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殿様の試写室

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ヴィオレット ある作家の肖像
-2-
Violette

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©TS PRODUCTIONS-2013

本作はヴィオレットとボーヴォワールという女性が主人公の映画ですから、
ファッションも見応えがあります。
両作家のキャラクターがしっかり出ていて楽しいですよ。
ヴィオレットは鼻が大きくてエキセントリックでちょっぴりブサ子ちゃん
と、失礼な設定なのですが、
実はスタイルはモデル並みで、
ブランドから服を提供してもらったり、
ファッション誌に寄稿するなど
おしゃれな女性だったといいます。
ボーヴォワールのファッションと見比べるのも
この映画のもうひとつの楽しみ方といえそうです。

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ストーリー
第1章 モーリス
1942年、戦時下のフランス。
ヴィオレットはモーリスと共にパリを逃れ、
“夫婦”と偽ってノルマンディに疎開しながら闇屋をして生計を立てていた。
モーリスは挫折した作家で同性愛者。
ある日、闇の肉を仕入れていたヴィオレットは逮捕される。
釈放されて帰ってきた彼女を見ても気遣いひとつ見せず、彼女の愛を拒むモーリス。
歎く彼女に「書くことで想いを吐き出せ!」と言い放つのだった。
「母は私の手を握らなかった・・・」
書き始めるヴィオレット。初めての小説となる「窒息」だった。
ある日、彼女はシモーヌ・ボーヴォワールという女性の書いた
「招かれた女」という小説を手にした…

第2章 シモーヌ
闇商売で生活するヴィオレットだったが、
服や装飾品にばかり金をつぎ込み、部屋は貧しく汚い。

ボーヴォワールの家をつきとめたヴィオレットは
着飾った彼女が出てくるのを待ち伏せし、
自分が書いた小説「窒息」を読んでほしいと無理矢理押しつけた。
最初はまったく相手にしないボーヴォワールだったが、
ヴィオレットの才能を確信した彼女は出版の支援を約束する…

第3章 ジャン
小説「窒息」が出版された。
かつての恋人エルミーヌにそれを贈呈しようと会いにでかけたヴィオレット。
だが、エルミーヌはもう一度関係を求める彼女を拒むのだった。

ボーヴォワールを介してヴィオレットは作家ジャン・ジュネと親しくなる。
ヴィオレットは彼の「薔薇の奇蹟」を、ジュネは彼女の「窒息」を絶賛した。
ある日、ジュネは「窒息」の信奉者だというジャック・ゲランを連れてきた。
大金持ちの手稿収集家であり、香水屋である。
私生児のヴィオレット。金持ちだが同じく私生児のゲラン。両親を知らないジュネ。
奇妙に気の合う3人だった…

第4章 ジャック
ボーヴォワールへの激しい愛情を書いた「飢えた女」をジュネに見せるヴィオレット。

その頃ボーヴォワールは「第二の性」を書くことに全精力を集中させていた。
一方ヴィオレットはジュネが制作する映画のためにゲランの別荘に滞在する。
母親役を与えられたヴィオレットだが、
実の母への屈折した想いを抱く彼女は
“母”を演じることで不安定になり、現場から逃げ出す。
そして、心配して声をかけるゲランに思わず愛を告白する。
同性愛者のゲランは彼女の愛を拒絶。
その代わり「飢えた女」に出資し、出版することを約束するのだった…

第5章 ベルト
以前と同じ、薄汚れた部屋に暮らすヴィオレットを母ベルトが訪ねてきた。
体調の悪いヴィオレットに「それは更年期」だと教える母。

ボーヴォワールの家に向かったヴィオレットは大家から追い払われる。
ある日、ジュネの芝居稽古を観にいった彼女はそこにボーヴォワールの姿を発見。
「私を避けている」と彼女をなじるヴィオレット。
彼女は「『飢えた女』は素晴らしいが私に愛を求めないでほしい」と告げる・・・

ヴィオレットの部屋を初めてボーヴォワールが訪問。
「第二の性」を届けにきたのだ。
そこには“第二の性が第一だと証明したヴィオレットに”と献辞が記されていた。
センセーショナルな成功をおさめる「第二の性」。
一方「飢えた女」は一向に売れなかった…

