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あの夏の子供たち -2-
Le père de mes enfants

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映画が上映されるまでのプロセスって、とてもとても大変です。
かのリヒャルト・ヴァーグナーは「オペラとは総合芸術である」といったそうですが、
いやいや、映画もまた偉大なる総合芸術です。

ストーリー
携帯電話で話しながら、パリの街を颯爽と歩くグレゴワール。
彼は製作会社ムーン・フィルムを経営する映画プロデューサーです。
ウィークデイは殺人的な仕事を精力的にこなし、
週末はパリ近郊の別荘で家族とともに過ごすのが長年の習慣。

その日もいつものように家族が待つ別荘へ車を走らせていると、
スピード違反でつかまってしまいました。
別荘への到着は大幅に遅れましたが、まだ幼い次女のヴァランティーヌと
末娘のビリーが大好きなパパに飛びつきます。
思春期の長女クレマンスだけは毎週末、家族と田舎で過ごすことに不満顔。
どこにでもいる平和で仲の良い家族です。
しかし、その夜グレゴワールは妻シルヴィアに仕事上の心配を打ち明けます。

月曜、グレゴワールは現像所への負債が100万ユーロに上っていることを
告げられました。
さらにスウェーデンで撮影中の映画のスタッフが、賃銀未払いを抗議して
ストを決行するという連絡も。
グレゴワールは小切手を2枚切り、賃金を分割払いにすることでその場をおさめます。
そんな状況にありながらも新人監督が持ち込んだ脚本に魅せられ、
映画化を検討するグレゴワール。

さまざまな不安を抱えながら、一家はイタリア旅行にでかけます。
旅先でも携帯電話を離さない夫に妻は怒りを隠しません。
しかし、電話は、先日分割払いで振り出した小切手が
2枚とも一度に現金化されてしまったというものでした。

パリへ戻ったグレゴワールを待ち受けていたのは絶望的な状況。

弱音を吐く夫をシルヴィアは必死に励ますのですが、
彼女の留守中、グレゴワールは自らの命を絶ってしまいました―――

彼の死後に残されたのは多額の借金と未完成の映画。
シルヴィアは追い詰められた夫を一人にしたことを悔いつつも、
友人であり映画プロデューサーであるセルジュはじめ、スタッフ達と相談し、
夫の会社ムーン・フィルムを守り抜くことを決意したのでした。
ですが…


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映画は総合芸術であると冒頭で言いました。

が、しかし、
映画も芸術もこの世界にある限り、経済活動から自由であることはできません。
経済性よりも良質の映画を送りだすことを重視するインディ系映画の製作会社が
不況の波にまず呑み込まれていくのはなんともいたましい事実です。

この映画のモデルになったアンベール・バルザンも、個性的な監督たちの作品をプロデュースしたインディペンデント映画のシンボルのような存在でした。
彼の死から2年後、セザール賞で作品賞を受賞した「レディ・チャタレイ」のパスカル・フェラン監督はそのスピーチの中で、テレビ局をバックにした大作や娯楽映画と、助成金を利用した新人監督の低予算映画の狭間で、意外にもシリアスなドラマを撮る中堅監督たちの映画制作が困難であることを訴えています。
 
観客の視線はついつい経営者としてのグレゴワールの死に向かってしまいます。
だって、あんなに颯爽と歩いていたグレゴワールが、
ぼろぎれのように舗道の上で死んでしまうんですから。

でも、
映画の中で、まだパパの死を理解できない小さな娘たちが、
両親の友人であるセルジュに向かって
「私たちこれからどうなってしまうの?」と訊ねるちょっと緊張するシーンがあります。
するとセルジュは答えるんですね。
「君たちはね、若くて美しい女の人に成長するのさ」
思わず、ため息が出ました。

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こんな優しくて素敵な言葉をかけてくれるおじさんが近くにいるのです。
パパの死は確かに悲しいことだけど、
家族に残されたものは悲しみや借金だけではありません。
パリが停電した夜、普段は見えない夜空の星がはっきりと見えたように
グレゴワールのいなくなった今こそ、家族の中には彼が残していった
希望そして映画が見えてくるのです。

ラストに流れるドリス・デイの「ケセラセラ」が教えてくれました。
♪whatever will be, will be♪人生はなるようになっていくものです。



最後になりましたが、長女クレマンスを演じたアリス・ド・ランクザンは
グレゴワールを演じたルイ=ド・ランクザンとは実生活でも親子なのだそうです。
彼女、すばらしく存在感のある女優でした。今後が楽しみな新星です。

映画って、こんなに多くの人の手を通して公開に至っているのだということをあらためて感じました。
というわけで、今回はスタッフ紹介をいつもより丁寧にしましたのでご覧ください。

あの夏の子供たち
監督、脚本/ミア・ハンセン=ラブ、撮影/パスカル・オフレー、録音/ヴァンサン・ヴァトゥ、オリヴィエ・ゴワナール、美術/マチュー・ムニュ、スクリプト/クレモンティーヌ・シェーファー、編集/マリオン・モニエ、キャスティング/エルザ・ファラオン、衣装/べトサベ・ドレフュス、ヘアメイク/ラファエル・ティエルスラン、製作監督/エレーヌ・バスティド、製作/レ・フィルム・ペレアス(フィリップ・マルタン、ダヴィッド・ティオン)、共同製作/27フィルム・プロダクション(オリヴィエ・ダミアン)、アルテ・フランス・シネマ、参加/文化・コミュニケーション省(国立映画センター)、カナル・プリュス、シネシネマ、フィルムフェルデルングスアンシュタルト
出演
キアラ・カゼッリ/シルヴィア・カンヴェル、ルイ=ド・ランクザン/グレゴワール・カンヴェル、アリス・ド・ランクザン/クレマンス・カンヴェル、エリック・エルモスニーノ/セルジュ、サンドリーヌ・デュマ/ヴァレリー、ドミニク・フロ/ベレニス
初夏、恵比寿ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
2009年、110分、フランス、フランス語、提供・配給/クレストインターナショナル
http://www.anonatsu.jp/


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by mtonosama | 2010-04-21 05:44 | 映画 | Comments(6)
あの夏の子供たち -1-
Le père de mes enfants

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皆さまは映画をご覧になるとき、何を基準になさいますか?

