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殿様の試写室

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クライマーズ・ハイClimber’s High

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          (C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ

     「1985年8月12日、羽田発大阪行き日航123便御巣鷹山に墜落」
    生まれていない人はともかく、あの頃、物心ついていた人なら
    あの悲惨な事故は記憶に刻みつけられているのではないでしょうか。

     あれからもう23年。これを短いとみるか、長いとみるか。
    遺族にとってはまだ23年。
    ざっくり開いた傷口にようやく薄い皮膜ができ始めたところかもしれません。
    映画化に当たっては実に細かい配慮が必要だったことでしょう。

     「クライマーズ・ハイ」は2003年に出版された横山秀夫の同名小説を
    映画化したもの。
    自身、地元群馬の地方紙社会部記者としてあの事故を取材した人間として
    その体験をベースに著した同書はNHKでも佐藤浩市主演でドラマになっています。

     事故を報道する側である新聞記者に軸足を置いた映画ではありますが、
    日本中をテレビの前に釘付けにしたあの事故にまつわる作品である以上、
    御巣鷹山の現場を離れるわけにはいきません。
    墜落現場の再現にはとても力が入っています。

    急峻な斜面から生えているような鶴のマークの尾翼。
    夏の空をかきまわすように旋回するヘリコプター。
    しかし、カメラが地面を避けて撮影するなど、
    神経を遣った演出です。
    当時、現場で取材したカメラマンも遺体をうつしこまないアングルに
    心を砕いたはずだからです。

    一匹狼の遊軍記者と過去の特ダネにいつまでもこだわる上司や同僚との確執
    中央紙に対する地方紙のびみょーな思い
    友情、家族、登山。
    盛り沢山な内容ながら、やはり関心はあの事故へと戻っていってしまいます。

     あ、しかし、キーワードが
    「チェック、ダブル・チェック」 
    ビリー・ワイルダー監督の「地獄の英雄」(’51)の中で
    田舎新聞の編集長がいつも言う口ぐせで、
    この映画の中でも主人公がたびたび口にする、
    重要な意味を持った言葉。
    アメリカで映画づくりを身につけた原田眞人監督らしい解釈です。
    要チェック、ダブル・チェックですよ。

    監督:原田眞人
    出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子ほか
    7/5(土)より、丸の内TOEI他、全国ロードショー
    配給:東映×ギャガ・コミュニケーションズ
    http://climbershigh.gyao.jp/

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# by Mtonosama | 2008-06-27 16:54 | 映画 | Comments(2)
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              COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY

いま ここにある風景
エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ「CHINA」より
Edward Burtynsky;Manufactured Landscapes

    中国福建省の巨大な工場。カナリア・イエローでコーディネートされた
    建物と労働者たちの作業着。
    カナダ・オンタリオ州の朱色に染まった川。
    正直言って、きれい!と感じてしまいます。
    というのも、カナダを代表する国際的な写真家エドワード・バーティンスキーの
    写真そのものが素晴らしいから。
    そして、彼が被写体として捉えた〈産業の風景〉が映像として動き出したのが
    この映画だから。
    「いま、ここにある風景」はジェニファー・バイチウォル監督が
    写真家バーティンスキーとともに旅し、
    その自然破壊の光景を撮影したドキュメンタリー映画です。

    Curiosity killed the cat.ということわざもありますが、
    好奇心からつい観てしまった映画。そこにあった悲鳴をあげる地球の惨状。
    知ってしまった想像を超える自然破壊。
    きれい、と感じたその映像の奥から恐ろしい現実が見えてしまいました。
    絶望のあまり、気の小さい猫ならほんとに死んでしまうかもしれません。

    「長江哀歌」(賈樟柯監督)でも見た三峡ダムの底に沈む街。
    それがここではもっと破壊が進み、すべてが瓦礫と化していました。
    それでも砂塵や煙の中で人々が働いています。
    中国だけではありません。
    バングラデシュでは痩せた若者が解体されるタンカーから
    船底に残った原油を手でかき出していました。
    消費者であり、生産者であり、被害者であり、加害者である私たちにとって
    目をそむけているわけにはいかない
    いまここにある風景です。

スタッフ
監督:ジェニファー・バイチウォル、撮影監督:ピーター・メトラー

7月12日東京都写真美術館ホール、シアター・イメージフォーラムにて公開、全国主要都市にて順次公開

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# by Mtonosama | 2008-06-23 14:45 | 映画 | Comments(2)
     
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ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン
Le Voyage du Ballon Rouge


      侯(ホウ)孝(シャオ)賢(シェン)監督がパリを舞台に映画を撮りました。
      アルベール・ラモリス監督の「赤い風船」に敬意を表した作品です。
       「珈琲時光」(‘03)で彼が神保町の古本街や鬼子母神の路面電車を
      舞台にしたときも感じましたが、どうも侯監督には見慣れた風景の中を
      流れる時間に魔法をかける力があるようです。
       この映画の中にも本来のパリとは違うようなアジア的なゆったりとした
      時が流れています。

 7歳のシモンは人形劇師のママと二人暮らし。駅前で街灯にひっかかった赤い風船を
 見つけるが、高すぎて手が届かない…
 ママは新作劇の発表準備で忙しく、中国人留学生ソンをベビーシッターとして雇い入れ
 る。ソンは映画学校の学生だ。シモンを学校に迎えにいき、家に向かう道すがらシモン
 に「赤い風船」の話を語りきかせるのだった…

