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ダブリンの時計職人 -2-
Parked

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©Ripple World Pictures Ltd・Helsinki Filmi Oy All Rights Reserve


低く雲が垂れこめ、波しぶきが風と共に打ちつける海辺の駐車場。
寒そうです。
観光バスの中から「素敵ねぇ。これが冬のアイルランドなのね」
と“いい旅夢気分”に浸る分には確かに趣深いものがありましょう。
イェイツの詩の一節を口ずさむ分にも最高のロケーションではありましょう。
イェイツを読んだことはありませんけど。

だけど、ここで夜を過ごすとなると、
それもヒーターもつけない車の中で、
ああ、病み上がりの体には想像するだけでもつらいです。

映画でよかった――

さあ、一体どんなお話なのでしょうか。


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ストーリー
ロンドンで働いていたフレッドは失業して故郷のダブリンに帰ってきた。
しかし、ダブリンにはもう親も家もなく、彼が暮らすのは海辺の駐車場に停めた車の中。
寒い夜を過ごし、朝日と共に目覚めるとカーラジオをつけ、ひげを剃り、
小さな植木鉢の植物に水をやる。
それから失業保険申請のため役所の窓口を訪れる。
失業保険の支給を受けるためには窓口で書類に記入し、
支給の基準を満たしているのかどうかを申告しなければならないのだ。
その基準の1つは「定まった住居があること」。
住む場所があり、郵便物を送ることができるということだ。
フレッドはいつもここで申請をはねられる。
そんなわけで今日も不親切な窓口の職員から却下のスタンプを捺した書類が突き返された。

ある日、フレッドが暮らす駐車場に黄色い車が入ってきた。
新しい隣人だ。
カハルというその青年は顔色が悪く、少し痩せ過ぎだが、なかなか良いヤツだった。
彼が大事そうに持っていた壊れた腕時計をフレッドが直したことから2人は次第に仲良くなり、
フレッドはカハルと日々を過ごす内に新しい自分を発見していく。
例えば、車は制限速度内で走るだけではなく、
思いっきりエンジンをふかしてドリフトするのが痛快だったりとか。
公衆トイレで体を洗うのではなく、市営プールでシャワーを浴び、泳げば気持が良いとか。

そんなある日、ちょっとした事件が起きる。
フレッドはプールで出会ったピアノ教師ジュールに一目惚れしてしまったのだ。
もの静かで上品な彼女と、住む家もない自分。
かなわぬ恋と一度は身をひこうとしたもののカハルに励まされ、
彼女と会うためアクアビクス教室に通う。そして自宅に招かれることに。
お茶を飲み、動かない時計を修理すると、2人の間の歯車も回り出す。

その一方、カハルはどうにも縁の切れないドラッグのため、
大きなトラブルに巻き込まれ……


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この映画を観た後、海辺を自転車で走ることがありました。
そのとき、海に面した駐車場の横を通ったのですが、
もしここに何ヶ月も車が停まっていたら、すぐに通報されてレッカー車が来るのだろうな、と思いました。

首都ダブリン市内の駐車場に長い間、同じ車が停まっている状況って、
ダブリン市民が鷹揚なのか、あるいは、そんなことには気を遣っていられないほど
経済状況が切羽詰まっているということなのか――

でも、どんなにお金がなくても、
フレッドは駐車場に停めた我が家をきれいに掃除し、整頓し、植木鉢に毎朝お水をあげ、
洋服もコインランドリーで洗濯し、いつも身ぎれいにすることを心がけています。
彼はホームレスだからといって自棄にならず、日々の生活を大切にしているし、
恋もするし、人としての誇りを大切に生きています。

思うに、失業し、住む家もない人間が
良い暮らしをしてる人を見れば、妬ましいし、羨ましいし、
第一、自分が惨めになるのじゃないでしょうか。

フレッドはおとぎ話の主人公か?
いえ、いえ。
小太りの冴えないおじさんだけど、まじめに生きてきた人が失業するのが現実なら、
失業、家なし生活でも、誠実に規則正しく生きる人がいることも現実。

明日がどうなるかはわからないのはフレッドだけではありませんものね。
だったら、今日という一日を規則正しく生活することが生きるということなのでしょう。
そう。時計のように、です。
時計のようなリズムは生きていく上で重要なことだと思うのです。

フレッドがいて、カハルがいて、ジュールがいて、杓子定規な役所の職員がいて、
それぞれがからみあって人生は流れていきます。

バブルがはじけようと、失業しようと、
人はまず今日という日を生きていかなくちゃならないのですものね。

そうしている内に小さな希望も灯り始めるんだよな。
大きな悲しみも優しい想い出となって心の糧になるんだよな。






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☆3月21日に更新しました。春分の日ですね。いつも応援ありがとうございます☆