第6章 フォコン
旅に出たヴィオレットは南仏プロヴァンスのフォコンという村に空き家を見つけた。
彼女は周囲の自然から霊感を受けたかのように「破壊」を完成。
だが、出版社は作品中のエロチックな描写を削除するように告げる。
ボーヴォワールも抗議したが、決定が覆ることはなかった。
傷心のヴィオレットは入院。入院費を払うというゲランをボーヴォワールは退ける。
ボーヴォワールは「友情ではなく義務として彼女を援助するから」という。
退院し、母と共に帰宅したヴィオレットは
出版社からの毎月の入金が実はボーヴォワールによるものだということを知った…

第7章 私生児
ヴィオレットはある日ルネという煉瓦職人と出会い、恋に落ちる。
だが、その出会いや彼との関係をも書き記す彼女。
1000ページにも及ぶ「私生児」を書きあげた彼女はボーヴォワールに原稿を届ける。
ところが、ボーヴォワールの様子が普段とは違っていた。
彼女の母が亡くなったのだ。
その姿を見て「母を失ったら生きてはいけない」とつぶやくヴィオレット。
「私生児」を書き上げ、母への想いと孤独を受け入れたヴィオレットだった。

1972年、プロヴァンスの明るい光の中。
やっと自分の居場所をみつけた彼女は65歳で死去。
その8ヶ月後、母ベルトも死んだ…

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ああ、なんて不器用な人生なのでしょう。
そして、正直な生き方なのでしょう。

ボーヴォワールもまた強いだけでなく
思わぬ脆さと意地の悪さとどっちつかずの優しさを持つ
一筋縄ではいかない女性だったのですね。

生きるってことは本当に大変なことなんだ・・・

6章までのフォコンに出会うまでのヴィオレットの格闘ともいえる日々。
しかし
フォコンに拡がる陽光やみなぎる緑。
この村の自然がヴィオレットに与えた穏やかな心と生活が
これまで緊張して観てきた観客にも安らぎを与えてくれるのでした。





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ヴィオレット
監督/マルタン・プロヴォ、脚本/マルタン・プロヴォ、マルク・アブデルヌール、
ルネ・ド・セカティ、撮影/イヴ・カープ、衣装/マドリーヌ・フォンテーヌ
出演
エマニュエル・ドゥヴォス/ヴィオレット、サンドリーヌ・キベルラン/ボーヴォワール、オリヴィエ・グルメ/ゲラン、カトリーヌ・イジェル/ベルト(母)、ジャック・ボナフェ/ジャン・ジュネ、オリヴィエ・ピィ/モーリス・サックス、ナタリー・リシャール/エルミーヌ、スタンレー・ヴェベール/ルネ
12月19日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
2013年、フランス映画、フランス語、カラー、字幕/松岡葉子、配給/ムヴィオラ
http://www.moviola.jp/violette/

by Mtonosama | 2015-12-09 06:39 | 映画 | Comments(2)

ヴィオレット ある作家の肖像
-1-
Violette

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©TS PRODUCTIONS-2013


ヴィオレット・ルデュックという作家をご存知ですか?
私は本作『ヴィオレット』で初めてその名を知りました。

でも、彼女の周囲の人は皆有名人ばかりです。
シモーヌ・ド・ボーヴォワールでしょ。
香水のゲランでしょ。
「泥棒日記」のジャン・ジュネでしょ。

ゲランやジュネの映画は観たことがありませんが、
ボーヴォワールなら当試写室で『サルトルとボーヴォワール』を
2011年に上映しています。
http://mtonosama.exblog.jp/16795799/ http://mtonosama.exblog.jp/16808562/

でも、ここにヴィオレットは出てきませんでした。
本作を見てしまうと、そこまで相手にされていなかったのかなぁと、
なんか余計に彼女の必死さと不器用な生き方が伝わってきて切なくなります。