       石畳の路地をソンの黒い髪とシモンの麦わら色の髪が揺れています。
      その後を赤い風船が子犬のようについていきます。
      少年と街並にカメラを向け撮影するソン。
      離婚したパパや友人の間にママはいろんな問題を抱え込んでいて
      時々おかしくなることもあるけど、
      そんなことは生きていれば誰にでも起こること。
      深呼吸しながらやり過ごせばいいよ、
      そんな気持ちにさせてくれる映画です。

7月中旬シネスイッチ銀座にてナイトショー公開、全国主要都市にて順次公開


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# by Mtonosama | 2008-06-17 06:59 | 映画 | Comments(0)
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   Copyright Films Montsouris 1956

赤い風船 
Le Ballon Rouge


古い映画を観て、登場する子どもの愛らしさに感動した後、
ふっと我に返ります。
「今じゃもうお腹の出たおじさん(おばさん)になってるんだよな」
なんか切ない。
「赤い風船」も「白い馬」も半世紀も前の作品なので、
主人公たちもおじさんどころか、おじいさんだけど…。

 昨年カンヌ国際映画祭監督週間に出品されたアルベール・ラモリス監督
の二作が上映されます。
 50年以上も前の作品なのに美しい映像で楽しむことができ、
 主人公の子どもたちも50年前のまま。か、可愛い。

  「赤い風船」(1956)はいわさきちひろさんの絵本で覚えている方も多いはず。
 真っ赤な風船とパスカルという男の子との交友(!)を描いたお話です。
 SFXなんて言葉すらない時代、丁寧に、丁寧に、手作りで作られた映画。
 まず映像にうそがないことに感激します。

  赤い風船は最後に悪ガキたちに割られてしまい、
 パスカルはパリのあちこちから現れた無数の風船に連れられて空高く飛んでいきます…

白い馬

 Crin Blanc



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  「白い馬」(1953)は南仏の湿地帯に生きる誇り高い野生馬『白いたてがみ』と
 少年フォルコとの友情を描いた物語。
 子どもって人ならぬものと心を通わせられる生き物だったのです。
 忘れてましたが。

  水を蹴って走る馬の力強さ。フォルコの凛とした乗馬姿。
 大地を駆ける野生馬の群れ。『白いたてがみ』をつけねらう牧場の男たち。
 フォルコは彼を守るため、広大な湿地帯を駆け抜けます。
 二人をその先で待っているものは…

  ラモリス監督の映画が名作と語り継がれるその理由を納得しました。
 映像の詩人にして職人、彼は偉大です。
 7月中旬シネスイッチ銀座で「赤い風船」「白い馬」の二本立てで公開。
 「赤い風船」にオマージュを捧げた侯孝賢 の「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」も公開。 

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# by Mtonosama | 2008-06-15 16:58 | 映画 | Comments(1)
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歩いても 歩いても

♪歩いても 歩いても 小舟のよぉ~うに♪
と頭の中でリフレインしながら、映画の解説を読んでいたら
『家庭劇(ホームドラマ)の伝統の中で』という一節が目に入りました。
小津安二郎が描いた父娘の哀感、
あるいは向田邦子の「寺内貫太郎一家」の系統なのだそうです。
この映画はホームドラマなんですね。
でも、ジャンル分けは不要です。
是枝裕和監督は今回も良い映画を見せてくれました。
小舟になって映画の流れに身を任せることのできる心地の良い作品です。

海の見える風景の中を赤い電車が行きます。あれは京浜急行?
夏の午後、傾斜地に密集した家々、都会ではないけれど田舎でもない。
既視感が期待感を呼びおこし、物語へと引き込まれていきます。

横山良太40歳。現在、求職中の絵画修復士で妻と息子と一緒に実家に向かっている。今日は兄純平の命日。坂道を登り、実家に着くと姉のちなみと母が台所で食事の支度をしている。父は引退した開業医。母は専業主婦。姉ちなみは夫と子ども二人で近所に住み、近々この家をリフォームして両親と暮らすつもりになっているのだが。にぎやかに昼食をとり、母と良太家族は墓参りにでかける…

横山家の夏の一日を淡々と描いた映画。
良平が抱き続ける兄への劣等感やひがみ、
後継ぎを失った父が決して口に出すことのない思い、
食事の支度に専念しながら、時に母の胸をよぎる
「あんなことで死んでしまった」長男への無念。
さまざまな色のさまざまな思いがこの映画の底に流れます。
是枝作品の常連YOUと今回が初出演の樹木希林のかけあいににんまりしながら、
夏の浜を洗う波のようなできごとに身を浸しているうちに結構グッショリぬれてしまう…
おだやかですが、じわりとしみこむ映画です。

スタッフ
監督・原作・脚本・編集/是枝裕和、撮影/山崎裕
キャスト
良平/阿部寛、妻/夏川結、ちなみ/YOU、母としこ/樹木希林、父恭平/原田芳雄

シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館他にて6月28日全国公開
 
# by Mtonosama | 2008-06-05 12:25 | 映画 | Comments(0)