ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

タグ:わすれな草 ( 3 ) タグの人気記事


『わすれな草』
マルテ・ジーヴェキングさん来日

f0165567_68841.jpg


(C)Lichtblick Media GmbH


4月16日、赤坂の東京ドイツ文化センター
またの名をオーアーゲー(ドイツ東洋文化研究協会)
通称ゲーテ協会で
「認知症にやさしい」生活圏とは――
家庭及び地域における認知症との向き合い方について
と題したパネル・ディスカッションがありました。

ここに
『わすれな草』のダーヴィット・ジーヴェキング監督が
http://mtonosama.exblog.jp/27720980/
http://mtonosama.exblog.jp/27729241/
出席するというので行ってきました。

f0165567_6104841.jpg


ところが、
監督は家族の急病ということで欠席。
その代り、
監督の父であり、
本作の出演者でもあり、
主人公を一番身近で支え続けた
夫のマルテさんが出席しました。

他のパネラーは
若年性認知症デイサービスの創設者・前田隆行氏
認知症の人の認知機能障害に関する研究や
認知症の人を含めた社会環境のダイバーシティ実現
に向けた実践を中心に研究活動を行う研究者・河野禎之氏、
そして、若年性アルツハイマー型認知症の杉本欣也氏と町田克信氏。

若年性アルツハイマー型認知症の方を
拝見したのは初めてなので少し緊張しました。

という感想自体が禁忌になっているのではないか――
少し複雑な気持を拭うことができないまま
お話をうかがっていました。

☆認知症を恐れることはない

お二人は前田隆行氏が運営する
町田市の『DAYS BLG!』という
次世代型デイサービスに通っています。
前田さんは
「認知症は厄介ではあるが、恐れることはない。
自分なりに対策はとれる」と発言。

「認知症後の人生においては
生活の場がどうあるべきかを考え、
企業も自治体も住みやすい地域づくりを
考えていくべき」
と筑波大学研究者・河野禎之さん。

マルテさんは
「ドイツではこの病気に偏見があり、
友人たちが去っていった」
と語ります。

☆発病後は?

町田さんは
電気エンジニアとして働いていた頃に発病し、
発病後も仕事を続けていましたが、
トラブルはなかったといいます。

杉本さんは発病して
11年経過しましたが、
デイケアのメンバーに囲まれていると
楽しくて仕方がないそうで、
家にひきこもってはいません。
例えば、カーディーラーで洗車したり、
散歩の途中でみつけた
草ぼうぼうの家の草取りをしたりします。

お二人はデイサービスが楽しいということですが、
マルテさんの妻グレーテルさんの場合は
デイサービスが嫌いで、
4年間マルテさんと二人っきりで過ごしました。
認知症になると自尊心が崩壊し、
他者から認められていた部分が消え去り、
本人にも周囲にもつらいことです。

妻の介護に参りかけていた
マルテさんの転機となったのが息子ダニエルの登場。
息子は映画撮影を通じて父を助け、
母の介護もしました。

杉本さんは散歩をし、
町田さんは以前からの趣味である
山登りや無線ハムを続け、
生き甲斐を感じながら暮らしています。

健康な頃のグレーテルさんも好奇心が旺盛で
冒険したり、登山をしたり、バイオリンも上手でした。
しかし、
発病後は何もできなくなってしまいました。
ただ、人間に対する好奇心を失なうことはなく、
誰にでも屈託なく話しかけることはできたそうです。

☆ケアの場から生きる場へ

認知症はひとりひとり症状が違い、
こんな病気だと決めつけることはできません。
だから、家族が認知症になったり、
自分がそうなることを恐れていても始まりません。

社会的弱者も、健康な人も、皆が暮らしやすい社会を研究する
河野さんは認知症に優しい生活圏を作り出すことが必要だといいます。
例えば、交通、仲間、隣人など生活行為に伴う様々なシーンを
優しいものに変えていくこと。

認知症の人が暮らす場所を
ケアの場ととらえるのではなく
生きる場所ととらえ直すこと。
認知症の人が暮らす場は
サービスを受ける場ではなく、
生きている場なのです。

☆目の前にいる認知症の彼女と
新しい気持ちで向き合う


マルテさんは言います。
「アルツハイマーは治る病気ではありません。
だとしたら、周囲の意識を変えることです」
「頭の中のコンピューターに頼らず、
過去のグレーテルは忘れて、
いま目の前にいる認知症の彼女と
新しい気持ちで向き合うことです」
初めて会った人のような気持ちを持って接する――
そうして
「グレーテルとの間に新しい愛の形を発見しました」
非常に印象的な言葉でした。

f0165567_6195277.jpg



『DAYS BLG!』を運営する前田さんも
必要なのは認知症の治療ではなく、
周囲の治療だと言います。
社会の偏見を変えること。
「BLGは認知症当事者と話し、活動するという活動を通じて
気づきのターニングポイントを作り出していきたいと思っています」

