのおばさんフィロミナ。
彼女を演じたのがジュディ・デンチなのですが、
きっとこの映画を観たらジュディ・デンチ似の全ての人が大喜びすると思います。
誇らしくなるとも思います。

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いや、なんとも良い映画なのです。
なんか心がほっこりするというか、
悲しいお話なのに笑えるし、
深刻なテーマなのに暗くなりません。
「ああ、いるいる。こんなおばさん」とクスクス笑いながらも、
人生の山坂に想いを馳せます。

やはりジュディ・デンチの名演あっての佳作であります。
そして、ジュディ・デンチとコンビを組んだスティーヴ・クーガンがまた良い!

話はちょっと飛びますが、3月3日アラン・レネ監督が亡くなりました。
彼は「俳優は尊敬すべき魔術師だ」という言葉を遺しましたが、
恐れながら、わたくしめもジュディ・デンチとスティーヴ・クーガンにこの言葉を捧げたいと思います。

この映画、こった作りが目につくというわけではありません。
丁寧につくり、よくできた脚本があり、良いキャスティングをし、
すばらしい俳優が最高の演技をするとこういう映画になるのだろうという作品です。

あ、また熱くなってしまったでしょうか。反省、反省。
どんな経緯で映画になったのかをご紹介しなくてはなりませんでしたよね。失礼しました。

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2009年、イギリスでアイルランド人の主婦フィロミナの実話が出版されました。
10代で未婚の母となり、3歳になったその子を奪われた彼女が
今は50歳になっている筈の息子を捜しにはるばるアメリカまで行くというお話です。
とあるジャーナリストをまきこみ、スパイ映画のような謎解きを経て真実に至る・・・
というのですが。

実話でありながら、スリリングな展開があり、
はたまた開いた口が締まらない驚くべき出来事もあり、素直に楽しんでしまいました。

おっと、ここでばらしていてはいけません。
さあ、どんなお話かは例のごとく次回までお待ちいただくことといたしましょう。
乞うご期待でございますよ。



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あなたを抱きしめる日まで
監督/スティーヴン・フリアーズ、脚本/スティーヴ・クーガン、ジェフ・ポープ、撮影監督/ロビー・ライアン
出演
ジュディ・デンチ/フィロミナ・リー、スティーヴ・クーガン/マーティン・シックスミス、ソフィー・ケネディ・クラーク/若き日のフィロミーナ、アンナ・マックスウェル・マーティン/ジェーン、ルース・マッケイブ/バーバラ修道院長、バーバラ・ジェフォード/シスター・ヒルデガード、ケイト・フリートウッド/若き日のシスター・ヒルデガード、ピーター・ハーマン/ピート・オルソン、メア・ウィニンガム/メアリー、ミシェル・フェアリー/サリー・ミッチェル
3月15日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
イギリス、2013年、カラー、98分、日本語字幕/松浦美奈、後援/ブリティッシュ・カウンシル、提供・配給/ファントム・フィルム
http://www.mother-son.jp/

by Mtonosama | 2014-03-04 07:05 | 映画 | Comments(16)