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殿様の試写室

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アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)
-2-
A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE

アルプス 天空の交響曲 -2- A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE_f0165567_6421418.jpg


(C)VIDICOM 2013


本作を監督したのはハンブルグ出身1960年生まれのペーター・バーデーレと
1979年ロストック生まれのセバスチャン・リンデマン。
35歳のリンデマンがこの映画のコンセプトを立て、
55歳のバーデーレが製作を担当し、監督としてヘリコプターに乗り込みました。

カメラはヨーロッパアルプスの最高峰モンブランからイタリアとオーストリア国境付近
に拡がる山岳地帯、世界遺産ドロミーティまで、
天空の高みから鮮明な映像を映し出してくれます。

山々だけではなくダム湖に沈んだ村や
ルートヴィッヒ2世の城も空から眺め、
後退する氷河もこの眼で確認します。

時には鷲の目を持ち、鷲の速度でアルプスの上空を滑空。
この映像は鷲匠が所有するゴールデンイーグルに装着したカメラによって
実際に撮影されています。
まさに鳥の目で撮影されているわけですね。

アルプス 天空の交響曲 -2- A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE_f0165567_6463619.jpg


また、氷河上に溶融を遅らせるために置かれたマットの巨大さを見て、温暖化を実感。
太古の昔に起こった地球の大変動の痕跡を確かめることも。

あるいは山頂に建てられた十字架に山々の崇高さを見て、敬虔な思いになったり。

実際には経験できないことを見せてくれるものが映画なのでありますが、
この作品ほど自分の身体では絶対になしえないことを経験させてくれるものはありません。

ただひたすら鳥になって天高く舞う気分なのであります。
そして、この景観はいつまで楽しめるのでありましょう。

ああ、それにしても人間とは小さなものです。
その人間がアルプスにさえ毒牙をたてている様も垣間見えると思います。

眼前に拡がる想像もできない視野を享楽する94分間の飛行。
観客を導くナレーターは小林聡美です。

GWだからと込み合った地上世界で行列しなくても、
鳥の目でアルプス遊覧を楽しむというのも一興でありましょう。





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アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)
監督/ペーター・バーデーレ&セバスチャン・リンデマン、カメラ/クラウス・シュトゥール、編集/ローランド・ポッセール、航空撮影プロデューサー/アンドレア・モコシュ、撮影パイロット/グイド・バウマン、ヴァルター・リュッシャー、地上ドライバー/モーリッツ・ミュラー・プライサー、製作総指揮/ペーター・バーデーレ
ナレーション/小林聡美
4月18日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、93分、後援/ドイツ観光局、スイス政府観光局、オーストリア政府観光局、提供/ニューセレクト、配給/アルバトロス・フィルム、
http://alps-tenkuu.com/

# by Mtonosama | 2015-04-16 06:52 | 映画 | Comments(11)

アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)
-1-
A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE

アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)-1- A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE_f0165567_5432294.jpg

(C)VIDICOM 2013


とのはその昔、山ガールでありました。
大昔のことでありますが。

アルプスにも憧れておりました。
壁にかかったカレンダーの美しい景色を観て、これがアルプスか、
と知ったからであります。
はい、単純な理由であります。

それから幾星霜。
いたいけない幼女も大人になり、酸いも甘いもかぎわける年頃になりました。
そして、いまや150歳。
それでもアルプスと聞くと心が躍ります。

その昔スイス・グリンデルバルトへ行った時は
♪The Hills are alive with the sound of music♪
(『サウンド・オブ・ミュージック』The Hills are alive)
と恥ずかしげもなく歌ってしまいましたし、

ボーデン湖の向こうにアルプスの頂が見えたときは胸がときめきました。

飛行機の窓から雲の上につきだしているアルプスの峰々の先端を見たときも
これは幻ではなかろうかと思いました。

アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)-1- A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE_f0165567_5462615.jpg

アイガーやマッターホルンに登るなどという大それた望みはありません。
スイスやドイツでほんのちょっと見られただけで、いつお迎えが来ても良い心境でありますのに、
このような映画を観られるとはなんと幸せなことでありましょう。

それが本作『アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)』です。

ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、スロベニア、リヒテンシュタイン、スイス
の7ヶ国にまたがるアルプス山脈を空中から撮影したドキュメンタリー映画。