私たちは認知症から遠くにいるために
気づけないということなのですね。

良いお話を聞くことができました。

最後に一冊の本をご紹介します。
「認知症になっても人生は終わらない」
認知症の私が、認知症のあなたに贈ることば
著:認知症の私たち
協力:NHK取材班


今日もポチッとお願いできればうれしゅうございます♪
↓↓↓↓↓

にほんブログ村

わすれな草
監督・脚本/ダーヴィッド・ジーヴェキング、撮影/アドリアン・シュテーリ、編集/カトリン・フォークト、音楽/ジェシカ・デ・ルイジ、製作者/マルティン・ハイスラー、
カール=ルートヴィヒ・レッティンガー
4月15日(土)渋谷ユーロスペース他、全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、88分、カラー、字幕/渋谷哲也、
配給/ノーム特別協力:ゲーテ・インスティトゥート/東京ドイツ文化センター、
http://www.gnome15.com/wasurenagusa/

by Mtonosama | 2017-05-07 06:53 | 映画 | Comments(12)

わすれな草
-2-

Vergiss mein nicht

f0165567_531525.jpg

(C)Lichtblick Media GmbH


人に歴史あり。
まさにそのことを実感させられる映画です。

常日頃、おばはん、ばばあ等と呼ばれ、
若くなければ、美しくなければ、人にあらず――
みたいな括り方をされている150歳。

でも、おばはんだってその年齢分の人生を生き、
歴史にかかわり、時代を創ってきたんですけどねえ。

本作には政治運動に生き、
奔放な恋もし、
今はアルツハイマーとなって
日々記憶を失っていく一人の老女が描かれています。

でも、決して
昔は良かったのに、認知症になってしまってはねえ、
人生って虚しいねえ、
という映画ではないんですよ。

ストーリー
ダーヴィッドは認知症になった母グレーテルの世話を手伝うために
フランクフルト近郊の実家へ戻ってきた。
父のマルテが長い間グレーテルを介護してきたが、ちょっと疲れてしまったからだ。
ダーヴィッドは母の世話をしながら、昔からの親友のカメラマンと共に
母と過ごす時間を映像に記録する。
理性的だった母も、病によって心の欲するままに暮らしているように見える。
息子のダーヴィッドを夫と思い込み、
父が思わず嫉妬したり。
かつてはそれぞれに恋人を持ち、個人主義的に思えた両親の夫婦関係も
今では手を取り合い、肩を抱き合い、
素直に愛情を表わしあえる関係に変わってきた……

f0165567_533403.jpg

映画の撮り始めから終盤――
終盤とはつまり母グレーテルの最期につながるのですが、
最初は彼女の目にも力強さが宿り、かつての美貌の片鱗も顔を覗かせています。
でも、次第にその目から力は失せ、動きも緩慢なものになっていきます。

ダーヴィッドが少し目を離せばベッドにもぐりこみ、
運動を促せば、あれこれ屁理屈をこね、
薬を飲むように言えば「あなたが飲んでおいて」と返してきます。
言うことを聞かない子どもみたいなものです。

身体が大きいから抱き上げて無理矢理やらせることができない分、大変なんですが。
でも、グレーテルは伸び伸びと暮らし、
父も息子も抑えつけることはしません。
根底に深い愛があるからなんですね。

認知症になることを極端に恐れる余り、
そうした老人の存在を否定しようとしていたのではないかと
気づかされてしまいました。
f0165567_5353053.jpg

グレーテル・ジーヴェキング
母グレーテルは1965年に苦学して修士号を取得し、放送局で働いていました。
1966年マルテと結婚。1967年に長女が誕生。
その頃、政治に目覚め、マルテと共に社会主義ドイツ学生連盟に参加しました。
その後も高齢になるまで政治活動を続け、
緑の党、エネルギー転換委員会、女性運動などに関わってきました。
2005年、記憶力の減退が顕著になり、
2008年にはアルツハイマー型認知症と診断されました。

嗚呼、人に歴史あり。

映画の中に挟まれる母グレーテルの若き日々。
とても美しい人です。
図書館をめぐり、60年代の政治運動を調べ、
当時の母の恋人にも取材する息子。
過去と現代が描き込まれ、ある種、暴力的なまでの印象の差異に戸惑います。

そして、介護事情の彼我の違いにも驚かされつつ、
夫マルテの母、つまり、グレーテルの姑が90歳を超えながら矍鑠とし、
グレーテルを施設に入れるよう勧める場面にも複雑な気持ちにさせられました。

150歳のとのも
高齢者も
高齢者予備軍も
グレーテルの子ども世代も
感じるところの多い映画だと思います。







今日もポチッとお願いできればうれしゅうございます♪
↓↓↓↓↓

にほんブログ村

☆4月16日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆

わすれな草
監督・脚本/ダーヴィッド・ジーヴェキング、撮影/アドリアン・シュテーリ、編集/カトリン・フォークト、
音楽/ジェシカ・デ・ルイジ、製作者/マルティン・ハイスラー、カール=ルートヴィヒ・レッティンガー
4月15日(土)渋谷ユーロスペース他、全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、88分、カラー、字幕/渋谷哲也、
配給/ノーム特別協力:ゲーテ・インスティトゥート/東京ドイツ文化センター、http://www.gnome15.com/wasurenagusa/

by Mtonosama | 2017-04-16 05:41 | 映画 | Comments(8)