それにボーヴォワールという人も演じる人によって
こうも感じが違ってくるものなんですね。
びっくりポンや。

というわけで今回はフランス映画です。
邦画が二作続きましたから。

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ヴィオレット・ルデュック(Violette Leduc、1907年4月7日 - 1972年5月28日)は、フランスの著作家である。1907年4月7日、アラスに生まれる。シモーヌ・ド・ボーヴォワールとの交流を経て、『私生児』などの作品で成功を収めた。1972年5月28日、フォコンにて死去。
著書
・私生児(1966年、二見書房)
・荒廃(1968年、二見書房)
・ボーヴォワールの女友達(1982年、土曜美術社)
(Wikipediaより)


え~っ、Wikipediaには、これだけしか出ていません。
これじゃ“生まれ、生き、そして、死んだ”ではありませんか。
あまりにさびしいので付け加えます。

私生児として生まれた彼女は、母親に愛されていないと想い続けてきましたが、
やがて小説を書くことにめざめます。
その後ボーヴォワールに出会い、彼女の助けによって1946年処女作「窒息」を出版。
ボーヴォワールの他、アルベール・カミュ、サルトル、ジャン・ジュネなどに絶賛されます。
しかし、女性として初めて自らの性を赤裸々に書いた小説は
当時の社会には受け入れられませんでした。
傷ついたヴィオレットは精神を病みますが、ボーヴォワールの支えもあって書き続けます。
そして、彼女は南仏の田舎町フォコンと出会い、パリから移ります。
そこで彼女の集大成ともいうべき「私生児」を執筆し、65歳でその地で亡くなります。

日本では上記3作が邦訳されているだけ。
本国フランスでも忘れられていた存在だったヴィオレットですが、
本作の公開を機に全集も出版され、時代を変えた作家として再評価されているそうですよ。

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本作は彼女の半生を7章で構成しています。
映画が小説のように仕立てられているんですね。
だから素直に順を追って鑑賞することができました。

監督はマルタン・プロヴォ。
『セラフィーヌの庭』でセザール賞最優秀作品賞他7冠に輝いた監督です。
映画化にあたり、ヴィオレット・ルデュックの全作品を読みこみました。

ヴィオレットを演じたのはエマニュエル・ドゥヴォスです。
付け鼻をつけ、ヴィオレットに似せて熱演。

付け鼻といえば
『めぐりあう時間たち』(‘02)でバージニア・ウルフを演じたニコール・キッドマンも
鼻をつけていたことで話題になっていましたよね。
女性作家というのは鼻が大きいものなのでしょうか。

あ、本作をご覧になる時は鼻のことを気になさらないように。
さあ、小説仕立ての映画って一体どんなものでしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



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ヴィオレット
監督/マルタン・プロヴォ、脚本/マルタン・プロヴォ、マルク・アブデルヌール、
ルネ・ド・セカティ、撮影/イヴ・カープ、衣装/マドリーヌ・フォンテーヌ
出演
エマニュエル・ドゥヴォス/ヴィオレット、サンドリーヌ・キベルラン/ボーヴォワール、オリヴィエ・グルメ/ゲラン、カトリーヌ・イジェル/ベルト(母)、ジャック・ボナフェ/ジャン・ジュネ、オリヴィエ・ピィ/モーリス・サックス、ナタリー・リシャール/エルミーヌ、スタンレー・ヴェベール/ルネ
12月19日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
2013年、フランス映画、フランス語、カラー、字幕/松岡葉子、配給/ムヴィオラ
http://www.moviola.jp/violette/

by Mtonosama | 2015-12-06 06:20 | 映画 | Comments(6)

母と暮らせば
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©2015「母と暮らせば」製作委員会


初めて長崎を訪れたのは高校の修学旅行です。
中国風の寺院や
聖人像や大浦天主堂を見ました。
中華街も行きました。
もちろん長崎の原爆のことは知っていたのに
この美しい街で多くの建物が壊れ、
多くの方が亡くなったことは深く認識できませんでした。

原爆が落とされて70年の節目に
このような映画を見られたのは感無量であります。

生涯で一番大事な作品をつくろうという思いでこの映画の製作にのぞみます

山田監督が井上やすし氏と語り合うように脚本をつくりあげたという本作。
山田作品におなじみの俳優さんに、二宮和也という才能も加わり、
感動的なエンタテインメント映画が生まれました。