アルプスは東西約1000km、南北約150km。
最高峰のモンブラン(4810m)をはじめ、マッターホルンなど4000m級の高山が連なります。
漸新世(3400万年前から2300万年前)から中新世(2300万年前から530万年前)に
アフリカ大陸とユーラシア大陸が衝突したことで地上に生まれたアルプス。
その証拠は本作の中でも見ることができます。

この雄大な山脈を、鳥の目で、いえ、神の目で俯瞰する映画であります。

アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)-1- A SYMPHONY OF SUMMITS THE ALPS FROM ABOVE_f0165567_5482750.jpg

これを撮影したのは神の目ならぬ特殊カメラ。
アメリカ諜報局が開発したシネフレックスカメラです。
揺れに強く、ブレの無いズーム撮影を得意としています。
このカメラ、本来は軍事偵察目的で開発されたヘリコプター用カメラで
時速320kmまで撮影が可能です。
高性能ジャイロで揺れを防ぎ、HD潤滑高解像度ズームによって
高さ数千mから地面までをブレることなくズーム撮影できるというすごい代物。
といっても門外漢にはよくわかりませんが・・・

ペーター・バーデーレ監督はこのシネフレックスカメラを
前作『Die Nordsee von oben』 (’13)で試す機会を得て、
ドイツ本国で21万5千人の動員を記録していることが本作の撮影にもつながりました。

さあ、一体どんなアルプスを楽しむことができるのでしょうか。
めったなことではお目にかかれない映像をご自分の目で確認なさってください。



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アルプス 天空の交響曲(シンフォニー)
監督/ペーター・バーデーレ&セバスチャン・リンデマン、カメラ/クラウス・シュトゥール、編集/ローランド・ポッセール、航空撮影プロデューサー/アンドレア・モコシュ、撮影パイロット/グイド・バウマン、ヴァルター・リュッシャー、地上ドライバー/モーリッツ・ミュラー・プライサー、製作総指揮/ペーター・バーデーレ
ナレーション/小林聡美
4月18日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、93分、後援/ドイツ観光局、スイス政府観光局、オーストリア政府観光局、提供/ニューセレクト、配給/アルバトロス・フィルム、
http://alps-tenkuu.com/

# by Mtonosama | 2015-04-13 05:57 | 映画 | Comments(2)

ザ・トライブ
-2-
The tribe

ザ・トライブ -2- The tribe_f0165567_6151666.jpg


(C) GARMATA FILM PRODUCTION LLC, 2014 (C) UKRAINIAN STATE FILM AGENCY, 2014


聾唖者を描いた映画だからせりふがない。
当たり前かもしれませんが、
この素直さこそがこの映画を映画たらしめた画期的な点かもしれません。

一人の主人公が聾唖であるだけでなく、彼をとりまく周囲の人間がすべて聾唖――
そんな発想で映画を撮ることができるほど映画は自由な表現方法なのでした。
実験といっていいかもしれません。

普通、実験っていうとあまり面白くないもののような気がします。
でも、面白かったです。
目を奪われました。
ま、せりふがない分、目が頼りですから、目を奪われるのは当然ですが。

電車の中で時折見掛ける手話。
車内ゆえ、そのアクションは多少控えめではありましょう。
しかし、手話がわからなくても、控えめな動作でも、話に興じているのはわかります。

だから、映画の中で主人公たちが見せる感情を露わにしたボディアクションは
せりふ以上に多くのことを語るわけです。

さあ一体どんなお話でしょうか。

ザ・トライブ -2- The tribe_f0165567_6203782.jpg


ストーリー
セルゲイは聾唖者のための寄宿学校に入学する。
そこでは小さな子から大きな子まで含めた公式祝賀会が開かれていた。
どう見ても学校にしか見えないが、
その裏では犯罪や売春を行う悪の組織=族(トライブ)が形成されている。
入学するとすぐセルゲイも彼らによる手荒い仕打ちを受けるのだった。
リーダーを中心とする学生たちがみつめる中、
セルゲイは数人を相手に殴り合いを強要されるが、なかなか屈強な戦いぶりを見せる。
そして、彼もトライブに組み入れられていく。

トライブの主要な財源は売春だ。
セルゲイも先輩につき添い、
毎夜リーダーの愛人であるアナと同室の女生徒の二人を車に乗せ、
長距離トラックが駐車している場所に送り届ける。
凍りつくような寒さの中、何十台ものトラックの間を歩き、フロントガラスを叩き、
運転手たちにアナたちを見せ、交渉開始。
交渉が成立すれば彼女達は運転席に乗り込み、仕事をする。

