顔のないヒトラーたち -1-
Im Labyrinth des Schweigens
(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG
いや、これは驚きました。
『顔のないヒトラーたち』という映画です。
オリジナルタイトルは“Im Labyrinth des Schweigens“(沈黙の迷路で)。
この手の、あるいは、この時代の映画はもういい、とお思いの向きもございましょう。
しかし、思いもかけなかった事実をこの映画は教えてくれました。
今の日本の隣国へのあり方についても多くの示唆を与えてくれるかもしれません。
ドイツといえばホロコーストであり、アウシュヴィッツです。
しかし、ドイツは戦後はっきりとナチズムの罪悪を後悔し、断罪し、
虐殺された人々に謝罪し続けています。
ヴィリー・ブラント西独首相がワルシャワ・ゲットーの記念碑の前で膝まづき、
ナチス・ドイツ時代のユダヤ人虐殺を謝罪する写真は印象的なものでした。
1970年12月7日のことです。
日本ではなんと申しましたでしょうか。
あ、そうそう自虐史観でしたね。
いつまでも昔のことにこだわっていてはいけないとか、
子や孫の代まで隣国に謝罪させるのは終わりにしようと
おっしゃった首相もいらっしゃいました。
ところが、ドイツでは孫や子の代になってもユダヤ人に対する罪を詫び、
もう90歳を過ぎた元親衛隊員や
収容所の看守たちを未だに裁き続けています。
そして、シリアから何十万もの難民も受け入れています。
本当にすごい国だと思います。
だからこそ、この映画を見てびっくりしました。
いや、びっくりしたばかりじゃ話が進みませんね。
びっくりの訳をお話ししましょう。
1950年代後半、映画の舞台は1958年のフランクフルトです。
この時代、多くのドイツ人はアウシュヴィッツのことを聞いたことがありませんでした。
アウシュヴィッツで何が行われていたかも知らなかったのだそうです。
『ハンナ・アーレント』
http://mtonosama.exblog.jp/20634449/ http://mtonosama.exblog.jp/20659388/
や、現在のドイツを見れば、ドイツは過去の過ちに真摯に向き合い、
戦後は一貫してナチズムと闘い続けてきたのだと思っていました。
しかし、実際は第二次世界大戦後ドイツは何年もの間アウシュヴィッツに
眼を向けようとせず、暗い過去について語ることを避けてきました。
そう、1963年12月20日、
フランクフルト・アウシュヴィッツ裁判の初公判が開かれるまでは――
これまで幾多の映画で
収容所から骨と皮だけになったユダヤ人たちが解放されるシーンが描かれ、
その後
ヒトラーとナチの残虐性を描く映画も数多く作られてきました。
アメリカ映画だけではなくドイツ人自身の手によっても。
最近ではSS高官の子どもの目から見たあの時代や
ヒトラーの内面をみつめた映画も作られましたが、
それはドイツ人があの時代を学校で学び、
猛省し、もう二度とあのようなことがあってはいけないと考えているからこそ、
「自虐的」ともいえる数々の作品を生み出してきたのです。
でも、やはりそんなドイツにも
あの事実を闇に隠し、眼をそらせていようという時期があったんですね。
1945年に第二次世界大戦が終わりました。
イヤなことは忘れて復興に励もうぜ!
と、ドイツも経済復興に必死だった筈です。
ホロコーストですら
聞いたこと、見たことがなければそれはなかったこととされてしまいます。
本作はドイツの歴史の空白を白日の下に曝した映画です。
一人のジャーナリストが、アウシュヴィッツ収容所の元親衛隊員が
学校の教師をしていることを知ったことから始まるこの作品。
さあ、いったい何があったのでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。
続
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☆9月28日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆
顔のないヒトラーたち
監督/ジュリオ・リッチャレッリ、脚本/エリザベト・バルテル、ジュリオ・リッチャレッリ、製作/ウリ・プッツ、サビーヌ・ランビ、ヤコブ・クラウセン、撮影/マルティン・ランガー、ロマン・オーシン
出演
アレクサンダー・フェーリング/ヨハン・ラドマン、アンドレ・シマンスキ/トーマス・グニルカ、フリーデリーケ・ベヒト/マレーネ・ウォンドラック、ヨハネス・クリシュ/シモン・キルシュ、ハンシ・ヨクマン/エリカ・シュミット、ヨハン・フォン・ビューロー/オットー・ハラー、ロベルト・フンガー・ビューラー/ウォルター・フリードベルク、ルーカス・ミコ/ヘルマン・ラングバイン、ゲルト・フォス/フリッツ・バウアー
10月3日ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸他全国ロードショー
2014年、ドイツ、123分、配給/アット エンタテインメント、字幕/安本煕生、http://kaononai.com/