ストーリー
1948年8月9日。長崎。
あの日から3年。
助産婦をして暮らす伸子の前にあの日原爆で亡くなった息子・浩二が
以前のおしゃべりな息子のまま、ひょっこり姿を現した。
伸子はびっくり。
というのも
その日浩二の墓前で、
一緒に来てくれた浩二の婚約者・町子に
「あの子は一瞬で消えてしまったの。もうあきらめるわ」
と告げたばかりだったからだ。
「元気だった?」思わずそう訊ねる伸子に浩二は大笑い。
「僕はもう死んでるんだよ。相変わらずおとぼけだね。母さん」

その日から浩二は時々伸子の前に現れるようになった。
楽しかった頃の思い出話や近所の人の話まで
話題はつきない。
だが、一番の関心事は浩二の恋人・町子のことだ。
結婚の約束をしていた浩二を突然失ってしまった町子。
あれから3年、小学校教師になった彼女は
心の持って行き場所もないまま、伸子を気にかけ、
折にふれ、訪ねてきてくれる優しい娘である。

そんな町子のことを伸子もまた気にかけている。
「浩二、もし町子に好きな人ができたら、諦めるしかないのよ。
だって、浩二はもうこの世の人じゃないんだから」
伸子の言葉に血相を変えて抗議する浩二。
「いやだ!町子には僕しかいないんだ」
わかってはいるが、町子のことを考えると
どうしても自分の死を受け入れられない浩二だった。
歎きながらフッとかき消える浩二。
悲しくなり、涙を流すといつも消えてしまうのだ。

母と二人でいるときはよくしゃべり、よく笑う浩二。
「浩二はよう笑うのね」
と言う母に
「悲しいことはいくらでもあるけん、なるべく笑うようにしとるのさ」

伸子はそんな息子が愛しくて仕方がなかった。
二人で過ごす時間は思えば奇妙なものだが、
昔のままの楽しい時間だった。
それは永遠に続くものに思えた……

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伸子の家に向かう坂道。
急な坂道を登り、ほっと息をつくと夕日が沈もうとしており
ミカン色の海と景色が拡がっています。

そこにはあまりにも平和で穏やかな人々の暮らしがあり、
原爆が落とされたことは信じられないほどです。

怒りの広島、祈りの長崎
という言葉がありますが、
おっとりとした伸子とおしゃべりな亡霊・浩二のやりとりには
怒りや激しさはありません。

でも、ハッと目を瞠ったシーンがあります。
「しようがないよ。そいが(原爆で死んだのは)僕の運命さ」
と言った浩二に
「運命?違う。たとえば 地震や津波は防ぎようがないから運命だけど、
これは防げたことなの。
人間が計画して行った大変な悲劇なの」
と母・伸子が応えたシーンです。

おっとり、おとぼけの伸子が強く応えたこの言葉には大変な力がありました。
吉永小百合を大いに見なおしたシーンでした。

さらに、山田監督作品には最近おなじみの黒木華さん。
彼女は良いですねぇ。
ごく普通のすっきりした顔立ちで特別美人じゃありません。

彼女の動向が本作の大きなポイントになるわけですが、
(それがなにかは是非本作をご覧の上でご判断いただきたく思います)
そのシーンでは思わず嗚咽しました。
あ、ダメです。今でも涙が出てきます。

そして、いつもは気にしない映画音楽も今回はきちんと聞こえました。
かといって音楽が際立って聞こえたという訳でもありません。
映画音楽のあるべき姿を教えてもらったような気がします。
坂本龍一もやっぱりすごいです。

是非ご覧になっていただきたい一作です。





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母と暮らせば
監督・脚本/山田洋次、共同脚本/平松恵美子、企画/井上麻矢(こまつ座)、撮影/近森眞史、音楽/坂本龍一
出演
吉永小百合/福原伸子、二宮和也/福原浩二、黒木華/佐多町子、浅野忠信/黒田正圀、加藤健一/上海のおじさん、広岡由里子/富江、本田望結/風見民子、小林稔侍/復員局の職員、辻萬長/年配の男、橋爪功/川上教授
12月12日(土)全国ロードショー
2015年、日本、配給/松竹

by Mtonosama | 2015-12-03 05:47 | 映画 | Comments(3)