ある夜、先輩が後方のトラックの発車に気づかず轢き殺されてしまった。
その後任に収まるセルゲイ。
要領よく仕事をこなし、夜ごとアナたちを仕事場へ送り届け、連れ帰るセルゲイだったが、
その内、アナを愛するようになる。
彼は悪事で稼いだ金を組織に上納せず、アナに貢ぎ、関係を持つようになる。

一方、アナは同室の女生徒とウクライナから逃げ出し、イタリアへ行くことを夢見ていた。
リーダーは出入国管理局でふたりのパスポートを入手した。

だが、アナへの想いを抑えきれないセルゲイは売春の元締めである教師の部屋を襲う。
金を奪い、それをアナに差し出し、
売春を止め、イタリア行きを取りやめるよう懇願するのだった。
アナは激しく拒絶する。

そして、リーダーたちからリンチを受け、傷だらけになったセルゲイは……

ザ・トライブ -2- The tribe_f0165567_6181682.jpg


その背景は、どこからか黴のにおいが漂ってきそうな古い校舎、
排気ガスが立ち込める長距離トラックの駐車場、
東欧の裏さびれた廃墟のような雰囲気に満ちた作品です。

とのはゲームはしませんが、
この雰囲気、この暴力、廃墟にうごめく若い無言の青年たちを観て
これはゲーム的世界観かもしれないと思ってしまいました。

1974年生まれのスラボシュピツキー監督。ゲーム世代です。

でありながら、作品中に漂うリアル感。

キエフで行われた本作の撮影は
ヤヌコビッチ政権に対する反政府デモの前に始まり、
ロシアによるクリミア支配の後に終わったということです。

その緊迫した空気感が映り込んでいたのかもしれません。

静かでやかましい映画であります。





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ザ・トライブ
脚本・監督/ミロスラヴ・スラボシュピツキー、撮影/ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ、サウンド・デザイン/セルギー・ステパンスキー
出演
グレゴリー・フェセンコ、ヤナ・ノヴィコヴァ、ロザ・バビー、オレクサンダー・アサドッチイ、オレクサンダー・シデリニコフ、サシャ・ルサコフ、デニス・グルバ、ダニア・ブコビイ、レニア・ピサネンコ、オレクサンダー・パニヴァン、キリル・コシク、マリナ・パニヴァン、タティアナ・ラドチェンコ、リュドミラ・ルデンコ
4月18日(土)よりユーロスペース、新宿シネマカリテ他にてロードショー
2014年。ウクライナ、カラー、132分、字幕無、手話のみ
提供/ミモザフィルムズ、彩プロ、配給/彩プロ、ミモザフィルムズ、後援/ウクライナ大使館
http://thetribe.jp/

# by Mtonosama | 2015-04-10 06:24 | 映画 | Comments(6)

ザ・トライブ
-1-
The tribe

ザ・トライブ -1- The tribe_f0165567_5164741.jpg

(C) GARMATA FILM PRODUCTION LLC, 2014 (C) UKRAINIAN STATE FILM AGENCY, 2014


春眠暁を覚えず、と申しますが、最近時々猛烈な睡魔に襲われるとのでございます。
それも、本来眠っていてはならない試写の途中に眠ることがあるのです。
やばいです。まずいです。

本作がまた全員聾唖者の出演なので手話のみ。
せりふなし、したがって字幕無し、吹き替え無し、音楽無し。
しかも上映時間は132分です。

ああ、また眠ってしまうか――
わざわざ試写を観にきて寝るなんて、映画関係者に申し訳ないし、すごい自己嫌悪です。

ところが、
これがあなた、
一睡もせず、しかも座席から身を乗り出さんばかりにして鑑賞しました。

せりふも音楽も一切ありませんが、
車道を車が疾駆する音、頬を打つ音、肌の触れ合う音・・・
さまざまな物理的な音は聞こえるので
無声映画とも違う不思議な映画感覚。
例えていえば、街やお店の中で人々の様子を露骨にみつめるという感覚の映画です。
実際に町中で気になる人がいても露骨にジロジロ見るなんてことはできませんから、
今までに経験したことのない感覚といえます。