ダブリンの時計職人
監督/ダラ・バーン、プロデューサー/ドミニク・ライト、ジャクリーン・ケイン、脚本/キーラン・クレイ、撮影/ジョン・コンロイ、製作/Ripple World Pictures Limited,Ireland
出演
コルム・ミーニー/フレッド、コリン・モーガン/カハル、ミルカ・アフロス/ジュールス
3月29日(土)より新宿K’s inema、渋谷アップリンク他にて公開
2010年、アイルランド、フィンランド、94分、後援/駐日アイルランド大使館
http://uplink.co.jp/dublin/

by Mtonosama | 2014-03-21 06:22 | 映画 | Comments(9)
ダブリンの時計職人 -1-
Parked

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©Ripple World Pictures Ltd・Helsinki Filmi Oy All Rights Reserve

もう、このタイトルにそそられ、早く観にいきたいなぁと思っていました。
時計の一文字が入っているとズキューンと射ぬかれる感じがするとのです。
「時計じかけのオレンジ」(‘72)なんてのもありましたし、
先日映画館で観た作品「鑑定士と顔のない依頼人」のラストシーンでは、
巨大な時計ムーブメントにズキューンでした。

時計ってその小さな体で全宇宙の動きを体現してるって感じがしません?
宇宙であり、摂理であり、時間そのもの・・・・・

あ、すいません。最初から迷走を始めたようであります。

この邦題、ほんとに好きです。
で、うっとりとスクリーンに目をやっていますと、
タイトルが出ました。

ん?
Dublin も clocksmith も clockcraftsman も
「ダブリンの時計職人」という邦題に関連するような単語がどこにも見当たりません。
ただ一言 Parked とあるのみ。
このシンプルな英単語のどこにダブリンとか時計職人とかがあるの?

Parkedですよ。
Park
名詞なら「公園」「遊園地」。
でも、ここではedがついているので動詞。
となれば、他動詞。「駐車させる」、「~を駐車場に入れる」です。
parkedなので「駐車された」、「駐車場に入れられた」ですね。

はい、そこの居眠りしてるキミ!ここ重要ですよ。

そうなんです。「駐車された」。
これがポイントなんです。
駐車場に停められた車に暮らす中年のホームレスが主人公のアイルランド映画です。

監督はダラ・バーン。

ダラ・バーン監督
アイルランドの放送局RTEで20年間にわたりドキュメンタリー映画制作に携わる。
1994年、初の長編ドキュメンタリー監督作「JFK in the Island of Dreams」で欧州メディアプロジェクトの賞に輝く。以後、数々の社会的・政治的テーマを扱ったドキュメンタリーを制作。本作が初の長編劇映画デビューとなる。

ケルティック・タイガーとよばれる好況に沸いたアイルランドも2008年頃からバブルが崩壊。
現在は経済的に深刻な状況下にあります。
失業率は2013年10月で13.2%(日本4.0%)、失業保険申請者数40万9,900人。
アイルランドの首都ダブリンでは毎日7人がホームレス状態に陥っているということです。

これまでドキュメンタリーを数多く撮ってきたダラ・バーン監督。
バブル崩壊以降、街に増え続けるホームレスをテーマに作品を撮っていました。
そして、彼らについてもっと知りたくなり、
リサーチを重ね、大勢のホームレスに話を訊いてできあがったのが「ダブリンの時計職人」。

本作はフィクションであるし、
主人公のフレッドは監督の取材から生まれた仮想の人物ですが、
ダラ・バーン監督が描くとアイルランドのホームレスはこうまで愛すべき人物となる!
ということかもしれません。

そのフレッドが寝泊まりするのが海岸の駐車場に停められた1台の車の中。
そう、ここでparkedという原題に納得できるんです。

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フレッドに深くかかわる人物も紹介しましょう。
1人はフレッドと同じ駐車場に停めた車の住人カハル。
彼はジャンキーですが、根っからの中毒者ではないんですよ。
止めたい止めたいと思いながらも心の傷ゆえなかなかドラッグと縁が切れない青年です。
止めたいと思っても止められないから中毒というんでしょうが・・・

でもね、彼をみて、その人柄を知り、その体験を知ってしまうと
一概にジャンキーは悪い!って切り捨てられないんですよね。
裁判員の悩みがよくわかります。
それにカハルを演じたコリン・モーガンがまた良くって――
おばさんとしてはギュッと抱きしめたくなってしまうんです。
おっといけない。また過剰な感情移入。

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そして、もう1人。
アイルランド人の夫を亡くしたフィンランド出身のピアノ教師ジュール。
暗さと寂しさをたたえた瞳を持ち、フランクにもカハルにも優しい女性です。

あ、もうひとつ、大切なものがありました。
そう。寒々としたアイルランドの海です。
アイルランドってほんとに素敵ですね。

さあ、どんなお話なのでしょう。
乞うご期待でございますよ。



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☆3月18日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

ダブリンの時計職人
監督/ダラ・バーン、プロデューサー/ドミニク・ライト、ジャクリーン・ケイン、脚本/キーラン・クレイ、撮影/ジョン・コンロイ、製作/Ripple World Pictures Limited,Ireland
出演
コルム・ミーニー/フレッド、コリン・モーガン/カハル、ミルカ・アフロス/ジュールス
3月29日(土)より新宿K’s inema、渋谷アップリンク他にて公開
2010年、アイルランド、フィンランド、94分、後援/駐日アイルランド大使館
http://uplink.co.jp/dublin/

by Mtonosama | 2014-03-18 05:34 | 映画 | Comments(6)