わすれな草
-1-

Vergiss mein nicht


f0165567_623392.jpg

(C)Lichtblick Media GmbH


いつか来た道、いずれ行く道
とはよく聞くし、よく言う言葉です。

150歳のとのもいっぱしの年寄りぶって
この言葉を口にしますが、
一つの映画作品の中で
それもドキュメンタリー作品の中で
美しく若かった頃の昔の姿と
人間関係も、それに伴う想い出も、記憶もなくしてしまった
現在の姿を見せられると
自分の人生そのものを揺さぶられるような気持になります。

f0165567_662830.jpg

アルツハイマーの妻、
彼女を支える夫、そして、その家族。

本作は
記憶を失ったグレーテル・ジーヴェキングの末息子、ダーヴィッドが
父に代わって母を介護し、
時に明晰で、時に夢見るような彼女の日常と、
左翼運動の闘士だった若く美しい母の映像とを
織り交ぜながら作り上げたドキュメンタリー映画です。

穏やかでありながら
いずれ行く道を想わざるを得ない作品といえましょう。

監督は言っています。
「認知症になった母から、父と僕たち子どもが学んだことがある。
愛情を直接示すこと、ふれあいを持つこと、
そして、一緒に寄り添うことが、
家族にとっていかに大切で価値があるかということだ」

ダーヴィッド・ジーヴェキング監督
1977年ヘッセン州フリートゲルク生まれ。
フランクフルト近郊のバート・ホンブルクで育つ。
2000年から2007年ベルリンドイツ映画テレビアカデミー(dffb)で学ぶ。
在学中から映画やテレビの編集、助監督、出演者として活動。
ベルリン映画祭タレントキャンパスに参加し、
いくつかの映画プロジェクトを完成させる。
短編映画『撮り足し』(’00)でヘッセン州若手映画賞を受賞。
セミドキュメンタリー短編映画『アメリカ大使館』(’03)で
3つのドイツ若手映画賞を受賞し、2005年のカンヌ映画祭に招待される。
2007年、卒業制作『セネガル=ドイツ』がミュンヘン映画祭で初上映され、
2010年、劇場デビュー作『ダーヴィッドは空を飛びたい』で注目される。
ベルリン映画祭での初上映後40以上の国際映画祭で上映される。
ヘッセン州映画賞の最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞し、各国で劇場公開。
2012年、劇場映画第2作『わすれな草』は再びヘッセン州映画賞を受賞。
ワールドプレミアは第65回ロカルノ映画祭「批評家週間」で主要賞を獲得。
2013年、同名書籍が出版される。

映画の中では
思い通りにならない母に対して、
一生懸命ではあるけれど、
なんとなくイラッとする様子も伝わってくる
気楽な独身息子に見えましたが、
ドイツ映画界では結構注目を浴びる人物でした。

そんな彼がこの映画を撮ろうと思ったのは
母の介護が父一人の手には余るようになったため。
彼が手伝い、母の映画を撮るという企画にすれば、
時間も労力も介護のために十分に使えて一石二鳥だと考えたんですね。
しかし、家族の了解を得ることと、
作品が両親にとってプラスになることが撮影の第一条件です。

撮影を開始した時期は
母親が具体性のない事柄を理解できなくなり始めた頃。

カメラを抱えた見知らぬ人が家の中にいるのを見て不思議がる母に
「母さんの映画を撮っているんだよ」と説明しても、
すぐに忘れてしまったそうです。

f0165567_682064.jpg

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多く、男性よりも女性に多く見られ、
脳血管性の認知症などの患者数が横ばいであるのに対して、
増加の傾向があるといいます。

大変だったろうな、と思いつつ、
穏やかで安らかで
時々クスッと笑えるような夫婦や母子の姿によって
つらいテーマも直視することができました。

さあ、いったいどんな映画なんでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



今日もポチッとお願いできればうれしいです♪
↓↓↓↓↓

にほんブログ村
☆4月13日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆


わすれな草
監督・脚本/ダーヴィッド・ジーヴェキング、撮影/アドリアン・シュテーリ、編集/カトリン・フォークト、音楽/ジェシカ・デ・ルイジ、製作者/マルティン・ハイスラー、カール=ルートヴィヒ・レッティンガー
4月15日(土)渋谷ユーロスペース他、全国順次ロードショー
2013年、ドイツ、88分、カラー、字幕/渋谷哲也、
配給/ノーム特別協力:ゲーテ・インスティトゥート/東京ドイツ文化センター、http://www.gnome15.com/wasurenagusa/

by Mtonosama | 2017-04-13 06:14 | 映画 | Comments(0)