とのの祖父は活動弁士でしたが、
祖父ならこの手話をどのように弁ずるのか。
と、ふと考えましたが、きっと祖父も手話を有声化しなかっただろうと思います。

時々、電車の中などで手話で会話している方たちをみかけることがあります。
とても靜かなのですが、その素早い手の動きを見ると、
とても話に熱中しておられるのだろうな、と思います。
彼らの周囲には特別なオーラが形成されている感じ。
『ザ・トライブ』もそんな映画です。

ザ・トライブ -1- The tribe_f0165567_518611.jpg


ザ・トライブ 
Tribe:辞書には
1.種族、部族 2.族、類 3.仲間、集団、連中 4.大家族 5.閥族、支族、氏族
おっと、
6.畜産用語で同じ雌を親に持つ雌系。主に牛についていう、
なんてのもありました。
この映画の場合は、3.仲間、集団、連中でしょうか。

本作は昨年のカンヌ国際映画祭で批評家グランプリ、フランス4ヴィジョナリーアワード、
ガン・ファンデーション・サポートの3賞を受賞。
その他、英国の権威ある映画雑誌「サイト&サウンド」誌のベスト10にも選ばれた問題作。
ウクライナの新人監督ミロスラヴ・スラボシュビツキーの長編デビュー作です。

ザ・トライブ -1- The tribe_f0165567_5213815.jpg

ミロスラヴ・スラボシュビツキー監督
サイレント映画へのオマージュを表現したかったというスラボシュビツキー監督。
1947年キエフ生まれの監督はサンクトペテルブルグのレンフィルム・スタジオに勤務。
短編映画『Diagnosis』(‘09)で10代の少年少女たちを主人公に描き、
次作『Deafness』で聾唖者の学校を舞台に言葉の無い映画に挑戦しています。

サイレント映画へのオマージュを抱きつつも、
彼の作りたかった映画はもの静かな映画とは違います。
無声映画とはいえ、役者たちは静かにふるまっていたわけではありません。
声が無いからこそ、
所作やボディランゲージを駆使して感情や心情を伝えようとしていました。

だからこそ、監督は声の出る俳優で本作を作ろうとは考えませんでした。
声の出る人は、話をする時に発音に必要な顔の筋肉しか使わないけれど、
聾唖者は体全体を使ってコミュニケーションを取ろうとします。
静かだけれど、強烈にやかましい映画。
それが監督のめざした映画だったのでしょう。

という訳で、本作に登場するのは全員聾唖者であります。
そのキャスティングには1年を要したということです。

今までに例を見ない映画故、前置きが長くなりました。
さあ、いったいどんなお話なのでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



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ザ・トライブ
脚本・監督/ミロスラヴ・スラボシュピツキー、撮影/ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ、サウンド・デザイン/セルギー・ステパンスキー
出演
グレゴリー・フェセンコ、ヤナ・ノヴィコヴァ、ロザ・バビー、オレクサンダー・アサドッチイ、オレクサンダー・シデリニコフ、サシャ・ルサコフ、デニス・グルバ、ダニア・ブコビイ、レニア・ピサネンコ、オレクサンダー・パニヴァン、キリル・コシク、マリナ・パニヴァン、タティアナ・ラドチェンコ、リュドミラ・ルデンコ
4月18日(土)よりユーロスペース、新宿シネマカリテ他にてロードショー
2014年。ウクライナ、カラー、132分、字幕無、手話のみ
提供/ミモザフィルムズ、彩プロ、配給/彩プロ、ミモザフィルムズ、後援/ウクライナ大使館
http://thetribe.jp/

# by Mtonosama | 2015-04-07 05:35 | 映画 | Comments(6)

グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~
-2-
THE GOOD LIE

グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~ -2- THE GOOD LIE_f0165567_643786.jpg

(C)2014 Black Label Media, LLC. All Rights Reserved.