1.好きな俳優が出ているから?
2.タイトルが気にいったから?
3.ひいきにしている監督の作品だから?
4.プロデューサーが気になるから?
5.「殿様の試写室」が紹介していたから?
(な~~んて、ちょっと言ってみたかっただけだからお気になさらないように)

4.も5.もあまり無いですよね。
しかし、本作「あの夏の子供たち」は普段あまり意識に上ることのない
映画プロデューサーが主人公。
配給会社、現像所など、いままでスクリーン上でお目にかかることのなかった
映画を影で支える人たちも登場しています。

この映画では、映画の舞台裏、家族の愛、不況に翻弄される経営者が描かれ、
実在のプロデューサーがモデルになっています。
「なぜ、そこまで…」と思わせるほど
映画が好きで好きでたまらないプロデューサーのグレゴワール。
そんな彼を支えるスタッフと家族
他にも
芸術至上主義の監督、生活の悩みを訴える俳優、新作を持ち込む若い脚本家、
経営者が代替わりした現像所、製作された映画を劇場で上映するまで
公開劇場への営業、プリントの量産、宣伝活動を行う配給業者―-

これまでの映画ではあまり観たことのない映画界の舞台裏
それもインディ系(独立系)映画の舞台裏がこれでもかとばかりに登場します。
監督も「今までになかったんじゃないかしら」と言っているそうです。

本作が二作目となる監督・脚本を担当したのはミア・ハンセン=ラブ。
17歳で女優デビューした彼女は、その後22歳から25歳まで映画批評活動、
同時期に短編映画を監督。
さらに、監督、脚本家への道に進んだ根っからの映画人間です。

彼女の脚本家としての処女作「すべてが許される」(‘07仏)に着目したのが
アンベール・バルザンというプロデューサーでした。
そして、彼こそがこの映画のモデルであり、
彼と監督との出会いが
この映画を生み出すきっかけになったのです。

バルザンとの出会いは2004年初頭のこと。
しかし、彼は翌年2月に自殺してしまいました。
彼は死んでしまいましたが、「すべてが許される」は別の製作会社が引き継いで完成。
本作もその会社が製作しています。

プロデューサーというのは映画のために資金集めをし
映画完成に向けて、さまざまな条件を整える縁の下の力持ち。
本作の主人公も、こよなく映画を愛するインディ系映画のプロデューサーです。
監督や俳優の要求に耳を傾け、金策し、
良い脚本をみつけたら、どれほど金銭的に追い詰められていても、
なんとか世に送り出そうとする芸術の支援者であり、
同時に、製作会社という零細企業の経営者でもあります。

この映画の主人公だった映画プロデューサーのグレゴワールは
金策に行き詰まり、自殺してしまいます。
こんなご時世ですから、それは結構身につまされますが、
実は、映画はそれで終わらないし、それがテーマでもありません。

主人公だった――と過去形にしているのは、
プロデューサーの自殺が映画の終わりを意味しているのではないからです。
映画前半の主人公はプロデューサーである父親グレゴワールですが、
後半の主人公は彼の妻、そして娘たち。

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監督も言っています。
「私は彼(アンベール・バルザン)への感謝の念から本作を書いたわけではないの。―-中略――
失敗や挫折に押し潰されてしまったとしても、(映画には)それを超えるものが残っています。
自殺は事実ではあるけれど、たった一つの真実ではないわ」

《亡きプロデューサーにオマージュをささげるためにこの映画を作りました…》
という映画ではどうもなさそうです。

さて、いったい、どんなストーリーなのでしょうか?
続きは後編で。乞御期待!

To be continued.

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あの夏の子供たち
監督、脚本/ミア・ハンセン=ラブ、撮影/パスカル・オフレー、録音/ヴァンサン・ヴァトゥ、オリヴィエ・ゴワナール、美術/マチュー・ムニュ、スクリプト/クレモンティーヌ・シェーファー、編集/マリオン・モニエ、キャスティング/エルザ・ファラオン、衣装/べトサベ・ドレフュス、ヘアメイク/ラファエル・ティエルスラン、製作監督/エレーヌ・バスティド、製作/レ・フィルム・ペレアス(フィリップ・マルタン、ダヴィッド・ティオン)、共同製作/27フィルム・プロダクション(オリヴィエ・ダミアン)、アルテ・フランス・シネマ、参加/文化・コミュニケーション省(国立映画センター)、カナル・プリュス、シネシネマ、フィルムフェルデルングスアンシュタルト
出演
キアラ・カゼッリ/シルヴィア・カンヴェル、ルイ=ド・ランクザン/グレゴワール・カンヴェル、アリス・ド・ランクザン/クレマンス・カンヴェル、エリック・エルモスニーノ/セルジュ、サンドリーヌ・デュマ/ヴァレリー、ドミニク・フロ/ベレニス
初夏、恵比寿ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
2009年、110分、フランス、フランス語、提供・配給/クレストインターナショナル
http://www.anonatsu.jp/

by mtonosama | 2010-04-18 06:19 | Comments(6)