さて、前回は『ぼくたちのムッシュ・ラザール』に心が泳いでいってしまい、
皆さまにはご迷惑をおかけしました。
戻ってまいりました。

いや、異文化の出会いや移民について描いたら、
その優しいまなざしでファラルドー監督の右に出る人はいないでしょう。

さあ、どんなお話かというと――

ストーリー
1983年、スーダン南部で内戦が始まった。
北軍による突然の襲撃で両親を殺されたマメールは
兄テオ、姉アビタル、生き残った子どもたちと共にケニアを目指す難民の列に連なる。
そこには兵士になるのが嫌で北部から逃げ出してきたジェレマイアとポールの兄弟も。
苦しい移動の途中では敵兵と出会い、狙撃され死んでいく子どもたちがいる。
あるいは、飢えと喝きからも多くの子どもが命を落とした。
ある朝マメールは敵兵にみつかってしまう。
だが、兄テオが弟を救うために身代わりとなって連行された。
テオに代わってリーダーとなったマメールは仲間を率いてカクマ難民キャンプに辿りつく。

それから13年。
キャンプで成長したマメール、アビタル、ジェレマイア、ポール。
彼らのもとにアメリカ移住という話が舞い込んだ。
胸躍らせて飛行機に乗り込み、JFK空港に降り立った彼らを待っていたのは
女性は一般家庭が受け入れるという移民局の規則。
姉アビタルとは空港で引き離されてしまった。

職業紹介所で働くキャリーはマメール、ジェレマイア、ポールを迎えるため
カンサスシティの空港へ向かう。
彼女の仕事は彼らに仕事を紹介すること。
今回もいつものようにてっとり早く片付けよう、というつもりだった。

翌朝、キャリーは3人を連れて面接に行くが、断られてしまう。
困った彼女はボスのジャックから彼らに
アメリカ式の笑顔や自己アピールの仕方などを指導してもらう。
それが効を奏してポールは組み立て工場に、マメールとジェレマイアはスーパーに就職。

マイクとジェリーという名札を与えられた2人は
スーパーには犬用の食べ物までもが売られていることに驚き、
賞味期限切れの食品がゴミ箱に捨てられていることに仰天する

なんとか新生活に慣れ始めたかに見えた3人だったが、
ポールは同僚に勧められて麻薬に手を出し、
ジェレマイアは貧しい人に廃棄食品を渡しているところを上司にみつかり、
医師になるため必死に勉強しているマメールは夢のかないそうにない現実に悩んでいた。

そんな中、いつしか3人に共鳴するようになっていたキャリーのところに悪い知らせが。
ポールが警察に連行されてしまったのだ……

グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~ -2- THE GOOD LIE_f0165567_6442098.jpg


キャリーと3人のとんちんかんな会話に笑わされます。
ま、そういうところはこの手の映画ではよくあるパターン。

共感できるのは彼らスーダンの若者たちがとても誇り高く生きていることです。
「難民キャンプから自由の国アメリカへ連れ出してやったんだぜ。感謝しろよな」
みたいな感じの映画だったらイヤだなって思っていたら見事に外れました。
それも良い方向に。

前回、マズローの5段階欲求説などと唐突に言い出したのには理由があります。

マメール、アビタル、ジェレマイア、ジャックが危険な村を離れ、
難民の列に加わり、キャンプで暮らす様子は
生理的な欲求であり、
安全・安心な暮らしがしたいという安全欲求であり、
集団に属したり、仲間が欲しくなったりする社会的欲求です。

そして、アメリカに渡り、
他者から認められたい、尊敬されたいという尊厳欲求を持ち、
そして、優しい嘘をつき、あることを行う感動のラストは
まさに、自分の能力を引き出し創造的活動がしたいという自己実現の欲求でした――

思わぬところで心理学の勉強にもなってしまう映画です。
つらい事件が続く今日この頃ですが、こんな映画で心を温めていただければと思います。





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グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~
監督/フィリップ・ファラルドー、脚本/マーガレット・ネイグル、製作/ロン・ハワード、ブライアン・グレイザー、カレン・ケーラ・シャーウッド、モリー・スミス、サッド・ラッキンビル、トレント・ラッキンビル
製作総指揮/アンドリュー・A・コソーヴ、ブロデリック・ジョンソン、キム・ロス、エレン・H・シュワルツ、ディーパック・ナヤール、ボビー&デボラ・ニューマイヤー、撮影/ロナルド・プラント
出演
リース・ウィザースプーン/キャリー、コリー・ストール/ジャック、アーノルド・オーチェン/マメール、ゲール・ドゥエイニー/ジェレマイア、エマニュエル・ジャル/ポール、クース・ウィール/アビタル、サラ・ベイカー/パメラ
4月17日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー
アメリカ、110分、字幕翻訳/稲田嵯裕里、後援/国際移住機関(IOM)国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、配給/キノフィルムズ、http://www.goodlie.jp/

# by Mtonosama | 2015-04-04 06:55 | 映画 | Comments(2)

by Mtonosama